スバル・ドミンゴ
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スバル・ドミンゴ(SUBARU Domingo)は、富士重工業がかつて生産・販売していたキャブオーバー(ワンボックス)タイプの自動車。日本以外の国にも輸出されており、輸出先での車種名はスバル・リベロ (Libero) であった。
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[編集] 歴史
[編集] 初代(1983年~1994年)
1983年 同社の軽ワンボックスカー、サンバートライをベースに、1.0Lエンジン、大型バンパー、角型4灯式ヘッドランプなどの変更を盛り込み、登場。軽ワンボックスワゴンの非力さに不満を覚えるユーザーの代替需要がそれなりにあった。以来、リッターカークラス唯一のワンボックスワゴンとして根強い人気を保ってきた1台。国産乗用車中、新車販売台数に占める市場残存率が最も高い車でもあった(富士重工調べ)。
また、このクラスではトヨタ・ミニエースコーチの生産終了以来、9年ぶりとなる3列シート「7人乗り」の復活となった。
これも同社のジャスティと共通の、48psを発揮する直列3気筒SOHC2バルブの1000ccエンジンをリアオーバーハングに搭載する。駆動方式はRRとパートタイム式4WDの2種類で、組み合わされるトランスミッションは5速マニュアルのみであった。
1986年6月 サンルーフ車の肩部に明かり取り窓を追加した「サンサンウインドゥ」を設定。同時にフルタイム4WDを追加、4WDのエンジンを1.2Lに変更、最高出力は52psとなった。1991年以降、4WD車は全車フルタイム4WDの1.2Lになったが、2WD車は最後まで1.0Lエンジンを搭載した。
ベースとなったサンバーが1990年にフルモデルチェンジした後も、ドミンゴはそのまま細部の改良を繰り返し、1994年まで生産が継続された。
同じエンジンを積むジャスティには後年、2ペダルのECVTやパワーステアリングが追加されたが、これらの装備は初代ドミンゴには最後まで設定されることはなかった。パワーステアリングに関しては、リアエンジンで前軸荷重の軽いドミンゴには過剰装備である、との富士重工の判断による。
[編集] 2代目(1994年~1998年)
1994年に、11年ぶりのフルモデルチェンジで登場。初代同様に車体は同社の軽ワンボックスカー「サンバーディアス」がベースとなった。大型バンパーにより全長は長くなっているが、フェイクではなく、フレームの前端を延長し、先端をY字形にすることで前面衝突安全を確保している。
エンジンは先代の1.2L 3気筒 SOHC 9バルブを踏襲するが、燃料供給装置をキャブレターからフューエルインジェクション:EMPiに変更し、最高出力が61psに向上している。また、これまでマニュアルのみだったトランスミッションにECVTが加わった。
欧州でのトレーラー牽引を考慮しオイルクーラーを装備しているが、これは日本国内仕様でも省略されることは無かった。スバルならではの良心と言える。
フルタイム4WDも、ワンウェイクラッチ方式から、ビスカスカップリング式へと変わる。これは、ECVTとの相性のため。
リアクーラーもしっかりしたエバポレーター付のものになり、遅ればせながら、パワーウインドウ、パワーステアリング、集中ドアロックなどの快適、便利装備が揃った。反面、先代の4WD車に装備されていたタコメーターは、二代目では設定無しとなっている。
1996年 ルーフをポップアップ式とし、ベッドスペースを生み出す、キャンピングカーとしての装備を加えた「アラジン」がラインアップされた。
快適装備は初代に比べると進歩をしたものの、ドミンゴを取り巻く状況は刻々と変化をとげていた。ベースとなった軽ワンボックスカーが660ccに排気量アップされ、ターボやスーパーチャージャーを搭載したことで、自主規制一杯の64馬力までのパワーアップを果しており、小型クラスのワンボックスワゴンも、安全性とフロントシートへの乗降性を重視した、セミキャブオーバースタイルのミニバンへの世代交代が始まっていた。従来の改良版である61馬力の3気筒1.2Lエンジン(この時点ではスバルの軽自動車でさえ4気筒エンジンを搭載していた)と、サンバーベースのキャブオーバーボディーでは時代遅れの感は否めなかった。2代目ドミンゴは開発費の都合上、既発売車をベースとせざるを得なかったうえ、発表時期がバブル崩壊のさなかであり、そのため初代ほどの人気は得られなかった。
とは言え、11年前の基本設計を引きずっていた初代の末期に比べると、遥かに“現代の車”だったのは確かである。AT全盛期にATが設定されていない不利をようやく解消、試験的な性格の強かったワンウェイクラッチ方式を廃し(日本ではほとんど採用例はない)、ビスカスカップリング方式のフルタイム4WDを採用したことで走破性も格段に向上した。また、軽ワンボックスのエンジンがドミンゴより強力になったとは言ってもターボチャージャーの採用による結果だった為、好き嫌いは分かれた。初代ユーザーは2代目への買い替えに二の足を踏むものが多かったが、実際に買い換えたユーザーからはほとんど不満の声は聞かれない。ただ、車重が1トン超となったため自動車重量税が上がってしまった事が初代に対するほぼ唯一のウィークポイントだった。
1998年10月 軽自動車の規格変更に伴うサイズアップで、オーバーラップが避けられないとの判断から、ドミンゴの生産を終了。翌年、三菱・タウンボックスワイド、スズキ・エブリィ+など、軽をべースとしたワゴンが登場した。
[編集] 余談
クラス唯一、と言われがちだがそれはドミンゴの存在した時期を以っての表現であることに注意が必要である。それ以前には、トヨタ・ミニエースが存在する。
1990年代始めに、フランクフルト工科大学の教授が、ドイツの自動車雑誌に「SUBARU E series(ドミンゴの欧州名)のような効率的な市街地向けの車こそダイムラー・ベンツが開発生産すべきだ。」という記事を寄稿した事で、ダイムラーがメルセデス・ベンツ Aクラスの販売に踏み切ったとも言われている。
初代からの熱心なファンが存在し、復活が熱望されている。また、発売中からスーパーチャージャー車の設定が熱望されていた。
[編集] 車名の由来
Domingoはスペイン語で「日曜日」の意味。「この車に乗れば、気分はいつでも日曜日」という意味が込められている。
輸出仕様車のLiberoはイタリア語で自由を意味する言葉。尚、三菱・リベロやヒュンダイ・リベロとは、関係ない。