弾道ミサイル早期警戒システム
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弾道ミサイル早期警戒システム(だんどうミサイルそうきけいかいシステム Ballistic Missile Early Warning System, BMEWS)は、弾道ミサイル攻撃を警戒する目的のレーダー網である。冷戦期にソビエト連邦から、主にアメリカ合衆国に対する攻撃の警戒にあたるために構築された。
[編集] 概要
1959年からシステムは構築された。3基の大型レーダーが中心のシステムである。北極越えの攻撃に対処するために、北極圏に近い箇所にレーダーは設置された。レーダーサイトは以下の通り。
レーダー情報はコロラド州シャイアン・マウンテンのNORADに送られ、そこで情報の評価が行われる。
システムの開発は、1958年までにトリニダード島において行われていた。最初期のシステムには、AN/FPS-50およびAN/FPS-92が用いられた。AN/FPS-50は、高さ50m、幅122mの網状の固定レーダーであり、Lバンドの帯域を用い、通常5,500kmの探知範囲を持つ。強力な出力を持つ大型レーダーではあるが、精度が高くないため、主に方向のみの探知に用いられた。AN/FPS-50は1基で40度の範囲をカバーしており、1基地につき3から4基配置され、120度から140度の範囲をカバーした。AN/FPS-92は、ミサイル追跡用のレーダーであり、直径26mのレーダードーム内に収められており、1秒間に32度で回転することができた。信号処理にはIBM 7094メインフレームが使用された。なお、BMEWSが完全に稼動したのは1960年代初期のことである。 1960年には、システムが誤警報を発する事件がおきている。これは、レーダー出力が強力であったために、水平線上の現れた月にレーダー波が反射し、それを感知・警報を発したというものである。この事件の後、月からの反射は無視するように設定が変更されている。
なお、チューレ空軍基地のレーダーは、1987年にAN/FPS-120フェーズドアレイレーダーに更新され、フィリングデールも1992年にAN/FPS-126フェーズドアレイレーダーに、クリアー空軍基地もAN/FPS-115 PAVE PAWSフェーズドアレイレーダーに更新されている。
[編集] 関連項目
- 遠距離早期警戒線 (DEWライン)
- 早期警戒衛星
- 部分軌道爆撃システム
- ミサイル防衛