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古今亭志ん生 (5代目) - Wikipedia

古今亭志ん生 (5代目)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

5代目古今亭 志ん生(ここんてい しんしょう、1890年明治23年)6月28日 - 1973年昭和48年)9月21日)は、明治後期から昭和期にかけて活躍した落語家。20世紀を代表する名人に数えられる。本名、美濃部 孝蔵(みのべ こうぞう)。生前は落語協会所属。出囃子は『一丁入り』。

長男は10代目金原亭馬生、次男は3代目古今亭志ん朝(初代志ん朝は後の10代目馬生)。孫は女優池波志乃、義孫は俳優中尾彬、曾孫には子役山田清貴。

目次

[編集] 来歴

  • 東京・神田亀住町の生まれ。出自は高位の士族。生家は徳川直参旗本であった美濃部家で、菅原道真の末裔を称する(「午後は○○おもいッきりテレビ 今日は何の日」)。
  • 祖父までは徳川家の槍指南番をしていたが、父が道楽者で、明治維新の際の支給金を遊興ですべて使い果たした(なお、この頃、「ステテコの遊遊」こと三遊亭圓遊と親密だったという)。志ん生が生まれたころは、父は警視庁で巡査をしていて、貧乏ぐらしだった。
  • 天狗連三遊亭圓盛2代目三遊亭小圓朝門下、本名:堀善太郎。)の門で三遊亭盛朝を名乗る。後に当時名人といわれた4代目橘家圓喬に入門(前座名から考えて、事実は2代目三遊亭小圓朝に入門ではないか、つまり名人圓喬の弟子であったというのは志ん生の見栄ではないかという説も存在する)、三遊亭朝太から三遊亭圓菊を名乗り二つ目になる。後の4代目古今亭志ん生門に移籍後、真打昇進。1939年に5代目古今亭志ん生襲名(朝太から志ん生襲名まで16回?改名したという)。
  • 1922年清水りんと結婚。
  • 一度、講釈師になり、再度、落語家に復帰した甚語楼時代は、前座同然の扱いで貧窮極まる。この時代、浅草・橋場に親の貸家があり、その借家料で暮らしながら劇作家の修行をしていた「染物屋の若旦那」である宇野信夫のうちによく出入りして、世話になっていた。
  • 1945年、物資不足で満足に酒が飲めなくなったとの理由で、6代目三遊亭圓生と共に物資豊富と言われていた満州に慰問芸人として渡る。もっともこの理由は後年自ら語った物であり、実態は第三者からの依頼によるものと思われる。昭和22年1月12日、命からがら満州から帰国。同月27日帰宅。帰国後は一気に芸・人気とも勢いを増し、寄席はもちろん、ラジオ出演なども多くこなす売れっ子となった。「天衣無縫」ともいわれる芸風は唯一無二のものであり、巧拙を超えた面白さは他の追随を許さず、また誰にも真似の出来ないものであった。(後年、名人と呼ばれるようになった息子志ん朝は、「第二の文楽は出るかもしれないが、第二の志ん生は出ないでしょう」と語っている。また、「完成した志ん生」を見ると「天衣無縫」と思えるが、実際は売れない時代が多く、芸について苦労して非常に考えた上で、あの芸風を苦心して作りあげたことが、同時代人の証言から伺える。)
  • 『高座に座る姿そのものが一枚の絵であり、落語である』とまで言われた志ん生であるが、現代では考えられないようなエピソードにも事欠かない。ある日、志ん生は酔っ払ったまま高座に上がって、そのまま居眠りを始めてしまった。それを見た客は怒るどころか粋なもので、「いいから寝かしてやろうじゃねえか」「酔っ払った志ん生なんざ滅多に見られるもんじゃねえ」と、寝たままの志ん生を楽しそうに眺めていたという。しかし、この客が言った「寝かしてやろう」は、実は3代目三遊亭圓歌が作ったエピソードであり、圓歌本人が語っている。
  • 圓生は絶妙な間や気品といった話芸を磨いて落語を究めた対照的な名人であったが、圓生は「あの人(志ん生)とは道場の試合では勝てますが、野天の試合(真剣勝負)じゃあ勝てやせん。」と芸の差を剣道に例えて脱帽させたほどであった。
  • 1946年新東宝映画銀座カンカン娘」に落語家、桜亭新笑役で出演し「替わり目」を7分近く演じている。この映画は、志ん生が演じる落語の映像としてはもっとも古いものである。
