熱傷
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熱傷のデータ | |
ICD-10 | T20-T32 |
統計 | 出典:xxx |
世界の患者数 | xxx,xxx人 (20xx年xx月xx日) |
日本の患者数 | xxx,xxx人 (20xx年xx月xx日) |
熱傷学会 | |
日本 | 日本熱傷学会 |
世界 | International Society for Burn Injuries |
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熱傷(ねっしょう)とは、お湯や油などの熱・化学薬品・放射線などが原因で生じる体表組織(主に皮膚)の局所的損傷。通称は火傷(やけど)。
目次 |
[編集] 分類
原因により次のように分類される。
[編集] (通常の)熱傷
熱湯、火焔、蒸気などの熱による損傷。人間の皮膚は45℃以上の温度で熱傷になる。45℃の場合1時間、70℃の場合1秒で組織の破壊が始まる。
[編集] 化学熱傷(chemical burn)
強酸、強アルカリなどの化学薬品による損傷。数時間にわたって徐々に組織が壊疽(gangrene)するのが特徴。
[編集] 電気熱傷(electric burn)
電流による損傷。電流への抵抗によって生じる5000℃ほどの熱で組織が破壊される。電撃傷ともいう。
重症度は電圧、電流、伝導体への接触時間に左右される。交流電源は直流電源より危険度が高い。筋損傷、血管損傷、心停止(心室細動)のおそれがあり、また絶縁後も進行性壊死が見られる。主に深部組織が損傷するため、体表からの観察で重症度を判定するのは困難である。 神経障害が見られた場合は減張切開の適応あり。
[編集] 放射線熱傷(radiation burn)
放射線による損傷。高線量の放射線により皮膚を構成する細胞や血管が傷害され、熱傷に類似した症状を呈する。
日焼けも厳密に言えば熱傷である。太陽光線に含まれる紫外線(UVA、UVB)に被曝すると、皮膚組織の破壊が起こる。日焼けといえども、照射時間・範囲のいかんによっては重態になりかねない。
[編集] 低温熱傷
低温熱源による熱傷。長時間の低温熱源の直接接触により受傷する。
接触部の温度が44℃だと約6~10時間で受傷する。
また44~51℃までのあいだは接触する温度が高くなるにつれて受傷する時間が短縮される場合もある。低温熱源とは湯たんぽ、カイロ、ストーブ、ホットカーペットなどおもに暖房器具。受傷者側の要因としては、熟睡していたり体が不自由であったり、知覚麻痺、泥酔、一酸化炭素中毒、糖尿病による循環不良、などの状態にあると受傷しやすい。
また、ホットカーペットに幼児を寝かせ毛布をかぶせると熱中症にかかりやすいなど、暖房器具によるけがは多い。
(近年ではノートパソコンの使用に伴い、ひざに乗せることで本体底面部からの放熱でひざが、またキーボードやパームレスト部からの放熱で手のひらが、低温熱傷にかかる報告がある[要出典])。
[編集] 重症になりやすい低温熱傷
低温熱傷は極端に熱源の接触時間が長いため、発赤や水疱形成だけに見えても深部に深い損傷を負っていることが多い。睡眠時は痛みに気づかないため深達性II度(DDB)まで傷を負い、さらに進行性に深くなりIII度(DB)まで達することもまれにはある。深くなる理由としては、皮膚の血流量より脂肪層の血流量が少なく、皮膚の血流で受傷した創が冷やされて軽症に見えても脂肪層では血流により冷却されないため傷は実際より深い。
[編集] 低温熱傷の予防
- 就寝時低温熱傷では湯たんぽによるものが圧倒的に多い。電子サーモスタットを有しない構造が致命的欠陥である。近年の湯たんぽブームにより状況は最悪である。
