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シグルイ - Wikipedia

シグルイ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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シグルイ』は、南條範夫原作・山口貴由作の時代劇漫画である。秋田書店の月刊漫画雑誌「チャンピオンRED」に、2003年8月号より連載されている。単行本はチャンピオンREDコミックスより刊行。

題名の「シグルイ」は、武士道を体現したと言われる書物『葉隠』の一節、

武士道は死狂ひなり。一人の殺害を数十人して仕かぬるもの。
(武士道は死に狂いである。一人を殺すのに数十人がかりでかなわないこともある。)

に由来する。

アニメ化もされ、WOWOWスクランブル枠で放送された(詳細は別項参照)。

目次

[編集] 原作

本作は、南條範夫時代小説『駿河城御前試合』の第一話「無明逆流れ」を中心に展開されているが、山口貴由による奔放な脚色がなされており(例:岩本虎眼の指が一本多く、曖昧な状態に陥っていたり、伊良子の復讐が大幅に改編されているなど)、ほとんど別物に近い作品となっている(「無明逆流れ」は、徳間文庫版では35ページほどの短編である)。南條の『駿河城御前試合』は、駿河大納言・徳川忠長の御前で催された十一番勝負を描いた連作短編であり、1963年には「無明逆流れ」が『対決』の題名で映画化された(作品情報 対決(1963))。 第五十四景(2008年3月号)で「無明逆流れ」の物語はいったん中断され、第五十五景(2008年4月号)より原作第四話「がま剣法」にあたる物語が始まっている。

原作小説の漫画版は、平田弘史が1966年に小説のエピソードを抜粋した『駿府凄絶大仕合』(芸文コミックス、後にレジェンドコミックシリーズより復刊)を手がけている。ただし平田版では「無明逆流れ」の話は収録されていない。「無明逆流れ」の漫画版としては、『シグルイ』以外にも、平田の弟である臣新蔵(現とみ新蔵)が、南條範夫原作の「戦国無惨伝シリーズ」の中で漫画化している(無明逆流れを参照)。

なお、原作『駿河城御前試合』は長く絶版となっており、古書市場では数千円から一万円のプレミア価格がついていたが、『シグルイ』の発表後、復刊ドットコムでの復刊リクエスト投票が成って、2005年10月6日に徳間文庫から復刊された。表紙絵は『シグルイ』作中の見開き画から採られている。


注意以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。


[編集] 梗概

寛永6年9月24日、駿河大納言・徳川忠長の一意により、駿府城内で御前試合の十一番勝負が行われた。通常、御前試合は、無益に剣士の生命を失わせないために、慣例として木剣にて行うこととなっているが、周囲の諌めにも拘らず、今回の御前試合は真剣を用いる事が決定され、二十二名の達人らによる凄惨な殺し合いが幕を開ける。

御前試合当日、左腕を缺損している隻腕の剣士・藤木源之助の前に現れた相手は、両目が真横一文字に切り裂かれた盲目・跛足の剣士、伊良子清玄であった。対峙する隻腕と盲目の剣士。まともな試合ができるかどうかすら危ぶむ周囲の心配をよそに、伊良子は奇妙な構えを取る。刀を杖のように地面に突き刺して足の指で挟みこみ、体を横に大きくのけ反らせるように捻って、通常とは逆の剣の構え方をした。伊良子必殺の「無明逆流れ」の構えである。

両剣士には浅からぬ因縁があった。ここで物語は七年前の過去にさかのぼる。

「濃尾無双」と謳われる剣の達人・岩本虎眼が、掛川に開いた虎眼流の道場があった。ある夏の日、藤木源之助らが修行するこの道場に、涼やかな美剣士伊良子清玄が道場破りとして訪れる。伊良子はまず相手を務めた藤木を「骨子術」指絡みによって破るが、次に相対した師範の牛股権左衛門の「かじき」と呼ばれる長大な木刀を用いた剣術の前に追い詰められ、降参するとともに虎眼への弟子入りを希望する。

そして引き立てられた伊良子の前に現れた白髪の老人。その老人こそ虎眼流の創始者である岩本虎眼であった。目の前の人間の名前すら分からぬ曖昧な様子を見せた虎眼であったが、一度太刀を手にするや、伊良子の額に貼り付けられた小豆一粒を髪の毛一本の狂いもなく両断して見せ、伊良子の入門を許可する。涎小豆の儀式である。これ以降、牛股・藤木・伊良子ら三人の弟子は虎眼流の「一虎双龍」と呼ばれることになる。

一年後、瞬く間に腕を上げた伊良子は道場随一の使い手となり、かつて道場の後継者と目された藤木を押しのけて虎眼流の後継者と噂されるようになった。虎眼には娘・三重が一人いるのみで、いずれ婿を取らせて虎眼流を継がせねばならなかったからである。又、三重自身も伊良子に恋焦がれていた。二人のうちより強い男に跡目を、と考える虎眼は藤木と伊良子にかつて自身に因縁のあった仇敵・舟木道場の跡取り息子である兵馬・数馬の兄弟を討ち取るよう命じる。為し遂げた方を三重の婿として迎えるというのである。舟木兄弟を闇討ちする藤木と伊良子。藤木は虎眼流中目録の奥義「流れ」を用いて兵馬を討ち、伊良子も、兄が討たれたことで異変が生じた数馬を討つ。

年の瀬、虎眼はついに三重の婿を決定する。婿として選ばれたのは藤木の見せた「流れ」すら身につけ、さらに腕を上げた伊良子であった。三重と虎眼流を足がかりに、更に高い地位と名声を得ようと野心を燃やす伊良子。だが、伊良子と自らの情婦であるいくとの不義密通に虎眼が気づいたのはそのすぐ後のことであった。

