ホワイトハウス
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ホワイトハウス (The White House) とは、アメリカ合衆国の大統領府のことである。この「ホワイトハウス」という語は、おなじみの白亜館だけをさす言葉ではなく、一般には隣接したウエストウイング、イーストウイング、アイゼンハワー行政府ビルを含めた「大統領府」とその敷地をさす言葉である。また「アメリカ政府」、「時の政権」、「ホワイトハウスのスタッフの総称」としてこの語を使うこともある。
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[編集] 概要
ホワイトハウスは首都ワシントンD.C.の中心部にあり、その住所「ペンシルバニア通り1600番地 (1600 Pennsylvania Avenue)」はアメリカでは最も有名な住所である。
本棟にあたるレジデンス (Residence:公邸)、のちに増築されたウエストウイング (The West Wing:西棟) とイーストウイング (The East Wing:東棟)、サウスローン (South Lawn:南庭)、およびアイゼンハワー行政府ビル (Eisenhower Executive Office Building) で構成されている。
レジデンスは「エグゼクティブ レジデンス (Executive Residence)」「メインハウス (Main House)」などとも呼ばれ、大統領とその家族が暮らす公邸であるほか、外国首脳や議会関係者など要人との会談や、条約や重要法案の調印式、上級公職の任命会見、重要な記者会見、訪問者との会見、晩餐会やレセプション、その他の公的な行事が行われる場所でもある。レジデンスからは「コロナード (Colonnade)」と呼ばれる渡り廊下が東西に伸びてそれぞれウエストウイングとイーストウイングに連結している。コロナードはそれ自体の中にオフィスが入居する大規模な連結棟である。
ウエストウイングには、「オーバルオフィス (Oval Office)」と呼ばれる大統領執務室をはじめ、閣議室、国家安全保障会議室のほか、副大統領、首席補佐官、大統領補佐官、報道官、法律顧問、上級顧問などの上級スタッフのオフィスなどが入っており、ここがアメリカ政府の中枢である。
→ 詳細は「ウエストウイング」の項を参照。
イーストウイングには、ファーストレディー執務室[1]とそのスタッフのオフィス (The Office of the First Lady)、およびホワイトハウス社会事業室 (White House Social Services) が入っている。また地下はバンカーと呼ばれている核シェルター機能を備えた大統領危機管理センター (Presidential Emergency Operations Center) となっている。2001年の9/11テロの際、ハイジャック機が首都に接近との報を受けたチェイニー副大統領、ライス国家安全保障担当大統領補佐官をはじめとするホワイトハウス スタッフは、直ちにここに避難した。
サウスローンはレジデンス南側に広がる庭園で、天気のよい日にはイベントが開催されることもある。レジデンスとウエストウイングに囲まれた一画は「ローズ ガーデン (Rose Garden)」、レジデンスとイーストウイングに囲まれた一画は「ジャクリーンケネディ ガーデン (Jacqueline Kennedy Garden)」と呼ばれ、ここで重要な法案や条約の調印式が行われることも多い。サウスローンのさらに南には「ザ・エリプス (The Ellipse)」と呼ばれる広大な南庭が広がっている。観光客がコンスティテューション通りから柵越しに見ることができるホワイトハウスは、このザ・エリプス越しの景観である。
アイゼンハワー行政府ビルは「旧行政府ビル (Old Executive Office Building)」とも呼ばれ、ウエストウイングから小道を挟んだ西側にある。副大統領府がここにあるほか[2]、国家安全保障会議事務局、行政予算管理局が入っているほか、事務スタッフが詰めている。
なお、ホワイトハウスと、これに隣接するラファイエット公園 (Lafayette Park)、ザ・エリプス (The Ellipse)、およびホワイトハウス見学センター (White House Visitor Center) は便宜上、大統領公園という国立公園に指定されており、その土地と建物は国家公園局が管理している。
[編集] 歴史
ホワイトハウスが建設されたのは主に初代大統領ジョージ・ワシントンのときで、1792年10月に着工、1800年11月に完成した。
1790年、ワシントンD.C. (ワシントン特別区) の設置と区画が決定され、首都建設が始まると、ワシントンは大統領府のデザインをコンペで募集し、九件の最終候補の中からアイルランド出身の建築家、ジェームズ・ホーバンの案を採用した。基礎部分は当時の黒人奴隷、石細工は主にスコットランド人が工事を担った。大統領府が完成したのは次のアダムズ大統領のときである。
