スナッチャー
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『スナッチャー』(SNATCHER)は、1988年にコナミ(現・コナミデジタルエンタテインメント)から発売されたアドベンチャーゲーム。小島秀夫の初期作品。
架空の近未来を舞台に展開されるサイバーパンクアドベンチャーである。
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[編集] 概要
当時すでに主流のコマンド選択式アドベンチャーゲームに見られた「単純なコマンド選択」だけではなく、謎解きとしてキーワード入力を求めたり、ストーリー進行に併せて簡単なガン・シューティングシーンを取り入れるなど、随所にプレイヤーを飽きさせない工夫・演出・表現が施されている。
後に『メタルギアソリッド』シリーズで有名となる小島秀夫が制作指揮をした初期の作品であり、映画『ブレードランナー』をモチーフとした(小島本人の口から明言されている)サイバーパンク世界が舞台となっている。小島作品としては、映画的演出を導入した最初のゲームであり、そのゲーム設計や表現は後に発売された『ポリスノーツ』の原型ともなった。
[編集] 各機種での発売
- 1988年11月 『スナッチャー』PC-8801MkIISR以降版
- 1988年12月 『スナッチャー』MSX2版
- 1990年 『SDスナッチャー』MSX2版
- 1992年8月7日 『スナッチャーPilotDisk』PCエンジン版 (下記PCエンジン版の体験版、宣伝)
- 1992年10月23日 『スナッチャー』PCエンジン版
- (1994年 ヨーロッパにて『スナッチャー』Mega CD版)
- (1994年 北米にて『スナッチャー』Sega CD(北米版メガCD)版)
- 1996年2月16日 『スナッチャー』プレイステーション版 (PCエンジン版からの移植)
- 1996年3月29日 『スナッチャー』セガサターン版 (PCエンジン版からの移植)
[編集] ストーリー
2042年の神戸(ネオコウベシティー)を舞台に、人間を殺しその人物と入れ替わって潜伏している正体不明のアンドロイド「スナッチャー」と、それを追う捜査官(ジャンカー、JUNKER)である主人公ギリアン・シードとの戦いを描く。
ちなみに、「JUNKER」とはJugdement Uninfected Naked Kind & Execute Rangerの略であり、一般人に紛れたスナッチャーを特定し、処理することを任務とする政府直属機関のことを指す。
[編集] 寄り道
小島作品の特徴である、ゲームクリアとは直接関係の無い「寄り道」的なイベントはこのゲーム内でも随所に見られる。主なものに、「うどん屋」「占い師」「ガシャポン」「エロビデオ」「ネオコウベ焼き」「経費で暴飲暴食」等がある。いずれのイベントも、特定の場所であたりを調べる・見る等のコマンドを繰り返し選択すると、イベント選択のコマンドが新たに出てくる。
また、それらのイベントをクリアすると、それに応じて他の登場人物のリアクションに微妙に変化が起き、それが隠しイベント探しを面白くした。一例を挙げると、最初のミッションで廃工場に入った直後の場面で「ハエ」を敵と誤認するイベントを出すと、それ以後のイベントで「ハエ」に絡んだ台詞が表示されるようになる。
一度ゲームをクリアした者でも、これらのイベントを見つけることを目的に、何度もプレイする面白さを見出せた。
また、コマンド選択の際、明らかにゲームとは関係のない「おもしろコマンド」を表示し、プレイヤーにあえてそのコマンドを選択させるよう誘導した。主なものに「ヒロインのスリーサイズ入力時に、とんでもない数値を入力」「男の証明」「慰み者にする」など(上記の内容はPCエンジン版以降で確認)。
[編集] 登場人物の音声による警告
通常のPCエンジンのCD-ROMは、誤ってCDプレーヤーなどのオーディオ機器にセットした場合、「このCDはゲームソフトです」と音声による警告がされるが、本ゲームのPCエンジン版のCD-ROMには、ギリアンとメタルギアによる漫才風の警告メッセージが収録されている。通常通りCD-ROMを使用している限り、まったくこのメッセージを聞く機会はないので、この事を知らない者が意外に多い(なお、セガサターン版にも同じメッセージが収録されているが、プレイステーション版には存在しない)。
[編集] メタル・ギアmk-IIについて
メタル・ギアmk-IIとはJUNKER本部から主人公に支給された業務サポートを行う小型の二足歩行ロボットである。いろいろな物を調査するためのセンサーを装備し、事件現場の分析や証拠物品の解析ができる頭脳を持つ。可愛らしい声で喋り、場面や現場の解説をしてくれ、主人公のボケに対してツッコミを入れたりアドバイスをくれたりもする。
このメタル・ギアmk-IIは元々、本作のPC-8801MkIISR以降版以前に発売されたゲームである『メタルギア』に登場した兵器の名称であり、(メタル・ギアmk-IIの登場時には初代メタルギアの音楽が流れる)核搭載型二足歩行戦車「Metal Gear」に由来する。ハリー・ベンソンがMetal Gearの兵器資料を発見。殺戮兵器としてではなく平和利用としてデザインを継承、外観と二足歩行を受け継いでいる。mk-IIの表記は、本作の初版販売対象機種であるPC-8801mk-IIに由来し、2番目の「メタルギア」という意味でもある。