大晦日、虎眼流の奥義を授けるとの呼び出しに応じた伊良子を待ち受けていたのは、虎眼とその門下生による「仕置き」であった。打ち据えられ、薬を飲まされ、竹光を持たされた伊良子は虎眼と相対し、虎眼流奥義「流れ星」によって両目を潰され、いくとともに掛川から姿を消す。

三年後。牛股と藤木を中心として隆盛を極めていた虎眼流であったが、ある日、高弟である近藤涼之介が闇討ちされ、道場に首を晒されるという事件が発生する。死体は頭部を正中線で割られていた。藤木や牛股の他、宗像進八郎、山崎九郎右衛門、丸子彦兵衛、興津三十郎といった他の虎眼流高弟たちは犯人の捜索を開始するが、その中でさらに宗像、山崎、丸子も同じ手口で殺害される。死体に添えられていた品から犯人がかつての「仕置き」に関係する者と推測した藤木は、興津三十郎が時の権力者であった賎機検校に高弟たちの情報を売っていたことを突き止め、興津を討ち取るが、その日の午後、虎眼流の面々は当の賎機検校から屋敷への招きを受けた。

招きに応じた虎眼や藤木たちは、賎機検校の屋敷にて、以西把爾亜剣術を操る怪剣士夕雲との立会いを余儀なくされるが、虎眼は夕雲を容易く打ち破る。だがそこで虎眼や藤木たちが見たものは、検校の庇護の下で虎眼流への復讐に燃える伊良子といくの姿であった。

数日後、伊良子の策により分断された虎眼流の面々は、それぞれに刺客の襲撃を受ける。藤木と牛股は刺客を返り討ちにするが、牛股は毒に倒れ、虎眼は「流れ星」を超える秘剣「無明逆流れ」を盲目の中で編み出した伊良子と直接相対することとなる。 勝負は紙一重で伊良子の秘剣が上回り、濃尾無双と謳われた虎眼の伝説がそこで幕を閉じた。

