RED (村枝賢一)
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『RED』(レッド)は村枝賢一による漫画作品。アメリカ西部開拓時代を舞台にした復讐劇。
掲載誌は「ヤングマガジンアッパーズ」および「週刊ヤングマガジン」の2誌(どちらも講談社)。人気の高い作品であったため、「アッパーズ」が休刊となったあと「ヤングマガジン」に連載が引き継がれた。
連載期間は「アッパーズ」で1998年第15号~2004年第21号。「ヤングマガジン」で2005年第10号~第48号。ただし、「ヤングマガジン」では「アッパーズ」と同様の隔週連載であった。
連載回数は全151回。 刊行された単行本は全19巻(講談社)。
目次 |
[編集] 概要
19世紀末のアメリカ・西部開拓時代を舞台にした復讐劇であり、作者特有のガンアクションが特徴。ストーリーテリングにより多くの登場人物の交錯する運命が描かれる。また、アメリカの孕んでいる人種差別(特にネイティブ・アメリカンに対する差別)が物語の重要な軸となっており、作品内では一貫して「インディアン」の呼称が使われているのも特徴である。
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
[編集] あらすじ
西部開拓時代のアメリカ。スー・インディアンの一部族であるウィシャの少年ティヨーレは、目の前で家族同然であった部族の仲間達を騎兵隊員に皆殺しにされてしまう。虐殺から10年の月日が流れ、ティヨーレはレッドと名を変え、青年へと成長し穏やかな生活を取り戻していた。しかし彼はある出来事がきっかけで、虐殺の手を降した第七騎兵隊・ブルー小隊25名の名が連ねられた「リスト」を手に入れる。復讐心に駆られたレッドは穏やかな生活や心許せる友等を捨て、復讐者として独り、殺戮の旅に出るのだった。
[編集] 登場人物
キャラクター名は赤・黄・青といった色を元にしている物が多い。実在した人物も数多く登場する。
[編集] レッドとその仲間達
- レッド
- 物語の主人公。虐殺されたスー族の一部族、ウィシャの青年。並外れた長身の偉丈夫。赤い肌で、生まれつき髪の色が白いという身体的特徴を持つ。
- 生まれてすぐに父と母を失い、オセオラの一家の元で育つ。オセオラとは無二の親友同士であった。9歳のときウィシャは居留地へと連行される事となったが、その途上、ホワイトリバーにおいて騎兵隊が突如としてウィシャの虐殺を開始。結果、ウィシャは全員殺害され、親友オセオラもまたレッドの目の前で殺されてしまう。虐殺の中を一人生き延びたレッドは、近隣の部族であるマザスカの長シルバーリングに保護される。最初は頑なに心を閉ざしていたレッドであったが、友やシルバーリングの情愛に恵まれ、やがて心を開くようになる。その後およそ10年をマザスカの中で暮らす。平穏な暮らしを取り戻したレッドであったが、ブルー小隊の「リスト」をシルバーリングから渡された事をきっかけに復讐心を呼び起こされ、旅立ちを決意。マザスカの禁忌(タブー)を犯す事で自ら追放される道を選んだ。追放されて後は旅芸人として芸を見せて生計を立てていた。ショーに出演するために訪れた町で伊衛郎とアンジーに出会い、行動を共にするようになる。
- 本来であれば明るくとても優しい心根の持ち主であるが、復讐を心に決めて以降(特にヘイトソングを手に入れて以降)は一転、無口でぶっきらぼうになり、伊衛郎をはじめとした周囲を遠ざけるような冷たい態度を取るようになる。これは仲間を遠ざけることで自分の復讐に巻き込まないようにしようという思い故である。ブルー小隊員に対しては際限なく冷酷非情になれる一方、子供が争いに関わる事を良しとしない。
- 「レッド」とは後に付けられた名であり、本名は「ティヨーレ」という。ティヨーレとは、「安住を求めさまよう者」の意。
- モデルとなった人物はSMAPの香取慎吾。
- 巨大なリボルバーである S&W M03A7 "HATE SONG" (ヘイトソング)を使用する。ヘイトソングを扱えるのはレッドの頑強な肉体あってこそである。物語初期では銃が全く扱えなかったものの、ヘイトソングを手に入れてからは百発百中の腕前となっている。長大なナイフを使った白兵戦も得手としている。物語初期には弓矢や身の丈ほどもあるトマホークを使って戦っていた。また、物語後半からは、金属屑で誂えた手製のボディアーマーを装着して戦う。
- 伊東伊衛郎(いとう いえろう)
- 通称「イエロー」。熊本生まれの士族。狙撃の名手。風采は小身短躯。熊本の訛りで話す。男気のある、人間味に溢れた人物である。
- 熊本南部葦北の鉄砲衆・御郡筒(おごおりづつ)の家系である伊東家の長男として生を享け、幼少の頃より火縄銃に親しんで育つ。いわゆるお祖父ちゃん子であり、銃を自在に扱う祖父伊知右衛門を敬愛していた。祖父が不慮の事故で亡くなって以降は、祖父の持っていた狭間筒を受け継ぎ、肌身離さず持つようになる。長じて後はその人望により、有明一刀流城山道場の事実上の代表者となる。地元では「狭間筒の伊東」として村崎十字郎と共に有名であった。西南戦争勃発後、熊本城が炎上した知らせを機に、道場の仲間58名と共に決起。薩軍に熊本隊として参加する。政府軍を相手に奮戦するも、最後は田原坂において包囲され、仲間は全員自決してしまう。伊衛郎も後を追おうとしたものの、友人である村崎に止められ、アメリカ逃亡をそそのかされた挙句、戦場から逃げ出す事となる。その後村崎と共にアメリカに逐電。村崎と決別した後、死にきれなかった事を悔いて悶々と暮らす。およそ10年を過ごしたある日、町を訪れたレッドと出会う。物語初期は中国人一家の経営する洗濯屋に身を寄せている。
- 酒に強く、一瓶を一息に飲んでも全く酔わない。女性には弱い。お人よしであり、他人の話をすぐ真に受けてしまうところがある。
- モデルとなった人物は俳優の川谷拓三。
