ジョージ・マーティン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
サー・ジョージ・ヘンリー・マーティン CBE(Sir George Henry Martin CBE, 1926年1月3日 - )は、英国の音楽プロデューサーである。世界で最も有名なプロデューサーの一人。
ビートルズのほとんどの作品のプロデューサーを務めたことから"5人目のビートルズ"ともいわれる。音楽界への貢献から、1996年にナイトの称号を与えられている。
ロンドン生まれ。ギルドホール音楽院でクラシックの基礎を学んだ後、1950年にEMIへ入社。1955年に傘下レーベルの一つであったパーロフォンのマネージャーとなり、コメディ俳優のピーター・セラーズらの作品などコメディ色の強いレコードの制作を多く手がけ実績を積んだ。この頃の逸話として、「戦場にかける橋」のパロディ作品を作った際、収録曲の「クワイ河のマーチ」を、会社上層部からのクレームを受け、既に録音し終えていた曲中の「クワイ(Kwai)」というフレーズから「K」の部分だけ削除して「ワイ河のマーチ」に作り直したというエピソードがある。
マーティンとビートルズとの出会いであるが、ビートルズは1962年にデッカのオーディションに不合格となったものの、その後にマネージャーのブライアン・エプスタインがジョージ・マーティンへの売り込みに成功、マーティンはビートルズのメンバーと直接面会していないにもかかわらず、ビートルズにレコーディングを要請した。同年6月6日、ビートルズをEMIスタジオに呼び、多くの曲を演奏させてビートルズの演奏技術を確かめた後、その場でデビュー曲のレコーディングを行った。彼のビートルズに対する第一印象は「彼らはだいぶひどかった(They were pretty awful)」というものであったが、彼はビートルズと契約した。それは長きにわたる関係の始まりであった。ちなみに、そのとき緊張していた彼らにマーティンは「何か気に入らないことがあるか?」と尋ねたが、ジョージ・ハリスンの回答は「あなたのネクタイが気に入らないね!」であった。また、マーティンは、最初のレコーディング時のドラマー、ピート・ベストの演奏が気に入らず、ライブはともかく、少なくともレコーディングには使えないことを指摘した。マーティンのこの指摘が直接的な引き金となってピート・ベストは解雇、あらたにリンゴを加入させるというメンバー再編となった。しかし、後に発表されたジョージ・マーティンの自伝「耳こそすべて(ALL you need is ears)」によれば、マーティンはベストの脱退に関してはまったく関与していないと語っている。現在ではピートの脱退はマーティンの示唆によるもの、という説はほぼ否定されている。
マーティンの音楽的専門知識は、ビートルズの天賦の才能と達成しようと考えていたサウンドとのギャップを満たすことを助けた。ビートルズの楽曲におけるクラシック的アプローチやオーケストレーション、複雑なサウンド・エフェクトの多くは、マーティンとの共同作業によるものであった。代表的な例として「ペニー・レイン」におけるピッコロ・トランペットのソロがある。「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」ではテンポもキーも違った二つの曲を一つの曲にするという離れ業を行うなど(注意して聞くと開始から1分ちょうどを境にテンポが違っているのが分かる)、マーティンはメンバーからの困難なリクエストに応え、その音楽的な成功に大きく貢献した。自身は「アレンジの際、ポールは音楽的に解り易く説明してくれたので、あとはそれに基づいて譜面を書けばよかったけど、ジョンは抽象的な表現だけで説明してくるので苦労した」と振り返っている。
1965年にEMIより独立。その後もジェフ・ベック、アメリカ、チープ・トリック、ポール・マッカートニーなどのプロデュースを手がける。1997年、ダイアナ妃を追悼したエルトン・ジョンの「キャンドル・イン・ザ・ウィンド97」が、マーティンにとってはイギリスにおける30曲目のチャート1位作品となった。
1998年、ビートルズのトリビュート盤『イン・マイ・ライフ』を息子のジャイルスと共にプロデュースし、自分の名義で発表。ジェフ・ベック、セリーヌ・ディオン、ヴァネッサ・メイ、BONNIE PINK、フィル・コリンズ等の豪華メンバーが参加した。
[編集] プロデュースした代表的なアーティスト
|
|
---|---|
メンバー | ジョン・レノン - ポール・マッカートニー - ジョージ・ハリスン - リンゴ・スター |
前メンバー | ピート・ベスト - スチュアート・サトクリフ |
プロデューサー | ジョージ・マーティン - フィル・スペクター - ジェフ・リン - ノーマン・スミス |
関連人物 | ブライアン・エプスタイン - クラウス・フォアマン - ビリー・プレストン - アラン・ウィリアムス - アラン・クライン - ニール・アスピノール - マル・エヴァンズ - アリステア・テイラー - ジェフ・エメリック - ノーマン・スミス - ケン・スコット - マハリシ・ヨギ - オノ・ヨーコ - リンダ・マッカートニー - オリヴィア・トリニアード・アリアス - パティ・ボイド - モーリン・スターキー - バーバラ・バック |
スタジオ & レーベル | アビー・ロード・スタジオ - EMI - パーロフォン - キャピトル・レコード - アップル・レコード |
関連項目 | クオリーメン - ザ・ビートルズ・アンソロジー - ザ・ビートルズ日本公演 - ザ・ビートルズ・クラブ - ビートルズの作品 - ビートルズの曲名一覧 - ビートルマニア - ビートルズの解散問題 - リバプールサウンド - ルーフトップ・コンサート - ゲット・バック・セッション - アップル・コア - デッカ・レコード - 5人目のビートルズ - ビートルズのカヴァー一覧 - レノン=マッカートニー - NEMSエンタープライズ - バック・ビート - レノン (小惑星) - マッカートニー (小惑星) - ハリスン (小惑星) - スター (小惑星) - ビートルズ (小惑星) - サージェント・ペパー - ビリー・シアーズ - イエロー・サブマリン |
映画 | ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ! - ヘルプ!4人はアイドル - マジカル・ミステリー・ツアー - イエロー・サブマリン - レット・イット・ビー |