日本の郷土料理
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郷土料理(きょうどりょうり)とは、地方ごとにある独特な料理のこと。地方料理(ちほうりょうり)とも言われる。
おもに町おこしの一環で開発された特定地域で浸透している料理については「ご当地グルメ」( 地域の産品を用いたりして地域の特色を出したその地域特有の名物料理、地域性とは関連なく特定の地域のみで浸透している料理)を参照の事。
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[編集] 概要
郷土料理や地方料理の総体が日本の食文化を色濃く特徴付けているという状況は、日本料理だけではなく日本以外の料理でも同様に見られる。フランス料理からして、地方料理の集積だという人もおり、特定地域に固有の料理の総体的なものが、ある一国の料理文化を彩っていることは広く見出せるところである。
郷土料理は料理番組や県産PRなどで都道府県別による物として紹介されている。しかし、料理そのものの分布は、必ずしも同都道府県全てで区切られるものは無い。例としてあげるが、岩手県の郷土料理に南部煎餅とずんだ餅がある。これは青森県と宮城県にも存在する。
これは明治初期に行われた廃藩置県が大きく関係する。元々山脈などの気候風土や収穫できる食材によって自然と作られていた藩が、置県において複数の小藩を一つの形にまとめたり(山形県の9藩合併等)、藩が県となる際、大きさを整えるために隣接する藩の領地を一直線に区切る(青森県南部地方等)など、風土関係を考慮せずに当時の明治政府によって区切られた事に由来する。例題としてあげた南部煎餅は、青森県の前身である弘前藩主が南部家(南部藩主)の出であり、県の半分を占める南部地方が旧南部藩である事。ずんだ餅の場合、仙台藩の大部分が現在の岩手県として組み込まれた際、旧仙台藩領である地域の食文化が岩手県の地方料理として存続したからである。食文化が一都道府県のみで発達したものは、一藩全てが合併・分離する事無く一つの都道府県となった場合が殆どである(鹿児島藩など)。
戦国武将としては珍しく、料理が趣味であった伊達政宗はずんだ餅など多くの料理を開発している。これらの料理は現代でも郷土料理として生き残っている。
[編集] 発祥時期による分類
郷土料理の発祥時期を分類すると、大きく4つに分かれる。
- 江戸時代以前
- 冷蔵庫の無い時代であり、漬物や干物、燻製など、長期保存に適した調理方法による郷土料理が多い(例、山梨の鮑の煮貝)。また、長崎カステラのように、ヨーロッパから伝わった製法が独自に発展した例や、卓袱料理の様に中国から伝わった例もある。
- 明治維新と共に、海外から新しい食材や調理法が入ってくる。これらの影響を受けて考案、改良された郷土料理が多い。
- 太平洋戦争直後
- 地域おこしブーム期
- 高度成長期以降、日本の社会が工業化するにつれ、農業や漁業を基盤とする地域は、過疎化などに苦しむようになった。これに対して、地域を活性化しようとする見地から「地域おこしの目玉」として考案された「郷土料理」が多く見られるようになる。
- 消滅の危機と郷土料理の見直し
- 観光振興や地域活性化、各種イベントやマスコミの紹介などで、目に付きやすい郷土料理ではなく、地域の人たちが普段から口にしている食事を常食(じょうしょく)と称して、調査・研究している料理人や民俗学者、郷土研究家たちがいる。彼らは、地域独自の食文化が消えつつあると警告している。原因として、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなど小売業の発展や情報化の発展による日本国内の食生活・食文化の均一化・均質化、家庭内での調理機会の減少(例えば、魚を使った料理)などがあげられている。その一方で、地方のコンビニエンスストアやスーパーマーケットの食品売り場には、少なからずその地域特有の食品が並んでいるのも事実である。そうした場合、しばしば地元の住人はその食品が自らの地域特有の「郷土料理」であることを認識しておらず、全国区的な食品と思い込んでいることも珍しくない。
郷土料理には、地方の特産品を用いていたり、地方独特の地理的・歴史的条件により生まれたものなど様々なものがある。気候風土に適した食材、調味料や調理法。時代の流れにより、淘汰され変化していった料理もある。概要で述べた旧藩による地域ごとの生活習慣によって各地で独特の食文化が発展してきた。