[編集] 登場人物

[編集] 虎眼流関係者

藤木源之助(ふじき げんのすけ) 声:浪川大輔
本編の主人公。道場では牛股師範に次ぐ腕前を誇る、虎眼流の師範代。寡黙かつ実直な青年。勘が鋭いのか、僅かなヒントから「流れ星」の骨子となる技法を編み出した。腕力も相当なもので、得物持ちの浪人7人を拳のみで再起不能に追いやったこともある。
過去に道場破りに来た伊良子に敗北した事に固執しており、仕置きの際に手負いの伊良子に微笑みかけるなど、内に狂気を含んでいると思わせる節がある。
元は百姓の子だったが、没落武士の子を殺めた際に虎眼に拾われた。さらに虎眼の尽力によって士の身分になったという経緯があるためか、虎眼に対しての忠義は異常なものがある。
伊良子清玄(いらこ せいげん) 声:佐々木望
藤木の対となるもう一人の主人公。周囲の人間を利用し、高い身分に昇り詰めようとする野心家。天賦の才で虎眼流の奥義を軽々と身につける。虎眼の愛妾いくとの密通が露見し、仕置きを受けて盲目の身となり、追放された。その後は検校と関わり、虎眼流への復讐を行う。盲目でありながら独自の剣術「無明逆流れ」を編み出し、虎眼流の高弟達を血祭りに上げていく。
過去、虎眼流の高弟達が自身の知る身分だけの侍とは違うと気づき、仲間と思ったが、藤木のある一言により屈辱を味わった。そのため特に藤木には強い恨みを持つ。
岩本虎眼(いわもと こがん) 声:加藤精三(老境時)/矢尾一樹(壮年時)
岩本家当主であり虎眼流の開祖。「濃尾無双」と謳われた剣の達人。「流れ」や「星流れ」などの技を独自に編み出し、右手の指が一本多いという多指症を駆使した精妙な剣さばきを得意とするが、死闘の末、伊良子により殺害された。
晩年は精神に失調を来し、普段は「曖昧」な状態となっているが、時々正気に返る。
娘に三重がいるが、妻は過去に縊り死にし、愛妾・いくを囲っている。
極めて苛烈な性格で、過去に受けた屈辱は忘れないなど、全体的に暴虐な面が目立つが、過去に藤木が岩本家に引き取られた際には、優しそうな笑みを浮かべていたり、絶命する寸前には三重の姿を見て、「美しゅうなったのう」と涙を流していた。
山口は原作者の南條範夫をモデルにしていると巻末の解説に載せている。
牛股権左衛門(うしまた ごんざえもん) 声:屋良有作
道場では虎眼に次ぐ事実上のナンバー2である、虎眼流の師範。身分は郷士。巨漢でにこやかな風貌を持つが、後に虎眼の刀によって口を裂かれたため、怪異な容貌となった。巨大な木剣「かじき」を通常の太刀の様に軽々と振い、青竹を素手で握り潰すほどの怪力を持つ。
前髪だった頃、並外れた怪力のため敬遠されていたところ、虎眼流を紹介され入門を決めた。掛川への出発前、牛股は許婚のふくとの再会を桜の大樹の下で誓っている。しかし3年後、虎眼流に身を捧げる為に ふく を殺害しており、その責を取って素手による去勢を決行した。
「赤縄」の景では牛股が ふく を刀で両断している描写があるが、「契り桜」の景では大人になった ふく が切り倒された桜の切り株を見つめているシーンがある。よって、実際に牛股が斬ったのは ふく との契りの象徴である桜の樹であり、ふく の両断は許婚との別離を決意した牛股の心象風景とも取れる。いずれにせよ去勢を行ったのは事実のようで、藤木や伊良子以上の技前であるにもかかわらず、岩本家の跡目になっていないのはこれが理由と思われる。
岩本三重(いわもと みえ) 声:桑島法子
虎眼の一人娘。虎眼からは道場の跡取りを産む種受けとしかみなされていない。純情だが虎眼の娘らしく激しさを内に秘めている。
伊良子に懸想しており後継者が伊良子に決まった日、虎眼によりその場で男女の契りを交わすよう強要された際、伊良子がそれを阻止したことで、想いはより強固なものとなった。
伊良子追放後はショックのあまり拒食症となった時期もあった。
いく 声:篠原恵美
虎眼の囲われ者。彼女に関わった者は皆、不幸な目に遭うため、それを童歌として囃し立てられた。伊良子と密通したため、共に追放される。追放後は伊良子と供に賎機検校に仕え、名目上検校の愛妾となる。右胸の乳首は、伊良子がいくに手を出したことを見抜いた虎眼によって引きちぎられ(削り飛ばされ?)、左胸は伊良子の仕置きの時に伊良子の股間を焼き鏝で焼くよう強制された際、伊良子をかばうために自ら焼いている。そして伊良子の復讐の際には背中には眼の無い龍が老虎を屠る様が入墨され、それを見て激昂した虎眼に背中の皮を削がれている。
近藤涼之介(こんどう すずのすけ)声:堀江美都子
虎眼流の高弟。年若いが中目録の美少年剣士。目録伝授は祖父が虎眼と懇意の間柄だったことによる「義理許し」であるが、侍としての心構えは十分あり、虎眼流を嘲弄した牢人を切り捨てたこともある。藤木を慕っており、いつかその域に達したいと思っていた矢先、伊良子の復讐劇最初の犠牲者となる。
宗像進八郎(むなかた しんぱちろう) 声:大林隆介
元は掛川宿の任侠という経歴をもつ虎眼流の高弟。中目録は剣術の腕のみでを許された「術許し」である。戦国時代の荒武者の様に体中に無数の疵跡がある歴戦の剣士。涼之助死亡後、一応の下手人として立てられた一刀流の檜垣陣五郎を圧倒するも、その後、霧の中で出会った伊良子によって殺された。
山崎九郎右衛門(やまざき くろうえもん)声:島田敏
虎眼流の高弟。足軽出身。猫科動物の様なぎょろ眼をしている。涼之介にひそかに思いを寄せる。夜中に時折、木の下で涼之助の事を妄想しつつ、己の陰茎を口で慰めるなどの奇癖を持つ(この行動は他の高弟も知っているが、黙認されている)。
町の食事処で虎眼流の悪口(正確には噂話)を漏らした武士の顎を拳で砕いた上、無礼討ちにした武士の眼球を取り出して食べるなど奇行に事欠かない。
丸子彦兵衛(まりこ ひこべえ) 声:稲葉実
虎眼流の高弟。足軽出身。牛股に次ぐ怪力を誇る巨漢。素手で畳を突き破ったり、伊良子と湯屋で対決した際には、討ち取られながらも壁板に手刀を突き刺す程の指力を持つ。
興津三十郎(おきつ さんじゅうろう) 声:小山力也
虎眼流の高弟。身分は郷士。剣術だけでなく学問にも秀でており、藤木に読み書きを教えた。指二本で天井にぶら下がるなど、凄まじい指力を持つ。虎眼流には数少ない現実主義者であり、伊良子の追放や、三重の心の崩壊などの出来事から虎眼流の行く末に絶望し、検校側に高弟の情報を売って伊良子の復讐劇に手を貸していたが、藤木によって制裁される。
根尾谷六朗兵衛(ねおや ろくろべえ) 声:宝亀克寿
伊吹半心軒(いぶき はんしんけん) 声:福田信昭
金岡雲竜斎(かなおか うんりゅうさい) 声:大友龍三郎
「濃尾三天狗」の異名を持つ虎眼流免許皆伝の三人。伊良子のから虎眼を守るべく濃尾道場より呼び出された。しかし伊良子が訪ねてきた夜、魔人と化した虎眼によって六朗兵衛と半心軒は胴を真っ二つにされ死亡。行灯の近くにいた雲竜斎は難を免れ、伊良子側に寝返って大金を得、己の道場を開いたとされる。
三名とも登場している中では、最古参の門人達で、牛股よりも更に経歴は長く、免許皆伝を受けている事から「流れ星」の秘伝も体得していると考えられるが、作中で活かされる機会は無かった。雲竜斎は原作の『秘剣流れ星』では主人公の師として登場している。
茂助(もすけ)声:塚田正昭
岩本家に仕える老中間。虎眼の死後も岩本家に残った数少ない人間の一人。寡黙であるが、道端で蛇に呼び止められても動じない程の胆力がある。伊良子への仇討では、助太刀として牛股と共に参戦し、牛股が破れた後、勇ましく抜刀するが、伊良子に斬られて絶命したため、剣術の腕前が如何程であるかは不明。
大坪(おおつぼ) 声:徳本恭敏
虎眼流の門人の一人。腕前は「目録」。伊良子以前からの門下生であり、虎眼の死後も岩本家に残った数少ない人間の一人。牛股に追われて逃亡しようとした伊良子を、他の門下生と道場の入り口で阻んだ。伊良子への仇討では、助太刀として牛股と共に参戦。牛股が破れた後、茂助と共に抜刀するが伊良子に斬られで絶命する。

