日本における漢字
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契丹文字 女真文字 西夏文字 | ||||||||||||||||||||
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この項目では、日本で使用される漢字を総合的に説明する。
日本における漢字は、表音文字である“かな”(平仮名、片仮名)と並んで日本語を表記するための主要な文字となっている。古くは仮名にたいして真名(まな、真字とも)と呼ばれた。漢語に限らず、和語までも漢字で表記する点で他の漢字文化圏の国家とは異なる特徴を持っている。現在、文部科学省の漢字制限(常用漢字、教育漢字)を受けており、その字体も、古典や書道といった特定の分野以外では、常用漢字表に基づいたいわゆる新字体を遣っている。
目次 |
[編集] 日本語の表記
詳細は日本語の表記体系を参照
現代における日本語の一般的な表記法は漢字仮名交じり文であり、漢字とひらがな(昔の法令などではカタカナ)を交えて表記する。漢字は実質的な意味を表す語に使われ、ひらがなは主に活用語尾(いわゆる助動詞を含む)や助詞に使われる。朝鮮語などでは漢字が漢語にしか使われないのに対し、日本語では和語にも使われ、外来語を除いてほとんどの語に使うことができる。煙草(タバコ)や合羽(カッパ)など古くに入った外来語には、本来の語源に漢字がないにもかかわらず当て字で漢字が使われるものがある。
日本語における文字の使用は、5世紀から6世紀ごろの漢字の輸入とともに始まり、漢字を日本語の音を表記するために利用した万葉仮名が作られた。やがて、漢字の草体を元に平安時代初期に平仮名が、漢字の一部を元に片仮名がつくられたとされる。
[編集] 読み
日本においては、ひとつの漢字には多くの異なる発音があることが多い。また、ある発音を持つ漢字が多数あることも珍しくない。
[編集] 音読み
音読みは、中国語起源の読み方であり、呉音・漢音・唐音・慣用音がある。
呉音は、5-6世紀頃に伝わった漢字音である。通説では、中国の六朝時代南部の呉地方から直接あるいは朝鮮半島を経由して日本に伝わったとされるが、これを実証できる証拠はなく、実際には、仏典などにもとづく漢音以前の伝統的な読み方が、時代・地域などを考慮されず、まとめて「呉音」とされてきた経緯がある。漢音は、奈良時代から平安時代にかけて盛んに送られた遣唐使(主な渡航先は西北部の長安)や留学僧が、唐の首都の長安で学んだ読み方を輸入した。更に鎌倉時代から室町時代にかけて、禅僧の留学や関連書の伝来、民間貿易により「唐音」と呼ばれる読み方が伝わった。このうち最も体系的なのは漢音で『広韻』や『集韻』と対応関係が見られる。慣用音は間違って定着したと分かったものなどを大正時代以降こう呼んでいる。
[編集] 音読みと中国語
日本漢字音の特徴は、中国語ですべて1音節であるものが2音節化されるものが多いことである。また語末の閉鎖音[k][p][t](入声)は次に来る語の語頭が破裂音や摩擦音である場合を除いて母音挿入され「ク・キ・フ・ツ・チ」となった。このうち[p]に母音挿入した「フ」は日本語のハ行転呼現象と相まって「ツ」や「ウ」に変化している。語末の軟口蓋鼻音[ŋ]は母音化され「ウ・イ」となった(唐音では「ン」)。 また古代中国語には清音(無声音)・濁音(有声音)の対立とともに有気音・無気音の対立があったが、日本語にはこの対立がないため字音に反映されていない。また声調が保持されておらず(京阪式アクセントを除く)、このため同音異義語が多くなっている。
[編集] 訓読み
訓読みは、個々の漢字が表す意味をすでに存在していた日本語と関連づけることであり、日本語の表記にも用いた。この際の漢字の読み方が、現在の訓読みの起源となっている。
「訓」とは、中国においては難解な語を分かりやすい語で説明したり、古語を現代語で置き換えたり、方言を共通語で説明するものであるが、日本では外国語であるため日本語に翻訳することを意味する。外国語であるため日本語の語彙と一対一対応するべくもなく、一つの漢字に多くの字訓が作られたが、やがて漢文を訓読で素読する習慣と相まって、日本語の一語では説明できない微妙な意味合いは切り捨て、一つの漢字にできるだけ一つの訳語をつけるという一字一訓に固定化するようになっていった。これによって日本では漢字に訓読みが生まれ、和漢混淆文を成立させるなど、漢字によって日本語を表記する技術を発展させていった。
[編集] 国訓
蛸を「たこ」、椿を「つばき」、沖を「おき」と読むが、中国語では全く違った意味であり、日本だけで通じる訓読みを国訓という。動植物、特に魚の名前(「鮭」=本来は「ふぐ」、「鮎」=本来は「なまず」など)には国訓が多い。
[編集] 読みの混用
上記のように日本語では漢字の読みが複数あるが、さらに複雑なことに違った種類の読みが混用されることがある。音読みだけが使われるだけでも呉音と漢音が交えて使われることも多い。また、音読みと訓読みが混用されることがあり、音読み+訓読みであるものを重箱読み、訓読み+音読みであるものを湯桶読みという。
場合によっては、漢字のみからなるある特定の語に2通りの読み方がある場合がある。例えば「仮名」という語には、仮の名前を意味する「カメイ」という読みと、ひらがなとかたかなを総称する文字の分類語である「カナ」という読みとがある。