1812年、大統領府は米英戦争でイギリス軍の焼き討ちにあい、石積みの外壁を残してすべてが灰燼に帰してしまった。第4代マディソン大統領は設計者のジェームズ・ホーバンを監督に任じ、焼け残った外壁を使って焼失前とほぼ変わらない大統領府を再建、1817年に完成した。このとき、焼けこげた外壁を白く塗装したことから、大統領府は「ホワイトハウス」と呼ばれるようになったという[3]。現在でも焼けこげた壁の一部は保存されており、トルーマンバルコニーでこれを見ることができる。
1902年には、第26代セオドア・ルーズベルト大統領がウエストウイングを増築、それまで二階部分に入っていたスタッフのオフィスをここに移した。そして空いた二階を居住空間に全面改装したほか、一階部分にも若干の改修が施された。これを期にホワイトハウスは公式に「ワシントン・ホワイトハウス」(White House – Washington) と命名された。
1942年には、第32代フランクリン・ルーズベルト大統領が地下に防空壕を備えたイーストウイングを増築した。この防空壕が現在は大統領危機管理センターになっている。
1948年、第33代トルーマン大統領は、レジデンス二階の「イエローオーバルルーム」の外側にバルコニー[4]を設置しようとした。ところがこのとき行われた強度検査で老朽化による構造強度の劣化が判明しため、全面的な解体改修工事が行われることになった。工事は再び石積みの外壁のみを残して内部を基礎部分を含めてすべて創り直すという大がかりなもので、5年の月日をかけた一大プロジェクトとなった。このため1952年の工事完了までトルーマン大統領は行政府ビルからペンシルバニア通りを隔てて北側に位置する大統領の賓客用宿泊施設(迎賓館)ブレアハウス (Blair House) を仮の大統領府とした。
[編集] レジデンスの施設
[編集] 諸元
- 床面積:約5万5000 ft² (5100 m²)
- 部屋数:134室
- 洗面所:35ヵ所
- 階数:地上3階地下3階
- 扉:412枚
- 窓:147ヵ所
- 暖炉:28ヵ所
- 階段:8ヵ所
- エレベーター:3基
- シェフ:5人
[編集] 地階
グラウンドフロア(Ground Floor[5])
- センターホール(Center Hall、地階 1)
- 中央ホール。レジデンス地階の中心を東西に貫く幅約5m、全長約49mのホールで、天井はアーチ状になっている。ホールの東端はイーストウイングの来訪者ロビーに通じ、西端にはウエストウィング柱廊の一部を成すパームルーム (Palm Room) につながる。
- ディプロマティック レセプションルーム(Diplomatic Reception Room、地階 2)
- 外交官応接室。南庭からの入り口で、信任状捧呈式に臨む各国大使の到着口として使用される。フランクリン・ルーズベルト大統領は、この部屋の暖炉の前から「炉辺雑談 (Fireside chats)」と呼ばれる定期的なラジオ談話を行った。
- マップルーム(Map Room、地階 3)
- 第28代ウィルソン大統領や第30代クーリッジ大統領の頃は、ビリヤード台が置かれた娯楽室だったが、第二次世界大戦中、フランクリン・ルーズベルト大統領はこれを戦況報告室として使用、ここにさまざまな地図を掛けていたことからマップルームと呼ばれるようになった。現在は大統領やファーストレディーの個人的なミーティングに使用されている。
- チャイナルーム(China Room、地階 4)
- ウィルソン大統領のイディス夫人が歴代大統領の陶磁器コレクションを展示したことからチャイナルームと呼ばれるようになった。全体に赤い色調が特徴的なこの部屋には、現在でも多くの歴代大統領の陶磁器が年代順に展示されている。
- バーメイルルーム(Vermeil Room、地階 5)
- 1956年、マーガレット・トンプソン・ビドル夫人が残したバーメイル(金メッキした銀の装飾品)コレクションを展示したことからこう呼ばれようになった。また黄色を基調とした装飾から「ゴールデンルーム (The Gold Room)』と呼ばれることもある。エレノア・ルーズベルト、ジャクリーン・ケネディ、レディーバード・ジョンソン、パトリシア・ニクソン、ナンシー・レーガンの各ファーストレディーの肖像画が展示されている。現在は式典などで女性の控え室として使用されている。
- キッチン(Kitchen、地階 6)
- 厨房。大統領と家族の食事のほか、ホワイトハウス公式晩餐会の料理も調理しており、常勤シェフ5名 (パティシエ1名を含む) と約20名のパートタイムのスタッフが働いている。軽食からフルコースのディナーまで作り、140人分のディナー、オードブルなら1000名分以上を提供することができる。