[編集] 舟木道場関係者

舟木一伝斎(ふなき いちでんさい) 声:大塚周夫
掛川城下に慶長以来名人と謳われた剣客。かつて虎眼と上覧試合をした事があり、その際に木剣で下あごを削ぎ飛ばされている。しかし虎眼はそのことで掛川城主・安藤直次より「不作法との誹りを受けた」として逆恨みされている。
「がま剣法」編では孤児となった屈木頑之助を不憫に思い引き取ったり、周囲に家畜以下とみなされていた頑之助にも『どのような境遇のものであろうと、一生に一度だけは自己の運命を覆し得る場に立つことが出来る』として「兜投げ」への参加を許可するなど、人格者としての一面を見せている。しかし「兜投げ」本番では、予想外に成長していた頑之助に危機感を覚えたのか、頑之助の顔面に兜をぶつけるように投げ、昏倒させている。
藤木と伊良子の仇討試合では仇討場に姿を見せているが、跡取り息子二人を失った衝撃のためか老境著しく、自分の足で歩けなくなったのか、箱車に乗せられている。しかし剣士としての本能は失われていないのか、伊良子が構えた「流れ星」の構えに反応している。
舟木数馬・兵馬(ふなき かずま・ひょうま) 声:近藤隆楠大典
一伝斎の双子の息子。並外れた巨体と剛力の持ち主。横から投げられた鉄兜を宙空で一刀両断する「兜投げ」を得意とする達人であるが、藤木と伊良子の闇討ちによって討ち取られる。
「流れ」など、繊細なテクニックを用いる虎眼流剣士とは対照的に、怪力を生かした「勢い良く刀を振り下ろすだけ」のシンプルな戦法を使う(凄まじい力で振り下ろされるため、伊良子の想像内では、防御した刀ごと伊良子を両断する描写がある)。
屈木頑之助(くつき がんのすけ)
通称蝦蟇。原作の「がま剣法」の主人公で、がま剣法の使い手。つぶれた鼻に離れた両眼、短い手足とまさに「蝦蟇」そのものの容貌である。元舟木道場の剣士で、仇討場に見物に現れる。藤木の「簾牙」と伊良子の「逆流れ」が交錯した瞬間にも両者の剣の軌道を見極めていたことから、この時点で剣の実力は相当なものだったと思われる(伊良子を除けば、屈木以外で藤木の左腕切断を見極めることができたのは牛股だけである)。
幼少の頃に舟木一伝斎に拾われ、育てられた。一伝斎の娘である千加に思いを寄せており、ある日偶然にも千加のある秘密を知ることになる。
舟木千加(ふなき ちか)
舟木一伝斎の娘で、兵馬・数馬の妹。女性でありながら怪力と豪放な気質の持ち主で、一伝斎の血筋が窺える。剣術だけでなく美貌も類稀であったが、描写を見る限りその身体には半陰陽(あるいは仮性半陰陽)という特異な性質がある。
斎田宗之助(さいだ そうのすけ)
藩士で、舟木道場の弟子の一人(藩士にもかかわらず月代にしていない理由は不明)。舟木門下生では実力随一といわれた美男。寛永三年の兜投げにおいては、投げられた兜を三尺五寸まで斬り下げた腕を持つため、翌年の兜投げでは成功者の大本命と目されていた。周囲の期待通り、寛永四年の兜投げでは投げられた兜を両断寸前まで斬り下げ、千加の婿に選ばれた。
倉川喜左衛門(くらかわ きざえもん)
浪士。舟木道場の弟子の一人。千加の婿選びをかけた寛永四年の兜投げに志願したが、二寸斬り込むのみに終わり、斎田宗之助の後塵を拝した。

[編集] 検校屋敷関係者

賎機検校(しずはたけんぎょう) 声:飯塚昭三
盲人の身で大名並みの権力を持つ実力者。自身は幼い頃に鴉によって目を突かれたため失明したという。虎眼によって追放された伊良子といくを抱え、虎眼流剣士の殲滅に手を貸している。伊良子以外にも夕雲、蝉丸など多数の手練れを抱えている。
増版後の単行本では伊良子の復讐に手を貸す理由が、検校自らも虎眼流に切られたため盲になったからと変更されている(理由は不明)。
社会的立場に関する詳細は検校を参考のこと。
夕雲(せきうん)
賎機検校お付の剣士。体毛が一切ない。高級藩士の子であったが、忠義を理解出来ないという武士として致命的な欠点を持っていたが故、親に捨てられた過去を持つ。その後、将軍家剣術指南役の小野忠明の弟子となり、忠明から対西洋剣術の練習台として犠牲になるべくレイピアを渡され、以西把爾亜(イスパニア)剣術と呼ばれる刺突剣を用いた剣法の習得を命ぜられる。そして、小野派の高弟らを問題にしない程までにその技を磨き上げた。
検校の命により虎眼と立ち会うが、虎拳の当て身により敗北。すぐに検校に剣を向けるも、蝉丸によって阻まれ、手甲鉤で胸を貫かれ死亡。
蝉丸(せみまる) 声:ヤスヒロ
賎機検校の家に仕える中間。巨躯を持ち、その体には無数の痣があり、全ての手指の先端が欠損している。含み針を得意とし、水中にいる鯉の目を正確に射抜くほどの正確さを誇る。
伊良子清玄の命により他の中間三人と共に道中の牛股を襲撃するが「星流れ」により首を斬られる。その際、毒を塗った手甲鉤で牛股の足を引っ掻き昏倒させた。これにより牛股は岩本邸に帰りが遅れ、伊良子による虎眼殺害を阻止することが出来なかった。
友六(ともろく) 声:木内秀信
賎機検校に仕える中間。鼻の横に葡萄ほどの大きさの黒子がある。鉄砲術を扱い、興津三十郎の「流れ」を見極めるなど、視力に長ける。
伊良子の罠にかかった藤木源之助を討ち取ろうとするも、銃弾を刀のはばきで防がれ、逃げようとした所を逆に討ち取られた。だが藤木を虎眼から引き離すことには成功したため、伊良子による虎眼殺害のために十分な役割を果たしたとも言える。
蔦の市(つたのいち) 声:原康義
盲人の自治組織である当道座に所属する男。按摩と灸を生業としている。やや増長しやすい性格で、伊良子の手がかりを求めて訪れた丸子と興津に対し挑発的な態度を取った為、二人に音による恐怖を味合わされて失禁してしまう。後日にも、藤木源之助に対する軽率な発言により蛇平四郎に首を絞められている。

