ボーイング747-8
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ボーイング747-8(英語:Boeing 747-8)は、ボーイングが大型旅客機ボーイング747-400 の後継機として開発を進めているボーイング747の最新モデル。旅客型の 747-8IC 型「インターコンチネンタル」画像と、貨物型の 747-8F 型「フレイター」がある。型式発表前は 747 アドバンスド (747 Advanced) の名で計画されていた。
初飛行は、2008年後期に予定されている(これは貨物型である)。貨物型の受注が先行したためボーイング747ファミリーの中、更には歴代のボーイング社のフリートの中で唯一、旅客型より貨物型が先行してロールアウトすることとなった型式である。
目次 |
[編集] 開発の経緯
[編集] エアバスとボーイングのポスト747構想
1989年からエアバスは 747 を上回る超大型機 UHCA(ウルトラ・ハイ・キャパシティ・エアクラフト)の構想を持っていたが、ボーイングはこれに対抗し、1991年、胴体を延長した 747 ストレッチ、総二階建ての 747 ダブルデッキ、全く新造である「ニュー・ラージ・エアプレーン」の 3 つの構想を発表した。この反応に対し、エアバスを構成する仏独英西の 4 企業は、UHCA とは別にボーイングに共同開発を持ちかけ、5 社は1993年1月に VLCT(ベリー・ラージ・コマーシャル・トランスポート)構想を発表したが、ライバル同士の意見はまとまらず、エアバスは1994年6月に UHCA を A3XX として開発すると発表、VLCT 共同開発は中止となった。
ボーイングは A3XX に対し、1994年に既存の 747-400 をベースにエンジン出力の増強、主翼・ランディングギアの強化を施し、機体を 6 メートル延長した 530 席の 747-500X、18 メートル延長した 600 席の 747-600X の計画を発表した。航空会社へのマーケティングでは、747 ユーザーのほとんどが747 の大型化を望んでいるとの結果にボーイングは喜び、777 に続いて日本に共同開発を持ちかけた。航空会社には既存機の改良であることによる信頼性を武器に強気の攻勢に出たが、航空会社の要望を詰めていくと、各社の思惑が入り乱れ、ボーイングを苦しませることとなった。
そのため、1997年1月に -500X / 600X 計画を凍結し、当面のつなぎとして、-400 型の機体を延長して 60 - 80 席ほど増やし、航続距離も 14,000 キロメートルに延長した 747-400LR 計画を発表した。それと同時にエアバスと A3XX に対する強烈な非難キャンペーンを繰り広げたが、400LR は 500X / 600X よりもさらに中途半端な設計思想であるため、思うほどには航空会社の注目を集めなかった。また A3XX が大量の新技術を盛り込む事を次々に見せ付けるのに対し、基の 747 が発表から 30 年以上経過しているため、評判は芳しくなく、受注が得られる様子ではなかった。
[編集] 747X計画
そこで2000年1月、新たな構想として 3 段階の 747X 計画を打ち出した。第 1 段階は、エンジン出力を増強し、主翼を補強して航続距離を伸ばした 747-400X、第 2 段階が 400X を全体的に一回り大きくし、さらに航続距離を伸ばした 747X、第 3 段階に 747X の機体を延長した 747Xストレッチ型で、これは 747-400 に比べると全長が 10 メートル、翼幅は 5 メートル拡大される。第 3 段階までのプログラムを A3XX 納入開始である 2006年より一年早くし、既存機改良で開発費を抑えられることから、一から作る A3XX より低価格となることを強みとした。
この計画でのボーイングの狙いは、エアバスに A3XX 開発を断念させることにあり、また断念するだろうとの判断もあった。さらに、日本企業が A3XX 開発(10 パーセントを日本に負担してもらいたいと打診していた)に協力しないよう、首脳がたびたび訪日して、747X の日本担当比率がボーイング777の 21 パーセント以上になるであろう旨を伝えた。