- 全長2メートルを越す長銃身の火縄銃、狭間筒(はざまづつ)を使用する。伊衛郎の技術も相俟って驚異的な命中精度を誇る。武士の生まれではあるが、刀の扱いは不得手である。その一方、祖父直伝の柔術(やわら)を得手としており、頭一つ以上体の大きいレッドを軽々と投げ飛ばせるほどである。格闘戦では刀や拳銃を用いず、専ら徒手空拳の柔術で戦う。
- アンジー
- 伊衛郎と同じ町に住んでいた娼婦。金髪碧眼のセクシーな女性。射撃の名手。ギャンブルの達人でもある。特にカードが得意であり、酒場で勝負を仕掛けては金を巻き上げている。気風の良い世慣れた人物であり、強気な性格。
- 「アンジー」とは娼婦としての名であり、本名を「アニー」という。幼少時、両親に捨てられ教会で養われていた。そこでの暮らしの中でインディアン、ウィーピングオウルと出会い親しむ。しかしウィーピングオウルと町の住人との間に生じたトラブルからともに町を後にし、後は旅芸人一座の中で暮らす事となった。一座の中では正義の女ガンマン、「アニー・ホワイトナイト」を演じ人気を博す。しかし仕事で訪れた旅先で、町の判事の息子に強姦された事からこれを射殺してしまう。罪に問われるところであったが、ウィーピングオウルが身代わりとなり、結果ウィーピングオウルは町の住人に射殺されてしまった。この事件をきっかけにアニーは一座を辞め、娼婦を生業として過ごす事とした。伊衛郎と同じ町で暮らしていたが、町を訪れていたレッドと出会い好意を抱き、以後行動を共にする事にする。
- モデルとなった人物は女優のシャロン・ストーン。
- 22口径の拳銃、 Metropolitan-Arms BEARCAT を主に用いるが、その他の銃器も自在に使いこなす。銃の腕前は一流であり、ブルー小隊員であるノーマン・クインと対した時はクインの持つガトリング砲の砲口を撃ち抜く離れ業を見せた。全身いたる所に拳銃を隠す事も技の一つである。
- スカーレット・スタージェス
- 白人たちの中で暮らすインディアンの少女。スタージェスの養子。優しさと慈悲心に満ち溢れた少女。
- スタージェスは隠しているが、本当はホワイトリバーの虐殺を生き延びた子供である。次々とウィシャの民が殺される中で母親から生まれ、死体の山の中からスタージェスにとりあげられた。ウィシャの生まれ故にブルーに狙われ、追われることになる。ニューヨークから西へと逃れる旅路の中で、それと知らずレッドとすれちがう。やがてマザスカの住むパインヒルに辿り着き、子供の頃のレッドの啓示(ヴィジョン)を見、レッドの過去を知り、その悲しい運命を救うために一人再会の旅に出る事を決意する。レッドとスカーレットの再会は物語の大きなテーマとなっている。スタージェスの友人であるグレイを「おじさま」と呼んで慕っており、淡い恋心を抱いている。
- モデルについては外部リンクで作者による解説がある。
- チリカ
- アパッチ族の少年。家族をメキシコ軍に殺され、孤児となったところをゴヤスレイ(ジェロニモ)に拾われる。以来、ジェロニモの率いる部隊に子供ながら参加していた。襲撃した町でレッドと出会い、撤退の際、殿軍をジェロニモに申し出る。見かねたレッドがチリカを援護し、それからチリカとレッドは行動を共にするようになる。ゴールドスミスのいるトーマス砦に2人で潜入するが、レッドに置いて行かれ、アルコーズの所に居候を決め込むこととなる。ジェロニモ投降後、アルコーズたちと共にフロリダの居留地に連行される列車に乗るが、アルコーズによって解放される。その際アルコーズから「お前はアパッチとして生き、アパッチとして死ね」という言葉を受ける。この時からチリカは「最後のアパッチ」として生きることを決める。解放後はネブラスカにおいて、孤児たちを集めて強盗団を結成、凶悪犯「ライトニング・ベーカー」の名を騙り活動。町の住人を困らせる。ネブラスカで暮らす中、スカーレットと出会い、以後行動を共にする。スカーレットに心密かに好意を寄せており、スカーレットが危機に瀕すると冷静さを失いがちである。
- 名前はアパッチ族の一部族、チリカワ族に由来する。
- 子供ながら拳銃を使い、空中に放り上げた金属皿を6発連続で撃ち抜ける腕前を持つ。拳銃だけでなくウィンチェスターライフルなど他の銃器も扱う事ができる。物語終盤でビリジアンの持つボウガンのような機構の炸薬砲を譲り受け使用する。
- グレイ
- レッドの復讐を手伝う謎の巡回牧師(サーキットライダー)。詳しくは大統領のエージェントたちを参照。
- エドワード・ゴールドスミス
- レッドの復讐に協力する元ブルー小隊隊員。詳しくはブルー小隊を参照。
- 一見頼もしい味方に見えるが、「ブルーが敗れる」ことは望んでいても「レッドが勝つ」、つまりインディアンが再興して白人の地位を脅かすことは望んでおらず、実はレッドとブルーの相打ちを策していた。
[編集] ブルー小隊
アメリカ合衆国陸軍第七騎兵連隊ブルー小隊。隊長であるブルー大尉を頂点とした、4分隊25名からなる小隊である。この復讐劇の元凶となった部隊。
1876年、ダコタ準州ホワイトリバーにおいて、居留地に連行中のウィシャ・スーを虐殺。無抵抗の人間を狙った一方的な殺戮であった。第七騎兵隊の指揮官カスター将軍は、この事件を隠蔽するため、隊員全員を2階級特進としたうえで強制除隊、小隊を解散とした。なお、ブルー小隊の解散直後、第七騎兵隊はリトル・ビッグホーンの戦いで全滅している。
1分隊6名であり、1名の分隊長の下に5名が付く指揮系統となっている。携帯火器として隊の支給品であった COLT Single Action Army Cavalry を使用する者が多い。
[編集] 指揮官
- ブルー