- 体の同一箇所を暖房器具に長時間触れさせないようにする。
- 暖房器具を使用する人の状態によっては周囲の人が配慮する。
[編集] 症状・診断
熱傷の重症度は、その深さと面積で決定される。
[編集] 熱傷深度
皮膚は表皮と真皮からなる。熱傷の深さは皮膚のどの層まで損傷が及んでいるかで表される。
深度 | 傷害組織 | 外見 | 症状 | 治癒期間 | 瘢痕 |
---|---|---|---|---|---|
I度 (epidermal burn) |
表皮・角質層まで | 発赤、充血 | 痛み、熱感 | 数日 | 残らない |
浅達性II度(SDB) (superficial dermal burn) |
表皮・有棘層、基底層まで | 水疱、発赤、腫れ、湿潤 | 強い痛み、灼熱感、知覚鈍麻 | 約10日間 | ほぼ残らない |
深達性II度(DDB) (deep dermal burn) |
真皮・乳頭層、乳頭下層まで | 浅達性II度とほぼ同じだが、やや白くなる。 | 浅達性II度とほぼ同じだが、知覚鈍麻が著しい | 約3週間 | 残りやすい |
III度 (deep burn) |
真皮全層、皮下組織 | 壊死、炭化、乾燥、白い | 無痛、知覚なし | 自然治癒なし | 残る |
[編集] 浅達性II度(SDB)と深達性II度(DDB)について
浅II、深IIの見極めが治療を進める上で大きな分岐点となる。見極めには迅速性が求められるが受傷後数日の経過で初めて判別するケースもある。通常、ピンセットなどで患部を圧迫し、ピンセットを離した時白くなった部位が元に戻ったら浅いII度、そのまま血流が滞り白かったら深いII度である。また一般論として深II度から植皮が検討されるが決断は難しく、医師の間で意見の対立もある。
[編集] 深達性II度(DDB)とIII度について
深II度との見極めは受傷後数日、数週間を置いて判別するケースもある。これはすべての深度判定にも言えることで、判定は大変難しく専門家でも迷うケースもある。
またIII度以上の深達性熱傷をIV度、V度と別に呼称する場合もある。それらの表面は炭化している。
日本での呼称は日本熱傷学会の定めるところに拠った。
[編集] 熱傷面積
熱傷面積を大まかに計測する方法として以下の法則がよく知られている。
- 9の法則:成人に適用
- 頭部・左上肢・右上肢をそれぞれ9%、体幹前面・後面・左下肢・右下肢をそれぞれ18%、陰部を1%で計算する。
- 5の法則:乳幼児に適用
- 乳児の場合、頭部・体幹前面・後面をそれぞれ20%、四肢をそれぞれ10%で計算する。
- 幼児の場合、頭部を15%、左上肢・右上肢をそれぞれ10%、体幹前面を20%、体幹後面・左下肢・右下肢をそれぞれ15%で計算する。
II度以上の熱傷面積が成人の場合20%、小児の場合10%を超えると重症化するため、速やかに医師の処置を受けねばならない。
細かな面積を計算するには手掌法(熱傷者の手掌の面積を全身の1%として計算する)が適用される。
[編集] 気道熱傷
火災などで高温の気体やススを吸い込んだ場合、上気道や気管に熱傷を負うことがある。熱傷を負った気道は徐々に浮腫を起こして狭窄し、呼吸ができなくなるため非常に危険である。気道の熱傷は外見からはわかりにくいので特に注意が必要である。気道熱傷のおそれがある場合は一見全身状態が良くてもあとから気道狭窄を起こす場合があるため挿管の必要がある。狭窄を起こしてからでは挿管は困難もしくは不可能となるためである。
気道熱傷の可能性を示す徴候として、口腔・鼻腔のススの付着が挙げられる。
[編集] 治療(熱による熱傷の場合)
[編集] 応急処置