- ホワイトハウス キューレーターズ オフィス(White House Curator’s Office、地階 7)
- ホワイトハウス学芸員室。第35代ケネディ大統領のジャクリーン夫人が、1961年ホワイトハウスを歴史博物館とすることをうったえたことで設置された。ホワイトハウス学芸員は、ホワイトハウスが所蔵する1万4000件以上の歴史的価値のある調度品や美術品を管理・修復している。
- ライブラリー(Library、地階 8)
- 図書室。もともと洗濯部屋として使われていたこの部屋は、セオドア・ルーズベルト大統領による改修でポーカールームに改装され、さらにフランクリン・ルーズベルト大統領のときに図書室に改装された。第39代カーター大統領は、フランクリン・ルーズベルトの「炉辺雑談」にならって、毎週のラジオ談話をこの部屋から行った。
- クリニック(Clinic、地階 9)
- 医務室。大統領とその家族やホワイトハウス職員のための診療所で、医療設備を完備した診察室と検査室からなる。
- ドクターズオフィス(Doctor’s Office、地階 10)
- 常勤医師オフィス。
[編集] 一階
ステートフロア(State Floor[6])
- クロスホール(Cross Hall、一階 1)
- 横断ホール。
- ブルールーム(Blue Room、一階 2)
- レッドルーム(Red Room、一階 3)
- グリーンルーム(Green Room、一階 4)
- イーストルームに隣接する食堂として設計され、壁が緑色であることからグリーンルームと呼ばれている。第3代ジェファーソン大統領は食堂として使用していたが、それ以降は多目的に使用されている。マディソン大統領はここを執務室とし、閣議もここで行った。第5代モンロー大統領は、トランプを楽しむためのカードールームとして使用した。グリーンルームの目的と装飾が現在のものに定着するのはセオドア・ルーズベルトのときからである。
- イーストルーム(East Room、一階 5)
- ホワイトハウス創設当時より「公式謁見室」として使用されており、現在でも大統領の特に重要な記者会見[7]、条約や重要法案の署名式典、晩餐会やレセプションなど、大がかりな行事はこのイーストルームで行われる。暗殺された第16代リンカーン大統領やケネディ大統領の遺体が教会での葬儀や連邦議会での正式安置に先立って、一時的にこの部屋に置かれたこともある。ジョージ・ワシントンの全身肖像画がある部屋としても有名。
- ステートダイニングルーム(State Dining Room、一階 6)
- 公式晩餐会の間。国賓を迎えての公式晩餐会はここで行われる。
- ファミリーダイニングルーム(Family Dining Room、夕食会の間、一階 7)
- ファミリー(家族)という名称は、ステート(国家)との対比でつけられており、実際には国賓を迎えての大規模な公式晩餐会以外の、小規模な公式・非公式の夕食会に使用される。大統領の家族が日常使用する家族用のダイニングは二階にある。
- エントランスホール(Entrance Hall、一階 8)
- 正面玄関ホール。
- サウスポーティコウ(South Portico、一階 9)
- 南ポーチ。
[編集] 二階
セカンドフロア(Second Floor)
- セントラルホール(Central Hall、二階 1)
- 中央広間。
- イエローオーバルルーム(Yellow Oval Room、二階 2)
- 応接間。
- リビングルーム(Living Room、二階 3)
- 居間。
- トリーティールーム(Treaty Room、二階 4)
- 条約調印の間。主に書斎として使用。
- リンカーンベッドルーム(Lincoln Bedroom、二階 5)
- 寝室。
- リンカーンシッティングルーム(Lincoln Sitting Room、二階 6)
- 寝室兼居間。
- マスターベッドルーム(Maser Bedroom、二階 7)
- 主寝室。
- マスタードレッシングルーム(Master Dressing Room、二階 8)
- 主更衣室。
- ウエストシッティングホール(West Sitting Hall、二階 9)
- 寝室兼居間にもなるホール。
- イーストシッティングホール(East Sitting Hall、二階 10)
- 寝室兼居間にもなるホール。
- クイーンズベッドルーム(Queen’s Bedroom、二階 11)
- 寝室。
- クイーンズシッティングルーム(Queen’s Sitting Room、二階 12)
- 寝室兼居間。
- イーストベッドルーム(East Bedroom、二階 13)
- 寝室。
- ウエストベッドルーム(West Bedrom、二階 14)
- 寝室。
- プライベートダイニングルーム(Private Dining Room、二階 15)
- 大統領の家族が通常使用するダイニングルーム。
- ファミリーキッチン(Family Kitchen、二階 16)