だが 2000年12月、エアバスは最高経営委員会で A3XX の計画実行を決定し、A380 と名づけて開発に踏み切った。これはボーイングの予想に全く反し、A380 が実際に完成すれば、いくら改良しても 747X の陳腐化が顕わになることは明白であった。この先、それほど多くの需要を見込めない大型機市場(ボーイングは 500 機程度と予想、エアバスは1,200 機)で、747X が A380 に勝てる自信は、実際にはなかったのである。
2001年3月29日、ボーイングは需要が見込めないとして 747X の開発延期を発表し、高亜音速中型旅客機「ソニック・クルーザー」計画を決定したが、こちらの計画も、同年9月に発生したアメリカ同時多発テロによる航空需要の落ち込みと燃料価格の高騰により打ち切られ、効率性を重視した中型機であるボーイング787 の開発計画に移された。
[編集] 新形式747-8の登場
しかし、ボーイングは最新の市場調査の結果大型機の需要が今後もかなり見込めるだろうと判断し、また中型機 787 の開発で得られた技術的成果を流用すれば開発費を圧縮できるとの思惑もあったことから、747 のストレッチに再び意欲を示し、このストレッチ構想に対して 2005年に受注を得たことから、747-8 の製造を決定した。幾多の変遷を繰り返し、一時は計画中止かとも考えられた 747X であったが、航空会社や利用者がアメリカ同時テロ事件の痛手から回復するのに、意外と時間がかからなかったことが、747X 計画の実現につながったとみられる。
[編集] 機体の特徴
ボーイング747-400の機体をもとに、主翼の前後で計 5.7 メートル胴体を延長して収容力を増大させる。主翼は翼端をレイクド・ウィングチップに改良、エンジンもボーイング787 で採用されたゼネラル・エレクトリック製 GEnx を装備する。これらの改良によって、-8IC では 3 クラス 467 名を乗せて 14,815 キロメートル(8,000 海里)、-8F で 140 トンの貨物を積み 8,275 キロメートル(4,475 海里)の航続距離を実現し、さらに将来の騒音、排気ガス規制に対応する。また、内装についても 787 の技術が適用され、新世代の旅客機と見劣りしない客室となる計画である。
エアバスA380への直接の対抗というよりは、キャパシティ的にB777-300ER と A380 の中間となる機体を目指している。ただし、改良が加えられるとはいえ、胴体は-400 型と基本的に同一の構造である(胴体直径は同一の6.1m)。また主翼面積も増加し10%程度大きくなっているが、離着陸速度・滑走路長等の設備面は-400型が発着可能な空港であれば改修の必要は無く支障なく運用可能とされている。また-400型の整備や操縦等のライセンスを有しているならば容易に移行可能で、-400型を保有する航空会社にとって、これの後継機として考えるならばライバル機のエアバスA380を導入するより人件費等の諸経費軽減に繋がるメリットがある。
ボーイング777の長距離型でも見られたことだが、搭載エンジンの供給元が GE 一社に限定されている。これはボーイングと GE との利害が一致した結果であるとみなされている。すなわち、開発リスクを低減するために開発費をシェアする相手を求めていたボーイングが、GE によるエンジンの独占供給を交換条件に開発資金を出資させた、というものである。ゼネラル・エレクトリックがグループ内にリースなどの金融部門を持っているがためにできた方策である。
ボーイング777・ボーイング787等で採用される斬新的な操縦方式であるフライバイワイヤは開発コスト、市場等を考慮して不採用となった。操舵方式はこれまでのボーイング社のフリートと同様に操縦輪方式となる見込みである。これらを始めとして操縦方式や操縦室内設備についてはB747-400から大きく発展した点はほとんどない。
正式にロールアウトすれば世界最長の旅客機となる予定。(*世界最大はエアバス社のA380、現時点での世界最長は同じくエアバス社のA340-600)
[編集] 開発タイプ
[編集] 747-8IC(旅客機タイプ)
最新型のボーイング747-400も初就航から20年が経とうとしていることから「ポスト747」として開発された。アッパーデッキは747-400より更に延長し、3クラスで467席仕様となる予定。客席数増加にも関わらず747-400ER比で航続距離は延長され、燃費も改善し、騒音の影響も30%程度軽減される。
先にエアバス社がこの超大型機部門では総二階建てのA380を開発しているが、これに直接対抗するのが目的でなく、あくまでボーイング社はA380とB777-300ERやエアバスA340-500,600クラスの中間を埋める450人級の機材として考えている。
