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平泳ぎ(ひらおよぎ、breaststroke)は、水泳で、胸の前で一かき、足で一蹴り、という動作を繰り返す泳ぎ方である。水泳選手を中心にブレストとも呼ばれている。一方で俗にカエル泳ぎという言い方もあるが、例えば、カエル泳ぎでは掌で水を掻く動作が推進力になるが、正しい平泳ぎでは脇で水を掻き出す動作が主な推進力になる等、正しい平泳ぎと初心者のカエル泳ぎでは手足の動作やタイミングが異なる。
[編集] 速度と効率
平泳ぎの最高速度は約1.67 m/sとされる。初心者の壁である息継ぎ動作が比較的簡単に習得でき、また顔を上げたままの泳法がほかの泳法よりも安易なところから、水泳に不慣れな者には「最も楽で、遠泳に適している泳法」だと思われている。 しかし、平泳ぎは4泳法中唯一、完全停止と呼ばれる推進力をまったく生まない時間帯があり、様々な大会の記録を見れば明らかなとおり、実際はクロールよりも遙かに、そしてバタフライよりもエネルギー効率が悪い。例えばトライアスロンの遠泳競技では、もっとも効率の良いクロールが用いられる。
30歳を過ぎても勝利を狙える他の水泳競技種目と比べ、平泳ぎは低年齢の選手に有利な傾向にあり、女子の場合には20代前半で引退するケースもあると言われる。また、他の種目と比べて身長の高さが勝敗の決め手になりにくい傾向があるとも言われている。 その為、五輪でも日本人が最も多数、金メダルを獲得しているのが、この種目である。
[編集] サバイバル術としての平泳ぎ
平泳ぎは、速力が遅くエネルギー効率の悪い泳ぎ方である。しかし、本来の平泳ぎは、水中に顔を入れることなく泳ぎ続けられる長所をもっている。このため、呼吸法を習得してない初心者にも受け入れられやすく、また、遭難者に接近する泳法としても重宝されていた。また、船舶が沈没した際、重油まみれの海面を泳ぐ際も、顔を水に漬けない平泳ぎは、極めて有効である。平泳ぎはスピード向上の研究が図られているが、本来のサバイバル泳法としての意義も近年見直されている。
[編集] 平泳ぎから生まれたバタフライ
当初、平泳ぎの泳法規定は「うつぶせで、左右の手足の動きが対称的な泳法」とだけ定められていた。ここから1936年のベルリンオリンピックで、ルールの隙間を縫って現在のバタフライに似た手の掻きと平泳ぎのキックを組み合わせた泳法が登場し、好成績を収めると、1952年のヘルシンキオリンピックではほとんどの選手がバタフライの手の掻きを用いるようになった。そのため、1956年のメルボルンオリンピックから、別種目として独立した。現在はバタフライの動作を用いることは認められていない。
[編集] ルール
平泳ぎからバタフライができたので、ルールはバタフライに似ている。バタフライのルールの厳しい物が平泳ぎと考えても差し支えない。
[編集] スタート・折返し
審判長の笛の合図の後、スタート台に乗り、静止。出発合図員の「Take your marks...(日本では、「よーい」)」で構えたあとは、号砲まで静止しなければならない。「よーい」の合図から号砲までに動いた場合、失格となる。 号砲後飛び込み、潜水中にはひと掻き・ひと蹴りのみが許されており、一連の動作中に頭の一部を水面上に出し、浮上して泳法に入らなければならない。また、折返しを終えてからの潜水中にも同様にひと掻き、ひと蹴りが許されている。なお、2006年のルール改正により、スタート及び折返し後の水中動作1回につき1度だけ、ドルフィンキックの使用が認められている。ただしストローク動作が始まる以前にドルフィンキックを打ってはならないとされている。しかし国際大会でさえストローク動作以前にドルフィンがあっても失格になることは少ない。
[編集] 泳法
両手は、スタートおよび折返し後のひと掻きを除き、尻の線より後まで掻いてはならない。両手両足の動作は左右対称でなければならず、肩は水平でなければならない。また、足の甲で水を蹴ってはならない。(あおり足やドルフィンキックなど)ひと掻き・ひと蹴り後、頭を水面から出さなければ潜水泳法として失格になる。ターン・ゴールのタッチは両手同時にしなければなければならない。(ただし、肩が水平なら手は同じ高さでなくてよい)泳ぎのサイクルは「ひと掻きひと蹴り」であり、この順序で行う組み合わせでなければならない。このため、折り返し及びゴールタッチの直前でタイミングをあわせるためにサイクルを無視した連続での掻きや蹴りは違反となる。ほかの種目と同様にプールの壁(端)まで自分のレーン以外のところに行ったり、コースロープに触れたり、プールの底に立ったり歩いたり蹴ったりしてはならない。