- ブルー小隊の指揮官。ホワイトリバーにおけるウィシャの虐殺を指揮し、オセオラを自らの手で殺害した。レッドの最大の仇敵である。圧倒的なカリスマと恐怖によってブルー小隊をまとめる。ブルー小隊には凶悪な人物が多いが、これはブルーの持つ特殊なカリスマ―血を好む人物を強く惹き付けるカリスマによる。移民の一人として開拓時代のアメリカに移り住むものの、自身の出生や肉親の顔を知らず放浪の人生を送る(本人は、その荒んだ生活の中で殺人を犯した可能性をも後に示唆している)。そして、旅の末に、まだ当時は自由に生活していたウィシャの一群と出会い、介抱される。まだ名前も無かった彼に、「ブルー」という名を与えたのも、他ならぬウィシャ族の人々だった。自分を認め、家族の様に接してくれるウィシャの住民達との生活は、ブルーにとってかけがえのないものとなっていき、時が経つにつれブルーの中でのウィシャに対する思い入れは強くなっていく。ウィシャを、この家族をもしも失ってしまったらと、考え眠れぬ夜を過ごす事も少なからずあったという。しかし、そんな中、ウィシャの部族の殆どがブルーの外出中に、当時アメリカの開拓に尽力していた北軍の兵士達に殺されてしまう。だが涙を流す事は出来なかった。ブルー本人は、その直後に北軍に志願し入隊を果たす。そして、部族を失った哀しみを知る為に軍をまとめ上げ、残りのウィシャ民族の殲滅を狙う。裏でアメリカを変容させるための様々の陰謀を巡らせており、彼の存在自体がアメリカにとっての脅威となっている。
- モデルとなった人物は俳優の仲代達矢。
[編集] A分隊
ブルー小隊の中でも精鋭とされる分隊である。隊員はナイフ投げなどの特殊な技能を持っている者が多い。また、分隊長のテレンスはブルー直属の副官である。
- ジョン・テレンス(分隊長)
- ブルーの副官。残忍な人物であり、ホワイトリバーでの虐殺の実行をブルーに提言した人物である。物語には、復讐を開始したレッドの動向を調査し、追跡する人物として登場する。追跡の中で伊衛郎の狙撃を受け頭部を損傷、それ以降は情緒不安定となる。かねてよりブルーを尊崇していたが、物語中盤でブルーの真意を知ってからは疑心暗鬼となり、精神も不安定さを増す事となる。隊所属時、専任軍曹。除隊時に中尉に特進。
- 己の不安と劣等感を他民族への差別と迫害で解消する白人層の典型であり、レッドに対し「お前たちが無駄にしていた土地を、われわれが有効活用してやったまでのこと。問題はない」とまで言い放った(白人が有色人種虐殺支配を正当化する常套句)。
- ビル・キングストン
- 早撃ちを得意とする男。以下の四人と共に、「役立たず」のテレンスに代わる副官の座を賭け、カジノ船上でレッドと一対一で対峙する。隊所属時、伍長。除隊時に少尉に特進。
- モデルとなった人物は俳優のジェフ・ブリッジス。
- ノーマン・クイン
- ガトリング砲を携えた巨漢。朴念仁である。カジノ船上でアンジーと対峙する。隊所属時、伍長。除隊時に少尉に特進。
- モデルとなった人物は俳優のジェームズ・コバーン。
- クリストファー・ナイト
- 爆薬の扱いに長けた男。カジノ船上でレッドを襲う。計算し尽くされた爆薬のセッティングでレッドを追い詰める。
- モデルとなった人物は歌手のムッシュかまやつ。
- ブライアン・ビショップ
- 縄を使った戦闘を得意とする男。カジノ船上でレッドを襲う。縄で人を絞め殺す事を好む異常者。隊所属時、伍長。除隊時に少尉に特進。
- モデルとなったのは漫画『スポーン』に登場する悪役。
- ヒュー・ルーカス
- ナイフ投げを得意とする男。カジノ船上でレッドを襲う。ナイフを用いるのは本人言うところの「鼓膜は痛えし硝煙の匂いが下品」な銃を好まないためである。隊所属時、伍長。除隊時に少尉に特進。
[編集] B分隊
ストーリー的には前座であり、技量は最も低い分隊。
- ハロルド・バーンズ(分隊長)
- 伊衛郎とアンジーが住んでいた町の保安官。レッドが討つ最初の仇。保安官の権力を利用し横暴を振るう。智春を攫い、アンジーに自分の愛人となるよう迫る。隊所属時、伍長。除隊時に少尉に特進。
- ハンプトン・ヒル
- スチュワート牧場の牧童頭兼用心棒。狂気を孕む男。ガンマニアで、隊の支給品であったシングルアクションアーミー・キャバルリーへの思い入れは強い。銃だけでなく弾丸にもこだわりがあり、用いる弾は全て自作している。伊衛郎の狭間筒の象嵌を芸術品と評していた。隊所属時、一等兵。除隊時に軍曹に特進。
- オーエン・ランディス
- アンジーの友人であるタリアの夫。ブルー小隊解散後、タリアと結婚し幸せに暮らしていたが、ブルーの召集を受けて不本意ながらもタリアの元を去る。タリアと共に暮らした結果か以前の凶悪さは影を潜め、すっかり温厚な人物になっている。ブルーには心底からの恐怖を感じている。料理が上手く、それを生かして料理店「TALIA'S RESTAURANT」を開き経営していた。料理の味にうるさい。隊所属時、一等兵。除隊時に軍曹に特進。
- アーノルド・コッパー (AC) 、ダニエル・コッパー (DC)
- 双子の兄弟。アイオワ州出身。双子ならではの息の合った連携で戦う。スプリングスシティーでスカーレットを追う。兄アーノルドはコートに銃を隠して相手を撃つフェイクを得意としている。弟ダニエルは幼少時の精神的ショックから、アーノルド以外の人間とはコミュニケーションを取れない。隊所属時、ともに二等兵。除隊時に伍長に特進。
- ギルス・グリーンウェル
- 女性のような容姿をした美しい青年。快楽殺人者。少年の時、ブルー小隊に家を襲われ、隊員数名に犯されそうになったが反撃、これを殺害する。殺人の才能を見込まれたかブルーに気に入られ、ブルー小隊に参加する。スカーレットのいる学校をオーエンと配下と共に襲撃、グレイと死闘を繰り広げる。隊所属時、二等兵。除隊時に伍長に特進。ブルー小隊最年少。
- 射撃の名手であり、グレイと同様に2丁拳銃を駆使して戦う。また、不死身とも見える生命力があり、弾丸を数発食らった程度ではどうということもない。
[編集] C分隊
長距離支援を目的とする狙撃分隊として組織された。長銃身のライフルを装備している。
- マシュー・オコーナー(分隊長)
- 分隊長であったが無能な人物であり、部下のシーゲルによれば「イバっているだけのクソ野郎」。実際、下卑た性格である。神父の姿を借り、村崎と共にスカーレットを追っている。隊所属時、伍長。除隊時に少尉に特進。
- エドワード・ゴールドスミス
