ひらがな・カタカナ地名
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ひらがな・カタカナ地名(ひらがな・カタカナちめい)とは、日本の地名のなかで漢字表記を用いないものを指す。一部に漢字を用いる場合もこれに含まれるが、長野県下高井郡山ノ内町の「ノ」のように助詞を漢字で表記せずに用いるものは含まない場合が多い。
ひらがなの市町村名の大半は、本来は漢字表記が存在するが、難読であるとか、イメージアップと称して意図的にひらがな表記にしたものであるが、これには賛否両論がある(後述)。
市町村合併、特に新設合併によって誕生する事例が多く、「柔らかなイメージを持たせるため」という理由で付けられることが多い。一方で都道府県名・郡名・区名にはひらがな・カタカナのものは今のところ1つもなく、新たに生まれる予定もない(2006年10月現在)。
町丁名などには漢字表記が当てられていない和語・外来語・アイヌ語に由来するものや、施設名をそのまま地名にしたものもある。
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[編集] ひらがな・カタカナ地名に関する議論
地名研究家など、いろいろな方面から以下のような批判も根強くある。
- 実際には合併の時の市町村同士の摩擦を避けるためでの名称なのではないか。
- 他の市町村名との差別化を図って自己の市町村を目立たせるためではないか。
- ひらがな・カタカナを地名に使うのは格好が悪い。
- 伝統的・土着的名称を抹殺する愚行である。
これに対しては、次のような反論がある。
- 摩擦を避け、調和を図ることは必ずしも悪いこととはいえず、無理に伝統地名を採用してギクシャクするよりもよい。
- 差別化やイメージアップも必ずしも悪いこととはいえない。民間企業ならばそれらは当たり前である。
- ひらがな・カタカナ地名が増えればそのような違和感も薄れるのではないか。
- 伝統を絶対視するのではなく、伝統と新しい考え方との調和を図るほうがよい。
ただし、アイヌ語地名に関しては漢字表記が当てられたのが近世であるため、このような批判は少ない。
[編集] ひらがな・カタカナ市町村名一覧
市町村名にひらがなやカタカナを含む市町村を一覧にしたもの。 (括弧内に本来の漢字・アルファベット表記を示す)
[編集] ひらがなを含むもの
- 北海道
- 青森県
- 秋田県
- にかほ市(仁賀保)
- 福島県
- いわき市(旧国名は磐城、旧郡名は石城、城主名は岩城)
- 茨城県
- つくば市(筑波)
- ひたちなか市(漢字を当てれば「常陸那珂」)
- かすみがうら市(霞ヶ浦)
- つくばみらい市(筑波郡と水海道市(みつかいどう)の「み」・谷和原村(やわら)の「ら」・伊奈町(いな)の「い」に由来している。市域が「みらい」もしくは「未来」と称されたことは歴史上なく、駅名の由来も「未来」という語の先進性にあやかったものと考えられる )(水海道は途中で合併から抜けた)
- 栃木県
- 群馬県
- 埼玉県
- 千葉県
- いすみ市(夷隅)
- 東京都
- あきる野市(秋留野、阿伎留野 ※本来は万葉仮名)
- 石川県
- 福井県
- 三重県
- いなべ市(員弁)
- 兵庫県
- 和歌山県
- 香川県
- 徳島県
- 高知県
- 福岡県
- 佐賀県
- 熊本県
- 宮崎県
- えびの市(蝦野)
- 鹿児島県
- 沖縄県
[編集] カタカナを含むもの
- 北海道
- 山梨県
[編集] かつて存在したもの
