ビッグ・ボス
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ビッグ・ボス(BIGBOSS)は、コナミ(現、コナミデジタルエンタテインメント)のゲーム、『メタルギア』シリーズに登場する架空の人物。
声優は大塚明夫(メタルギアソリッド3)(メタルギアソリッド ポータブル OPS)、大塚周夫(メタルギアソリッド4)。英語版の声優はDavid Hayter(メタルギアソリッド3)(メタルギアソリッド ポータブル OPS)、Richard Doyle(メタルギアソリッド4)である。メタルギア2での「BIG BOSS」のモデルはショーン・コネリー。
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
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[編集] 人物
元FOXHOUND総司令官であり、独立武装国家アウターへブンの首領。身長192cm、体重89kg。日本人とイギリス人のハーフ。ベトナムに於いてLRRP(長距離偵察作戦)に参加し、SOG(スペシャル・オペレーションズ・グループ)、グリーンベレー、ワイルド・ギースで活躍、70回以上のミッションを務めた。その後傭兵として世界各国を回り、神話的存在となる。80年代に様々な地域紛争、民族紛争に参加、一時期はジャーナリズムの的にもなった。作戦中に右目視力を失った事もあり戦線を退き、その後は軍事教育を講じるようになる。90年に入り、ハイテク不正規特殊部隊FOXHOUNDの初代作戦総司令官として任命され、国内に呼び戻される。同時に軍事要塞国家アウターヘブンをザルツバーグに築き、世界の軍事統制を目論んだが、自ら派遣したソリッド・スネークによる想定外の活躍により阻止され、中東に逃れる。以降、消息不明であったが奇跡的に生き延び、後に中東に独立武装要塞ザンジバーランドを築いた。同時に世界が深刻なエネルギー危機を迎える中、石油精製藻類OILIXを開発したキオ・マルフ博士を拉致し、世界に対して軍事的、経済的優位を確保しようと試みる。しかし、新体制となったFOXHOUNDによって再び送り込まれたソリッド・スネークの手により再び計画は頓挫、全身を焼き尽くされてその生涯に幕を閉じたかに見えたが、実際には愛国者達の創始者デイビッド・オーの手によって人工的な脳死状態にされ、その身体は生きたまま保存されていた。
上記の設定はメタルギア及びメタルギア2のものであるが、MGS3、MPOで描かれたビッグボスの経歴と異なる部分があり、作品監督の小島秀夫は「MG、MG2はパラレルワールド的なものでMGSシリーズと完全に繋がっているわけでは無い」としている。
ネイキッド・スネーク(Naked Snake)のコードネームを持つ最初の「蛇」であり、クローン人間であるソリッド・スネーク、リキッド・スネーク、ソリダス・スネークのオリジナル。MGS3では「ジョン・ドゥ」と名乗るが、アメリカでは身元不明の男性死体を指して"ジョン・ドゥ"と呼ぶ習慣があり、作中でもこれが本名かは明かされない。ザ・ボスからはジャックと呼ばれているが、こちらは愛称であり本名ではない。
[編集] ゲーム中での役割
[編集] メタルギアソリッド3 スネークイーター
FOXHOUNDの前身であるFOX部隊に所属する工作員「ネイキッド・スネーク」として登場、1964年にソ連国内での極秘任務中、師であり伝説の兵士である『ザ・ボス』をやむなく殺害、以降ボスの座を受け継ぎ、ザ・ボスを超える者『ビッグ・ボス』の称号を得る。
作戦中に捕虜となった際、EVAをかばうためオセロット少佐(後のリボルバー・オセロット)に体当たりし、暴発した彼の拳銃によって右目を失っている。 通信などでは、有毒な生物でも手当たり次第に食べたり、天然ボケのような言動を見せるなど、人間味溢れる描写がなされている。
[編集] メタルギアソリッド ポータブルオプス
ネイキッド・スネークとして再び主人公となる。1970年にFOX部隊の反乱に巻き込まれるが、ロイ・キャンベルらの協力を得て反乱を鎮圧。 この事件後、作戦の協力者達と共に特殊戦闘部隊FOXHOUNDを組織する。
また、反乱軍の首領・ジーンの思想に影響され、彼から受け継いだ資金と人脈は後にアウターへブンを築く基となる。
[編集] メタルギア
特殊戦闘部隊FOXHOUND総司令官として登場。主人公であるソリッド・スネークのサポート役としなり、無線では「コチラBIGBOSS 」と始め、「~over」と終了する。その後のメタルギアソリッドシリーズに見られるようなジョークや雑学混じり無線は一切なく、要件だけを話してすぐに交信を終了していた。また、普段はこちらから呼びかけても応答が無い。