今までの747に比べて新たに胴体後方に「スカイロフト」が設定できるようになった。これは旅客席の増席や個室、ラウンジ、ビジネスセンター等として利用可能としている。
2005年11月15日に開発を正式に決定し暫く貨物型のみの受注であったが、2006年12月6日にルフトハンザドイツ航空から20機の発注(+オプション20機)を受け、航空会社から初の受注となった。2007年、最終コンフィギュレーションが決定。
2007年12月現在、航空会社からの発注は上記の1社のみである(他には要人輸送用としての発注もあるが、詳細は公表されていない)。この理由としては、搭載エンジンが上述のGEnxに限られているために、元来ロールス・ロイス製のエンジンを中心に採用してきたブリティッシュ・エアウェイズなどイギリス連邦系の航空会社が発注を見送っていることが挙げられる。事実、ブリティッシュ・エアウェイズはボーイング747-400を現在57機運用しており、同型機の最大オペレーターであるが、その-400型機の後継ともいえる-8IC型機ではなくA380を発注した。これには先述の搭載エンジンの問題が絡んでいると言われる[1]。
先述のようにA380と777-300ERの中間機材と述べ、ボーイング社はA380を発注している航空会社からも関心は得られると考えている。実際にローンチカスタマーとなったルフトハンザドイツ航空はA380も発注しており、この点からボーイング社の考えは全く的を外していないことと取れる。しかし、発注は上記だけで止まったままで成功したとはまだ言い切れない。
[編集] 発注航空会社(旅客機タイプ)[2]
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- ルフトハンザドイツ航空(ローンチカスタマー)
- VIP ORDERS(要人輸送用)
[編集] 747-8F(貨物機タイプ)
ボーイング 747 型は貨物機として世界の航空貨物のおよそ半分を輸送しているほどポピュラーな存在である。この独占状態を維持するため、ボーイングでは 747-8 の派生タイプとして747-8 Freighter もしくは 747-8F と呼ぶ機種を開発した。旅客機タイプより先に初号機の就航が予想されている。外観上は 747-400F 同様、アッパーデッキが旅客機タイプより短い。最大離陸重量(MTOW)は 440 トンで、最大ペイロードは 140 トン。
747-8F は現行の 747-400ERF に比べてペイロードは増加したが航続距離は僅かに減少した。ボーイングが ERF を発表した際、ベースモデルの 747-400F に比べて MTOW が 16 トンほど増加したが最大ペイロードは据え置かれた。つまり、MTOW の増加は搭載燃料に振り向けられ、航続距離は伸びたが貨物の搭載重量は変わらなかった。しかし、カーゴルックス航空のような機械類や分解できない大型貨物輸送を頻繁に行うユーザーは大きなペイロードと着陸能力を持つ機材を必要とし、燃料ではなく荷物を可能な限り搭載したい。このため 747-8F の 60,000 ポンド(およそ 27 トン)の MTOW 増加はそのまま無燃料重量(すなわちペイロード)の増加に振り向けられている。747-8F では最大ペイロード状態における搭載可能な燃料はタンク容量の半分程度である。したがって貨物重量を ERF と同等(112 トン)程度とした場合には、その重量差分の燃料を搭載できるので航続距離は ERF より大きいものとなる。運航規制の重要な指標となる二酸化炭素排出量については747クラシック貨物型を100とした場合、60以下であり、現在開発中の同社の双発貨物機777F型機の70を下回っていることで「双発より低騒音でエコロジー」な貨物機である。
超大型機としてライバルであるエアバス社のA380が受注状況から判断して優れているように見えるが、これは旅客型に対してのことであって、貨物型は747-8の方が受注数はA380が受注を全て失い、更に開発中断に陥ったのに対してリードしている。これは貨物搭載形態がA380より有利であることが一因として挙げられる[3]。また貨物機は運用上の安全面を考えると双発機より4発機が好ましいのも受注好調の理由である。結果として貨物専門航空会社だけでなく、A380旅客型を発注している航空会社からも支持を得ている(例:エミレーツ航空,大韓航空)。このことから747の活躍の場はかつてに比べると狭まりつつあるが、決して全く不要というわけではない。寧ろ民間大型貨物機部門ではこれに対抗する他社の新型機は存在しないため、独壇場となる可能性が高い。
