ラム (うる星やつら)
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ラム(Lum)は、高橋留美子の漫画作品及びそれを原作としたテレビアニメ作品『うる星やつら』に登場する架空の人物である。
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[編集] 容姿・設定
「うる星(ラム星・鬼星とも)」(アニメ版での設定。原作では星の名前は設定されていない)から地球侵略のためにやってきた鬼型宇宙人の娘で、飛行能力と放電能力を有する。 電撃を放つ超能力を持つため、高圧電圧を吸収して充電することも出来る。その際は電流の味が分かるとみられる。面堂の部下には鬼っ娘(おにっこ)と呼ばれている。
基本的な容姿は地球人と酷似しているが、耳が少し尖っていて、頭に小指程の小さい二つのツノを持つ。このツノは生え替わりがあり、ツノが生えていない間は電撃と飛行能力の超能力を失い、普通のか弱い女の子になる。 また髪の色は、原作ではレーザーディスクやDVDの光彩の様な虹色をしていて、見る角度によって様々に変色する。アニメでは常に緑色で変色はしない。
身長は他の同級生の女子キャラクターと殆ど同じなので、日本人女子の平均程度と見られるが、物語の中で多くの男子キャラがラムを見て「すごい美人」「かわいい」「ぐらまあ」などと形容しているところから、トランジスタ・グラマーな美少女という印象である。
普段は、日本古来の鬼らしく虎縞模様のビキニとロングブーツを着用しており、露出度が非常に高い。とてもセクシーな曲線美の持ち主で、作品初期には露出度の高さと相まって色気で男性キャラを魅了する場面も見られる(あたるすらも、第1話で鬼ごっこの相手がラムだとわかった瞬間「ツノをつかむには体をつかまんと…」と言ってにやけるシーンがある)。 友引高校に通うようになって以降はセーラー服をはじめとして、地球の一般的な女の子の服(和服も含め)を着る場面も増えた。下着は、普段着でもある虎縞ビキニ。
タバスコのようなホットソースをジュースのように飲む程の辛党の種族であるため、彼女の手料理は猛烈に辛い。あたるはラムの料理をまずいとよく言うが、味覚の違いのせいであり、ラムの料理の腕は決して悪くはない。ただ、かなり雑ではある。 梅干を食べると酔う。またニンニクが嫌いである。 地球の料理については、ラーメンを「味がない」と言っている。
非常に無邪気で、幼馴染のラン曰く、ラムの最大の欠点は「悪気がない事」。当初はしのぶに対していたずらをしようとするなど攻撃的な性格をしていたが三角関係が解消すると、初期のような攻撃的な性格は鳴りをひそめていった。同様に初期は非常に大胆な性格でもあり物語序盤では過激にもあたるにすぐに抱きついたりキスしたりしたが、終盤では腕組みをする程度に落ち着いている。
子供の頃は極めてやんちゃ、かつ過激な性格。銃を悪戯して叱られる、小学校の先生にバズーカ砲を射ち込む、中学校の先生に時限爆弾を仕掛ける、などの逸話が作中で語られている。
[編集] あたるとの関係
地球を賭けた鬼ごっこの相手としてコンピューターでランダムに選ばれた諸星あたるとの鬼ごっこに負け、本人の勘違いからあたるの婚約相手となる。 諸星あたるに求婚されたと勘違いして一途な押しかけ女房となったが、浮気性のあたるはそれを鬱陶しく感じ、毎回なんとかして彼女から逃れようと策を凝らしていた。 彼女の星では婚約は神聖なものであるため、一生添い遂げる決心であたるに心底惚れており、あたるを「ダーリン」と呼び、その想いは果てしなく素直で一途。あたるが浮気をすると電撃を与えて制裁する。
ラムのあたるに対する行動パターンは、序盤はいかにあたるとしのぶとの仲を邪魔するか、面堂登場以降は、いかにあたるの(ラムからみた)浮気を止めるか、また終盤になってくると、あたるを妬かせようとする行動もし始める。
普段はあたると一緒に学園生活と寝食を共にしている。あたるの部屋で寝る時は、いつも押し入れで寝ている。原作者曰く「あたるの部屋で一緒に寝る広さは十分にあるが、二人は高校生なのでダメ! 」との事。
[編集] 名前の由来
名前の由来は日本にビキニの流行をもたらしたとされるグラビアアイドルのアグネス・ラム。
ラムのビキニスタイルも彼女の影響、との見解もある。
[編集] しゃべり方
