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蓮實重彦 - Wikipedia

蓮實重彦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

文学
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蓮實 重彦(はすみ しげひこ、男性1936年4月29日 - )は、東京都生まれのフランス文学者文芸評論家映画評論家小説家編集者、元東京大学総長。身長182cm。英語フランス語のほかイタリア語も解する。

父の蓮實重康は京都大学教授などを務めた美術史家で、人民戦線『土曜日』にも関わった。妻はフランス留学時代に知合った、「小津安二郎を愛する」フランス人蓮實シャンタル。

長男の蓮実重臣作曲家。著書『反=日本語論』では、息子を例に、バイリンガル家庭が子供にとって、必ずしも有利ではないことを論じている。

目次

経歴

人物

本来はフランス近代文学(フローベール)を専攻とするフランス文学者であるが、1970年代初頭に当時安原顯が編集者を務めていた文芸雑誌「海」に掲載されたミシェル・フーコー等フランス現代思想・哲学者に関するインタビューと評論文(後に『批評あるいは仮死の祭典』に所収)が話題を呼び、当時勃興し始めていたフランス現代思想に関する論者として頭角を現す。ミシェル・フーコージル・ドゥルーズジャック・デリダを中心としたフランス現代思想や、ロラン・バルト、ジャン=ピエール・リシャールなどのヌーヴェル・クリティックに関する論評、批評文を各種雑誌(三浦雅士の「ユリイカ」「現代思想」、中野幹隆の「パイデイア」「エピステーメー」、安原顕の「海」)に精力的に寄稿すると共に、朝日新聞の「文芸時評」などでも文芸評論を盛んに行う。またその著作活動は思想家や作家・作品の論評に留まることなく、『表層批評宣言』 や『反=日本語論』に収められた「エッセイ」にも及び『反=日本語論』は読売文学賞受賞を受賞。直接的な断定を周到に避ける独特かつ難解な語り口や、読点の極端に少ない長大な文体が人気を呼び、1980年代初頭から中盤にかけては最も知名度が高く多筆なアカデミズムの書き手の一人であった。

思想や文学作品の論評から論壇に登場したが、中心的な関心は映画や野球にあることを著作やインタビュー等で早くから公言しており、事実一番最初に活字化されたものは大学院在学中に著し、「東京大学新聞」に掲載された映画時評だった。1980年代中盤以降はニュー・アカデミズムブームの退潮に随伴するかのように、執筆対象の主軸を氏が最も愛する領域である映画に移行し始め、自らが責任編集を務めた雑誌「リュミエール」はこうした活動の中核となった。

その後も、東京大学総長を務めていた一時期、少なくとも国内においては映画に関する文章を公開することを控えていたことを除くと映画評論が活動の中心であり、一般的には(元)東京大学総長という肩書きを除けば、文芸評論家、フランス文学者やフローベールの研究者あるいはフランス現代思想の論評家としてではなく、映画評論家として認知されていると思われる。ただし、東京大学から離れた現在では、あまり存在感がなくなってしまったという感も否めない。

映画について

大好きな監督俳優ジョン・フォードジャン・ルノワール小津安二郎の三人を筆頭に、ハワード・ホークスラオール・ウォルシュ山中貞雄オーソン・ウェルズジャン=リュック・ゴダールフランソワ・トリュフォーカール・テホ・ドライヤーアッバス・キアロスタミクリント・イーストウッドジョン・カサヴェテスマキノ雅弘ジム・ジャームッシュエルンスト・ルビッチダグラス・サークロベルト・ロッセリーニジャック・ベッケルロベール・ブレッソンリチャード・フライシャートニー・スコット(以上監督)、ジョン・ウェイントム・クルーズ山田五十鈴(以上俳優)等、膨大。

苦手な監督はウォシャウスキー兄弟デヴィッド・リンチデヴィッド・クローネンバーグジェームズ・キャメロン等多数。

嫌いな監督、俳優はヘンリー・フォンダジョン・フォードの晩年期での確執が原因で最も嫌っている。俳優としての評価とは別。)を筆頭にヒューゴ・ウィービングジェーン・カンピオンリドリー・スコットラッセル・クロウ等。

フランス文学研究者が本業であることからフランス映画を始めとするヨーロッパ映画が好みと思われることもあるようだが、アメリカ映画、特に1940年代までのハリウッド黄金時代こそが最高だと明言している。

ただし、ニコラス・レイ、アンソニー・マン、ジョゼフ・ロージーサミュエル・フラー等の「アメリカ50年代作家」とテオ・アンゲロプロスヴィム・ヴェンダースダニエル・シュミットビクトル・エリセ等の「73年の世代」(蓮實自身が『季刊リュミエール』誌で命名)に対しては人並みならぬ愛着と一家言を持つ。

