モデルチェンジ (自動車)
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モデルチェンジは、工業製品全般に用いられる言葉であるが、本稿では自動車に限定してこの語を定義する。
自動車がそのペットネームを保ったまま、新型に移行することを指す。モデルチェンジには、「フルモデルチェンジ」と「マイナーモデルチェンジ」がある。
目次 |
[編集] 歴史
ゼネラルモーターズが1920年代に考案したシステムである。当時シェアでフォードのT型フォードに負けていたGMは巻き返しを図るべく、デザインを変えた新しいタイプの車を登場させる事で、消費者が乗っている車を、人為的に流行遅れにし、新しい車への購買意欲を掻き立てる事に成功した。
『計画的陳腐化』と呼ばれる手法で、これが自動車ビジネスにおけるモデルチェンジの確立である。一方のフォードは1930年代までT型のモデルチェンジを拒み続け、この間アメリカ国内における両社のシェアは逆転する事になった。またこのモデルチェンジの考え方は、自動車以外の様々な工業製品にも波及していく事になる。
[編集] フルモデルチェンジ(フルチェンジ)
現行型から次期型へと、ほぼ完全に刷新されるモデルチェンジのことを指す。FMCと略記される。新聞においては「全面改良」と表記される場合もある。また、メーカーによって表現が異なる場合がある。
日本においては、新型車移行後、およそ5~6年程のサイクルでこれが繰り返される傾向が強い。かつてバブル景気の1990年代前半まではほぼ4年ごとに行われていた。[1]一方で、海外や商用車の場合7~8年サイクルが主流である。ただ、日本車でもマーチ(10年サイクルでFMC)のように、モデルライフの長いヨーロッパに合わせた車は少ないながらも存在する。また、生産計画の都合や、市場での評価によっては、短期間(3年未満)でフルモデルチェンジする場合もある。
例として:
- 不人気車種の場合、仕切り直しを図る為
- 軽自動車においては、規格変更が生じた場合(2代目ホンダ・ライフ等)
- 姉妹車(バッジエンジニアリング)やOEM車においては、元車種がフルモデルチェンジした場合(日産・オッティなど)
基本的に、内外装の意匠や車内の設備は一新される。ただしエンジン、ドライブトレインを含むシャーシ(車台)の新規開発には、人、物、時間などのリソースが膨大となり、コスト負担も大きくなり、販売価格にも影響を及ぼす。その為、特殊なモデルを除き、数年代に渡ってのシャーシ流用や別車種のプラットフォームを流用することが通例となっている。
フルモデルチェンジ後も先代車両の製造が継続される場合がある。例としてスズキ・スイフトは2代目へのフルモデルチェンジ後も初代の廉価モデルのみを2年間併売していた例がある。開発費、償却、生産台数、販売価格などの理由から、乗用車(特にセダン)のバリエーションで、利益の出にくいワゴン、バン、ピックアップトラックなどに多く見られる。
[編集] スキンチェンジ
「計画的陳腐化」にのっとり、スキン、すなわち表面上の変更の域を大きく出ないモデルチェンジ。車両型式(かたしき)は新世代となっても、スタイルの変更以外は先代そのままか、あるいは少変更にとどまる場合に用いられる用語で、マイナスイメージの含みがある。
[編集] マイナーモデルチェンジ(マイナーチェンジ)
ある車種(モデル)がフルモデルチェンジをおこなうまでの、ライフサイクル期間内に行なわれる小規模な仕様変更を指す。
通常、当該モデルが『競合他社の車との競争力を維持すること』を目的として行われる技術的な施策のひとつ。他には、マーケティングやセールスにおける施策がある。また、法律や行政による規制への技術的対応の為や、不具合の解消のために行われる場合もある。MCと略記される場合が多い。新聞・メーカーにおいては一部改良と表記される場合もある。
