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ショック - Wikipedia

ショック

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ショックとは、日本語で末梢循環不全といい、重要臓器の血流(特に微小循環)が障害されて起こる、急性の疾患群の事を指す。細胞障害を生じるため、末梢血管の虚脱、静脈還流量の減少、心拍出量の低下、組織循環能力の低下等の循環機能障害を見る。

目次

[編集] 症状

顔面蒼白、全身の冷汗と体温低下に伴う全身性発汗、末梢静脈虚脱等。血圧低下や頻脈も良く見るが、頭蓋内出血によるものであれば血圧・脈拍は正常の範囲である事が多い。

[編集] 原因

出血
外科的・外傷腹腔臓器出血・消化管出血等が主原因。急速な出血(1/3程度以上)のため循環血液量が減少し、十分な血圧が保てなくなった為にショックに陥る。慢性的な出血の場合は代償的に組織から水分が血管内に流入するためショックとはならず貧血になる。治療は、急速な輸液、あわせて輸血を行う。
熱傷
重症熱傷の際、毛細血管の浸透性が亢進して血漿が組織へ流出してしまい、細胞外液が致命的に不足する為にショックに陥る。急速輸液と、血漿成分の輸血を要する。輸血に関しては、初期から輸血してもすぐ流出しまうため、超急性期を過ぎてから行う場合も多い。また、日射・熱射病による損失でもショックは起こりうる。
重症感染症(敗血症
細菌の全身感染症によって起こる細菌性ショックと、ある一定の細菌(グラム陰性菌)が放出する菌体毒素(エンドトキシン)によるエンドトキシンショックに分類される。エンドトキシンショックは毒素によって血管平滑筋が麻痺して末梢血管抵抗が低下し、静脈還流が減少するためにショックにいたる。有効な抗生物質を投与し、大量輸液を要する。
心不全
心筋梗塞等で心機能が低下しているために、十分な血流を保てず、ショックに陥る。原因がうっ血性心不全である場合は利尿剤を投与する。ジギタリス等の強心剤は心機能低下を一時的に改善できる可能性があるが、長期予後はむしろ悪い。
アナフィラキシー(薬物過敏症等)
I型アレルギー反応の一つ。外来抗原に対する過剰な免疫応答が原因で、好塩基球表面のIgGがアレルゲンと結合して血小板凝固因子が全身に放出され、毛細血管拡張を引き起こす為にショックに陥る。ハチ毒・食物・薬物等が原因となることが多い。アナフィラキシーの症状としては全身性の蕁麻疹と以下のABCD(喉頭浮腫、喘鳴、ショック、下痢腹痛)のうちどれかがある。なお、アナフィラキシーショックは二峰性の経過をとるものがしばしばみられるので、院内で経過観察(約8時間、重症例では24時間)をしなければならない。アナフィラキシーはIgEを介して肥満細胞が脱顆粒しておこるが、IgEを介さず肥満細胞が脱顆粒を起こすアナフィラキトイド(類アナフィラキシー反応)と呼ばれる反応もある。類アナフィラキシー反応として造影剤アレルギーなどが有名である。その他、ラテックスアレルギー口腔アレルギー症候群食物依存性運動誘発性アナフィラキシーなど、特異的なアレルギーがあり、アナフィラキシーショックを起こす場合がある。
その他の疾患
肺塞栓症やアジソン病糖尿病アシドーシス等でも虚血症状により、ショックを引き起こす。

[編集] 検査

血圧
収縮期血圧80~60mmHg以下(ただし頭蓋内出血の場合は正常範囲)
中心静脈圧
5cmH2O以下では循環血液量の減少を見る。また、12~15cmH2Oでは右心不全を疑う。
心電図
心原性を疑う場合に用いる。(不整脈、心筋梗塞等)
白血球
感染症性の場合に増加する。
血小板
ショックに伴うDICで減少する。
動脈pH
ショックによる代謝性アシドーシス確認のため。
尿量
乏尿(30ml/h以下)の場合、ショックの指標の一つとなる。