- レッドの復讐に協力するブルー小隊隊員。狙撃の名手。北軍の新兵であった頃、単独で南軍の一個小隊を撤退させた実績を持つ。狙撃の腕はブルー小隊随一であった。ホワイトリバーの虐殺時、虐殺を止めようとブルーに訴えるが叶わず、逆に右目を奪われる。その後カスター将軍に虐殺を告発。ブルー小隊解散のきっかけを作った。ゴールドスミス自身は軍に残り、その後大佐にまで昇格し、トーマス砦のインディアン討伐隊の指揮官となっている。物語にはジェロニモの部隊を追撃する部隊を率いて登場する。隊所属時の階級は一等兵。
- モデルとなった人物は俳優のショーン・コネリー。
- パトリック・ブーン
- またの名を陸軍第五騎兵連隊ジェファーソン少尉。ブルー小隊解散後、名と姿を変え軍に残っていた。ジェファーソン少尉としては実直で部下思いの人物として知られるが、本当の顔は殺人を好む異常者である。スロウブランド付近において、騎兵隊を率いテレンスと共にレッドの乗る大陸横断鉄道を襲撃する。ブルー小隊への愛着は強く、ブルー小隊の事となると目を輝かせる。隊所属時の階級は一等兵。
- バージル・バリー
- ブルー小隊の中では若手であり、小隊内での世代交代を狙う、野心溢れる人物。ならず者達をミズーリ州ドッグウッドに集結させ、レッド達を一挙に殲滅しようと画策する。テレンスを「年寄り」として軽蔑し、さらには自らの作戦の手駒として利用しようとする。バクチが苦手であり、駆け引きの面白さを理解できず、勝てる勝負しかしない。ベーカーに好意を寄せられるが、当人はどうとも思っておらず、ベーカーを手駒の一つとしか見ていない。隊所属時、二等兵。除隊時に伍長に特進。
- ロブ・モックリッジ
- バリーと共にドッグウッドでの作戦を実行する男。狙撃の名手であるゴールドスミスを尊敬しており、狙撃の師とみなし、また乗り越えようとしている。作戦における要所である狙撃地点「頂上」(ピーク)を巡って、ゴールドスミスおよび伊衛郎と対決する。隊所属時、二等兵。除隊時に伍長に特進。
- デニス・シーゲル
- バリーと共にドッグウッドでの作戦を実行する男。作戦における要所である狙撃地点「頂上」(ピーク)を巡って伊衛郎と対決する。隊所属時、二等兵。除隊時に伍長に特進。
[編集] D分隊
ブルーによって特別に訓練された、ブルー小隊最高の戦力を有する分隊である。平時はブルーの所有する農場の働き手である。概して素朴で温厚な性格であるが、戦闘時は一転、冷酷無比となり、ブルーの指揮の下に機械のように動く無敵の軍人となる。ドッグウッドにおいてレッドやグレイたちを相手にするが、圧倒する。
- A・G・ウエスト
- D分隊のリーダー格。ブルーが所有している農場で、ブルーの執事として働く。平時は柔和な笑みを浮かべているが、戦闘時は仮面のように動かない厳しい表情となる。ブルー所有の牧場近くの河原で、サットンと共にガブリエルおよびベーカーと交戦する。
- コージー・サットン
- ブルーの農場近くの河原でガブリエルと交戦するが、打撃をまともに喰らった事に逆上。反撃しガブリエルに重傷を負わせるも、頭上からの撃ち下ろしの打撃を喰らい、絶命する。階級は特務伍長。
- ケイン、ヒーリー、ライノ、ロイ
- いずれもブルーが所有する農場の下男として働く男。村崎の言によれば「本当に神の愛を受けていると思える」優しさを持った人物たち。農場での雑用の他、ブルーに養われている子供たちの世話を見ている。
[編集] 大統領のエージェントたち
エージェント(代理人)とは、大統領クリーブランドの密命を受け、本名を捨て巡回牧師(サーキットライダー)としてアメリカ全土に散らばり、ブルーの陰謀を阻止するためのさまざまの活動を裏で行う存在である。巡回牧師として活動している時はその限りではないが、みな一様に黒い帽子と黒いコート、黒いズボンおよびマフラーを身に着けているのが特徴である。
エージェントの多くは元は死刑相当の罪人であり、大統領にその罪を赦される代わりに命を預かられている。
独特の武器を所持している者もあり、改良型のヘイトソングを所持している者もある。
- グレイ
- レッドを助ける謎の男。2丁拳銃を操るガンマン。
- 南部ジョージアで兵士カーチスと妻オリビアの間に生まれる。父はグレイが生まれた頃には南北戦争に参加しており、そのため父の顔を知らず育った。母オリビアの愛情を一身に受け育つ。子供の頃、自分の男としての度胸を友達に示すため、町外れに潜む北軍の兵士を仕留める事にし、これを射殺した。しかし兵士は実の父カーチスであり、騒ぎを聞き付けてやって来たオリビアはこの光景を見て逆上、グレイは銃で撃たれ重傷を負った。この事件が心の傷となっており、また心の均衡を失った母の世話を今も見ている動機ともなっている。長じて後、父の友人であったクリーブランドの元を訪れエージェントとなった。クリーブランドの命を受け、スタージェスと接触してブルー小隊の「リスト」を作らせ、更にそれをシルバーリングに渡す重要な役割を果たした。物語には巡回牧師としてレッドに接近、ウィシャの虐殺を知っている事をほのめかす謎の人物として登場する。ヘイトソングをレッドに渡し、レッドの復讐を促した。またスカーレットの存在をレッドから巧妙に隠しており、ブルーを抹殺するためにレッドを利用している。母の作った造花をいつも懐に忍ばせている。女たらしであり、アンジーの昔の客であった。
- 名前「グレイ(灰色)」は、白とも黒ともつかない―敵とも味方ともつかない存在、という事から。
- モデルとなったのは俳優のフランコ・ネロ。作者の最も好きなマカロニ・ウェスタン俳優である。
- 1880年代としては旧式の拳銃、 REMINGTON M1860 ARMY 2丁を使用する。これは父カーチスの使用していたものであり、グレイのこだわりである。片方の銃把下端に小さい十字架を付けている。
- グレイにはなぜか敵弾が当たらない性質があり、本人はこれを「なかなか死なせてくれない罰」として受け止めている。
- グリーンウェルと争った時はジョン・ウーの映画ばりの横跳び2丁拳銃を披露した。
- ブラウン
- エージェントのリーダー格である女性。