[編集] その他の人物

徳川忠長(とくがわ ただなが) 声:松田佑貴
駿河大納言。将軍徳川家光の実弟でもある。非常に暴虐な性格で、妊婦の腹を裂いたとか、浅間神社で1,200頭あまりの猿を射殺したなどの伝説がある(これらは作り話である可能性が高い)。
寛永六年九月二十四日、駿河城で真剣を用いた御前試合を開催するという暴挙を犯した。
鳥居成次(とりい なおつぐ) 声:坂口芳貞
土佐守。忠長の家老。真剣を用いた御前試合を行うという忠長に対し、陰腹を斬り真剣試合の愚かさを説いたうえで自らの内臓を見せ付け主君を諭した。しかし効果なく「暗君…」の一言を残し死亡。
柳生宗矩(やぎゅう むねのり) 声:近藤隆
のちの将軍家剣術指南役。柳生新陰流の使い手。過去に虎眼と立会い、互角の攻防を演じたが「星流れ」の構えの前に圧倒されるが、虎眼より引き分けを申し込まれ、一応の体裁を保つ(その際の台詞が「まい・・・」であるが、降参の意である「参った」と、立ち向かおうとする「参る!」の二つの解釈に分かれるため)。
宗矩の体裁を保つことで、徳川家剣術指南役に推挙させることを狙った虎眼に対し、宗矩は一計を案じ、虎眼と豊臣秀吉が同じく多指であることを利用して「仕官の面接の際には右手の指を1本隠した方がいい」と嘘の助言で、虎眼の悲願を水泡に帰させた。嫉妬深い虎眼の人格形成に関っているであろう一人。
お蓉(およう) 声:氷上恭子
伊良子清玄の母親。夜鷹(下級の売春婦)をして生計を立てているが、脳が梅毒に犯されており、今では息子の清玄と客の区別も付かなくなっている。好物はぎんつば(焼き餅)。虎眼が跡目に清玄を指名したため、最下層出身という過去と決別し「武士」となるべく決断した清玄に殺害された。
蛇平四郎(くちなわ へいしろう)
九鬼一家という博徒集団の用心棒で、一羽流の使い手。かつて藤木源之助と戦い、二度の敗北を経て藤木こそ虎眼流最強の剣士であると確信するようになったため、敬意を持っている。虎眼流瓦解後、藤木に激励の言葉を贈っている。
孕石備前守(はらみいしびぜんのかみ)
掛川藩家老。右目に大きな傷のある老人。藤木源之助を息子に見せるため、三男である雪千代を尾張から呼び戻したほど、藤木を侍として、また剣士として高く評価している。藤木と伊良子の仇討ち試合を了解したが、試合は藤木と伊良子の対決にとどまらず、牛股による無差別な大量殺戮の場と化したため、責任を負って、家中の者の責任を不問とする嘆願書をしたためた上、自裁した。
虎眼の死後、備前守は岩本家(虎眼流)の政治的なバックボーンとして唯一にして強力な味方だったと言える。よって備前守の死は、虎眼流の壊滅を決定づけた。
孕石雪千代(はらみいし ゆきちよ)
孕石備前守の三男。長身の偉丈夫で美男。十三歳の時に下女三名を妊娠させたという逸話があるほどの女好きである。「つ…か」「本気(まじ)かよ」「あり得ぬ」など、現代の若者言葉を意識したような台詞が書き込まれる。
かつて江戸で「次郎右衛門忠常」の道場に入門しており、わずか3年という異例の速さで免許を皆伝されている。このことからも剣の実力はかなりのものと思われる。
石田凡太郎(いしだ ぼんたろう)
家中の者からは『菩薩の石田』で通る穏やかな気風と品格を併せ持つ孕石備前守家中の者。「人は姿にあらず」を信念とし、蟷螂のような醜女を娶ることになり周囲の者から哀れみの声があったが(当時は相手も知らず婚約が決まるものだった)存分に愛し三人の子を設けた。敵を屠りまくる牛股に誰も近づけないでいた中ただ一人牛股を鎮めようと歩み出たが、臓物を掴み出され絶命。
月岡雪之介(つきおか ゆきのすけ)
原作「峰打ち不殺」の主人公、峰打ち不殺剣の使い手。二人の掛川藩士の報復に会い、木の幹に縛り付けられ山中に放置されたいくと伊良子が野犬に襲われそうになったところを救出する。原作と同様の優男のようで盲目になってから再び修業に励む伊良子とその世話を献身的にするいくを、時には刀を抜いて向かい合い共に鍛錬をし、見守っていたようだ。

[編集] 虎眼流の技法

虎眼流は、初代当主である岩本虎眼が牢人として修行中に用いていた我流の剣術を前身とし、それを発展・体系化したものである。従って、その技術には他の流派にはない独特の技法が多数含まれており、しかもその性能は他の追随を全く許さない、極めて強力なものとなっている。以下に、虎眼流の技法を挙げる。