  • 1957年にライバル8代目桂文楽の後任で落語協会4代目会長就任。以後1963年まで会長を務めた。因みに後任の会長は文楽が再任している。
  • 1956年芸術祭賞受賞。
  • 1961年暮れ、読売巨人軍優勝祝賀会の余興に呼ばれるが、口演中に脳溢血を発す。3ヵ月の昏睡状態の後に復帰するも、その後の高座からは以前の破天荒ともいうべき芸風が影を潜めた。この時を境に志ん生の「病前」「病後」とも呼ばれる。
  • 幾たびも師匠替え・改名をしている事で有名で、長く貧乏生活を送ってきた事による借金からの逃亡と酒による放蕩ぶりが祟ったものとも言われている。
  • 貧乏暮らし、酒と実生活も落語の世界そのものであり、数限りない逸話を残している。関東大震災のときは、酒が地面にこぼれるといけないと真っ先に酒屋へかけこみ、酒を買おうとしたという。また、戦時中、既に東京が空襲にあっている頃、漫談家の初代大辻司郎に「ビールを飲ましてあげるからいらっしゃい」と招かれて数寄屋橋に出かけ、しこたま呑んだ後、お土産にビールを詰めた大きな土瓶を貰うが、帰宅中に空襲が始まり「どうせ死ぬならビールを残してはもったいない」と全て飲み干し、酔っ払ってそのまま寝入ってしまった。あくる朝、奇跡的に無傷のまま目覚めて帰宅。家では「志ん生は空襲で死んだらしい」とあきらめられていたと言う。
  • また、満州にいて終戦を迎えたものの、混乱状態の満州から日本への帰国の目処が付かず、1946年頃の国内では「志ん生は満州で死んだらしい」と噂が流れていた。実際本人も今後を悲観して、支援者から「強い酒なので一気に飲んだら死んでしまう」と注意されたウォッカ一箱を飲み干し、数日間意識不明になったことがあった。その後意識を回復した志ん生は、「死なないのなら少しずつ飲めばよかった」と言ったという、まさに落語を地でいく逸話が残っている。
  • TBSラジオの専属時代に他局に出演したが、それを指摘されて「何かい、専属ってのは他に出ちゃいけないのかい?」と訊ね、TBSの方も「志ん生だからしょうがない」といって諦めたというエピソードもある。後に解除されニッポン放送の専属となる。
  • 上方でも文楽等と共に戎橋松竹等の寄席に上がる事があったが、当時上方はトリオ漫才(かしまし娘等)の全盛期で客席には漫才を見に来た団体客が多く、落語は(志ん生でさえ)まったく受けなかった。その為か志ん生は任された持ち時間を守らずにすぐ切り上げてしまい、次の出番の芸人を困らせていた。
  • 1964年に自伝「びんぼう自慢」を刊行、さらに5年後に加筆して再刊されたが、本人は正規の学校教育を受けていなかった為か字は読めても書けず、ゴーストライターに依頼したという。
  • 1968年上野鈴本演芸場初席が最後の高座となった。
  • 1971年12月9日に妻りんが亡くなり、12月11日に葬儀を行った翌日に文楽が亡くなったが、妻の葬儀で号泣しなかった志ん生は、文楽の葬儀では号泣した。
  • 余芸として味のある端唄などを得意とした。元・慶應義塾々長小泉信三は志ん生の「大津絵」を聴き、たびたび目頭を濡らしたといわれている。
  • 1973年自宅で死去した。享年83。墓所は文京区小日向の環国寺。現在では同じ墓に馬生、志ん朝も眠っている。

晩年は寄席に出ず引退同様であったが、(家族が健康面を考慮した)高座に上がる気持は持ち続けていた。1971年ごろ、すでに高座を去っていた文楽がウイスキーを土産に志ん生を訪ね二人は心行くまで歓談したが、別れ際に志ん生は「今度は二人会の相談をしようよ。」と文楽に呼びかけていたと家族が証言している。

噺に出てくる登場人物の名前はかなりいい加減で、最初の「熊さん」から最後には「八っつあん」に代わるなど日常茶飯事であった。息子馬生が「お父ちゃん、あの人の名は何だっけ?」と問うと「何言ってやんでえ。そんなものア何だっていいんだよ。」と答えたり、噺の途中でも「ええ・・・その名前はですな・・・まあどうでもいい名前。」と何食わぬ顔で済ませたりするなど、登場人物の名を忘れて高座を去った文楽とは好対照であった。