- クリーブランドの若い頃からの友人である。酒場を経営していたが、友人であるカーチスを侮辱する客の兵士達を咎めた結果、暴行される。ブラウンは兵士達を射殺し、死罪に問われるところであったが、当時保安官であったクリーブランドの働きにより死罪を免れる。1877年頃より自らエージェントとして動く事を決意、クリーブランドの政治家としての闇の活動を代わりに行うようになった。ブラックたち部下から非常に信頼されている。アンジーとは相性が良くない。
- ブラック
- 巨漢の黒人エージェント。罪を犯し絞首刑に処せられる所をブラウンに拾われ、エージェントとなった。マウント・ラッシュモアの戦いにおいて、レッドと共に奮戦する。粗暴で口が悪いが、仲間を思う気持ちが非常に強い。ショットガンタイプのヘイトソング“A10”を所持している。
- アッシュ
- 初老の男性エージェント。マウント・ラッシュモアの戦いにおいてレッドと共に奮戦する。改良型のヘイトソング「A8」「A9」を所持しており、2丁持ちで戦う。
- カーキ
- 盲目の男性エージェント。鋭敏な聴覚を駆使し、敵の気配を察知して戦う。目を覆う長い布を頭に巻いている。なお布に書かれている文字は"LOVVA DO SEIA O SANCTISSIMO SACRAMENT"。
- ビリジアン
- 男性エージェント。ボウガンのような機構の炸薬砲を所持している。マウント・ラッシュモアの戦いにおいて傷を負って戦闘不能となり、後から来たチリカに自らの使う炸薬砲を託す。
- ネイビー
- 男性エージェント。マウント・ラッシュモアにおいて奮戦するも、不意を付かれて後ろから刺されてしまう。
- セピア
- 若い女性エージェント。ブラウンへの報告をする道行きで青の猟兵の狙撃に遭い、ブルーからのレッドへの伝言を告げられる。重傷を負いつつもレッドの元に辿り着き、伝言を伝え息絶える。死の直前、ブルーに育てられ死の恐怖を失った子供たちに死の意味を伝える。
[編集] その他の人物(五十音順)
- アルコーズ
- トーマス砦の斥候隊隊長。アパッチ族。高い追跡技術を持つ。トーマス砦に居候する事になったチリカの父親代わりとなる。ジェロニモ投降後、フロリダの居留地に移送される列車からチリカを解放し、その際、「お前はアパッチとして生き、アパッチとして死ね」と伝える。部下からの信頼も篤い温厚篤実な人物である。家族は妻と一男一女。
- アルフレッド
- スカーレットに好意を寄せる少年。愛称アル。メガネをかけた気弱な少年であるが、いざとなると意外な勇気を発揮する。グリーンウェルによる学校襲撃の際、スカーレットとグレイを助けるため行動する。
- 伊東伊頼(いとう いより)
- 伊衛郎の父。西南戦争に参加しようとする伊衛郎を諌める。伊知衛門や伊衛郎と違って銃は不得手である。
- 伊東伊知衛門(いとう いちえもん)
- 伊衛郎の祖父。鉄砲をはじめとして、伊衛郎に多大な影響を与える。死の際で伊衛郎に人が血を流し合う事の不毛さを伝える。
- 院長
- 幼時のアンジー(アニー)が身を寄せた教会の長である女性。厳しくアニーを養育するが、愛情ある人物。町の人間の仇であるウィーピングオウルを教会裏の森に匿っている。ウィーピングオウルを追う町の住人の山狩りの際、アニーが放った弾を受け死亡する。
- 呉(ウー)、智春(チーチョン)、智健(チーキン)
- 物語初期に伊衛郎が身を寄せている洗濯屋「ウー・ランドリー」を営む中国人の一家。娘の智春がバーンズにさらわれてしまう。伊衛郎を“伊双”(イーシュアン)と呼んでいる。
- ウィーピングオウル
- アニー(アンジー)が身を寄せる教会の裏手の森でひっそりと暮らすインディアン。インディアンの部族ショーニー族の生き残りである。巨漢であり、目がフクロウのように大きい。ウィーピングオウルとは「泣き虫のフクロウ」の意。教会に住むアニーと出会い、「ホワイトナイト」(白い夜)という名を与える。町の住人による山狩りの後、アニーと共に町を後にする。その後は旅芸人一座にショーの悪役として出演していた。アニーとは実の親子のような間柄であった。アニーが訪れた町の判事の息子を射殺した際、自ら犯人と名乗りを上げて町の住人の前に出、射殺される。
- ウォーターズ
- ブルー小隊員にブルーの意向を伝える使いの者。無口で無愛想な小男である。逆上したテレンスに頻繁に殴られる。しかし、その正体はブルー本人であった。
- 黄(ウォン)
- 伊衛郎に瓜二つの中国人。牧場の牧童として働いているが、将来は大中華料理店を開くのが夢である。しかし料理は全く上手くなく、ベーカーによれば「なんてマズさ!? 毒だわ毒!!」とのことである。12人の家族(妻1人娘4人息子5人年寄りが2人)がいる。ブーンの列車襲撃に居合わせ、襲撃を生き延びた子供を拾い、13人目の家族とした。物語の各所に登場し、重要な人物たちと接点を持つ。大のお人よしで、困った人間を見ると放っておけない。現に、村崎と出遭い彼が泊まるあてもない事を知ると世話をしたり、レッドがブーンと対峙した時には自らの命をかけてレッドを救った。
- オセオラ
- レッド(ティヨーレ)の無二の親友(コラ)。ホワイトリバーの虐殺時、ティヨーレをかばって絶命する。その際、必ず部族の仇を討つように言い遺す。
- オセオラ(狼)
- シルバーリングが死んだ牝狼の腹からとりあげた黒い狼。レッドによって亡き友オセオラの名前を付けられる。
- おばさま
- スプリングスシティの駅の北口にある宿屋の女将。スカーレットたちを宿泊させる。見た目の怖い女性であるが良い人である。作る料理は黄の気に入り。
- オリビア
- グレイの母。カーチスの妻。グレイを女手一つで育てた。グレイを心から愛していたが、グレイがカーチスを射殺したのを見て逆上、グレイを撃ってしまう。その後は心の均衡を失い、クリーブランドの保護のもと、帰ってこないカーチスの帰りを待ち続けている。造花を作ることを仕事としていた。作った造花には香水を付けて香りを付けている。
- カーチス
- グレイの父。オリビアの夫。南部ジョージアの生まれ。故郷を出た後、北軍兵士となっていた。交戦中に南軍の中に取り残され、近くにあった故郷の町に身を隠すが、男としての度胸を示そうとするグレイに実の父親と知らず射殺される。若き日のクリーブランドとブラウンと交友を残している。