[編集] 歴代日本人金メダリスト
[編集] 男子
[編集] 女子
[編集] 記録
[編集] 男子
[編集] 世界記録
距離 |
記録 |
記録保持者 |
国籍 |
日付 |
場所 |
50m |
27秒18 |
オレグ・リソゴル |
ウクライナ |
2002年8月2日 |
ベルリン |
100m |
59秒13 |
ブレンダン・ハンセン |
アメリカ |
2006年8月1日 |
アーバイン |
200m |
2分07秒51 |
北島康介 |
日本 |
2008年6月8日 |
東京辰巳国際水泳場 |
[編集] 日本記録
距離 |
記録 |
記録保持者 |
所属 |
日付 |
場所 |
50m |
27秒65 |
北島康介 |
日本コカ・コーラ |
2008年6月7日 |
東京辰巳国際水泳場 |
100m |
59秒44 |
北島康介 |
日本コカ・コーラ |
2008年6月6日 |
東京辰巳国際水泳場 |
200m |
2分07秒51 |
北島康介 |
日本コカ・コーラ |
2008年6月8日 |
東京辰巳国際水泳場 |
[編集] 高校記録
距離 |
記録 |
記録保持者 |
所属 |
日付 |
場所 |
50m |
28秒86 |
立石諒 |
キッツウェルネス藤沢 |
2007年8月30日 |
東京辰巳国際水泳場 |
100m |
1分01秒31 |
北島康介 |
日本 |
2000年9月16日 |
シドニー |
200m |
2分12秒33 |
立石諒 |
神奈川県 |
2006年10月2日 |
尼崎の森中央緑地健康増進施設 |
[編集] 中学記録
距離 |
記録 |
記録保持者 |
所属 |
日付 |
場所 |
50m |
29秒29 |
山田猛士 |
イトマンSS |
2006年1月16日 |
シドニーAC |
100m |
1分03秒89 |
山田猛士 |
上小阪東大阪中 |
2005年8月23日 |
三重県営鈴鹿スポーツガーデン水泳場 |
200m |
2分16秒37 |
山口観弘 |
志布志DC |
2008年6月8日 |
東京辰巳国際水泳場 |
[編集] 学童記録
距離 |
記録 |
記録保持者 |
所属 |
日付 |
場所 |
50m |
32秒10 |
林和希 |
NASSM |
2005年3月13日 |
三重県営鈴鹿スポーツガーデン水泳場 |
100m |
1分09秒29 |
宮川孝裕 |
イトマンSS |
1994年1月4日 |
メルボルンSC |
200m |
2分26秒96 |
関慎介 |
イトマン富田林 |
1995年1月3日 |
メルボルンSC |
[編集] 女子
[編集] 世界記録
[編集] 日本記録
距離 |
記録 |
記録保持者 |
所属 |
日付 |
場所 |
50m |
31秒75 |
田中雅美 |
JSS |
2000年4月23日 |
東京辰巳国際水泳場 |
100m |
1分07秒27 |
田中雅美 |
JSS |
2000年4月20日 |
東京辰巳国際水泳場 |
200m |
2分23秒85 |
種田恵 |
神奈川大 |
2007年9月9日 |
東京辰巳国際水泳場 |
[編集] 高校記録
距離 |
記録 |
記録保持者 |
所属 |
日付 |
場所 |
50m |
32秒05 |
縄田さなえ |
セントラル千葉 |
2001年4月20日 |
横浜国際プール |
100m |
1分08秒63 |
北川麻美 |
春日部共栄高 |
2005年8月20日 |
千葉県国際総合水泳場 |
200m |
2分27秒10 |
川辺芙美子 |
イトマンSS |
2002年6月14日 |
東京辰巳国際水泳場 |
[編集] 中学記録
距離 |
記録 |
記録保持者 |
所属 |
日付 |
場所 |
50m |
32秒28 |
杉山沙侑南 |
とこはSS |
2007年10月6日 |
札幌平岸プール |
100m |
1分09秒69 |
杉山沙侑南 |
とこはSS |
2007年10月7日 |
札幌平岸プール |
200m |
2分26秒65 |
岩崎恭子 |
日本 |
1992年7月27日 |
バルセロナ |
[編集] 学童記録
距離 |
記録 |
記録保持者 |
所属 |
日付 |
場所 |
50m |
33秒58 |
中村沙耶香 |
イトマンSS |
2000年1月2日 |
メルボルンSC |
100m |
1分12秒83 |
田實毬沙 |
JSS八王子 |
2003年8月26日 |
東京辰巳国際水泳場 |
200m |
2分34秒75 |
田實毬沙 |
JSS八王子 |
2004年1月11日 |
栃木県立温水プール館 |
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク