E=mc²
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E=mc²(イーはエム・シーの二乗、イー・イコール・エム・シー・スクエア)は、アルベルト・アインシュタインが特殊相対性理論の帰結として発表した有名な関係式。質量とエネルギーの等価性とも言われる。質量が消失するならばそれに対応するエネルギーが発生することを示す。
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[編集] 内容
特殊相対性理論は、『物理法則は、すべての慣性系で同一である』という特殊相対性原理と『真空中の光の速度は、すべての慣性系で等しい』という光速度一定の原理を満たすことを出発点として構築され、結果として、空間3次元と時間1次元を合わせて4次元時空として捉える力学である。運動量ベクトルは、第0成分にエネルギー成分を持つ4元運動量 (または )として扱われ、 運動方程式は
と拡張される。4元運動量の保存則から、エネルギーは一般的に次のように表される。
この式で、の場合、つまり、物体が運動していない場合のエネルギーを表す式が、E = mc2である。
ただし、物体のエネルギーは、観測する座標系によって異なる値をとるため、「物体が運動していない場合のエネルギー」は、正確には「物体が運動していないと観測する座標系から見た場合の物体のエネルギー」という意味である。座標系は任意にとれるものなので、その中でこのような座標系から見たものであることを明確にするため、次のように表すこともある。
この式は、質量とエネルギーが等価であることを意味する。 反応の前後で、全質量が Δm 減るならば,それに相当する Δmc2の エネルギーが運動あるいは熱エネルギーに転化されることになる。 化学反応では、反応の前後の質量差は無視できるほど小さい(全質量の%程 度)が、 原子核反応ではその効果が顕著に現れる(全質量の0.1〜1%程度)。
この関係式で、質量1kgをエネルギーに変換すると次のようになる。
広島に投下された原子爆弾で核分裂を起こしたのは、 爆弾に詰められていたウラン235(10〜35 kg)のうち、 わずか1 kg弱だった。(http://www.pcf.city.hiroshima.jp/ )
[編集] コメント
特殊相対性理論の中でも本項の式が特に有名であるため、十分に理解されないまま使われることも多い。例えば、上述の一般的なエネルギーの関係式を知らないためか、いかなる場合もE = mc2であるとして特殊相対性理論を誤って解釈したり、その誤った解釈を元に特殊相対性理論は間違っていると主張されたりすることも少なくない。
式の意味の詳細については、特殊相対性理論を参照のこと。
[編集] 歴史
1907年に発表されたものである。この式は原子爆弾のエネルギー源を説明するものではあるが、アインシュタイン自身は原子爆弾の開発には関わってはいない。しかし、自分の研究が応用されて悲惨な災禍を招いたことを残念に思い、平和活動を積極的に行なった(アルベルト・アインシュタインの項の平和活動の節参照)。
[編集] 参考文献
真貝寿明,質量とエネルギー 相対論の視点から,「数理科学」(サイエンス社)2003年12月号
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- (百科事典)「The Equivalence of Mass and Energy」 - スタンフォード哲学百科事典にある「質量とエネルギーの等価性」についての項目(英語)