- カスター将軍
- 実在の人物である。アメリカ合衆国軍人。対インディアン戦争で知られた第七騎兵連隊の指揮官。
- 作中ではブルー小隊がホワイトリバーで虐殺事件を起こした事を知り、自らの政界進出の妨げになると考え小隊を解散、事件を隠蔽した人物として登場する。1876年のリトル・ビッグホーンの戦いにおいて、騎兵隊を率いてクレイジーホース率いるインディアン連合軍と交戦し、敗死する。
- ガブリエル・ウォーカー
- スカーレットの付き人。巨漢の黒人。言葉を発する事ができない。スカーレットが危機に瀕すると身を挺してスカーレットを守る勇敢な人物。実はボクサーであり、「沈黙の聖人」の二つ名を持つアメリカ東部チャンピオンである。ベーカーに好意を寄せられるが、当人はどこ吹く風である。
- 桐野利秋(きりの としあき)
- 実在の人物である。
- 作中では行軍中に有明一刀流道場の面々の前に姿を現し、志士としての魂を体現する存在として登場する。
- クライン市長
- 伊衛郎が訪れた町の市長。日本人である伊衛郎を「サムライ」として優待する。大のニッポン好きであり、「ショーグン」や「ニンジャ」に興味津々である。テレンスから州議会選挙出馬の協力を受けている。
- クリスチャン・スタージェス
- スカーレットの保護者。レッドの手に渡るブルー小隊の「リスト」を作った人物。 BIA (インディアン対策局)局員としてウィシャの連行時、ブルー小隊に同行する。虐殺発生時に制止しようとするも叶わず、静観を余儀なくされた。その際に死体の山の中からスカーレットをとりあげ、虐殺を止め得なかった事を悔いる気持ちから自分の娘として養育する事を決意する。事件後、政府各部に虐殺を告発するも取り上げられず、処置無く過ごすなか巡回牧師のグレイと出会う。心労のため、年齢以上に老いた外見をしている。
- クレイジーホース
- 実在の人物である。1876年のリトル・ビッグホーンの戦いでインディアン連合軍を率いて第七騎兵隊と戦い、勝利へと導いた人物。
- 作中では助力を仰ぎにシルバーリングを訪れた際にレッドと出会う。リトル・ビッグホーンの戦いでインディアンの誇りをレッドに示す。
- グローバー・クリーブランド
- 実在の人物である。アメリカ合衆国第22代大統領。
- 作中ではブルーの陰謀を阻止するため、アメリカ全土にエージェントを放ち活動させている。グレイを通じてスタージェスにブルー小隊の「リスト」を作らせ、レッドにヘイトソングを渡した人物である。ブラウンとカーチスとは若い頃からの友人。
- ゲイトウェイ一家
- カンサスの強盗団。ドッグウッドでのバリーの作戦に賞金目当てで参加する。「おじいさま」と呼ばれる車椅子の老人をリーダーとしており、常に「おじいさま」の言葉に従って行動する。
- ケン、ジョー、ドロシー、ボブ
- アニー(アンジー)が身を寄せていた旅芸人一座の芸人たち。
- ケンは投げ縄を得意としている。アニーに好意を寄せている。ジョーはナイフ芸を得意としている。顔に傷がある。ドロシーはアニーとウィーピングオウルのワイルドウェストショーで悪役にさらわれる娘として出演している。ボブはショーの悪役として出演している。
- ゴヤスレイ(ジェロニモ)
- 実在の人物である。アパッチ族。白人に抵抗する戦闘集団を率いた人物。
- 作中では家族を亡くしたチリカを拾い、多大な影響を与えた人物として登場する。尽きる事のない反骨の魂を持った男。「アメリカに青い死の影が落ち、赤い矢が影に放たれる」という予言を残す。
- “竜巻”(サイクロン)・ジェーン
- ドッグウッドでのバリーの作戦に参加した賞金稼ぎ。長い黒髪の女性。鞭を武器とする。ベーカーの友人であり、「姐さん」と呼んで慕っている。なぜか関西訛りで喋る。
- たぶん元ネタは ハリケーン・ジェーン。
- 佐藤、白井、立迫、平、廣石
- ともに有明一刀流城山道場の門下生、伊衛郎の友人。佐藤と平は土村半助の道場襲撃時に紅柳と共に連れ去られ人質とされる。白井は西南戦争に参加し、9人斬りを達成している。立迫は道場の師範代を務めている。廣石は西南戦争に参加し6人斬りを達成している。全員が田原坂の戦いにおいて死亡している。
- ジェイソン・ハックマン
- アメリカ合衆国軍人。自らの部隊から精鋭の軍人が謎の理由により引き抜かれていることを知り、不審に感じ調査を始める。階級は大尉であり、フロリダに駐留している。顔に大きな傷を持つ。
- シルバーリング
- スー族の一部族マザスカの長。ホワイトリバーの虐殺後にティヨーレを保護し、レッドという名を与えた人物。長じたレッドと同等の上背、どっしりとした太鼓腹を持つ巨漢。右の二の腕に大きな銀の輪を嵌めており、それ故シルバーリングと呼ばれる。若い頃は勇猛無比な戦士として知られたが、敗勢が濃くなった頃から、マザスカが白人の社会に溶け込めるよう働きかけるようになった。情義に厚い人物であり、マザスカの民からは畏敬の念をもって見られる。苦悩の末、グレイから渡されたブルー小隊の「リスト」をレッドに渡す。
- スチュワート
- 大牧場主。ヒルの雇い主。温厚で紳士的に振舞う男性であるが、心の奥底には「力を持った者は持たない者から何を奪っても良い」という思想を持つ。
- タリア
- オーエン・ランディスの妻。アンジーの友人。娼婦として働いた後オーエンと結婚し、料理店を開き夫と共に幸せに暮らしていた。しかしブルーの召集を受けオーエンが旅立った後は情緒不安定となり、酒浸りの生活を送る。そしてついに、アンジーに「オーエンと離れ離れは耐えられない。会ったらいっそ殺して欲しい」と頼む。オーエンの子を宿している。娼婦としての名はリンダ。
- ティヨーレ(狼)
- 狼オセオラと共にシルバーリングが腹から取り上げた白い狼。レッドによってティヨーレと名付けられる。レッドと共に成長し、レッドがマザスカから追放された後もレッドに付いて行き行動を共にする。
- 実在のモデルがおり、作者がサウスダコタ州のラコタの人々の元に取材に訪れた際、出会った狼がそれである。名前もモデルから取っている。
- 土村半助(つちむら はんすけ)
- 伊衛郎と村崎のアメリカ逃亡を手引きした人物。丸山遊郭の悪玉の用心棒として登場し、無理やり紅柳を連れ戻そうとするも、伊衛郎たち有明一刀流道場の面々に阻止され、懲らしめられる。この事件後改心し、伊衛郎に付いて行動するようになる。道場の面々が自決した後、村崎が伊衛郎にアメリカに逃げるよう言ったのを受け、アメリカ渡航の手引きをすると持ちかける。しかし渡航直前に村崎に裏切られ斬殺される。
- バーナード・キャプショー
- トーマス砦の新米少尉。愛称バーニィ。ゴールドスミスを尊敬し、亡くなった父と重ね合わせている。ゴールドスミスがレッドに連れ去られた後、ゴールドスミスを連れ戻すため部隊を率い捜索に当たる。
- ペジュタ
- マザスカの少女。ワシテの妹。スカーレットに好意的に接し、共にマザスカとして暮らす事を望むも、旅立たれてしまう。
- 紅柳(べにやぎ)
- 丸山遊郭の元女郎。父がオランダ人であり、髪の色が紅い。伊衛郎が好意を寄せた女性。人吉に住むという遠戚を頼りに葦北に来るが、土村半助に無理矢理に遊郭に連れ戻されそうになってしまう。そこを伊衛郎に助けられ、道場に匿われることになる。半助に道場から連れ去られるが、伊衛郎ら道場の面々に救出される。事が落ち着いた後、人吉に向かい、親戚と会うことが叶った。事件を通じて、紅柳もまた伊衛郎に好意を寄せていたようである。紅柳とは女郎としての名前。三味線が得意であり、母の形見の三味線を持ち歩いている。
- 村崎十字郎(むらさき じゅうじろう)
- 伊衛郎の旧友。伊衛郎にアメリカ逃亡をそそのかした人物。居合の達人。敬虔なキリシタン。風采は長身痩躯。黒い僧衣を身にまとい、腰には刀を帯びている。しかし、伊衛郎の事となると途端に感情を爆発させる一面がある。伊衛郎に対して一種屈折した独占欲を持っており、伊衛郎が他の者と親しくするのが面白くない。無表情で、時として不気味な男だが、その容姿から周りの女性達からは慕われていた。
- 島原の隠れキリシタンの商家である天草屋に生まれ、幼少時に葦北に転居してきたところを伊衛郎と出会う。村崎にとっては伊衛郎がはじめての友達であった。以降村崎は伊衛郎のことを特別な存在と思うようになる。長じてからは、地元で「居合の村崎」として伊衛郎と共に有名になる。西南戦争勃発時、血気に逸り戦争に参加しようとする道場の面々と対立。しかし結局は伊衛郎に同行する形で参加し、多大な戦果を上げる。道場生が自決した際、道場の仲間の後を追おうとする伊衛郎を止め、平等の国であるアメリカに行こうとそそのかした。政府軍の包囲から伊衛郎および半助と共に逃れた後は長崎丸山に潜伏。渡航の機を窺う。乗船直前に半助を裏切り、斬殺して伊衛郎と2人でアメリカに渡る。しかし渡航後、半助を殺した事が伊衛郎に発覚し、それが元で彼から絶縁される。失意の中、放浪するうちにブルーと出会い、その思想に共鳴し、心酔する。以降はブルーの命で動くようになる。ある理由からオコーナーに同行してスカーレットを探している。
- 丸に十字鍔の刀を用いる。人間を文字通りの真っ二つに出来る頑丈な業物である。超人的な脚力により対手との間合いを瞬時に詰め、両断する戦法を取る。村崎の居合は幼時からの独習によるものである。幼時にして蛇の頭を軽く打ち落とす腕前であった。
- “少佐”(メイジャー)・クロケット
- ドッグウッドでのバリーの作戦に参加する賞金稼ぎ。南軍崩れの元軍人。レッドたちに掛けられた賞金を目当てに戦い、レッドと対峙する。プロ意識の高い賞金稼ぎである。「常にメインディッシュから食らう」性格。
- “ライトニング”ベーカー
- ネブラスカきっての凶悪犯。強盗・殺人などなんでもござれである。6フィート半はあろうかという体躯を持ち、おねえ言葉で喋る黒人男性。ボクシングの西部チャンピオンでもある。
- ネブラスカで自分の名を騙るチリカを捕らえるが、ガブリエルとのボクシング勝負に敗れた後、軍によって逮捕される。その後脱獄。ドッグウッドでのバリーの作戦に参加するが、いいところなく逃亡。その後は牛泥棒となって細々と暮らしていたが、チリカたちに捕らえられ、以後はチリカとガブリエルと共に行動する。ガブリエルに好意を抱き、ガブリエルの為に、という形で間接的にレッドの復讐に協力する。作中でドレス姿を披露したことがある。
- ロストネック
- マザスカの青年。幼少のレッドを温かくマザスカに迎え入れ、親友として共に育つ。しかしレッドがマザスカから追放されると、それを自分への裏切りと捉え、恨むようになった。次代のマザスカの長と目されている人物。
- 若先生
- 有明一刀流城山道場の師範。伊衛郎や立迫ら道場生に剣を指南した。神風連の乱に参加したが、敗れて葦北に戻り、熊本城が炎上したことを道場の面々に告げる。その後道場の面々と共に西南戦争に参加するが、田原坂において敗北を悟り自決。死の際に他の者にも自決を促し、道場生全員自決の端緒となった。地元では洒落者で通っていた。語り始めたら止まらない性格。
- ワシテ
- マザスカの女性。ペジュタの姉。レッドとロストネックと共に育つ。レッドに好意を寄せるもレッドに旅立たれてしまう。その後ロストネックと婚約を結んでいる。
- ワルバット・キッド
- アイオワの悪党。一味を率いる若者。ドッグウッドでのバリーの作戦に参加する。役に立たない仲間には関心を持たない。
- モデルとなった人物はビリー・ザ・キッドと思われる。
[編集] 用語解説
- 有明一刀流城山道場
- 伊衛郎が幼少の頃から通っていた、地元葦北の剣の道場。明治維新後は葦北の士族の若者の溜まり場となっている。伊衛郎は剣は不得手であるが、その人望からこの道場の事実上の代表者となっている。
- 青の猟兵
- ブルーのもと特別に訓練された兵士たちの通称。各人がD分隊員相当の戦力を有する。ブルーによってアメリカ軍全体に密かに配備されている。米国初の特殊部隊。
- ウィシャ