虎拳(こけん)
手首を用いた当て技。一撃だけで人体を変形させるほどの破壊力を持ち、その速度は一般人の動体視力では捉えることもできないほど速い。空手で、主に払い技として使用されている「孤拳」と類似しているが、こちらは明らかに攻撃用である。
虎拳の星流れ(仮称)
藤木が虎眼のヒントにより星流れの原理を習得した際、自ら編み出したと思われるもの。星流れの原理を応用し、片方の拳を握りその反動で虎拳を高速で放つ。丹波蝙也斎との立合いを無刀で寸鉄も帯びず挑んだ藤木が、丹波の抜き打ちに対してバックハンドブローのような形で用い、虎拳の当たった顎ごと吹き飛ばしている。
土雷(つちらい)
組み伏せられた状態から、踏み込みと全身の「反り」を用いて、瞬時に拳を内臓にめり込ませる柔(やわら=柔術)の技。藤木源之助が伊良子清玄との仇討ちにて行った際には、拳の代わりに刀の柄頭を使用した。
流れ(ながれ)
虎眼流の中でも中目録以上の腕前の者にのみ伝授される秘伝である。刀を片手で背後に担ぎ(この際、筋肉を緊張させるためか、大きく息を吸い込んでから止めおり、使い手によっては頬が膨らむ描写がある)その状態から相手に向かって刀を横に薙ぐという技であるが、刀を振ると同時に、手を刀の鍔元から柄尻まで横滑りさせる事で、攻撃範囲・剣速を高めている。「人体は三寸斬り込めば十分致命傷になりうる」という虎眼流の理から、切先による最少の斬撃で相手を絶命させる事ができるとされている。技の性質上、精妙な握力の調節が不可欠となるため「不十分な流れはそれ故に危険」と言われ、三重が七丁念仏を持ち出した時に放った流れは、握力の調節が不十分であったため、刀はあらぬ方向に飛んでいった。
牛股は検校屋敷の刺客に襲われた際、三人同時に軌道を変えながら精確に斬り込み、藤木は跳躍しながら流れを放ち、かなりの間合いがあった友六を斬っており、使用者によって様々な応用が存在すると思われる
流れ星(星流れ)
岩本虎眼が修行中に生み出した秘奥の必殺剣である。大目録術許し(免許皆伝)を与えられた者のみが使う事を許されており、その域に達しない者は、岩本虎眼がこの技を使用する様を見てはならないことになっている。開眼の地である秋葉山昆嶽神社は虎眼流にとって聖地とされる。
技の要点は、右手の人差し指と中指の間で剣の柄を挟み、左手の指で刀身を掴んで力を溜めてから、左手を放すことにより、爆発的な速度と破壊力を持つ斬撃を放つ事が出来る。これに加え、刀を放つ際に身体を回転させることで、周囲の物を一刀両断とする。
主君に頼まれて一度この技を御前で披露した時、6人の囚人の首を一度にはね、内後方の2人の首は胴の上に乗ったままだったといい、虎眼が精妙比類無しと謳われる所以でもある。
藤木、牛股、伊良子らもこの「星流れ」を使う(伊良子は仕置きの際技法を盗み、藤木は虎眼のヒントから自ら編み出した)が、虎眼は左手をやや持ち上げ手前に引くように構え、人差し指と中指で刀身を挟むのに対し、伊良子は刀を胸の前で地面と水平になるように構え(この構えは回想で柳生宗矩と対峙した岩本虎眼が見せたものに酷似している)、牛股は同じく刀を水平にするが、刀身を固定する左手を蟷螂拳のように、人差し指から小指を揃えた状態で親指と人差し指で摘む様に挟む。藤木は親指で物を弾くような手の形(コイントスでコインを弾く時に似ている)で、親指と握った拳全体で刃を挟む。作中には登場しないが、第4巻の裏表紙で見せた藤木の構えは大刀を垂直に構えている。左手の刀身を挟む形や刀の傾きは様々であり、使い手によって微妙に違っている。
作中、技の名称が「流れ星」と「星流れ」の二つで呼ばれるが、どのような基準で区別されているかについて作中では言及はされていない。原作の「駿河城御前試合」で虎眼流の奥義は「流れ星」となっているが、「秘剣流れ星」において、主人公の使う技は「星流れ」という名称が用いられている。(「秘剣流れ星」では、宮本虎眼という剣士が虎眼流を創始した、とされている。)
原作の「流れ星」は「対手の首を狙い、流星の如き神速で横薙ぎの一閃を放つ、一太刀が必殺の秘剣」とされ、細かい描写はされていない。シグルイ版は、首を狙った横薙ぎの斬撃という点のみが一致するだけで、大幅なアレンジが加えられている。原作では本来、流れ星は両手で刀を握り繰り出す技のようだが、隻腕になった藤木が流れ星を使う描写もある。
流れ星の骨子の掴み(仮称)
人差し指と中指の二指で刀の柄を挟むように握る、星流れに用いられる掴み。濃尾三天狗や二輪で使用されていたことから元々虎眼流に存在する技法であるようである。藤木が信楽伊右衛門に襲撃された際に偶然編み出し、興津の台詞によると仕置きの際に他の門弟にも見せたことから、虎眼流の高弟の間で使われるようになる。脇差の小刀で抜刀と同時に高速の斬撃を繰り出す方法が高弟の間では用いられたが、二輪で用いられたものや濃尾三天狗の見せた構え、藤木が友六に襲われる直前に見せた抜き打ちでは、打刀の大刀を使っている。虎眼はこの掴みで二刀流の構えを見せた。伊良子が構える前、抜刀の動作でこの掴みをしたこともある。