この様に旅客型は苦戦をしているが、貨物型はローンチからそれなりの受注数を得ており好調である。ボーイング747はもともとロッキード社(当時)と大型軍用貨物機の競合入札(ここで採用されたのがC-5である。)で敗退した結果、民間機へ転用した型式であり、また超音速旅客機の実用化後は貨物機に転用する計画であった。当初の思惑とは違うが、半世紀近くの長い月日を経てようやく本来の役割を得られたとも取れる。
2008年3月6日、ボーイング社は設計が50%完了したと発表した。この時点で、航空会社9社より計78機の受注を獲得している。
[編集] 発注航空会社(貨物機タイプ)[4]
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- ヴォルガ・ドニエプル航空
- アトラスエア
- カーゴルックス航空(ローンチカスタマー)
- キャセイパシフィック航空
- Dubai Aerospace Enterprise(DAE)
- エミレーツ航空
- グッゲンハイムアビエーションパートナーズ
- 大韓航空
- 日本貨物航空(ローンチカスタマー)
[編集] スペック
- 乗員 - 2名(操縦士)
- 座席数 - 467席(3 クラス構成の場合)
- 全長
- インターコンチネンタル(旅客型)- 76.4 メートル
- フレイター(貨物型)- 76.4 メートル
- 全高 - 19.5 メートル
- 翼幅 - 68.5 メートル
- 胴体横幅 - 6.1 メートル
- エンジン - GEnx-2B67
- 最大推力 - 66,500 ポンド
- 最大離陸重量 - 435,456 キログラム
- 最大燃料搭載量
- インターコンチネンタル(旅客型)- 243,120 リットル
- フレイター(貨物型)- 230,625 リットル
- 最大航続距離
- インターコンチネンタル(旅客型)- 14,815 キロメートル
- フレイター(貨物型)- 8,275 キロメートル
- 巡航速度- マッハ 0.855(旅客型) / 0.845(貨物型)[5]
[編集] 受注
2005年に旅客型の-8IC と貨物型の-8F の開発が発表された。ローンチカスタマーは日本貨物航空及びカーゴルックス航空で両社が-8Fを発注したことによる。その後しばらく貨物型のみが受注数を伸ばしている状況だったが、2006年12月にルフトハンザ・ドイツ航空が旅客型を20機発注、別途20機をオプション契約することが報じられた。-8IC初受注後、再び受注が有ったが何れも貨物型でありルフトハンザ・ドイツ航空に続く旅客型の受注は無く現在に至る[6]。A380の登場も理由として否めないが、社会情勢により世界の航空会社が4発機より双発機による運航に移行していることが理由として挙げられる[7]。
[編集] 競合機種
[編集] 参考文献
- ^ ブリティッシュ・エアウェイズの航空機は、ボーイング747-400型機にはRB211-524Hエンジン、ボーイング777-200ERにはTrent 895というように、ほとんどがロールス・ロイス製である
- ^ "747-8 Site" Boeing. 2008年03月18日閲覧.
- ^ 例として747-8は機体前方から貨物が詰めるノーズカーゴドアを設置できるがA380は機体の形状から設置不可能
- ^ "747-8 Site" Boeing. 2008年03月18日閲覧.
- ^ "747-8 Technical Characteristics(英文)" Boeing. 2007年12月7日閲覧.
- ^ 発注状況はB747-400ER(旅客型,カンタス航空1社のみ)とB747-400ERF(貨物型)と似通っている
- ^ 例:B787の発注やB747-400からB777-300ERへの機材更新の傾向が流行していること
[編集] 外部リンク
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レシプロ旅客機 | 40A・80・221・247・307・314・377 |
ジェット旅客機 | 367-80・707/720・717・727・737・747 (-400)・757・767・777 |
開発中 | 747-8・787 |
構想 | Y1・Y3 |
開発中止 | 2707・7J7・NLA・ソニック・クルーザー |