アスファルト
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アスファルト(Asphalt)とは、原油に含まれる炭化水素類の中で最も重質のものである。減圧蒸留装置で作られた減圧残油はそのまま製品アスファルトとなり、ストレート・アスファルトと呼ばれる。
ストレート・アスファルトの性状を改善するため、溶剤抽出(溶剤脱瀝)や空気酸化(ブローン・アスファルト製造)などの処理を行うこともある。粘度の高い液体であり、常温ではほとんど流動しないものが多い。道路の舗装や防水剤などに使われる。
トリニダード・トバゴでは純度の高いアスファルトが天然で噴出し、湖を形成するという稀なケースが見受けられる。これは、地中の原油から揮発成分が蒸発し、アスファルト分のみが残ったものと考えられる。
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[編集] 歴史
アスファルトの歴史は古く、古代から天然のアスファルトが使用されていた。
天然アスファルトは主に接着剤として使われ、旧約聖書の『創世記』ではバベルの塔の建設にアスファルトが使われている。アスファルトという単語が英語に現れたのは原油の利用が一般的になり始めた18世紀に至ってからである。このため、英語においてもギリシア語のασφαλτοσ(asphaltos)からの外来語であった。a(しない)とsphalt(落とす)という意味がある。
日本では北海道から日本海側の秋田県や山形県、新潟県などで天然アスファルトが産出し、縄文時代後期後半から晩期にかけて、熱して石鏃や骨銛など漁具の接着、破損した土器や土偶の補修、漆器の下塗りなどに利用された。産出地のほか関東地方でもアスファルトの付着した遺物が出土し、黒曜石やヒスイなどとともに縄文時代の交易を示す史料になっている。明治期に佐藤伝蔵による東京大学人類学教室の資料調査において発見され、佐藤初太郎がアスファルトであると確認した。藤森峯三は秋田県昭和町において縄文時代のアスファルト産出地を確認し、現在では原産地を特定する技術が確立され広域に流通していたことが確認されている。
日本で初めてアスファルト舗装が施されたのは長崎県長崎市のグラバー園内の歩道である。その後東京で舗装し始めた。使用されたのは秋田県昭和町(現在の潟上市)からはるばる運ばれた天然アスファルトであった。
[編集] 用途
- 防水剤
- 鉄筋コンクリート構造の建物に多い陸屋根の防水工事に用いられる。繊維を原料とした不織布・布・紙などにアスファルトを浸透させてシート状にしたアスファルトフェルト、ゴムやプラスチックをアスファルトに添加した改質アスファルトなどがある。
- 乳剤
- 表層(及び基層)を施工する際、防水効果を得たり、合材との接着をよくするためにまかれる褐色の液体。水とアスファルトを界面活性剤を使って混合させたもので、水分が蒸発すると黒色になりアスファルト分だけが残る。表層と基層間に撒かれるものをタックコート、合材と路盤間に撒かれるものをプライムコートと呼ぶ。
- 道路舗装材
- アスファルトを結合材として、骨材(砂利や砂)やフィラーを混合したアスファルト・コンクリートを舗装に用いる。
- アスコン(アスファルト・コンクリートの略)、合材(アスファルト混合材料の略)などと呼ばれる。
- 工業用アスファルト
- 鋼管・鉄筋などの防錆材や自動車・電気製品の制振シートの原料、電池などの絶縁材料や接着剤、防湿剤、顔料などにも使われる。
[編集] 構造と成分
アスファルテンと呼ばれる高分子炭化水素が多環の炭化水素の油やレジンの中にコロイド状に分散している。 アスファルテンとは、ヘキサンなどの軽質の炭化水素に溶けない成分で縮合環の芳香族炭化水素が架橋結合して出来た高分子化合物である。 レジンと油分は軽質の炭化水素に溶ける成分であり、合わせてマルテンと呼ばれる。レジンは比較的融点が高い樹脂状物質である。
- 油分
- 飽和 - パラフィン、ナフテン (分子量:300-2,000)
- 芳香族 - 芳香族 (500-2,000)
- レジン - 縮合多環芳香族 (500-50,000)
- アスファルテン - 縮合多環芳香族の層状構造 (1,000-100,000)
[編集] 分類
[編集] 改質方法などの違いによる分類
- ストレート・アスファルト(straight asphalt)
減圧蒸留装置からの分留された減圧残油をそのまま使用したもの。アスファルトのほとんどを占める(1995年で96%)。 針入度0-300の範囲で10段階に分類されている。主に道路舗装用に使用される。
- ブローン・アスファルト(blown asphalt)
ストレート・アスファルトに高温の空気を吹き込み軟化点を高くしたもの。耐候性と耐水性が高い。建築材料に使用される。
- 舗装用改質アスファルト
舗装道路の破損を防ぐ為にストレート・アスファルトを改質して特性を高めたもの。 舗装道路の破損とは、流動、わだち、ひび割れを指す。 添加物を加えるものとブローイングを行なうものがある。
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- 添加物を加えるもの
- ゴム (スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム) 改質アスファルトI型とII型の主流
- 熱可塑性エラストマー (スチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン・エチレン・ブテン共重合体) 改質アスファルトのほとんどに使用
- 熱可塑性樹脂 (エチレン、酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン) 耐流動用材料
- ブローイングを行なうもの
- セミブローン・アスファルトと呼ばれ、加熱したストレート・アスファルトにブローン・アスファルトよりは軽度に高温の空気を吹き込み、軟化点を高くしたもの。
[編集] 道路舗装の施工法による分類
道路舗装の施工法の違いによってアスファルトと骨材の混合方法が変わり、以下に分類される。
- 加熱アスファルト混合物
最も一般に使用されているアスファルト混合物で、「アスファルト・プラント」と呼ばれる加熱装置内でアスファルトと骨材を加熱・混合して熱いうちに作業を行い、冷えれば道路としての強度が得られるもの。
- アスファルト溶解温度:120-130℃
- 骨材加熱温度:13-140
- 混合時間:50-60
- 混合物の温度:120-130
- アスファルト乳剤
アスファルトと水を乳化剤によって乳化し流動状態で骨材と常温で混合する。道路の路面として作業後、時間とともにアスファルトが水と分離すると強度が得られる。 乳化剤は以下のものが使われる。
- カチオン系:牛脂やヤシ油の脂肪酸誘導体のアミンの塩酸または酢酸塩 pH2-5
- アニオン系:高級アルコール硫酸塩 pH12-13
- ノニオン系:アリキル基(ノニルフェニルなど)にエチレンオキサイドを付加したもの。中性付近となる
- カットバック・アスファルト
アスファルトと溶剤を混合して骨材と常温で混合する。道路作業後、溶剤が気化することで強度が得られる。大気汚染防止や危険防止のためにこれが使用されることは少ない[1]。
[編集] 語源
- イングランドの言語: Asphalt
- フランスの言語: Asphalte
- ラテンの言語: Asphalton, asphaltum
- ギリシアの言語: Asphalton, asphaltos (άσφαλτος)
[編集] 出典
- ^ 小西誠一著 『石油のおはなし』 日本規格協会 第1版第1刷 ISBN 4-542-90229-3
[編集] 関連項目
- 歴青
- 減圧蒸留装置
- 石油精製
- 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)
[編集] 外部リンク
- 「Asphalt」 - Encyclopedia of Earthにある「アスファルト」についての項目(英語)。