基本的に原作者・高橋留美子の人工言語であるが、一人称の「うち」、疑問の助詞「~(の)け?」などは方言からの借用である。ただし、日本各地の方言で見られるため、どの方言からの借用か分からない。
アニメ・映画における平野文による発話では、共通語・標準語のイントネーションで話され、方言要素は語彙のみに限定された。
[編集] 「だっちゃ」
語尾の「~だっちゃ」・「~っちゃ」(だ:コピュラ、っちゃ:終助詞)は、仙台弁(宮城県)由来とされる[1]。高橋は井上ひさしの小説において、初めて仙台弁の「~だっちゃ」「~っちゃ」を見た(井上は山形県出身だが、仙台一高に進んだため、井上の小説には仙台弁の「~だっちゃ」「~っちゃ」が多用されている)。
そこからヒントを得て、「勝手なやつら」の登場人物「だっぴゃ星人」(半魚人)が語尾に付ける「だっぴゃ」を可愛らしく「だっちゃ」にし、ラム語を作り出した[2]。例えば、ラムが「Yes」の意味で「だっちゃ」を単独で用いる場合があるが、仙台弁では稀な用法である。すなわち、仙台弁から「~だっちゃ」・「~っちゃ」を借用しながらも、その用例から離れて、原作者の人工言語化が進められている。
なお、仙台弁と同様に「~だっちゃ」・「~っちゃ」が用いられる方言には因州弁(鳥取県)と佐渡弁(新潟県)があるが、高橋は「ラム語」が自らの出身地である新潟の由来ではないと言っている[1]。また、助詞(格助詞・終助詞・間投助詞)として文節末や文末に「~ちゃ」を付ける方言に、富山弁、山口弁、北九州弁および九州東部の豊日方言(宮崎弁など)があるが、促音化が見られず、「だ」も入らないことにより、「ラム語」の語尾とは異なる。
[編集] 豆知識
- 同作品の人気の源と言っても過言ではない人物。ラムが主人公と思われがちであるが、主人公は諸星あたるである。「少年サンデーグラフィック」において作者は「どちらが主人公なのか」という質問に対し「私は諸星あたるが主役だと思っていますがね」しかし、「女性の方が華があるので、表紙やキャラクター商品には女性を前に出している」と回答した。ラムは当初ゲストキャラでしかなく、最初期の悪魔の話「やさしい悪魔」と、竜宮の話「いまだ浮上せず」には出ていない(アニメの悪魔の話にはラムの出番がある。また、アニメの「大金庫! 決死のサバイバル!! 」ではあたると面堂の2人だけが登場しラムは登場しなかった。)が、連載が進むうちに登場回数が激増し、作品を象徴するキャラクターになった。原作ではあたるとラムの両者共に「自分が主役だ」と思っているようだ。イタリア、フランスなど海外でアニメ・うる星やつらが放映される時には、タイトルを「LAMU」(伊語:ラムゥ、仏語:ラミュ)とされることがある。
- ラムのキャラクターデザインは当初「ショートヘアでビキニ」タイプと「ロングヘアでミニワンピ」タイプの2案存在した。最終的には「ロングヘアのビキニ」で決定。決定したのは昭和53年のお正月。
- 2003年8月12日~9月15日のデイリースポーツに高橋留美子描き下ろしの阪神タイガースを応援するラムのイラストが掲載された。
- 高橋留美子の漫画史上、最もキスした回数の多いカップルは、諸星あたる&ラム。
- その気になれば軽飛行機並みに早く飛ぶことが出来る。
- 本人の発言から、ラムの体は諸星あたるのものである。
- あたると一つの布団で一緒に寝たことがある。あたるはラムを抱く気であったが、ラムにはその気がなかった。
- 放電するとストレスが解消される体質。あたるの浮気を電撃一発ですんなり許すのはこの体質が理由か。
- ラムのキャラクターは次回作の『らんま1/2』のシャンプーにも受け継がれていて、とりわけシャンプーは初期のラムに性格が近い。
- 押井守は「ラムという娘は一年半(監督を)やったけど、結局よくわからない」と話しており、その対談で宮崎駿は「ラムは女のウラミがこもったキャラ、女の復讐」と話している(1983年)。
- 高橋留美子は「自分が描いたキャラでもっとも理解できないキャラ」と話している(2006年より刊行されている再販本のコメントで)。
- 明石家さんまは理想の女性像を「ラムちゃん」と語っている(2000年代、テレビでの発言)。理由は「浮気しても電撃程度で許してくれるから」とのこと
[編集] 脚注
- ^ a b あつじ屋「方言あれこれ」(漫画家・山本貴嗣)
- ^ 少年サンデーグラフィックうる星やつら