ムーンサルトプレス
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ムーンサルトプレス(moonsault press)は、プロレスで用いられる空中技の一種である。初代タイガーマスク(佐山聡)が編み出した当時は『ムーンライトコースター』と呼称されていた、後方270度回転プレスの必殺技。単にムーンサルトとも呼ばれる。一時期ラウンディングボディプレスとも呼ばれていた。和名は「月面水爆」。古舘伊知郎が武藤敬司のムーンサルトプレスを見て名付けた。
ムーンサルトプレスをプロレス界に広めたのは武藤敬司であり、アメリカのプロレス界においても武藤敬司(グレート・ムタ)が元祖として知られている。このため当時アメリカではMutaの名前から取って"MutaSault"や"Mu-Sault"と表記されていたこともある。
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[編集] 概要
リング四方に存在するコーナーポストによじ登り、リングのマットに対して背中を向けた状態からジャンプし、バック転をしながらリング上に横たわっている対戦相手めがけてボディプレスを仕掛ける。技を仕掛ける側の円弧を描くような動きが技の名称の由来となっている。この技の問題点は、技を仕掛ける側が着地をする際に最初に両膝がマットに叩きつけられることや、不安定であるロープを踏み台にしてバック宙を決める運動が、人間の膝関節が本来持っている動きと逆の動きになってしまうことから、結果膝の半月板を損傷しやすいことである。
この技を用いる著名なプロレスラーは武藤敬司である。グレート・ムタのギミックで参戦していたWCW時代にこの技を多用したために、結果武藤の膝は変形し、満足に歩けないまでに傷んでしまった。同じく若手時代にこの技をフィニッシング・ホールドとしていた小橋建太も同様に膝を痛め、5度の手術を繰り返すこととなる。
空中技の中では比較的容易で見栄えもよいことから、この技を使用するレスラーは多いが、使うレスラーによって技の見た目には個人差がある。小橋建太など多くは、大きな弧を描くように跳躍し、体全体で上から叩きつける形であるが、武藤のムーンサルトプレスは上に跳ぶというより、斜め後方に勢いをつけて跳ぶという形になっている。見た目にも美しく相手にかわされにくいが、両膝への衝撃はこちらの方が大きいと思われる。
また、体格が大きい選手でも使用することが多く、ビガロやビッグバン・ベイダーなどがビッグマッチで使用することがある。2m、200kgを超えるポール・ワイトも出来るらしい(披露したことは無い)。
[編集] 名称の変遷
ムーンサルトプレスは以前、ラウンディングボディプレス(技の正式名称)やムーンライトコースター(こちらが技の俗称)と呼ばれていた。しかし、実況アナウンサーによってうまく使い分けができていなかったことが原因で、呼び方が曖昧になってしまった。
- ラウンディングボディプレス
- 初代タイガーマスクのムーンサルトを当時実況アナウンサーの古舘伊知郎がこのように呼称した。今の縦回転式ムーンサルトではなく、コーナーポストにのぼり、マットに背を向けた状態から1/4~半ひねりを加えた宙返りで相手にボディを浴びせ、そのままフォールに入る斜め旋回式ムーンサルトである。しかし、武藤が縦回転式ムーンサルトを出したときに、その頃の実況アナウンサー辻よしなりが、これもラウンディングボディプレスと呼んでしまったことにより、曖昧になってしまったと思われる(現に武藤のムーンサルトをラウンディングボディプレスと呼称し、それ以外の選手が使うときはムーンサルトプレスと呼んでいた)。
- ムーンライトコースター
- 初代タイガーが使った縦回転式ムーンサルトを古館がこう呼んだ。これが現在一般的に使われている縦回転式での最初の呼び名である。しかし、初代タイガーが使用したのは新日本プロレス所属時代の最後の試合となった寺西勇戦等数回のみで、寺西勇戦ではかわされ失敗に終わっている。その際に古館が「ムーンライトコースター自爆」と叫んでいる。
[編集] 派生技
すべて相手に背を向けた状態から仕掛ける。
[編集] アラビアンプレス
