反イスラーム主義
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反イスラーム主義(Antiislamism)とはイスラームの教義・価値体系(とされているもの)を本質的に劣等とみなし、攻撃する立場の事。主として西ヨーロッパ・キリスト教社会などで広く見られたが、現代ではそれに限らずイスラーム教徒と接触した社会全てに多かれ少なかれ見られる現象である。
目次 |
[編集] 歴史
西ヨーロッパ・キリスト教社会と東地中海 = 北アフリカ・イスラーム社会の間には十字軍、レコンキスタ、オスマン帝国のヨーロッパへの侵略、近代の欧州のイスラーム世界への侵略と植民地支配など歴史的対立が見られ、相互の不信は根強いものがあった。更に現代のアメリカの覇権主義とイスラエルのパレスチナ占領はこれらの地域のムスリムを激怒させ、過激派の浸透や教理の硬直化を招くこととなった。
キリスト教徒の側は、イスラム教徒内部の多様性を無視し、女子割礼や名誉の殺人、改宗の禁止、異教徒迫害、女性の隔離などのイスラム社会の悪習・問題点を過度に一般化して「イスラムの本質」とし、「野蛮で人権を無視する遅れた宗教」とイスラムを定義する傾向を強めた。一方ムスリムの側もこれらのプロパガンダに反発する形で教理を硬直化・過激化させ、結果としてこれらの悪習を「イスラムの良き道徳」として積極的に擁護し、キリスト教徒へのジハードを唱える過激派の温存・浸透を招いた。
更にヨーロッパではイスラーム教徒の移民が増えるにつれ、上記の様な偏見に基づく対立が強まり、表向きの「寛容さ」とは裏腹にイスラーム教徒に対する差別・蔑視・偏見などが横行し、それに反発してイスラームに縋る移民の若者との間で緊張が高まった。遂にはオランダやフランス、デンマークなどでムスリムの暴動やクリスチャンとムスリムとの騒乱が発生し、現在でも欧州各国はこのような暴動の再発を防ぐため対策を重ねている。
欧州以外でも、インド亜大陸ではイギリスの植民地統治に依りムスリムとヒンドゥーの間の対立が激化、印パ分離独立と印パ戦争へと発展した。現在でもヒンドゥー教徒が多数派を占めるインドでイスラーム教徒は迫害される存在であり、時折両者の間で騒乱が起きている。
歴史的にイスラーム社会とのかかわりが薄かった地域でも、近年のイスラーム過激派のテロが報道されるにつれイスラームへの偏見が広まり、反イスラーム感情が強くなりつつある。
[編集] 主張
反イスラーム主義者達の主な主張を列挙する。
- イスラーム法によれば非ムスリムは確かにイスラム教徒の統治下に於いてムスリムとの共存を許されるが、それは人権の制限を伴うきわめて不平等な共存であり、到底容認できない。
- イスラームの規定(クルアーン、シャーリア)は女性差別的であり、女性を隔離して男性の支配下に置いている。
- イスラームは性的自由、とりわけ女性や性的少数者のそれを著しく抑圧している。名誉の殺人や女子割礼、婚外交渉を行った者や性的少数者への石打ち刑などの慣習はその証左である。
- イスラームはその歴史の始まりから剣による強制改宗を行っており、異教徒に対し攻撃的で狂信的な宗教である。
- クルアーンによればイスラムから異教への改宗は死刑であり、これは民主主義社会の基本原理である信教の自由に違反している。イスラムの非寛容性を証明している。
- イスラームでは異教徒男性とイスラーム女性との結婚は許されず、男性はイスラームに改宗せねばならない。これは信教の自由に違反している。
- ムハンマドは9歳の女の子であったアーイシャとセックスを行った。これはアーイシャに対する児童性的虐待であり、ムハンマドはぺドフィリアである。ムスリムの世界で小児婚が絶えないのはムハンマド自身がこれを行ったからである。
- ムハンマドは養子ザイドの妻ザイナブを自分の妻としてしまい、あまつさえコーランでそれを正当化している。これは理性のない馬やラバ同然である。
[編集] 批判
反イスラーム主義に対する批判としては、主としてイスラーム過激派による護教主義的なものと、リベラリストによる文化平等主義的なもの、とに大別される。それぞれ批判の立脚点が大きく異なることに注意。
[編集] リベラリストによる批判
反イスラーム主義者はイスラームを「本質的に狂信的であり、女性差別的で異教徒に対し攻撃的な宗教」と定義し、イスラームを攻撃している。しかしムスリム・非ムスリムを問わずリベラル派の知識人からすればこれは公平さを欠いた認識とされる。彼等によればイスラームの中にある狂信性、抑圧性、女性差別性などは世界の他の地域・他の文化や他の宗教にも同様に見られたものであり、反イスラーム主義者の意見はイスラームに対してのみそのような性質を著しく誇張(それと対比して自分達の文化・宗教を美化)するとしている。またムハンマドの個人的言動とイスラーム信仰とを混同しているともしている。以下に、反論の例を挙げる。
- 女子割礼はアフリカのイスラーム教徒のみならず、キリスト教徒や自然信仰者などの間でも広く行われている悪習である。