南アフリカに出現した独立武装国家アウターへブンを調査するためグレイ・フォックス、そして新人隊員であるソリッド・スネークを送り込む。しかし物語の後半からそのサポートがおかしくなり始め、最後にはアウターへブンの統率者が彼自身であったことが判明する。新人であるスネークを送りこんだのも情報攪乱のためであったが、スネークの活躍を予想できず、アウターヘブンの崩壊を許してしまった。最終局面で「オマエハヤリスギタ ヤリスギタノダ」(お前はやりすぎた、やりすぎたのだ)と叫んで戦いを挑んでくる。戦いの末スネークに敗れ、一時行方不明となるがエンディング後に「また会おう」という言葉を残していた。
[編集] メタルギア2 ソリッドスネーク
アウターヘブンでのスネークとの戦いで瀕死の重傷を負っていたが、両手、両足、右目、右耳を失った状態でサイバネティック・オーガニズムの実験媒体として体の一部が機械化された状態となって生きており、作品では「もはや人間の体ではなくなった」という記述が見られた。中東に独立武装要塞ザンジバーランドを築き、アウターヘブンにいた有能な兵士達を何人か救出し、再び仲間に引き込んでいた。OILIXを開発したキオ・マルフ博士を拉致し、世界に対して軍事的、経済的に優位に立とうとした。
しかし、新体制となったFOXHOUNDによって再び送り込まれた、ソリッド・スネークの手により計画は頓挫した。最終局面では、メタルギアとの戦いで傷つき装備も失ったスネークの前に出現し、マシンガンを乱射して追撃するが、ライターとスプレーを組み合わせて即席の火炎放射器を作り上げたスネークに再び敗北、ついに命を絶たれる。 「どちらが勝っても、我々の闘いは終わらない。敗者は戦場から解放されるが、勝者は戦場に残る。そして生き残った者は死ぬまで、戦士として人生を全うするのだ。」という言葉を遺しており、スネークにとってトラウマとなっている。
[編集] メタルギアソリッド 4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット
すでに死亡したと思われていたが、ビッグ・ボスの英雄性を『愛国者達』の象徴に据えようとするゼロ(デイビッド・オー)によりナノマシンで人工的な脳死状態にさせられ、その体を保存されていた。ビッグ・ママを名乗って活動していたEVA率いるレジスタンスの手でその身体は奪還されたが、最後には炎の中に投じられ、リキッド・オセロットによってとどめを刺される事となった。しかし、この時の遺体はソリダスの遺体と摩り替えたダミーであり、本人はこの時点でまだ生きていた。EVAによって救出された後はオセロットやナオミの手により、身体の欠損をリキッドやソリダスの遺体の一部で補って回復し、作品終盤でJ.D.が破壊されたことにより昏睡状態から解放された。ザ・ボスの墓前で命を絶とうとしていたソリッド・スネークの前に現れ、戦うことをやめ、蛇としてではなく人間として生きろと告げて「愛国者達」や事件の真相を語る。そして同じく生きていたゼロの生命維持装置を停止した後、ソリッド・スネークのもつFOXDIEによって息を引き取った。
[編集] 恐るべき子供達計画 (Les Enfants Terribles)
1972年にアメリカ政府の一部勢力が行った、最強の兵士を人為的に作り出す計画。アナログなクローン技術とスーパーベイビー法を用いてビッグ・ボスのクローン人間を8人作製し、うち5人を意図的に間引きして、残った3人の能力を増大させるというものだった。
その3人は、メタルギアシリーズの主人公ソリッド・スネーク、MGS1の敵役リキッド・スネーク、そしてMGS2の敵役ソリダス・スネーク(ジョージ・シアーズ)であり、体細胞を用いたアナログクローンであるため、生まれた時点で肉体年齢がビッグボスと同じになっている。
ソリッド・スネークとリキッド・スネークの二人は胎児になる以前の段階での意図的な操作により、優性遺伝子を一方にだけ集約することでその能力をさらに増大させている。リキッド・スネークは「自分がその操作によって劣性遺伝子のみを受け継いだ残りカスである」といった趣旨の発言をしており、それが彼のシャドーモセス島での武装蜂起に至る動機へと繋がっている。しかし現実に優性遺伝子を受け継いだ個体はリキッド・スネークの方であり、彼はソリッド・スネークにより命を絶たれるまでその事実を知らないままだった。残るソリダス・スネークは、リボルバー・オセロットから「最も安定した個体」と評された他、MGS4ではビッグ・ボス自らが完全なるコピーと称している。SOPシステムの掌握においてもビッグ・ボスの代わりにソリダスの遺伝子を用いたが、成功した。
尚、現実の科学における遺伝子の優性、劣性とは、その遺伝形質が子孫に発現するか否かを指した表現であり、個体の能力に関わるものでは無い。
[編集] 参考文献
- 『METAL GEAR SOLID naked』 角川書店、2004年、65頁。ISBN 4-04-707145-5