クリケット
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クリケット (cricket) は、半径55メートルほどの広大なフィールド(クリケットではオーヴァル:oval と呼ばれる)で行われる野球に似た球技。野球の原型ではないかという説もある。全面芝のフィールドでプレイし、試合中にはティータイムもあるその優雅な雰囲気から、別名「紳士のスポーツ」といわれる。
イギリスで発祥したスポーツであるため、インド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、イングランド、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、ジンバブエ、西インド諸島といった英連邦諸国などで絶大な人気を誇る。およそ120の国と地域で競技されるスポーツ。
競技人口はサッカーに継ぐ世界第2位ともいわれるが、実際は定かではない。これはインドの人々の多くがクリケットを競技できるだろうという推定に基づく。
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[編集] 概要
野球と似たスポーツであり、投手が投げたボールを打者が打ち、打ったボールがフィールドを転がる間に打者が走る事で点を重ねるゲームである。
野球との相違も多く、代表的な点としては
- 投手は助走を付けられるが、肘は伸ばして投げなくてはいけない。
- 打者は投げられたボールがノーバウンドであろうと、ワンバウンドであろうと構わず打つ。
- 打者は全方位どこに向かって打っても良い
- 後ろに立つ3本の棒(ウィケット、三門柱と書かれている時がある)に投球が当たるとアウト。
- 3ストライクなどではなく、ウィケットに1球でも投球が当たればアウト。
- そのかわりアウトにならなければ、何球でも打者は打つ事が許される。
- 打者はペアを組んで打撃し、投球をいくら見送っても良く、打って走らなくてもいい(但し、得点するためには走る)。
などの違いがある。
また、道具にも違いがあり、バットは棒形ではなく平たいオール型をし、グローブは捕手のみが着用を許され、両手に付けることができる。写真を参照の事。
[編集] ルール
以下ではクリケット・ワールドカップも準拠する50 オーバー制(300球限定)1イニングマッチ、通称ワン・デー・マッチ (one-day match) の概要を説明する。
ゲームは、各11人で構成される2チームがコイントスで先攻と後攻を決め、攻撃側と守備側に交互に分かれて対戦する。プレイフィールドの中央にピッチと呼ばれる縦長の場所があり、20.12メートル離れたその両端に高さ71センチメートルの3本の杭(スタンプ)とそれを上部で繋ぐ梁(ベイル)で構成されるウィケットと呼ばれる柱状のものが刺さっている。
守備側はボールを投げるボウラー(投手)、それを受けるウィケットキーパー(捕手)、その他の9人はフィールダー(野手)としてプレイフィールド各所に配置する。
攻撃側は1番から11番まで打順を決め、1番打者と2番打者がバットを持ちプロテクターをつけて各ウィケットの手前で配置につき、3番打者以降はベンチで成り行きを見守る。片方の打者がアウトになったら、アウトになった打者と交代で順番に従ってフィールドに入り打撃を行う。フィールドに出ている打者 2 人をバッツマンといい、ボウラーと対峙する方のバッツマンをストライカー、ストライカーの反対側でランナーとなるバッツマンをノンストライカーという。
ボウラーは片側のウィケットの後方から助走をつけて、肘を伸ばし、もう片側のウィケット目掛けてワンバウンドさせるようにして投球する。それに対してバッツマンは、アウトにならないようにバットを用いてそれをブロックしたり、ラン(得点)するためにボールを遠くまで打つ。打つ方向は野球と異なり360度どの方向に打っても良い。
バッツマンがボウラーの投球を打った後、2人のバッツマン(ストライカーとノンストライカー)がそれぞれ相方側のウィケットの方向まで走り、双方がウィケットの前に引いてある安全線(ポッピングクリース)に到達すると1ランが入る。バッツマンが打球を遠くまで打ったときは1往復、1往復半、2往復などしても良く、それぞれ2ラン、3ラン、4ランなどと得点が入る。また、プレイフィールドの境界(バウンダリー)を超えてボールが飛んでいった場合は、走らなくても規定の得点が入る。ゴロでバウンダリーを越えた場合は4ラン、飛球であれば6ランである。バッツマンは、走ってもアウトになりそうだと判断した場合は走らなくて良く、またアウトにならない限り投球を見送ってもよい。
バッツマンがアウトになるのは、
- ボウルド (Bowled):ボウラーの投球によりウィケットが直接倒される(野球でいう三振)
- コウト (Caught):バッツマンの打ったボールがノーバウンドで捕球される(野球でいうフライやライナーによるアウト)
- ランアウト (Run Out):バッツマンが走っている間にボールがウィケットに戻ってきて、ウィケットが倒される(野球でいう内野ゴロによるアウト)