飛猿横流れ(ひえんよこながれ)
逆回転によって、後回しに流れを放つ技。正面より上半身のみを捻る通常の流れとは異なり、全身の回転を利用し、更には踏み込みを加える為、従来の流れの速度・威力・攻撃範囲を遙かに凌駕する。
「流れ星」と同じくこちらも原作の「無明逆流れ」に藤木が独自に編み出した技として登場する。原作では「流れ星」に改良を加えた技であり、対手の左肩にぶつかるように接近し、飛びこみざまに横薙ぎに払う。
紐鏡(ひもかがみ)
紐(ひも)は氷面(ひも)の意。磨きぬいた刀身に敵を映し出して、相手の動向を探る技法。半身を捻り、敵からの視線を背けた構えを取ることから、「流れ」又は「飛猿横流れ」への伏線技と思われる。
二輪(ふたわ)
虎眼流の秘太刀の型(定められた攻防の手順)を二名で行う。元々は訓練のために用いられるものだが、真剣を用いて超高速でこれを行った場合、致死率は実戦よりも更に高いと言われている。そのため、二輪を行う者は、斬死に備えるために下剤入りの葛湯を飲んで大便を完全に排泄し、内臓の臭気を消すという清めを行う。
弟子の裏切りに憤怒した岩本虎眼が、猜疑心に駆られ、藤木と牛股の両名の忠誠心を試すために舞わせたが、終了後には生存に成功した両名が感涙するほどであった。
なお、作者はオートバイレースで、2人のレーサーが前後に2台連なって走る練習法(これも2人の呼吸がずれると重大事故に繋がる非常に危険なものである)からこの訓練法の着想を得たと発言しており、ネーミングもバイク(二輪車)から採ったと推測できる。
練り(ねり)
鍛錬法の一つ。巨大な木剣「かじき」を使用し、素振り一挙動を小半刻(約30分)かけて行う。力んだ際に奥歯が粉砕するのを防ぐため、手拭を口にくわえて行う。
水鎧(みずよろい)
水練(泳法の訓練)の一つ。重い甲冑を着込んだ状態で海中に水没し、沈み切ってしまう前に甲冑を外して浮上するというもの。どのような危機的な状況であっても冷静さを保つ為の訓練である。素早く浮上出来なければ命に関わる危険なものだが、虎眼流全体から見ると、これでも比較的安全な部類に入る訓練だという。
鉢巻切(はちまきぎり)
相手の頭に巻かれた鉢巻を、木剣で切断する演武の一種。牛股の得意技であったが、入門して一年程度の伊良子が使いこなした。
涎小豆(よだれあずき)
虎眼流独特の入門儀式。豇豆(ササゲ)の甘露煮に水飴を絡めたものを入門希望者の額に一粒貼り付け、当主である岩本虎眼がそれを抜き打ちで十文字に寸断するというもの。この際、同席者は刀の刃で指を切って出た血を同様に自らの額に付ける。抜き打ちが成功した後は、同席者全員で「お美事(おみごと。見ではなく美の字を使う)にございまする」と斉唱するのが習わしである。後に、伊良子がこれと同様の試し切りをササゲよりも更に小さな米粒をいくの乳首に貼り付けて実行しており、技術を確実に会得した事を如実に表す事となった。
徳利開け(とっくりあけ)
藤木が流れ星の技術を会得するために至るきっかけになった鍛錬。星流れの原理を利用した虎拳を用いて徳利にほぼ円形の穴を空ける。
無双許し虎参り(むそうゆるしとらまいり)
虎眼の若い頃の路銀調達法であり、その後も弟子が続けていると思われる。掛川城下にある「無双」を謳う剣術道場にかじきを持って現れ、指導の名目で道場主から金を貰う。
鍔迫り(つばぜり)
自らの刀を相手の刀とぶつけ合わせ、そのまま力押しによって相手を屈服させる技。藤木の得意技であり、彼の場合、相手を押し倒した上、首を木刀で締め上げる事で、自分からは参ったを宣言出来ない様にするという恐ろしい技となっている。
片手念仏鎬受け(かたてねんぶつ しのぎうけ)
鎬(しのぎ=刀身と峰の間に有る小高い部分)に掌底を添えて相手の斬撃を受ける。技というよりは、剣術の基本的な防御技術の一つ。
茎受け(なかごうけ)
刀身の下部(柄)を、相手の攻撃に合わせる防御技術。虎眼流免許皆伝を受けた藤木源之助は、星流れへの対処法を思案した末、斬撃に対して柄頭を水平に合わせて受けることを編み出し、この一般的な防御法を、ついには「対星流れ用の防御」にまで昇華させた。
晦し(くらまし)
刀を両手持ちで上段に構え、刀から片手のみを放し、放した方の腕を先に振り下ろす一種のフェイント技。振り下ろす手に剣気をのせることで、相手は本当に斬られたような感覚に一瞬襲われる。相手への威嚇や挑発にも用いられる事がある。前述の「二輪」の一の型でもある。
簾牙(すだれきば)
藤木源之助と牛股権左衛門が、対 伊良子清玄戦に向けて開発した構え。
清玄の「無明逆流れ」対策として考案された構えであり、元来の虎眼流には存在しない藤木(と牛股?)独自の技術である。
命名者が牛股なのか藤木なのかは不明。
右手に星流れの構え、左手に逆手で脇差を構えたその体勢を、簾(すだれ)状に並ぶ牙に見立てた命名と推測される。
左に逆手で構えた脇差は、無明逆流れの下段対策に特化した結果。

