ルイ・ジューヴェ
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ルイ・ジューヴェ（Louis Jouvet、1887年12月24日 - 1951年8月16日）は、フランスの男優、演出家、劇団主宰者。パリを本拠として、内外への巡演も度かさねた。日本には、1937年輸入公開された『女だけの都』以降の、多くのフランス映画に登場して知られた。ルイ・ジュヴェとも表記する。
当代の新作のほか、古典とくにモリエールを、演出し演技した。
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[編集] 略歴
フィニステール県(Finistère)のクロゾン(Crozon)に生まれ、土木技師の父の転勤にともない、幼少時を転々した。10歳のとき父が事故死し、母の兄の住むアルデンヌ県のルテル(Rethel)に移り、転入した中学で演劇を教わった。
1905年（17歳）、パリ薬科大学（l'École de Pharmacie à Paris）に入学し、かたわら、1908年アマチュア劇団を組織して、少数回ずつの公演を繰り返した。この時期3度、コンセルヴァトワールの入試に落ちた。
1913年（25歳）、薬剤師一級試験に合格した上で、演劇のプロの道に入り、時代順に、次の3劇場と深くかかわった。
[編集] ヴィユ・コロンビエ劇場の時代
ヴィユ・コロンビエ劇場は、パリ第6区、サンジェルマン・デ・プレ大通りに近いヴィユ・コロンビエ通りにあり、作家・演出家のジャック・コポー（1879 - 1949）が、1913年から1924年まで主宰した劇団の本拠であった。ジューヴェは、その旗揚げから舞台総監督兼俳優として参加し、名を高めた。
第一次世界大戦勃発の1914年（26歳）、ジューヴェ薬剤師は、衛生兵として従軍する。
戦争末期の1917年 - 1918年には、劇団のニューヨーク公演の番頭を勤める。
[編集] コメディ・デ・シャンゼリゼの時代
コメディ・デ・シャンゼリゼ（Comedie des Champs-Élysés）は、パリ第8区、シャンゼリゼ通りから南へ折れたシャンゼリゼ劇場内の小劇場で、ジューヴェは1922年、シャンゼリゼ劇場の技術監督となって内部を改装し、1924年、解散したヴィユ・コロンビエ座の座員も選抜吸収し、コメディ・デ・シャンゼリゼを本拠とする座を組織した。
- ジュール・ロマン、ジョルジュ・デュアメル、ロジェ・マルタン・デュ・ガール、ジャン・ジロドゥらが戯曲を書いた。特にジロドゥとの交わりは深く、彼の14篇の戯曲の13篇を、ジューヴェが初演した。
- 画家オーギュスト・ルノワールの長子ピエール・ルノワールが、終生の幹部俳優であった。
1926年（38歳）、レジオン・ド・ヌール勲章五等を受ける。
1927年、パリの在野3劇団と、相互扶助的な4座カルテルを結び、その『野党連合』は、フランス敗戦の1940年まで続いた。
1933年（45歳）、映画「トパーズ」に出演。これには、苦しい劇団財政への配慮があった。したがって、以降も前述の「女だけの都」のほか「旅路の果て」・「舞踏会の手帖」など頻繁に映画に出演し、我が国の映画ファンにも親しまれた。
[編集] アテネ劇場の時代
アテネ劇場（Théâtre de l'Athénée)は、パリ第9区、ガルニエのオペラ座の西200メートルにある。ジューヴェは1934年、コメディ・デ・シャンゼリゼとの契約切れを機に、ここへ移った。
1934年（46歳）、かって入学できなかったコンセルヴァトワールの、教授に迎えられる。
1936年、パリの国立劇場、コメディ・フランセーズ総支配人就任を要請されて受けず。ただし、ジャック・コポーやカルテルの仲間らと、同劇場の演出には加わる。レジオン・ド・ヌール勲章四等を受ける。
1939年9月の第二次世界大戦勃発により、多くの座員が動員され、演劇活動が困難となる。翌年6月フランスが降伏する。ナチ占領下のパリでは公演不能とさとり、非占領地域やスイスを巡演したのち、1941年6月、一座を率いてリオ・デ・ジャネイロへわたる。中南米での公演は15ヶ国、376回、4年半におよんだが、その間、装置の被災消失、団員の分裂脱退などもあり、破産寸前にまで追いこまれた。
1944年（56歳）。8月、パリ解放。再開初便に乗船し、1945年2月パリに帰る。シャルル・ド・ゴール首相からコメディ・フランセーズ総支配人就任を要請されるが固辞。アテネ劇場を借り戻し劇団を再編し、12月、ジャン・ジロドゥの遺作の初演で、パリに復活した。ド・ゴールも観劇した。
1947年、再び、コンセルヴァトワールの、教授に迎えられる。
1948年、フランス政府の依頼に応じ、エジプトとヨーロッパ諸国へ巡演する。1950年にもヨーロッパとアフリカへ巡演する。帰国後、レジオン・ド・ヌール勲章三等を受ける。
1951年（63歳）、カナダ、アメリカへ巡演する。アテネ劇場での稽古後、倒れ、2日後の8月16日楽屋で死去。4日後、サンシュルピス教会（Église Saint-Sulpice)で葬儀。故人が世に出たヴィユ・コロンビエ劇場の目と鼻である。モンマルトル墓地の南域に埋葬。
偉大な演出家のジューヴェは映画では、監督に従順な出演者であった。たとえばジュリアン・デュヴィヴィエは、『映画が好きでなかった彼を、映画は尊敬していた』といたんだ。
アテネ劇場は、アテネ・ルイ・ジューヴェ劇場となった。近くの広場は『オペラ＝ルイ・ジューヴェ公園』（Sq. de l'Opera Louis Jouvet）である。
[編集] 参考図書
- 諏訪正：ジュヴェの肖像、芸立出版KK (1989)、ISBN 4-87466-050-9
- 中田耕治：ルイ・ジュヴェとその時代、作品社 (2000)、ISBN 4-87893-353-4
- 両著に年表がある。
- 中田氏の著書には、上演記録・フィルモグラフィー、および、人名・演劇作品・映画作品の索引がある。
- ルイ・ジュヴェ：演劇論 - コメディアンの回想、鈴木力衛訳、人文書院(1952)