映画批評では特に映画の「歴史・記憶」に対する敬意を尊重する。氏の映画批評というと『監督 小津安二郎』に代表されるテマティスム的な批評文が引き合いに出されることが多いが、その一方で着実かつ独自な視点による映画史的な批評も重要な側面を占めている。『ハリウッド映画史講義』における「50年代作家」の擁護、「B級映画」の成り立ちと意義、「ハリウッド撮影所システム崩壊」の経緯と位置付けや、『映画における男女の愛の表象について』(『映画狂人、神出鬼没』所収)におけるヘイズ・コードがハリウッド映画にもたらした表現方法の変化、あるいは『署名の変貌 - ソ連映画史再読のための一つの視角』(レンフィルム祭パンフレット所収)におけるサイレントからトーキーへの変貌の過程とその本質的な意味など、少なくとも日本においては氏が初めて提示し明確化した映画史的な観点が少なからずある。

氏の批評は以後の映画批評に絶大な影響を与えた。また、立教大学時代の教え子として映画監督の黒沢清周防正行万田邦敏塩田明彦、映画監督・小説家の青山真治等、未来の現場監督にも大きな影響を与えた。彼らが形成した映画文化を「立教ヌーヴェルヴァーグ」という。

一方、東京大学における教え子から生まれた映画監督は中田秀夫が目立つ程度だが、映画批評・研究の領域においては四方田犬彦(明治学院大学教授・映画批評家)を筆頭に、松浦寿輝(東京大学教授・詩人)、野崎歓(東京大学教授・映画批評家)、堀潤之(関西大学専任講師・映画批評家)など多彩な人材を輩出しており、蓮實自身がその創設に奔走した東京大学教養学部超域文化科学科表象文化論コースの卒業者は映画批評・研究の領域における一大勢力に育ちつつある。なお、四方田犬彦は、現在は蓮實重彦が唱えた「映画は映画の内側においてのみ特権的に語られるべき」であるとする「表層主義」に対し極めて批判的であり(四方田犬彦著『アジアのなかの日本映画』より)、蓮實批判の先鋒に位置している。

その他の活動

本業はフローベールの研究者だが、長い間予告され続けた『ボヴァリー夫人論』は未だに上梓されていない。そのことを他人に問われると「今年は出します」と答え続け約20年が経過したが、2006年発行の『表象の奈落』にフローベール論が収められた。ただし蓮實自身は『ボヴァリー夫人論』は数百ページに渡る長大なものになると予告していたこともある。

東大の純血主義(教官を全て東大出身者で固めること)を批判し、他大学から多くの教官を受け入れた。北海道大学出身で成城大学教授だった小森陽一や、学位を持っていない安藤忠雄らがいる。1988年に発生した、いわゆる東大駒場騒動又は東大・中沢事件と呼ばれる、東大教養学部の人事をめぐる騒動では、西部邁が推した中沢新一の受け入れに賛成した。

東大の時計台(駒場本館、本郷の安田記念講堂)を権威の象徴と決め付け「ああいうものは良くない」として、背後に高層ビルを建てさせて東京大学の景観を決定的に破壊してしまった。その結果、最近では卒業生や入学生が記念写真を撮るアングルに大変苦労するようになってしまった。

スポーツなどへの言及も多いが、その批評、特にサッカー批評では、知識の欠如に対する批判が多い。

草野進について

草野進(くさのしん)は、自称・公称、女流華道家。主にプロ野球への批評を書いている。贔屓のチームを持つ事を諌めたり、スポーツは生で見よと誘ったり、あえてプロ野球が退屈だと断言したりと、その挑発的な批評は、出現した当時、これまでのスポーツ批評に、静かながら確実な影響を与えた。

草野進は蓮實重彦である、とか、草野進は蓮實重彦と渡部直己との共同執筆である、などの「説」がある。(ちなみに、「共著者」でもある蓮實重彦は草野球の名捕手だったという。 自筆年表より)

主著に『どうしたって、プロ野球は面白い』、『プロ野球批評宣言』(草野進編)、『読売巨人軍再建のための建白書』(渡部直己との共著)、『日本プロ野球革命宣言―読売ジャイアンツ再建のための建白書』(渡部直己、蓮實重彦との共著)、『世紀末のプロ野球』など。

著書

関連項目

外部リンク

先代:
吉川弘之
東京大学総長
第26代:1997年 - 2001年
次代:
佐々木毅
他の言語


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