- 9歳のアーイシャとセックスを行ったと伝えているのはあくまで一つの伝承であり、信憑性は高くない。またこれが仮に事実だとしても、ムハンマドの個人的生活と宗教・文化としてのイスラームは別物であり、反イスラーム主義者は両者を混同している。
- ザイナブとの結婚はザイド、ザイナブ両人の了承があって行われたものであり、特に問題ではない。
- 女性の隔離・性的自由の抑圧はビクトリア朝時代のイギリスを初め欧州・アメリカでも数十年前までかなり強いものがあったし、現在でも決して根絶されてはいない。ヒンドゥー教社会(インドなど)・儒教社会(中国、韓国・朝鮮、ベトナム等)・仏教社会(東アジア・東南アジア諸国)でも同じである。逆にイスラーム社会でもトルコのように女性の社会進出が進んでいる国もある。
- 異教徒への攻撃性はキリスト教徒の十字軍、江戸時代日本のキリスト教禁圧などにも見られるように普遍的なものであり、イスラムのみを責めるのは公平ではない。
- イスラームの建前としては同性愛者などの性的少数者は禁忌とされていたが、歴史的にみれば容認されていたことの方が多い。現代のイランやサウディアラビアのみを見てイスラムの同性愛に対する態度を評価するのは不公平だ。
- 中央アジアやインド、ヨーロッパのムスリムは必ずしも改宗を全面的に否定してはいない。実際に改宗者も存在している(有名な例を挙げると、アルゼンチンのカルロス・メネム大統領)。結婚時の改宗問題についても、これらの地域ではイスラーム法の規定を無視して結婚する事例も少なくない。
- ムガール帝国統治下のインドでは、ジズヤの廃止などイスラーム法によって規定されたムスリム/ズィンミーという二分法に基づく「不平等な共存」を乗り越える動きが存在しており、一定の成果を収めている。故にイスラム教では真の宗教的寛容と信教の自由は実現できないという主張は誤りである。
- 如何なる宗教・文化も悪い面を乗り越えて発展していくものであり、イスラームにのみその力を認めないのはエスノセントリズムだ。
[編集] イスラーム過激派による批判
教条的イスラームの護教的立場からの反イスラーム主義批判の中では、イスラームの他宗教に対する絶対的な優越性が強調され、故にイスラーム法に規定されたムスリムと非ムスリムとの間の人権的格差は差別ではなく正当な“区別”であるとされる。このような立場に対しては反イスラーム主義者のみならず、反イスラーム主義を批判するリベラリストの間からも強い批判がある。以下に、反論の例を挙げる。
- イスラームは全人類に与えられた最後にして最高の啓示であり、本来ならば全人類がイスラームを信仰すべきである。慈悲深いアッラーは異教徒に対しても生存権と財産権を保障されたが、これは至尊にして唯一なるイスラムの優位あってのものであり、それに異議を唱える権利は異教徒にはない。イスラーム教徒と異教徒との平等な権利などという主張はアッラーに対する冒涜であり、決して許されない。
- イスラームが他の宗教に優越しているのはクルアーンにも書かれているように自明の真実であり、イスラーム教徒が他宗教に改宗することはその人物から救いの権利を剥奪することである。よって改宗の禁止は人権の抑圧などではない。
- 片親がムスリム、もう片方が異教徒の場合その間に生まれた子供は異教に入信する恐れがある。イスラームは言うまでもなく異教より優越しているので、このような事態は子供にとって有害である。故に異教徒はイスラム教徒と結婚する際は必ずイスラム教に改宗しなければならない。イスラム男性とキリスト教・ユダヤ教女性との結婚は例外的に許可されるが、これは両教徒がアッラーの教えを一部とはいえ信奉しているからである。
- 女性の服装に関する規定は貞節と慎みを重んずるイスラームの良き道徳に基づくものであり、異教徒の淫らな服装こそ批判されるべきである。このような不道徳な行いをする権利や自由など存在してはならない。
- 同性愛や婚外交渉などの淫らで堕落した性文化はアッラーの教えに背くものであり、決して許されない。このような行動を容認する自由などあってはならず、死罪を含む刑罰を以って取り締まらなければならない。
[編集] 著名な反イスラーム主義者
- ニコラ・サルコジ(フランス共和国大統領、暴動を起こしたイスラム移民の若者を「社会のクズ」と呼んだ)
- ジャン=マリー・ル・ペン(フランスの排外主義極右・サルコジ以上の反イスラーム主義者)
- 池内恵(イスラームの本質は異教徒に対する攻撃性であると主張している)
- バート・ヨール(イスラームの異教徒に対する非寛容を強調するユダヤ人女性)
[編集] 関連項目
- エスノセントリズム
- ヨーロッパ中心主義
- 反欧米主義
- イスラム教における棄教
- イスラム教と他宗教との関係
- イスラム教における飲酒
- ムスリムと非ムスリムとの婚姻
- イスラーム世界の少年愛
- アラブ イスラーム学院(イスラム護教論の立場から反イスラーム主義に対抗している)
- 中田考(同じく教条的イスラームの擁護を主張し、反イスラーム主義に対抗している)
- 多神教優越主義
- 反宗教主義
- 科学原理主義
- ムハンマド風刺漫画掲載問題
- 悪魔の詩
- ウィキイスラーム
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