[編集] その他

無明逆流れ(むみょうさかながれ)
原作短編の題名ともなっている技。伊良子清玄が虎眼流を追放された後、それまでに身に付けた技術を基に生み出した独自の必殺剣。「盲人が杖を突いているかのような」剣を地面に突き立てた構えから、前方に倒れこんで相手の攻撃をかわしつつ、相手の腹部から顔面にかけての正中線を流れによって切り上げるという技で、その速度、間合いは流れを凌駕し、流れ星にも匹敵するほど。技の特性上、地面の硬軟や地中に埋まる石などの障害物の有無によって、発動が妨げられるという弱点があったが、後年、跛足となった足を使って剣を締め付けることによって、流れ星と同様の技へと改良されており、更に強力なものとなっている。「無明逆流れ」とは剣技や構えの名前であると同時に、伊良子の使う剣法の名でもあるようである。
山崎に使ったものは倒れ込む動作が無くそのまま身体を反るように斬り上げ、丸子を倒す際に使ったものも同様にそのまま下から上へ斬り上げている、宗像を襲撃した際には倒れ込む動作はしていたが、本来刀は右手で握るようであるが左手で握っている。また、「流れ」の技術を用いて掌中を滑らせる時とそのままの握りで斬り上げるパターンがあり、様々な工夫が凝らされたと思われる。
原作では無明逆流れに用いられる、地面に突き立てた刀を斬り上げる技術を総称して逆流れと呼んでいるようだがシグルイではこの呼称は用いられていない。
骨子術(こっしじゅつ)
経絡を利用した体術等の一種、序盤で道場破りに現れた伊良子が、藤木の鍔迫り合い状態から指溺み(ゆびがらみ)という技を使い勝利した。また、涎小豆の儀式を行う際、牛股が入門者の動きを封じるのに用いた。
がま剣法
屈木頑之助が富士山麓で独自に編み出した剣術の技法。頑之助の特徴的な巨大な頭部を起点とし、そのまま天地が逆さになるよう、頭部を地面に付けたまま、後背筋ではね上がり、回転するように対手の両足を切断する。
原作では、蛙のように低く構える事で、地上二尺以下には斬撃が届かない剣術の理を利用し、跳躍しそのまま地上一~二尺で対手の足を狙い横に薙払うものであった。
かじき
虎眼流で用いられる巨大な木剣。上下させる事自体が困難とされ、形が似ている事とその巨大さからかカジキマグロに見立てられこう呼ばれる。元々は虎眼流の素振りの鍛錬である「練り」に使われる素振り用木剣だが、若き日の虎眼や剛力の牛股はこれ自体を武器として用いていた。また、その大きさから楯として利用することも可能である。
七丁念仏(ななちょうねんぶつ)
虎眼が掛川城主である安藤直次から預かった宝刀。作中では白鞘になっている。辻斬りに用いられた際に、袈裟懸けに斬られた坊主がそのまま七丁歩いてから傷が開き絶命したという伝説からこう呼ばれる。
八丁念仏団子刺しという刀剣が実在したと言われ、それが元になっていると思われる
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[編集] テレビアニメ

2007年7月19日より10月12日 (JST) までWOWOWにて放送。HV制作。現在の一般漫画では極限ともいえる原作の残酷描写をアニメにおいても再現する為、R-15指定相当となった。キャスティングはベテランから若手まで著名な声優を多数配役。また、山口の別作『覚悟のススメ』アニメ版でヒロイン・罪子を演じた堀江美都子が友情出演している。

[編集] キャスト

※本項登場人物を参照されたし。

[編集] スタッフ

  • 原作:南條範夫「駿河城御前試合」
  • 漫画:山口貴由(月刊『チャンピオンRED』連載中)
  • 企画:丸山正雄、黒水則顯、熊澤芳紀、秋田貞樹
  • エグゼクティブプロデューサー:峰崎順朗、川村明廣、丸田順吾、伊藤純
  • プロデューサー:北浦宏之、上田耕行、二方由紀子、小山芳弘
  • シリーズ構成・脚本:水上清資
  • キャラクターデザイン・総作画監督:筱雅律
  • プロップデザイン:そえたかずひろ
  • 美術監督:金子英俊(アトリエブーカ)
  • 色彩設計:鎌田千賀子 (DR TOKYO)
  • 撮影監督:増元由紀大 (DR TOKYO)
  • CGディレクター:相馬洋
  • 編集:寺内聡
  • 編集助手:河西直樹
  • 音響監督:本田保則
  • 音響効果:倉橋静男(サウンドボックス
  • 音響制作:庄司明(アーツ・プロ)
  • 音楽:吉田潔
  • 音楽プロデューサー:岡田こずえ、尾上政幸
  • 監修:宗宮修一、高橋和彦
  • 監督助手:増原光幸
  • アニメーションプロデューサー:篠原昭
  • アニメーション制作:マッドハウス
  • 監督:浜崎博嗣
  • 製作:シグルイ製作委員会(WOWOW、ジェネオンエンタテインメント、マッドハウス、秋田書店)

[編集] サブタイトル

話数 サブタイトル 脚本 絵コンテ 演出 作画監督
第一景 駿府城御前試合 水上清資 浜崎博嗣 増原光幸 筱雅律
第二景 涎小豆(よだれあずき) 金亨一
金正弼
第三景 鎌鼬(かまいたち) 香月邦夫 立川譲 村田睦明
あべたくじ
第四景 童歌(わらべうた) 福田道生 細田雅弘 山崎展義
第五景 秘剣伝授 駒井一也
第六景 産声 増原光幸 奥田佳子
第七景 平尾隆之 立川譲 申在益
李敏培
第八景 蝉しぐれ 吉田徹 小田原男 村谷貴志
江本正弘
第九景 虎子 高橋亨 羽生尚靖 あべたくじ
村田睦明
第十景 検校仕置屋敷 福田道生 細田雅弘 山崎展義
第十一景 月光 鶴岡耕次郎 立川譲 李敏培
申在益
第十二景 無明逆流れ 川尻善昭 増原光幸 村谷貴志
江本正弘

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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