21世紀に入った現在もなお、録音がCDなどの媒体で流通しており、志ん生の落語を聞く事は比較的容易である。その一方で映像として残っている志ん生の姿は少ない。

[編集] 改名遍歴

志ん生の改名遍歴は諸説ありここでは一般的に知られている遍歴を記載。改名(複名も入れて)は18回している。

  1. 1905年 - 三遊亭盛朝(アマ時代)
  2. 1910年 - 三遊亭朝太
  3. 1917年 - 三遊亭圓菊(二つ目)
  4. 1918年 - 古今亭馬太郎(6代目金原亭馬生4代目古今亭志ん生門下)
  5. 1920年 - 金原亭武生
  6. 1921年9月 - 金原亭馬きん(真打)
  7. 1924年11月 - 古今亭志ん馬
  8. 1925年4月 - 小金井芦風(3代目小金井芦州門下で講釈師となる)
  9. 1925年9月 - 古今亭志ん馬(落語に復帰)
  10. 1925年9月 - 古今亭馬きん
  11. 1926年4月 - 古今亭馬生
  12. 1927年1月 - 柳家東三楼(初代柳家三語楼門下)
  13. 1927年11月 - 柳家ぎん馬
  14. 1928年5月 - 柳家甚語楼
  15. 1930年9月 - 隅田川馬石
  16. 1930年10月 - 柳家甚語楼
  17. 1932年7月 - 古今亭志ん馬
  18. 1934年9月 - 7代目金原亭馬生
  19. 1939年3月 - 5代目古今亭志ん生

[編集] 出演番組・映画

[編集] 志ん生を扱った作品

2人の大名人は、敗戦時を満洲南端の都市大連で迎えていた。ソ連軍の侵攻と同時に大連は封鎖され、日本国からは見捨てられる。2人が再び祖国の地を踏んだのは、実に600日後のことであった。まさに、大爆笑の大悲劇!

戦禍の街を命からがら逃げまどう2人の噺家。巡りあうのは、まるで地獄のような情景ばかり。 住む家もなく、食べる物もなく、次第に狂気をさえ帯びてくる2人が、最後に行き着いた場所とは……。

  • 『クライマックス 人生はドラマだ 古今亭志ん生』(日本テレビ、単発ドラマ、1960年
    • 本人の半生を描いた作品で自身も出演し長男・馬生が、自分の生まれた当時の父親役で次男・朝太(後の志ん朝)が同じく父親の青年時代を演じた。他にもこのドラマには多数の落語家が出ている。
  • おりんさん』(フジテレビ系列、東海テレビ系列)
    • 志ん生の妻にスポットを当てた昼ドラ。妻美濃部りんは孫池波志乃が演じ、語り(ナレーション)を志ん朝が行なった。
  • 『山藤章二のラクゴニメ』(ポニーキャニオン
    • 志ん生の音声は残っているが映像がほとんど無いという事で、1990年代に当時のデジタル技術を駆使して、収録されて残る志ん生の肉声と、山藤章二の手によるイラストアニメを組み合わせ、志ん生の高座姿のイメージを再現しようという企画が行われた。これによって製作された映像作品。当初はビデオ、後にDVDで販売されている。

[編集] 得意演目

持ちネタの多いことでも有名で、この点では志ん生と6代目三遊亭圓生が昭和江戸落語の双璧とされる。やはり名人と言われたがひとつの噺を徹底的に磨き抜くため演目の少なかった8代目桂文楽とは好対照を成す。

火焔太鼓」を筆頭に、志ん生の高座こそが古今の絶品とされる演目は数多い。小噺作りも上手で「蛙の女郎買い」などが有名。

他多数

[編集] 著書

  • なめくじ艦隊
  • びんぼう自慢
  • 志ん生の噺(全5巻)
  • 古典落語・志ん生集

[編集] 弟子

[編集] 関連項目

  • 2代目快楽亭ブラック(自ら「志ん生を越える」とばかりに改名を繰り返した噺家。計17回)
  • 橘家文三(同じく改名歴が多い噺家で戻りの復名を入れると計16回)

[編集] 脚注


[編集] 外部リンク


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