- LBW (Leg before wicket):バッツマンが足で、投球がウィケットに当たるのを防いだとされる場合にアウトにされる(細かい条件がある)
などの場合である。アウトになったバッツマンは次の打順のバッツマンと交替する。野球の場合、1試合に4打席ほど回ってくることが多いが、クリケットの場合、アウトにならない限りいつまで打っていてもよく、逆にアウトになったらその試合ではもう打つことはできない。
ボウラーが6球投球することを1オーバーといい、オーバーになるとボウラーは交替し(2オーバー連続して投げることはできない)、反対側のウィケットから次のボウラーが投球する。 1人のボウラーは総オーバーの5分の1(10オーバー60球)までしか投球できないため、1チームにボウラーは最低5人は必要である。
攻撃側が10人アウトになるか、50オーバー(300球)経過した場合にイニング終了となり、攻守交替する。 先攻後攻それぞれ1イニングずつ攻撃し、ランの多い方が勝利チームとなる。 両者の力関係にもよるが、クリケット・ワールドカップルールでは1イニング200〜300ラン程度入り、試合時間はティータイム、ランチタイムを含めると6時間以上かかる長丁場である。
なお、ここまではクリケット・ワールドカップルールの概要を説明したが、それ以外にもクリケットの国際大会には下記のようなさまざまな試合形式がある。近年、メディアの影響と人々のライフスタイルの変化により、所要時間の短い試合形式が徐々に支持を得てきており、短い時間でも十分楽しむことができるスポーツとなった。
- テストマッチ:伝統的な国別対抗戦の試合形式。球数無制限の2イニング制を採用、1試合のリミットは無い。
- トゥエンティトゥエンティ (Twenty20):最近登場した短時間で終わる試合形式。20オーバー(120球)限定1イニング制を採用、1試合2時間半程度で終了する。
国際試合とアマチュアの試合では、伝統的な白のユニフォーム(白い襟付きのシャツ、白いズボン、帽子、気温の低いときはベストまたはセーターを着用することもある)に赤のボールを使用し競技を行うが、プロフェッショナルチームのワン・デー・マッチでは、着色されたユニフォームに白のボールを使用する。近年では、国際試合でも、着色されたユニフォームを着用することもある。白いユニフォーム着用は、スポーツ競技として潔白を表す白色とともに、夏季に開催されるクリケットの試合で、日差しを避ける意味がある。
[編集] バッティング
野球では、コースに対応したスイングをするが、クリケットの場合も同様に違うボールには違うスイングをする。
- ドライブ
- フロントフットドライブ(投球の来た方向に打球が飛ぶ)
- バックフットドライブ(投球の来た方向、または体の前に打球が飛ぶ)
- プルショット(引っぱり、体の向きの真後ろに飛ばす。)
- レッググランス(足下への投球を後ろにそらす)
- カットショット(体の真正面、野球で言えばスタンドやベンチの方向に打球を飛ばす)
- レイトカット(打撃点を遅らせる事で後ろ45度の方向に打球を飛ばす)
- スウィープショット(足下への遅い球を、ほうきで払うように横に飛ばす。)
などといった打ち方がある。
また、必ずしも投球を打たなくても良く、ブロックし、投球がウィケットに当たるのを阻止したり、アウトにならないために無理に打たずに見送ったりということがある。
[編集] ラン(得点)
[編集] ボウリング
野球の変化球と同様に、空気抵抗を利用した変化球のほか、ワンバウンドでの投球もあるので、バウンド後の変化を利用する投球もある。
- スイング(速い投球が鋭く変化する)
- インスイング(打者の手元に食い込む、野球のツーシームに近い)
- アウトスイング(打者の体から遠ざかる、野球のツーシームに近い)
- カット(速めの投球で、バウンドが少し変化する)
- オフカット(投手の手が内側に向く、野球のスライダーと同じ投げ方、但しバウンド後は逆に変化)
- レッグカット(投手の手が外側を向く、野球のシュートと同じ投げ方、但しバウンド後は逆に変化)
- スピン(遅い投球で、跳ね上がりが大きく変化する)
- オフスピン(投手の手が内側に向く、野球のカーブと同じ投げ方で指で回転をかける)
- レッグスピン(投手の手の内側を打者に向けて、ドアノブをひねるように投げる)
- トップスピン(投手の手の甲を自分に向けて、ドアノブをひねるように投げる)
- グッグリー(特殊な変化球その1)
- フリッパー(特殊な変化球その2)
また、投球スタイルにより、
- ペースボーラー(本格派・速球投手)
- スピナー(技巧派・変化球投手)
などの業種分けがなされる。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 公式
- ICC - 国際クリケット評議会 (英語)
- JCA - 日本クリケット協会 (日本語)
- その他
Cricinfo - 世界最大のクリケット情報サイト
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