[編集] 送りがな
日本語の用言(動詞・形容詞・形容動詞)には活用があるので、その活用する部分だけをひらがな表記して漢字の後に加える事が行われる。
詳細は送りがなを参照
[編集] 振り仮名(ふりがな)
日本語はかなと漢字を多用する言語であり、(場面によっては他にアルファベットなども用いられる)かなは基本的に表音文字、漢字は表意文字である。そこで、漢字の発音がかならずしもわかりやすくない場合などに、漢字の発音をかなによって併記することがしばしば行われる。これを「読みがな」「ふりがな」「ルビ」などと呼ぶ。
詳細は振り仮名を参照
[編集] 国字
日本で作られた漢字を国字と言う(国字には他の意味、あるいは日本・中国以外の国で作られた国字も存在するが、ここでは述べない)。国字には峠(とうげ)・畑(はたけ)・辻(つじ)などが挙げられる。主として音読みが無いのが特徴である。ただし働(ドウ)・腺(セン)・搾(サク)のように(慣用的な)音読みを持つ少数の例外もある。また中国語に取り入れられた「逆輸出国字」も少数ながら存在する(腺はその例)。
[編集] 新字体・漢字制限
幕末から日本語の文字の改革について議論があり、漢字の廃止や制限などが議論されていた。大正12年(1923年)に選定された常用漢字表を皮切りとして、GHQの占領下昭和21年(1946年)、占領方針として漢字の廃止が政府決定され、廃止までの当面使用する漢字である1850字の当用漢字を定めた当用漢字表が告示された。1949年に告示された当用漢字字体表によって俗字や略字を多く採用した新字体が使われるようになった。但し、新字体は飽くまで俗字や略字の採用であり、体系的な字体の簡略化ではないため、漢字の体系を破壊した、と批判されることがある。(例えば、「竜(龍)」「襲(襲)」「滝(瀧)」、「仮(假)」「暇(暇)」、「独(獨)」「触(觸)」「濁(濁)」などは、本来は同じ体系にあるにもかかわらず、字体の変更により別体系のものに見えてしまうものであり、漢字の体系を破壊した例としてしばしば取り上げられる。)また当用漢字に準拠し筆順を便宜上統一した881字の教育漢字が制定され教育されていた。現在は廃止という前提はなくなり、制限ではない1945字が常用漢字として制定されている。そのうち、教育漢字は1006字になっている。(国語国字問題)
[編集] 漢字の研究
日本最古の漢字字典は平安時代初期、空海が編纂したという『篆隷万象名義』であると言われる。次に昌住によって『新撰字鏡』といった漢和辞典が編まれた。院政期には『類聚名義抄』が作られている。これらは漢字を字形によって分類した字書『玉篇』の影響を受けているという。室町時代には『倭玉篇』(和玉篇)という漢和辞典が編まれ、室町・江戸を通じて流行し、「倭玉篇」が漢和辞典を指す代名詞であったという。
一方、『爾雅』の影響を受け、漢字を意味別に分類したものには、平安時代中期、源順によって編纂された『和名類聚抄』がある。
また、漢字の字音を研究・分類した韻書として、南北朝時代の『聚分韻略』がある。
[編集] 筆順
筆画を並べていく順番を筆順という。筆順は楷書、行書、草書など書体により異なっており、また同じ書体であっても何通りかの流派があり、統一されたものではない。国家水準で比較すると、日本と中国とでは、政府によって規範化された筆順が異なっているものも多く見られる。昭和33年(1958年)、『筆順指導の手びき』が文部省から出されて以降、学校教育でこれを絶対的に正しいものとして教えている傾向がある。『筆順指導の手びき』では、多くは伝統的に古典などで多用された筆順が採用されたものの、一部には古典に全く見られず、「つくられた」筆順も見受けられ、問題がないとは決していえない。 また、日本語では現在縦書きと横書きの両者が行われているが、徐々に横書きが優勢になりつつある。しかし、『筆順指導の手びき』における筆順は縦書きに適したものであり、横書きの際に不都合が生ずる、という主張もなかにはある。「可」という字は縦書きでは「一→口→亅」という筆順にすると書きやすいが、横書きではむしろ「一→亅→口」としたほうが手の動きが少なくて済むらしい。[1]
[編集] 電子機器における漢字表記
従前から、自動車のナンバープレートや交通標識、外国映画の字幕などには、筆画を省略した独自の字体が採用されてきた。これらの場合は高い視認性という要請がある。しかしそれとは別に、視認性以外の要請(機器の多画字表示能力の低さ、表示画面の狭隘など)から、パーソナルコンピューターや携帯電話機などでは漢字の筆画を省略した新たな字体が採用され、多くの日本語使用者の目にするところとなっている。卑近な例を出すと、電子機器と手書きの「号」の字の違い等である。それらの新字体について石川九楊は、将来の日本語、さらには日本文化・日本人の精神に悪影響を及ぼすのではないかと懸念するコメントを出している。
[編集] 関連項目
- 漢字
- 漢字廃止論
- 音読み - 訓読み
- 旧字体 - 新字体
- 当用漢字 -常用漢字 - 教育漢字 - 人名用漢字
- 漢和辞典
- 万葉仮名
- 国字
- 国語国字問題(漢字をめぐる政策)
- 大字
- 漢字検定
- 今年の漢字
- 四字熟語 - 三字熟語
- JIS漢字コード - 幽霊字
[編集] 関連書
- 高島俊男 『漢字と日本人』 文春新書 文藝春秋 ISBN 4166601989