以下は市町村合併によって廃止した市町村名。合併後も市内の地名として存続している所がある。括弧内に本来の漢字表記を示す。
- 長野県諏訪郡ちの町(現・茅野市、茅野)
- 滋賀県高島郡マキノ町(現・高島市、牧野)
- 滋賀県東浅井郡びわ町(現・長浜市、琵琶)
- 山口県阿武郡むつみ村(現・萩市、睦み 動詞の「睦みあう」が由来)
- 沖縄県コザ市(現・沖縄市、漢字表記は存在せず。もともとの呼称は「胡屋(こや)」であったが、筆記体でのスペル「Koya」の「y」を米軍側が「z」と見間違えて「コザ」 (Koza)と呼んでしまい、それが市名になったという説が有力である。本土復帰後の1974年に美里村と合併し沖縄市に)
[編集] 実際に使用されることがなかったもの
市町村合併などによる新市町村名に決定したが、合併の破談や名称の再検討により、日の目を見なかった名称(候補に上っただけのものは除く)。
- 北海道東さっぽろ市(空知郡南幌町と夕張郡由仁町・栗山町が合併後に使用する予定だった市名。住民の反対で破談)
- 北海道サロマ町(常呂郡佐呂間町と紋別郡上湧別町・湧別町が合併後に使用する予定だった町名。住民の反対で破談)
- 北海道ひだか市(新冠郡新冠町・静内郡静内町・三石郡三石町が合併後に使用する予定だった市名。協議決裂で破談 →静内町・三石町は新ひだか町に)
- 宮城県あぶくま市(角田市と伊具郡丸森町が合併後に使用する予定だった市名。住民の反対で破談)
- 山形県はながさ市(尾花沢市と北村山郡大石田町が合併後に使用する予定だった市名。住民の反対で破談)
- 栃木県みかも市(下都賀郡大平町・藤岡町・岩舟町が合併後に使用する予定だった市名。協議決裂で破談)
- 埼玉県こだま市(本庄市と児玉郡美里町・児玉町・神川町・神泉村・上里町が合併後に使用する予定だった市名。住民の反対で破談 →神川町・神泉村は神川町に、本庄市・児玉町は本庄市に)
- 長野県中央アルプス市(駒ヶ根市と上伊那郡飯島町・中川村が合併後に使用する予定だった市名。住民の反対で破談 →参照)
- 岐阜県ひらなみ市(海津郡海津町・平田町・南濃町が合併後に使用する予定だった市名。住民アンケートの結果を受け海津市に変更)
- 愛知県南セントレア市(知多郡美浜町と南知多町が合併後に使用する予定だった市名。常滑市にある中部国際空港にあやかったもの。住民の反対で破談 →参照)
- 岡山県あかいわ市(旧赤磐郡山陽町・赤坂町・熊山町・吉井町・瀬戸町が合併後に使用する予定だった地名。瀬戸町が協議から離脱、その後瀬戸町を除く4町は赤磐市に、瀬戸町は岡山市に編入)
- 愛媛県北宇和郡きほく町(広見町・松野町・日吉村が合併後に使用する予定だった町名。協議決裂で破談 →広見町・日吉村は鬼北町に)
- 福岡県ゆたか市(直方市と鞍手郡小竹町・鞍手町が合併後に使用する予定だった市名。協議決裂で破談)
- 長崎県東そのぎ市(東彼杵郡東彼杵町・川棚町・波佐見町が合併後に使用する予定だった市名。協議決裂で破談)
- 長崎県北松浦郡さざなみ町(小佐々町・佐々町が合併後に使用する予定だった町名。協議決裂で破談 →小佐々町は佐世保市に編入)
- 鹿児島県れいめい市(串木野市と日置郡市来町が合併後に使用する予定だった市名。再検討によりいちき串木野市に変更)
- 鹿児島県ちらん枕崎市(枕崎市と川辺郡知覧町が合併後に使用する予定だった市名。協議決裂で破談、知覧町は頴娃町・川辺町と合併し南九州市に)
- 鹿児島県大島郡とくのしま町(徳之島町・天城町・伊仙町が合併後に使用する予定だった町名。徳之島町が住民の反対で協議から離脱、天城町・伊仙町は2町合併による新町名を改めて公募し、「天城伊仙町」に決定)