戦時加算 (著作権法)
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戦時加算(せんじかさん)は、
- 国際条約において義務付けられている自国の著作権の保護が、交戦期間中相手国において行われていなかったとみなし、著作権の保護期間を開戦から終戦までの日数に応じて延長する(させる)制度。
- 戦争により国内において自国民の著作物が権利を執行出来なかったことを理由に、開戦から戦争期間の終了までの期間分を法律において定める保護期間に上乗せする制度。
俗に戦争加算とも言う。
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[編集] 日本の戦時加算
日本における著作物利用の制限で、第二次世界大戦中の連合国(米英など)及び連合国民の有する著作物の著作権の存続期間について、著作権法に法定された通常の期間に加えて、開戦から講和までの約10年間延長されることをいう。
[編集] 戦時加算規定と加算期間
日本は第二次世界大戦中は戦争相手国である連合国の国民の著作権を保護しなかったペナルティーとして、戦争中に存在した連合国の国民の著作権について、通常の保護期間に戦争期間を加算しなければならない。
但し、対象となるのは平和条約を批准した45の国全てではなく発効時にベルヌ条約に加盟していた国または日本と交戦状態となる前に個別の条約ないし協定を日本と締結していた15か国に限られる。
著作権における戦争期間は1941年12月8日から当該連合国の間に平和条約が発効する前日までである(サンフランシスコ平和条約第15条C項)。なお、サンフランシスコ平和条約以前に平和条約を批准しているイギリス・オーストラリア・カナダ・フランス・ニュージーランド・パキスタン・スリランカについては、その国の批准日に関わらず、日本国との平和条約の規定通り平和条約の発効日である1952年4月28日に統一されている[1]。
国名 | 批准年月日 | 加算日数 |
---|---|---|
イギリス | 1952年1月3日 | 3794日 |
オーストラリア | 1952年4月10日 | |
カナダ | ||
ニュージーランド | ||
パキスタン | 1952年4月17日 | |
フランス | 1952年4月18日 | |
セイロン(現スリランカ) | 1952年 | |
アメリカ合衆国 | 1952年4月28日 | |
ブラジル | 1952年5月10日 | 3816日 |
オランダ | 1952年6月17日 | 3844日 |
ノルウェー | 1952年6月19日 | 3846日 |
ベルギー | 1952年8月22日 | 3910日 |
南アフリカ | 1952年9月10日 | 3929日 |
ギリシャ | 1953年5月19日 | 4180日 |
レバノン | 1954年1月7日 | 4413日 |
[編集] 戦時中に創作された著作物
戦争中に創作された著作物については著作権所得日から平和条約発効日の前日(または批准日の前日)までを戦争期間として加算する(連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律第4条第2項)。
[編集] 日本国との平和条約に署名していない連合国
ソ連(現ロシア)、中国はサンフランシスコ平和条約に署名しておらず、戦時加算規定における連合国の対象に当たらないため、戦時加算を考慮にする必要はない。
[編集] ヨーロッパの戦時加算
フランス・イタリア・オーストリア・ブルガリア・フィンランド・ルーマニア・ハンガリーには、第一次世界大戦及び第二次世界大戦により自国内の著作権が執行出来なかったことを理由とする戦時加算制度が存在する。
[編集] 出典
- ^ 戸山リサーチセンター研究報告・第2部(102 - 104ページ)