- スー族の一部族。レッド(ティヨーレ)が生まれた部族。かつては白人に猛烈に抵抗していたものの、戦いを経る内に戦士である男の数が減り、1876年当時では男はティヨーレとオセオラをはじめとする子供たちだけになってしまっていた。居留地へと連行される途上、ダコタ準州ホワイトリバーにおいて、ブルー小隊によって虐殺された。
- スプリングスシティ
- ネブラスカ州の都市。大陸横断鉄道の駅を町の中心として栄えている。南口はにぎわっているが、北口は逆に寂れている。スプリングスシティとは「泉の街」の意であり、名水で知られている。
- トーマス砦
- フォート・トーマスとも。実在の地名である。現在は町の名前となっている。アリゾナ準州に位置する砦。作中では、ゴールドスミス率いるインディアン討伐隊の本拠地となっている。
- ドッグウッド
- ミズーリ州にある町の名。付近に三方を断崖に囲まれたスリバチ状の土地があり、その地形からバリーがレッド達を殲滅する作戦の実行地とした。断崖の切れ目である2つの地点は頂上(ピーク)と呼ばれる重要な狙撃地点となる。
- パインヒル
- ダコタ準州にある、マザスカの民が暮らす居留地。付近にホワイトリバーが流れている。
- 狭間筒
- 伊衛郎の使う長銃身の火縄銃。伊東家伝来の肥後銃である。銃口周辺に施された象嵌は芸術品のように美しい。
- 狭間筒は実在した銃種である。伊衛郎は徒歩で使っているが、実際には城や櫓の狭間(外を覗う為の小さい穴)に取り付けて用いられたようである。
- ブラックヒルズ
- 実在の地名である。ダコタ準州西部に位置する。スー族の聖地であり、ラコタの言葉で「パハ・サパ」。付近にマウント・ラッシュモアがある。
- ヘイトソング
- レッドの使用する長大なリボルバー。アメリカ軍の作った試作モデルであり、形式番号は「S&W M03A7 "HATE SONG"(“ヘイトソング”「憎しみの歌」)」。その見た目のインパクトと圧倒的な存在感から本作を象徴する銃器となっている。
- ヘイトソングはライフル用の弾丸・45-70ライフル弾を撃ち出す、桁外れの威力を持つ拳銃である。その威力は、例えば人の肩に着弾すれば肩から腕を千切り飛ばし、また人間数人の体を一気に貫き通す程である。しかしその規格外の破壊力ゆえ、射手に並外れた反動制御能力や筋力を要求する化け物じみたリボルバーである。独特の機構を持つオートマティックリボルバーであり、弾丸の発射と共に弾のガス圧を利用してフレーム上部を後退させ、シリンダーを回転、ハンマーをコックさせる仕組みとなっている。この機構により、従来のリボルバーの大多数とは異なり、素早い連射を可能にしている。銃身下部に長大なナイフを取り付けることができ、これにより格闘戦にも対応する。
- 10巻時の設定では、全長43.8cm、重量5.02kg。45口径。装弾数6。
- 5巻時での設定では全長438mm、重量5014g。使用弾薬は45-70ライフル弾、および45口径(11.4mm)弾。装弾数6。
- なお、形式番号の「M03」は「軍用に試作された3番目のモデル」を、「A7」とは「7回目の改良型」を指し、A7の他にも複数の改良型が存在する。
- モデルは同様の機構を持つ「ウェブリー・フォスベリーオートマティックリボルバー」ではないかと思われる[要出典]。
- 連載中、作者サイドでこの銃のフルスクラッチ実物大モデルが作画資料として制作された。作動構造まで完全に再現している精密なモデルで、製作過程は「電撃ホビーマガジン」2000年11月号P242およびP243に記事として掲載された。また、単行本最終19巻のカバー折り返しでもその写真を見ることが出来る。
- ホワイトリバー / ホワイトリバーの虐殺
- ホワイトリバーはダコタ準州を流れる河。白い粘土質を多く含むため白い色に見える。
- ホワイトリバーの虐殺はホワイトリバーで起きた虐殺事件。1876年、アメリカ陸軍第七騎兵連隊所属のブルー小隊が居留地に連行中のウィシャ・スーを突如として虐殺。無抵抗の人間を狙った一方的な虐殺であった。この事件によりウィシャの民はレッドとスカーレットを残して全員死亡する。
- 直接のモデルとなったのはウンデット・ニーの虐殺、サンドクリークの虐殺と思われる。というより、当時騎兵隊や民兵によるネイティブ虐殺事件は常態化しており、賞賛されることはあっても問題視されることはほとんどなかった。
- マウント・ラッシュモア
- 実在の地名である。山肌に4人の大統領の巨大な顔の像が彫られている事で知られる。作中ではレッドとブルーの最後の決戦地となっている。
- マザスカ
- ダコタ準州パインヒルに住むスー族の一部族。かつては白人に抵抗し戦っていたが、族長のシルバーリングが取引をし、現在は白人の文化を受け入れる代わりに居留地に住んでいる。虐殺を生き延びたレッドを保護し、温かく迎え入れた。
- 「リスト」
- ブルー小隊隊員25名全員の名が記されたリスト。スタージェスの手によるものであり、グレイを通じてシルバーリングへと渡された。
[編集] その他
- 本作は作者村枝賢一が新人の頃に連載した漫画『BIBLE』を下敷きにして書かれている。
- 作者の短編集『ウルフガン』には本作の特別編が収録されている。「週刊ヤングマガジン」に宣伝を目的として掲載されたものである。
- D分隊員のモデルは作者のアシスタントであり、名前もアシスタントの名をもじったものである。
- 有明一刀流道場の門下生、佐藤・白井・立迫・平・廣石もまたアシスタントがモデルである。
- “ライトニング”ベーカーは作者のお気に入りとなったらしく、これ以降の作品である『ジングルベル・アーミー』(村枝賢一短編集3「聖なる夜に散歩する」収録読み切り)や、『仮面ライダーSPIRITS』にも同姓別人のキャラクターとして登場する。ただしそれらでは”ベイカー”表記である。
- 『ジングルベル・アーミー』には主人公の所属する部隊を率いるブルー大佐なる人物が登場する。
[編集] 外部リンク
- Webだよ。NO COMIC NO LIFE - とらのあなによる村枝賢一へのインタビュー。本作について触れている。