地名
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地名(ちめい、Toponym)とは、国土、地方、都市、町村、地形などを表す名称であり、言語学上、固有名詞として扱われる。
その成り立ちは、自然の地形、自然現象、記念すべき出来事、その土地ゆかりの人名、産物、旧国名など様々な事象から命名される。
近年、住居表示の改定や、市町村合併によって、由緒ある旧地名が消えてゆくなどの問題も指摘されている。国によっては、道路や地区の地名命名権を売却して自治体の収入に充てる例もあり、多くの場合、企業が自社の名前や商標を付けている。
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[編集] 地名の成り立ち
[編集] 日本の場合
日本の地名の半分ほどは、「山」「川」「田」「海」「森」などのもともとあった自然や、特定の自然物(「犬」「魚」「稲」「木」など)から採られた字を含む。それらの地名は比較的古くに名付けられたものによく見られる。それらに対して、比較的新しい地名は、人工物(「家」「町」「村」「屋」など)や無形物(文化や言い伝えなど)を由来とするものが多い。また、古くからある地名は万葉仮名などが最初に当てられた文字になっているものもままあり、後に難読地名となっているものが多く、由来を探るのが大変難しい。
日本の地名に多い字
日本の地名に多い字について、国土地理院の空間データ基盤25000(25,000分の1地形図)の地名に関して調べると次のような結果となる。
町,川,目,丁,田,山,大,野,中,沢,上,原,谷,下,西,東,三,一,小,二, ノ,場,新,島,木,南,本,北,内,寺,高,平,井,神,屋,崎,の,松,地,宮, 石,水,四,戸,台,ヶ,日,瀬,長,ー,八,五,尾,久,津,前,岩,池,村,和, ン,口,岡,浜,坂,古,倉,城,見,浦,吉,園,丘,郷,市,子,森,根,保,ル, 生,条,滝,江,畑,白,ム,里,金,河,塚,六,十,福,泉,黒,部,天,フ,之 (上位100の多い順)
また、「福」や「徳」は音読みして使うことが多い。
[編集] 日本以外の場合
[編集] 中国の場合
日本と異なり、戦乱などによって集団移動することが多かった中国においては、元の出身地を姓にする人が多く、一族が集まって住むようになると、姓+「家荘」、姓+「鎮」、姓+「村」などと、一族の姓が地名に残されている例が多い。
また、特殊な地名用字を作ることが盛んに行われたのも中国の特徴である。小国や地方の名前には、音を表す字に「邑」(おおざと)を附記し、山の名前には音を表す字「山」を附記し、河川や湖沼の名前には音にさんずいを附記した特殊な字が多くある。
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- 例: 「邾」、「郫」、「鄞」、「嶗」、「岷」、「灕」、「滇」、「灞」
[編集] その他
- 大韓民国の場合、三国時代に漢字の音を借りて地名を表していた(吏読文字と呼ぶ)が、統一新羅の757年に景徳王が中国風の漢字2文字の地名に変更、高麗の太祖と李氏朝鮮の太宗の時代にも地名の変更が行われている。
日本統治時代の1914年に大規模な自治体の統廃合があり、1995年にも自治体合併(ほとんどが郡名を使った広域地名)があったため、使われなくなった郡名もある。
[編集] 地名の研究
例えば、あるとき柿の木が生えている坂があったとする。これをその近くに住んでいる人が「柿の木坂」と名付けた。500年後、柿の木がとっくに枯れていたとしても、この「柿の木坂」という地名が残っていれば、それが「柿の木の生えている坂」を示しており、過去にこの坂に柿の木が生えていたことが推測できる。また、例えば「十九条」などという地名があれば、その街に条里制が布かれていたであろうことが想像できるし、「鍛冶屋町」なら過去にどういった人が住んでいたかすらわかる。
よほど有名な土地や何か特別な事情のある土地でないと、百年前、あるいは千年前にどういう状態であったのかをきちんと記録してあることは少ないが、このように地名は時としてタイムカプセルのように今に過去の状態を伝えてくれるのである。
[編集] ヨーロッパの地名
度重なる国境線の変更を経験したヨーロッパでは、市町村に複数の言語(中には4つ以上の言語)による地名を持つ地域も少なくない。