クライストチャーチ
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クライストチャーチ(英語:Christchurch、マオリ語:Otautahi)は、ニュージーランド南島中部、東海岸側のカンタベリー平野にある都市である。人口は、348,435人(2006年)。ニュージーランド内で2番目、南島では最大の人口を有する。
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[編集] 概要
クライストチャーチという名前はイギリス・オックスフォード大学のクライストチャーチ・カレッジに由来する。市名が示すとおり、市の中心部には19世紀に建てられたネオゴシック建築のキリスト教聖公会(イングランド国教会)の聖堂「クライストチャーチ大聖堂」がある。緑溢れる広大な街並みは「イングランド以外で最もイングランドらしい町」、「ガーデンシティ(庭の街)」と称される。
[編集] 歴史
ニュージーランドに生息した巨大な鳥モアを追いかけ、1250年ごろ北島のイーストコーストから先住民族が移って来たとの見方が有力である。モアを追いかけ、その後定住生活を始めた民族の考古学的な証拠が1876年にクライストチャーチ市内の洞窟から発見されている。ニュージーランドの原住民族マオリ族の言い伝えによれば、モアを追いかけ、Waitahaという部族がこの地に移り住んだのが16世紀といわれる。その後いくつもの部族が入れ代わり、Ngati Mamoeという部族と、Ngai Tahuという部族が定住し、ヨーロッパ人の入植が始まる1830年代までこの地に入植していたといわれる。1839年に、ニュージーランドカンパニーがロンドンに設立され、ヨーロッパからニュージーランドへの移民流入の歴史が始まる。1840年代にオランダ、フランスなどヨーロッパの国々から開拓者が入植する。1840年にワイタンギ条約が締結され、事実上イギリス直轄の植民地となる。1850年よりイギリス人による入植が始まる。1856年7月31日に英国国王の勅許状によりクライストチャーチはニュージーランドで最も古い市として誕生する。初期入植者の多くが、英国オックスフォード大学・クライストチャーチカレッジの出身者であったことからクライストチャーチと命名される。イングランド人建築家のベンジャミン・マウントフォート設計によるネオ・ゴシック建築の建物が市内中心部に建造される。イングランド人による入植の歴史から、イングランドの面影を多く残す街として現在に引き継がれる。1853年より1876年までカンタベリー州の州都であった。
[編集] 気候
西岸海洋性気候の気候区にあり、夏の強烈な熱波や冬の強烈な寒波はうけない。一年を通して温暖な気候。夏の気温は17℃から30℃、冬の気温は2℃から12℃程度である。年間降水量は648mm。夏の湿度は低め、冬の湿度は高めである。海陸風の影響から、夏は朝夕の寒暖の差が激しい。冬は湿度が高く放射冷却の影響をうけ早朝の道路は凍結する。南アルプス山脈の東側に位置するため、カンタベリー平野に積雪が見られるが、市内での積雪はほとんどない。冬の暖房用の薪や石炭などから出されるスモッグ、地形的な逆転層の影響により、山間部や小高い丘では濃霧が発生することがある。
[編集] 経済
製造業を中心に不動産、卸売り業が盛ん。ヨーロッパ、アジア、北米地域からの観光客を中心に観光・旅行業も盛ん。カンタベリー平野を中心に酪農・畜産も行われている。南島の商業中心地であり、銀行・保険業など金融業も活発。
[編集] 南極への出入口
1900年初頭にイギリスの探検家ロバート・スコットやアイルランドの探検家アーネスト・シャクルトンがリトルトン港より南極探検へ向かう拠点としていた。ロバート・スコットの活動を称えクライストチャーチ・シティ・センターに、スコットの銅像が飾られている。リトルトン港は現在でも南極基地へ物資を運ぶ拠点港として任務を担当している。クライストチャーチ国際空港は、ニュージーランド空軍、アメリカ空軍の南極観測拠点として任務を担当している。同空港に隣接する国際南極センターは、南極調査資料の展示・体感施設を兼ね備えた観光施設としてのほか、ニュージーランド、アメリカ、イタリアの南極観測隊の活動拠点地として任務を担当している。
[編集] 観光
街の中心に建つクライストチャーチ大聖堂は街のシンボルとして有名。その周辺が最も賑やかな繁華街を形成しており、ビジネス、商業、観光の中心地として多くの観光客、市民で賑わいを見せる。詳しくはクライストチャーチ・シティ・センターを参照の事。
クライストチャーチ大聖堂を中心に観光用路面電車に乗ることもできる。クライストチャーチ・アートセンターは観光客に人気の観光名所。クライストチャーチ植物園へも徒歩で向かえる。隣接するカンタベリー博物館ではカンタベリー地区のマオリ文化の歴史的資料の展示、かつて実在した巨大な鳥・モアに関する展示のほか、カンタベリー地区開拓時代の歴史的資料などが展示されている。
大聖堂から西の位置にハグレイ公園がある。165ヘクタールの広大な敷地にゴルフコース、ラグビー競技場、サッカー練習場、クリケット競技場、テニスコートなどのスポーツ施設を有する。同公園内では週末になると多くのスポーツ競技が開催される。公園内を流れるエイボン川では、小さな船での遊覧、カヌーに乗ることもできる。
毎年2月に開かれる「ガーデンフェスティバル」では街中が花と緑に包まれる。また、このガーデンフェスティバルの一環で、クライストチャーチ・ガーデン・アウォーズという、一般家庭の庭造りの品評を競うコンテストがある。評価部門は、総合部門、ストリート部門、芝部門などたくさんの部門があり参加者、観光客で賑わいを見せる。
郊外へ車で2時間ほど足を伸ばせば、温泉施設で有名なハンマースプリングス、ホエールウォッチングのメッカであるカイコウラ、マウントハットスキー場などで思い思いのアクティビティを楽しむことができる。
クライストチャーチは北島への移動拠点であり、南島各地への中継地でもあるため観光客、旅行客の多い街である。日本からの直行便が就航しているため、日本人観光客も多く滞在している。市内中心部では日本語の通じる土産物店、飲食店、宿舎なども多く、それに伴なう観光業での従事者も多い。市内中心部にはカジノもあり、カジノでギャンブルや食事を楽しむこともできる。
[編集] 交通
市内の主な公共の交通機関は路線バスである。路線が市内をくまなく運行しており、ほぼ全ての路線が中心街にあるターミナルを発着点または経由地としている。現金での支払いの他、乗車専用の非接触型カードによる決済が普及している。市内中心部を巡回する無料シャトルバスも運行している。
市中心部から南西に4km程の場所に鉄道駅があるが、市民の足としてはあまり使われず貨物と観光客の利用が主である。旅客列車は南島西岸のグレイマウスに向かう「トランツアルパイン号」と、南島北端ピクトンへ向かう「トランツコースタル号」の2路線がそれぞれ1日1本運行するのみになっている。
街の北西約9km(車で約20分)の距離にはクライストチャーチ国際空港があり、南島のハブ空港となっている。日本からの航空路線は東京(成田)、大阪(関西)からニュージーランド航空(日本航空とのコードシェア便)の直行便が就航している。
上記航空会社以外にも、カンタス航空、シンガポール航空、大韓航空(季節便)などの経由便が就航している。
[編集] 姉妹都市
- アデレード(オーストラリア連邦)
- ドーセットChristchurch(イングランド)
- 甘粛省蘭州市(中華人民共和国)
- 湖北省武漢(中華人民共和国)
- 岡山県倉敷市(日本)
- ワシントン州シアトル(アメリカ合衆国)
- ソウル特別市松坡区(大韓民国)