フーリガン
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フーリガン (hooligan) は主に暴力的な行為を行うサッカーの応援団(サポーター)を指す。単純なスポーツの応援形態という問題にとどまらず、国によって失業問題や民族、人種、宗教間の対立等の様々な問題が根底にあると言われる。
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[編集] 語源
語源には
- 19世紀のロンドンで暴れていたアイルランド系一家の姓Houlihanが由来
- 19世紀のイギリスで流行していた歌の中で揶揄されるアイルランド系住民の名がフーリガンであった
- 19世紀後半にフーリガンズと自称する不良集団がイギリスで新聞記事となり広まった
などの説がある。
[編集] フーリガンの分類
フーリガンには大きく3つの種類がある、とされている。
- 試合の観戦ではなく、暴れる事そのものが目的となっている者
- 自分は暴動に加わらないが、騒ぎを煽り立てる者
- 自分から騒ぎを引き起こすことはないが、他人が騒ぎ始めればその場のノリでそれに加わる者(アルコールが入っている場合が多い)
特に1と2のタイプは、警察から厳重にマークされており、要注意人物についての情報交換は、国際大会の参加チームなどの状況に応じて各国警察の間で随時広く行われている。
サッカーのサポーターは試合の勝敗に直結して騒ぎを起こすことが多いが、フーリガンの場合は、暴れること自体が目的であり、サッカーの結果や内容とは関係なく、相手サポーターやチームに言いがかりをつけて暴れることがほとんどである。極論すれば、1や2のタイプのフーリガンにとってのサッカーとは、暴れる為の口実、あるいは合図に過ぎなくなっている。
移民系の選手の多いヨーロッパの各国リーグでは、最近、人種差別的・侮蔑的なブーイングを起こして試合を中断させるケースも多くなってきた。これは、いままでのフーリガンのように、直接器物を破壊する単純なケースとは明らかに異なる。多種多様なヨーロッパの人種形成の根幹、社会構成に絡んで、問題解決の糸口も一様ではない。しかし、サッカー観戦のモラルそのものが低下していることは事実であり、今後、大規模な問題が発生すれば、メジャーな国際大会などでも開催中止や存廃に関わる様な大きな問題へと発展する可能性もある。
[編集] フーリガンの歴史
一般的にはフーリガンと言う言葉はイングランドのフーリガンの代名詞となっているが、フーリガンが最初に発生したのはオランダ・ユトレヒトのスタジアム。全席が移動の容易な立見席だったため、サポーター同士の衝突が頻繁に発生した。1980年代にはドイツ、イングランドからヨーロッパ各地に広がり社会問題となった。
1985年5月29日、ヨーロッパチャンピオンズカップの会場となったベルギーのヘイゼルスタジアムで、リヴァプール(イングランド)のサポーターがユヴェントス(イタリア)のサポーターと衝突し、多数の死者を出した事件(『ヘイゼルの悲劇』と呼ばれる)により、フーリガン=イングランドのイメージが定着した。
現在では1982年に新たに建設されたユトレヒトスタジアムがFIFAのモデルとなり、イングランドにおいては会員制のチケット販売や立ち見席の廃止、監視カメラの導入等で英国のスタジアムでもフーリガンはほとんど見られなくなっている。とはいえ、外国人がスタジアムのゴール裏に行ってサッカー観戦することは、安全上好ましいことではない、と堂々と案内されるケース(特にイタリア)もあり、注意が必要である。
その意味では、日本のJリーグでは全体として安全なサッカー観戦が可能である。一部では少数の過激なサポーターも存在するが、老若男女が集って応援できるJリーグは、世界的なサッカー観戦のスタイルからいっても非常にレアな(そして胸を張ることのできる)ケースといえよう。事実、2002 FIFAワールドカップの際、開催地となった日本国内の観戦スタイルにおいて、熱心さと安全さを高いレベルで両立させていた事が、ヨーロッパ向けの報道で驚きを伴って伝えられている。
とはいえ、FIFAワールドカップでサッカー日本代表の試合が終わった際、毎度の事のように大都市の繁華街で興奮してフーリガンと化した若者達が大騒ぎしているのが報道される。他方、プロ野球の阪神タイガースが優勝した際などにも同様の現象は起きており、この様な騒動の原因が単純にサッカーだけとは言い難く、ヨーロッパのフーリガン同様、スポーツの結果が暴れる事を目的とする者にとっての暴れる為の口実、あるいは合図になっている面は存在する。
[編集] 関連項目
- ネオナチ
- 応援団
- ローリガン:フーリガンの反対語。紳士的で穏やかな(主にデンマーク)サポーターを指して言う。
- 暴動
- ミルウォールFC:イングランド1部(3部リーグに相当)に所属するチーム。“フーリガンの代名詞”といわれるほどサポーターの気性の激しさで悪名が高い。チーム発足以来、過去には幾度となくサポーターの暴動により逮捕者を出したり、暴動の結果として試合が中止・延期になることがあった。
[編集] 関連書
- ドミニック・ボダン(相田淑子訳)『フーリガンの社会学』 文庫クセジュ 白水社 ISBN 4560508941