凍傷
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凍傷(とうしょう、frostbite)とは、主に0°C以下の寒冷な環境等によって、皮膚等の末梢組織が凍結することによって生じる傷害。多くは、厳寒下、強風また高冷地で受傷。一般家庭でもドライアイスによる受傷が多い。
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[編集] 症状
末端組織である爪先、足、指、耳、鼻、頬などに生じやすい。症状は視診や受傷経過からある程度は診断できるが、その深度や予後を推測することは熱傷と同様難しく、受傷直後から日数を要する場合がある。受傷後に深度が進行し、予後が悪くなる場合もある。
凍傷の症状の分類は以下のとおり。
- 1度(紅斑性凍傷)
- 表皮のみの障害。発赤、腫脹、加温後灼熱痛を認める。
- 2度(水疱性凍傷)
- 真皮までの障害。1度に加えて水疱形成を認める。
- 3度(壊死性凍傷)
- 皮下組織にまで障害が及んだ状態。皮膚の壊死、潰瘍が認められる。
- 4度(壊死性凍傷)
- 壊死が脂肪、筋肉、骨にまで及んだ状態。血清水疱、潰瘍形成、黒色状皮膚を認める。
[編集] 発生機序
凍傷が起きるパターンは2つあるとされている。
1 急速な冷却による、細胞内の水分の凍結 →液体窒素などの超低温の液体にかかったとき
ただしこれは、あまり一般的ではない。
寒冷に曝されると、交感神経は体温(深部体温)の低下を防ぐため血管を閉じる。 これは、寒冷に曝された部位の冷却された血液が心臓等に戻るのを防ぐためであろう。 血管が閉じられた先の部位は、血液がつまり酸素や栄養が供給されず、 そして細胞の代謝によって出る、老廃物を運搬することもできなくなり細胞は死(壊死)に至る。 また、閉じられた前の部位でも、循環がストップしているため、血液が過供給になり血管壁が変性を起こし、 血液が血管外に漏れ出してしまう。これによって水疱が形成される。
[編集] 凍傷の治療
[編集] 急速融解法
患部が凍結状態にある場合、最初にすべき治療は、40-42℃の湯内に入れて、急速に凍結を解除すること。徐々に温めるより急速に温めたほうが、組織中の氷の結晶が速やかに溶け、血管が拡張して回復を促し、凍結組織の損傷を最小限にくい止めることができる。融解中は、激しい疼痛を伴う。
[編集] 神経療法
神経をブロックすることで、血管拡張を促し、回復を促進する。「硬膜外ブロック」という方法と「交感神経節ブロック」という方法がある。前者は、疼痛の除去も可能であり、無痛下の急速融解が可能となる。
[編集] 血液粘稠度低下の改善療法
膠質輸液やヘパリンの静脈内持続投与により、血液粘稠度の低下を改善し、循環の状態を良好にする。 ただし、ヘパリンはその出血傾向から凍傷治療には禁忌であるとする凍傷治療経験豊富な医師の説がある。
[編集] 血管拡張療法
血管を拡張させる薬剤の使用により、血管の拡張を促す。
[編集] 局所療法
患部の挙上と安静により、浮腫の軽減をはかる。水疱は、感染の症状が無い限り、破らず維持する。軟膏等の創処置により、感染防止に努める。壊死部との境界が明瞭になった後は、壊死部の除去を行なう。必要に応じて、植皮や皮弁での再建を行なう。