ある意味で、全ての料理は初めて成立した時点では、郷土料理であるともいえる。その中で、江戸前寿司、お好み焼き、辛子明太子のように他の地域にも広く伝播することで、実質的に郷土料理として認識されなくなるものもある。しかし、全国に広がっている料理で、同じまたは似た呼び方であっても、食材、製法、味付けが地方毎に異なる場合もあり、「食の方言」と呼ばれることがある。例えば、雑煮、赤飯などは地方によって味噌・醤油・塩など味付けが異なり、かつ白味噌・赤味噌などの細かな分類がある為地域差が大きい。
[編集] 地域・食材による分類
例えば、柚餅子は日本各地で郷土料理として点在している。食材・料理を通じた文化交流の広がり方を知る手がかりにもなっている。
- 昆虫食
また、いなごの佃煮やスズメバチの幼虫食などの昆虫食は、山形県、福島県、群馬県、長野県、大分県から熊本県を経て宮崎県・鹿児島県にかけての九州山地脊梁部などの山岳地方の郷土料理となっていることが多い。これは、海沿いと異なり魚からのタンパク質摂取が難しいことから、昆虫を食用とした古い文化が残存したという考え方がある。昆虫は栄養価は高いものの、個々の個体が小さく、採集労力当たり得られる栄養価が相対的に低くなってしまうため、そこまで大量採集の労力をかけることが見合う地域性、また少ない労力で大量に採集できる食材昆虫の種類の選択が関係していると考えられる。そのため、多くは前述のような山岳地帯で、一度の採集で大量の幼虫が確保できるスズメバチ類、水田で労せずして大量に採集できるイナゴ、かつては魚のあらなどをため池に浸しておくだけで大量に集めることができたゲンゴロウ、絹糸生産の副産物として大量に得られるカイコのさなぎや成虫などが食材として選択されている。
- 魚貝類
この他、ウツボ料理、カツオ料理、サンマ料理など、県を越えて海岸地域に浸透した郷土料理も数多い。これらは、海上交通網を通じた漁村間のネットワークによって食文化の伝播、浸透が生じたと考えられる。和歌山県の那智勝浦と、千葉県の勝浦において、地名のみならず食文化においても多くの共通性がみられるのはその一例である。
[編集] 地域おこしの手段としての郷土料理
先述のとおり、地域おこし・地域活性化の手段・ツールとして郷土料理を活用する動きが日本各地でみられる。「食」を生かしたまちづくりとして、全国各地で郷土料理が見直される動きがある。中には、大幅にアレンジし、斬新なデザインのパッケージ等見た目の改良が施されたものもある。
農林水産省でも、農山漁村において過疎化・高齢化が進み、地域の人々が培ってきた伝統的な文化が失われつつあり、その継承が危ぶまれるなか、食文化の一つである郷土料理を見直し、地域の食材を生かした郷土料理の掘り起こしとともに、全国発信を図るため「郷土料理百選」を2007年度から選定することにしている。郷土料理を、都市と農村との交流、地域活性化につなげようという試みで農山漁村の郷土料理百選として発表した。
また、一料理人の独創的な調理法を起源とする、いわゆるご当地グルメ、B級グルメと呼ばれるようなものがその地域一帯に広まり、「郷土料理」として定着した例もある。また、「空弁」など、大手企業とタイアップして開発された商品もある。
[編集] 郷土料理に関する批判
活性化への活用が進む一方、その行き過ぎた商業主義への批判もみられる。例えば、一部には、本来その地域とのゆかりが薄い料理であるにも拘らず、地元商工会議所・商工会や行政がマスコミ等とのタイアップで、強引に「郷土料理」「名物料理」に仕立てたケースもある。
また、実際には地域住民には食べられておらず、観光客に供されるだけの「郷土料理」が多いという批判がある。土地の名物と称し、土産物として売られる菓子や漬け物には、実際には他の地域や外国で生産、加工されているものや、ラベルだけを地方のものに換えたものも少なくない。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- NIKKEI NET:食べ物新日本奇行 - 食の方言性、独自性、分布の偏りを特集している
- 臼杵の郷土料理 石仏観光センター - 大分県臼杵市の郷土料理を紹介
- 全国の郷土料理を紹介 - 全国の郷土料理をレシピ付きで紹介
- 青森県の郷土料理ガイド - 青森県庁総合販売戦略課
- あおもり食の文化伝承財 レシピ - 青森県庁総合販売戦略課