地名学
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地名学(ちめいがく、toponymy)とは、特定の地域の地名の成り立ちや各地の命名法則などについて研究する学問。地名研究ともいう。地理学の一部門としての要素が強いが、歴史学や、民俗学、言語学などからのアプローチも欠かせない。日本などでは、学問分野としての確立はまだ見られないが、世界的にはイギリス、フランスなどのように、一学問分野として見られている国もヨーロッパを中心に少なくない。
一般的には古文書・古記録などを精読し、その地名の記録上の初見や綴りの変遷を研究して現在地との比定をする方法が考えられるが、文献解読では解明されきれない部分も多いのも特徴である。また地図の読解や語彙から地名の意味を探ったり、口承などからも検討される事がある。地名はその土地の風俗をも表す事もあり、地名の由来には時として多くの民俗的な要素が詰まっている事もある。
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[編集] 日本の地名学
日本で本格的に地名を扱った最初の文献は和銅6年(713年)に編纂の詔が下った『風土記』である。出雲国風土記のみ全文、常陸・播磨・肥前・豊後のものが断片的、他の多くも逸文であるが参考にはなる。ただしそれでも日本各地にある膨大な数の地名の一部しか扱えず、文献では限りがある。 日本の地名学、地名研究は、いわゆる在野の人々によって支えられてきたため、非科学的という指摘などもあって、一部の学者は地名学に「学」としての位置を認めていない。日本の大学で現在「地名学」の講座を持つところはない(と思われる)。
確かに日本の地名研究とよばれるものには、文字にとらわれた俗語源や民間語源に拘泥したものや、狭い地域での知識しか持たず、地名語彙や言葉としての地名に対する認識が不足しているケースも少なくない。地方史、旅行案内書、テレビ、雑誌などにおける地名解説には、このような俗語源を事実のように解説するものが依然として多く、歴史学者などの中にも俗語源から脱することができない人が多い。そのため「地名学」と「地名解説」(=民間地名学)との乖離を生じている。櫻井澄夫などはこのような俗語源、民間語源中心の地名研究を「バスガイド地名学」呼んで批判している。
[編集] 関連書籍
- 鏡味完二『日本地名学』科学編、地図編(日本地名学研究所)
- 鏡味完二『地名学』(日本地名学研究所)
- ナフタリ・カドモン『地名学 地名の知識、法律、言語』(日本地図センター、2004年)