通常、フルモデルチェンジの中間期に行われることが多く、しばしばそれ以前を「前期型」、それ以降のものを「後期型」(3段階の場合は中期型、それ以上は「数字+型」)と呼称する。またメーカーによっては、定期的に小変更を加えていく手法をとっているところもある。「年次改良」と呼んで1年毎に行われることが多く、この手法で変更された同一車種の区別は「イヤーモデル」と称される(例:3代目ステップワゴン等)。これは、ライフサイクルが長い欧米の車種において、従来からよく行われている手法である。日本国内においては、スバルがレガシィ、フォレスター、インプレッサなどにおいてこの手法を採っていることで知られる。開発コストの高騰や、コンピュータ技術の導入に伴う基本設計の精度充実に伴い、日本でも近年はモデルサイクルが伸びる傾向にあり、マイナーチェンジを複数回行なう車種も増加している。ただし、これらの法則に当てはまらない車種も存在する(例:ランサーエボリューション)。
外観の変更は、ライト類など樹脂パーツの意匠変更などに留まることが多い。しかしながら、不人気車種であったり新技術の導入が図られたりする場合には、まれにボディパネル、インパネ、駆動系にも及ぶ変更が行なわれることもある。このような場合、「ビッグマイナー」という矛盾した呼称を用いられることがある[2]。カーナビゲーション技術の高機能化や、低価格化に伴う内装の変更など、多くの車種に影響するコンポーネントや生産工程の変更の場合、重複を避け全体のコストを低減するため、メーカーは自社の生産する多くの車種に対してマイナーチェンジを一斉に行なうことがある。
[編集] フェイスリフト
米国で用いられる、フェイスリフト (Facelift) には、老化によってたるんだ顔を持ち上げる「美容整形」の意味があり、自動車の場合、モデルライフ途中のテコ入れとして、外観を変更する際に用いられる用語で、「計画的陳腐化」を生み出した米国流の考え方がよく現れた言葉でもある。この場合、小改良や車種の追加、整理なども行われことがあるが、あくまでも「見栄えの向上」が主眼であり、機械的な内容にはあまり進化が見られない場合が多い。日本でも外観の変更が伴うマイナーチェンジに用いられる。
フェイスリフトが行われるモデルライフ中盤には、次世代型のスタイリングが既に固まっている場合が多く、現行車にその意匠を一足先に取り入れ、モデルチェンジの際の販売台数と中古車価格の「段落ち」を防ぐ役割も担っている。
[編集] 車名の変更と車両型式との不一致
通常のフルモデルチェンジではプラットフォームや車格が変更され、車両型式(かたしき)継承されない場合でも、営業上の都合から旧来からの車名を引き継ぐことが通例となっている。しかしそれとは逆に、歴代型や現行型にネガティブなイメージがある場合や、新型でユーザー層を大きく変えたい場合、車両としては通常のフルモデルチェンジでありながら全く新しいペットネームが与えられる場合がある。その場合は車両型式も旧型の系列を引き継いでおり、基本的なコンポーネントの多くも流用されている。
近年の例では、トヨタ自動車の「カリーナ」から「アリオン」へのモデルチェンジは、生産設備や基幹部品の変更を最小限に抑えながらブランド力の低下を打破し、若年層の取り込みによる販売台数の増加をねらったものとされる。他にも似たようなケースは多くあるが、1990年代以降、各メーカーが長く主力としてきた、伝統ある車種でこのようなケースが目立っている。
また、別車種である事を消費者に認識させる為に、メーカー自身が先代車種の後継車である事を否定するためにもこの手法が用いられる。この場合、後継車というより代わりに発売されたものとみなした方がよい。トヨタ自動車のアイシスとガイアの関係では、販売形態から、メディア等では後継車として扱われるアイシスも、実際には新規に開発された車種である[3]。
[編集] 脚注
- ^ ただし、ダイハツでは軽自動車の基幹車種においては現在でも4年サイクルを維持している。
- ^ 例として、ホンダ・ライフ、2代目日産・プレサージュ、9代目トヨタ・クラウン、2代目マツダ・MPV、6代目三菱・ランサー、2代目スズキ・アルト、2代目スバル・インプレッサ等。
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