ちなみに、小型メタルギアは『メタルギアソリッド4』にも主人公のソリッド・スネークのパートナーのオタコンが作ったメタルギアmk-IIが登場。従来のメタルギアと違い、ラジコン操作。人を殺すほどの力は持っていないが、電気ショックで敵を麻痺させることが可能。
[編集] 主な登場人物
声優の声が収録されたのはPCエンジン版以降。
[編集] JUNKER所属
- ギリアン・シード (Gillian Seed) (声 : 屋良有作)
- 本作の主人公。スナッチャーの特定、排除を行うランナー。彼がネオコウベシティに配属されたときからストーリーが始まる。
- メタル・ギアmk-II (Metal Gear Mk.II) (声 : 小山茉美)
- ギリアンを補佐する小型の二足歩行ナビゲーターロボット。通称「メタル」と呼ばれる。
- ミカ・スレイトン (Mika Slayton) (声 : 冨永みーな)
- あらゆる情報の処理を担当するオペレーター。
- ベンソン・カニンガム (Benson Cunningum) (声 : 納谷悟朗)
- JUNKERの指揮をとるヘッド(リーダー)。元FOXHOUND戦略教官。
- ハリー・ベンソン (Harry Benson)(おやじさん) (声 : 槐柳二)
- 備品の開発、整備を行うメカニック。
- ジャン・ジャック・ギブスン (Jean Jack Gibson) (声 : 井ノ口勲)
- ギリアンの同僚となるランナー。
- ルイス・ギルモア(ランナー:殉職)
- セルジオ・グレイザー(ランナー:殉職)
- デビッド・ジョンソン(ランナー:退職)
- シュルツ・デッカード(ランナー:殉職)
[編集] その他
- ランダム・ハジル (Randam Hajile) (声 : 塩沢兼人)
- バウンティーハンター(賞金稼ぎ)。
- ジェミー・シード (Jaime Seed) (声 : 井上喜久子)
- 別居中のギリアン・シードの妻。
- カトリーヌ・ギブスン (Katherine Gibson)(声 : 富永みーな)
- ジャン・ジャック・ギブスンの娘。
- イザベラ・ベルベット (Isabella Velvet)
- ホログラム・ビジョンの人気女優。
- ナポレオン (Napoleon)(声 : 納谷悟朗)
- 情報屋。
[編集] 移植版比較
[編集] 移植の背景
昔のゲーム制作は供給対象ハードウェアの機能的制約に縛られることが常であり、本作の制作もその影響を受けている。そのため同じ作品の移植とは言っても、移植ごとにその作品内容は異なっている。
[編集] 比較
- PC-8800シリーズ、MSX2版
- 開発期間や供給媒体容量の問題から、後半部分を大幅にカットされ、ACT.1とACT.2のみの未完の作品となってしまった。
- だが、これら2作品は専用音源対応という特典が付く。PC-8801MkIISR以降ではサウンドボードII、MSX2では
- SCC音源による独特な音色を堪能できる。(PC-8801MkIISR以降では内蔵音源でのプレイは可能だが、MSX2は
- 同梱のSCCカートリッジ装着でないとプレイできない)
- SDスナッチャー(MSX2版)
- 本作のリメイクであり、オリジナル版では存在しなかった最終章であるACT.3が存在する。エンディングを除きキャラクターを2頭身のSD(スーパーデフォルメ)化し、ロールプレイングゲームという異なる表現形態を採って制作された。
- PCエンジン版
- CD-ROM²用ソフトとして、ACT.3までを収録した初めてのアドベンチャーゲームとしての完全版となる(ただし、先行して発売されたSDスナッチャーのACT.3と比較すると大幅にシナリオ内容は削減されている)。CD-ROMの特性を活かし声優による音声が追加され、より映画的な演出が可能となった。
- また、生産コストが安いCD-ROMを生かした販売戦略として、本製品発売に先駆けてパイロットディスク(体験版、設定資料などを収録)が制作され、安価で発売されたことも特筆すべき点である。このパイロット版は発売本数が極端に少なく、現在ではコレクターズアイテムとなっていて中古市場で出回ることも極稀である。後の小島作品である『ポリスノーツ』でも、3DO版でパイロットディスクが制作された。
- プレイステーション、セガサターン版
- 基本的な内容はPCエンジン版と同じだが、ムービーなどが追加されている。しかし、監督の小島をはじめとするオリジナルのパソコン版、PCエンジン版のスタッフは既にPS版およびSS版『ポリスノーツ』の開発に移行していたため、この移植には関わっていない。
- プレイステーション版はハードメーカーによる残酷描写への規制のため一部のシーンにモザイクが掛けられている。
- また、旧機種では実際の映画や物語をそのまま用いた演出が各所に見られたが(バーでのSFコスプレ、電光掲示板広告など)、PS版およびSS版においては著作権上の問題から、コナミキャラクターを用いた内容の物に全て差し替えられた。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- KONAMIゲームソフト (スナッチャーについての記述無し)
- Versions (ファンサイト:英語)