[編集] ショックの分類

ショックは一般的にハリソンの原因分類(1. 低容量・血液量減少性 2. 心原性 3. 細菌性・敗血症性 4. 血管運動・閉塞性)によって分類されるが、症候学的には、末梢の血流が増える(暖かくなる)ウォームショックと、末梢が虚血になる(冷たくなる)コールドショックに分類される。コールドショックは、毛細血管が拡張するために循環血流量が相対的に不足していることを意味する。ウォームショックも、心臓を空うちさせて疲労させるため無治療では最終的に心機能が低下し、コールドショックへ移行することになる。

[編集] コールドショック

  • 出血性ショック
  • 熱傷性ショック
  • 心原性ショック

[編集] ウォームショック

  • 神経原性ショック
    脊髄損傷のために交感神経が遮断されることによって起こる毛細血管の拡張。このほか、精神的な動揺から自律神経のバランスが狂い血圧の低下した状態も含まれる。これは、興奮して気絶するなどの現象としてみられる。
  • アナフィラキシーショック
  • エンドトキシンショック

[編集] ショックの診断

クリニカルアプローチとしては意識、呼吸、脈拍、血圧、体温、尿量という順に調べていくべきである。病歴とバイタルサインで大抵の場合はショックを想定することができる。ショックと診断した後はショックの原因を考えていく。まず、皮膚が温かいかを調べ、ウォームショックとコールドショックを分類する。ウォームショックであれば、アナフィラキシーショック、神経原性ショック、敗血症性ショックである。コールドショックである場合は、出血があるかどうか調べる。大量出血があれば出血性ショックを疑う。出血が認められなかったら頸静脈の怒張をみる。頸静脈の怒張がみられれば心原性ショック、なければ脱水によるショックである。

[編集] ショックの治療

循環血液量減少性ショック
失血、脱水が原因なので輸液、輸血を行いバイタルサインが安定化するようにつとめる。
心原性ショック
心収縮力低下が原因なのでカテコラミン投与、利尿薬投与、ジギタリス投与、IABP、PCPSを考慮する。安定化したら原因除去につとめる。例えば心筋梗塞による心原性ショックであればPTCAを考慮する。
敗血症性ショック
感染が原因であるので、感染のコントロールや輸液が治療となる。循環虚脱がおこるとコールドショックに変化する。その場合はカテコラミン(ノルアドレナリン)の投与を考慮する。
神経原性ショック
迷走神経の緊張亢進が原因である。これにより循環虚脱までおこるとコールドショックとなる。治療は輸液、アトロピン投与、カテコラミン投与である。
アナフィラキシーショック
喘息重積発作と治療は似ている。エピネフリンの筋肉注射(商品名:エピペン)が有効。エピネフリン(ボスミン0.3mg)筋注(皮下注では血管が収縮するので作用が遅くなる)はβ2作用で肥満細胞の脱顆粒を抑制する働きがある。エピネフリンは10分ほどで効果が出るはずなので、反応がなければ2~3回繰り返すことが必要な場合もある。また、高血圧でβブロッカー(まれにαブロッカーやACE阻害薬でも)を服用している患者ではエピネフリンが効かないことがあるので、この場合はグルカゴン1~5mgが効果があり使用される(交感神経を介さず、cAMPを増やすことで効果が出る)。ステロイドや抗ヒスタミン薬は4時間くらい効果がでるのにかかるので救急では使えないので注意が必要であるが、遷延性や二峰性の後半の反応を予防するためにステロイドを用いることはある。また、鯖を食べた場合にアナフィラキシーのような症状を示す場合もあるが、鯖の場合はヒスタミンを含んでおり肥満細胞を介するものではないので、抗ヒスタミン薬やステロイドで充分である。
上記補足
ただし造影影ショック(CT、アンギオ等)におけるアナフィラキシーショックにおいてはエピネフリンは禁忌とされているため、グルカゴンによる治療のみとなる。また、エピネフリンは有事においては技師などでも筋肉注射を許されているようだが、グルカゴンは医師判断のもと看護師ないし医師のみが投与可能となる。いずれにしてもDrコールの必要性はある。

[編集] 関連項目


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