- サブゥーが考案し使用するリバウンド式ムーンサルトプレス。リング内からリング外に向かって高くジャンプしてトップロープに尻餅をつき、両腿をトップロープにバウンドさせて後方へバック転ムーンサルトプレスを決める。サブゥーはよくパイプ椅子をリング内に持ち込み、それを踏み台にして敢行したりもした。ロブ・ヴァン・ダムのハリウッドスタープレスとは似て非なるものであった(アラビアン・プレスが直接トップロープに飛び座り込むのに対し、ハリウッド・スター・プレスはコーナー上へ立ってから座り込む)。しかし、最近はアラビアン・プレスとハリウッド・スター・プレスが混同して使用されている。
[編集] ハリウッド・スター・プレス
- ロブ・ヴァン・ダムが考案した、リバウンド式ムーンサルトプレス。コーナー前でリング内に背を向けて立ち、コーナーを登ってコーナー最上段に尻餅をつき、同時にトップロープに両腿をバウンドさせるようにして後方へバック転しながら飛び、ムーンサルトプレスを敢行する。ジョン・モリソンは、一度捻りを加えたアラビアンプレスを使用している。ドラゴン・キッドは、ジーザスという名前で使っている。金丸義信もよく使用する。本来は、サブゥーのアラビアン・プレスとは似ているが違う技(アラビアン・プレスが直接トップロープに飛び座り込むのに対し、ハリウッド・スター・プレスはコーナー上へ立ってから座り込む)であった。最近は両方とも同じ技として扱われる場合が多い。
[編集] スカイツイスタープレス
- チャパリータASARIが開発した捻りを加えた伸身ムーンサルトプレスである。後方に270度、横に540〜720度、回転している。ウルティモ・ドラゴンのカンクーントルネードと同型。現在の主な使い手はジミー・ヤンで、ヤンタイムという名で使っている。なお。前向きから飛ぶ一回半捻りプレスもスカイツイスタープレスと呼称していた(当時、ASARI選手からTAKAみちのく選手が直接指導をしてもらい使用していた)。
[編集] フェニックス・スプラッシュ
- ひねりを加えながら離陸し、その後は前方一回転してのプレス。計、縦450度、横180度回転。ハヤブサの必殺技。初代タイガーが「タイガー・トルネード・プレス」の名で考案したが、試合で使用したことはない。獣神サンダー・ライガーが「スターダストプレス」の名で、試合で初めて試みたが失敗に終わった(後述)。その後、ハヤブサが完成させた。ハヤブサのように上手く使用できるレスラーは身体能力が非常に高く空中戦が得意なDDTの飯伏幸太ぐらいである。
[編集] スターダスト・プレス
- 獣神サンダーライガーが3代目タイガーマスク戦で一度だけ披露した幻の必殺技。いわゆるフェニックス・スプラッシュの縦回転を行わず、セントーンの形で落ちそうになっている所から横に半ひねりを加えた、と言う形で披露した。試合後ライガー自身『僕の(スターダスト・プレス)はこれでいいです』と言って当時の使い手ハヤブサの技と区別している。現在のところ、主な使い手は内藤哲也のみ。
[編集] ヴァルキリー・スプラッシュ
- KAORUが開発した、ムーンサルトプレスにひねりを加え、セントーンの形で相手の上に背中から落下する技。ミラノコレクションA.T.が使用するアルマニッシュ・エクスチェンジは、ライオンサルトの形から同様にひねりを加えて、相手の上に背中から落ちる技である(ライガーの『スターダストが不細工だ、俺の技の方がキレがある』と発言した金本選手がこの技を一度だけ使用している)。
[編集] ラ・ケブラーダ
- エプロンサイドから場外にいる相手にするムーンサルト。エプロンから仕掛けるのでコーナーからではなくロープの反動で回転する。また海外ではウルティモ・ドラゴンの本名である「浅井」を冠して、アサイ・ムーンサルトの名称で呼ばれる。WWEをはじめとする海外のプロレス団体でもアサイ・ムーンサルトが多用されている。
[編集] ラ・ブファドーラ
- ラ・ケブラーダとは逆にリング内にいる選手に、セカンドロープを使いムーンサルトアタックを行う技である。クリス・ジェリコのライオンサルトは、同じ要領で寝ている相手にプレスする技を使用する。
- ハヤブサはこの技を失敗してしまい、結果半身麻痺に陥ってしまった。
[編集] ムーンサルト・フットスタンプ
[編集] 関連項目
- ムーンサルト - 体操競技の月面宙返り