- 家族用キッチン。
- ビューティーサロン(Beauty Salon、二階 17)
- 美理容室。
- トルーマンバルコニー(Truman Balcony、二階 18)
[編集] 三階
サードフロア(Third Floor)
- センターホール(Central Hall)
- 中央ホール。
- ミュージックルーム(Music Room)
- 音楽室。
- ゲームルーム(Game Room)
- 娯楽室。
- ワークアウトルーム(Workout Room)
- ジム。
- サンルーム(Sun Room)
[編集] その他
その他ホワイトハウス内には:
- テニスコート
- ボウリング場
- 映画館
- ジョギング専用路
- プール
などの設備もある。
スタッフ・職員・観光客などを含めた一日の来訪者は、平均で約5000人にもなる。
[編集] 逸話
- 国旗を掲揚するのは日の出から日没までというのが国際的なルールである。星条旗に強い愛着を持つアメリカの国民はこうした国旗に関する決まりごとはよく知っていて、夜間に国旗を掲げたままにしておくのは失礼なことだと考えている人も多い。ところが第37代ニクソン大統領は1970年9月4日に発令した大統領声明第4000号で、「今後ホワイトハウスには、悪天候などの不可避な条件がない限り、合衆国国旗は常時掲揚する」と発表した。実際に夜間掲揚が始まると、大統領声明のことを知らない者から「ホワイトハウスは国旗の掲げ方も知らないのか」といった苦情電話がかかることもあったという。
- 以前はホワイトハウスといえばその内部見学ツアーが有名で、必見の観光名所となっていた。隣接するホワイトハウス見学センターで簡単な手続きをするだけで、基本的には誰でも、そして事情の許す限りいつでも、この白亜館の内部に立ち入ることができたのである。大統領の側近やファーストレディー、そして運がよければ大統領とまですれ違うことこともあったという。現在は9/11テロ事件による影響もあり、10人以上のグループで、6ヶ月前の予約を議会員を通して行い、バックグラウンドチェックに同意する必要がある。[8]
- そもそも9/11テロ後は、ホワイトハウスそのものにシークレットサービスやSWATによって厳重な警備が敷かれている。レジデンスの屋上には狙撃銃と双眼鏡を手にした特別要員が24時間態勢で周囲の監視に当たっており、法令上かれらは、大統領や大統領府に重大な脅威になると判断し得る侵入者がいた場合、その者を一存で狙撃できる権限が付与されている。ただしそれではいかにも物騒なので、通常彼らは地上からは見えない物陰などに隠れ、周囲の観光客などにできるだけ不要な心配をさせないようにしている。レジデンスの屋上で人影が動くのをみかけたら、それは要員の交代や移動と考えてよい。さらに空からの攻撃への備えとして携行式の地対空ミサイルも装備されているといわれるが、さすがにこちらの方はその詳細が必ずしも明らかにされていない。
- ホワイトハウスはその名称や色彩からその外壁は純白だと思いがちだが、実際にはわずかに黄色を帯びた「クリームホワイト」という白。純白だと太陽光によってやがて色が褪せて黄ばみ、色調にムラが出るが、クリームホワイトだとその心配がない。また感光式のカメラでは純白の塗装面を晴天下でカラー撮影するとレンズに空の色が入り込み、わずかに青みがかった白に見えてしまう現象があるが、クリームホワイトだとこれも防いでくれるからである。
[編集] 注釈
- ^ ただしヒラリー・クリントン大統領夫人は例外的にウエストウイングにオフィスを構えていた。
- ^ ただしチェイニー副大統領は例外的にウエストウイングにオフィスを構えている。
- ^ ただしこれには異説があり、現存する “White House” の初出は1811年のものであるという。
- ^ 「トルーマンバルコニー」。
- ^ 通常英語で ground floor は「地上階」すなわち「一階」を意味するが、ホワイトハウスでは地下のことをこう呼んでいる。
- ^ 通常英語で「一階」は ground floor または first floor というが、ホワイトハウスでは一階のことをこう呼んでいる。
- ^ ただし通常の記者会見はウエストウイングの定例記者会見室を使用することが多い。
- ^ http://www.whitehouse.gov/history/tours/
[編集] ホワイトハウスが舞台の映画・ドラマ
- インディペンデンスデイ
- 13デイズ
- ザ・ホワイトハウス
他多数。
[編集] 関連項目
- アメリカ大統領について
- 大統領に関連した施設や機材について
- その他
[編集] 外部リンク
- WhiteHouse.gov: ホワイトハウス公式サイト(英語)
- President’s Park: 国家公園局公式サイトの「大統領公園」案内(英語)
- ホワイトハウス ミュージアム: 豊富な画像と詳細な間取りを紹介(英語)
- Google Satellite Image(英語)