油かす (食品)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
油かす(あぶらかす)とは、食肉から食用油脂を抽出した残滓であり、元の原料や地方により様々な呼び方がある。畜産物を生産・消費する歴史の長い世界中の地域で見られる食品である。
「油かす」の名称は、一般的には西日本の同和地区を中心に流通する牛馬の大腸や小腸を原料とした保存食を指す。食肉を採取した後の廃棄物を原料として作られるため、従来は屠畜業に携わる者の多い被差別部落民の間でのみ密かに生産・消費されてきた。さいぼしと並ぶ部落の伝統食であり幻の食材であったが、差別や偏見が解消されるにつれ、その独特の風味が一般にも広く知られるようになってきた。マスメディアでは「関西地方の伝統食材」、「河内地方の郷土料理」などと紹介されることが多い為、同和地区における伝統食であることを知らずに口にする人も多い。なお、牛馬の腸を用いた狭義の「油かす」以外は部落との関連は薄い。
目次 |
[編集] 製法
食肉の脂身や内臓などを鍋の中で加熱して脂肪分を液状にし、油から取り分けて乾燥させることによって作られる。残った身の部分はかなり固くなるが、栄養的には脂質は抜けきってコラーゲンが豊富で、煮込むと非常にやわらかくなる。鯨のコロに関しては大阪での需要が大きく商品価値が高かったため、採油方法としてはより好ましい方法が開発された後も、あえて鍋で加熱する方法が使用されていた。なお現在は油脂を採る目的ではなく、食材としてゴマ油などで低温で揚げて生産されることも多い。
[編集] 牛・馬
牛や馬の腸を熱してヘットや馬油を取り出した残りで、そのまま食べたり、野菜と煮たり、お好み焼きやうどんの具などしても広く用いられる。近年は日本人の間にも内臓食の文化が浸透してきたことや、BSEの影響などで原料となる牛腸の供給が減少しているため高価になりつつある。
[編集] 豚
豚の背脂や三枚肉(豚バラ)を熱してラードを取り出した残りで、そのまま食べたり、煮物、炒め物、焼きそばの具などとして使用される。
[編集] 鯨
鯨の脂身が多い腹部の皮を熱して、鯨油を取り出した残りを乾燥させたもので、おでんのダシとして用いるほか、そのまま煮込んだ物を食べる。
[編集] その他
鶏については鶏皮から鶏油(チーユ)の抽出が家庭でも容易にできることから、油かすとしての供給量はほとんどない。しかし鶏の「せしから」や「あぶらかす」を製造し販売している企業もある。 アシュケナジム(東欧系ユダヤ人)は、シュマルツを抽出した後に残った鶏皮をグリベネス(Gribenes)と呼ぶ。