患部を1秒でも早く、水で、冷やすことが推奨される。 手近にあるコップの水でもお茶でもまずかけること。その後も流水(水道水)で冷やし続けることが望まれるが、それができないときは濡れタオルで冷やしても良い。15分ほど冷やしたら速やかに医師の診察を受けること。自己判断の治療(ジャガイモやアロエなど)は以後の治療の妨げになるので避ける。
- 服は脱がせず、そのまま水をかけること。無理に脱がそうとすると皮膚が剥がれ、損傷が酷くなる。
- 水疱(水ぶくれ)は破らないこと。破ると感染を起こしやすくなる。
- 乳幼児や老人は低体温を起こしやすいため、冷やしすぎに注意。ひととおり冷やしたらすぐに病院へ搬送する。
- 気道熱傷のおそれがある場合は、息ができなくなってからでは手遅れになってしまうので、直ちに救急搬送を依頼する。
- 電撃傷などで心肺停止状態にある場合は心肺蘇生が最優先される。冷却は二の次。
[編集] 局所治療
消毒を施しながら、経過を診るのが一般的であるが、湿潤療法の有効性も主張されている。
[編集] I度熱傷
原則的に治療の必要なし。数日で赤みがとれて治癒する。痛みが強い場合は軟膏を塗ることもある。
[編集] II度熱傷(SDB)
患部を湿潤環境で保護し、上皮化(皮膚の再生)を待つ。具体的にはハイドロコロイドなどの被覆材を貼る。ただし汚染創(感染創)はそのまま密封せず、デブリードマンとドレナージを確実に行う。
[編集] II度熱傷(DDB)
基本的にSDBと同じであるが、広範囲にわたる場合は植皮を考慮する。
[編集] III度熱傷
まず十分にデブリードマンを行う(壊死組織を除去する)。広範囲であれば植皮の適応となるが、小範囲であれば湿潤環境で保護し周囲からの上皮化を待つ。なお、全身状態が不安定な場合は広範囲の創処置は行わないが、その場合も焼痂(焼けて固形化した皮膚組織)で締め付けられないよう減圧切開だけは加えておく。
また、III度以上の真っ黒に炭化した熱傷をIV度、V度と呼ぶ医師もいる。広範囲重症熱傷における植皮については、自分の別の部位の皮膚を使う自家皮膚移植が最も勧められるが、それでも熱傷部分をカバーしきれない部分はスキンバンクから取り寄せた凍結同種皮膚移植により創部の保護・感染予防を行なうこともある。
[編集] 全身管理
II度以上の熱傷面積が成人の場合20%、小児の場合10%を超えると全身状態が悪化するため、入院治療が必要である。
広範囲熱傷では体液が急速に喪失し、脱水による低容量性ショックが起こる。これに対し乳酸リンゲル液の大量輸液が行われる。輸液量はBaxterの公式で決定される。
- Baxter法
- 輸液量(ml/day)=熱傷面積(%)×体重(kg)×4
また、広範囲熱傷では全身性炎症反応症候群(SIRS)や創感染が起きやすく、遷延すると多臓器不全を引き起こすため、これらの制御を目標とした集中治療が行われる。
[編集] 重度熱傷の生理的反応及び変化
II度熱傷面積が小児で15%以上、成人で30%以上のことを言う.一般に輸液療法の絶対的適応である.
- 急性期(acute stage)もしくはショック期:受傷より48時間以内(72時間以内とする場合もある)。
- 亜急性期(sudacute stage):受傷より48時間以降、2週間以内。
- 多臓器不全(MOF)。
- 進行性壊死。
- 合併症(conpication) 等。
- 血液障害。
- 慢性期(chronic stage):受傷より2週間以降、症状おおむね固定、生命の予後への懸念軽減。
- 疼痛。
- 精神的苦痛。
- 瘢痕拘縮。
- 栄養障害(malnutrition) 等。
- 回復期:リハビリ(rehabilitation)期とも。
- 疼痛。
- 精神的苦痛(リハビリが辛い、またはリハビリがはかどらないもどかしさ)など。