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ウィリアム・ペン - Wikipedia

ウィリアム・ペン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ウィリアム・ペン(William Penn)
ウィリアム・ペン(William Penn)

ウィリアム・ペンWilliam Penn1644年10月14日 - 1718年7月30日)は、イギリス植民地だった現在のアメリカ合衆国フィラデルフィア市を建設しペンシルバニア州を整備した人物である。ペンが示した民主主義重視は、アメリカ合衆国憲法に影響を与えた。

目次

[編集] 信仰

ペンは裕福なイングランド国教会信徒の家に生まれたが、22歳でキリスト友会徒(クエーカー)になった。クエーカーは内なる光に従い、その光は神から直接来ると信じ、国王の権威を否定し、平和主義を掲げている。時はオリバー・クロムウェルが没して間もない騒乱の時期で、クエーカーは異端の考えと国王への忠誠を拒否したことで裁判にかけられていた。(クエーカーは宣誓をしない。)

ペンの宗教観は、海軍軍役を通じてアイルランドに土地を得てペンの権威と知性でチャールズ2世の宮廷で追従を得ることを望んだ父ウィリアム・ペンを激しく苦しめた。1668年、ペンは三位一体の教えを攻撃する小冊子(「揺れる砂上の楼閣」)を書いて投獄された。

  • 「汝が良く支配しないのなら、汝は神のために支配しなければならず、その為に神に支配される・・・。神に支配されないものは、暴君に支配されることになる。」ウィリアム・ペン

[編集] 迫害

武具を身に着けた22歳のウィリアム・ペン
武具を身に着けた22歳のウィリアム・ペン

ペンは少年期に宗教教育を受けたエセックスのチグウェル校で教育を受けた。その後自身の宗教観の故に事実上イングランド社会から追放され、クエーカーであるがためにオックスフォードクライストチャーチ大聖堂から破門され、数回逮捕された。最も有名なのは、クエーカーの集会で説教してウィリアム・ミードと逮捕されて受けた裁判である。ペンは告発状と自身が犯したとされる法律の写しを見る権利を主張して弁明したが、判事であるロンドン市長は、この権利が合法的であったにしても、拒否した。有罪にするよう強い圧力がロンドン市長から掛かったにもかかわらず、陪審員は「無罪」の評決をした。市長は今度は(法廷侮辱罪で)再度投獄しようとし、陪審員も同調した。陪審員は判事の支配を受けない権利を勝ち取ろうとした。

クエーカーに対する迫害が厳しくなり、ペンは北アメリカに新しい自由な新天地を求める気持ちが強くなった。既に北米に移住したクエーカーもいたが、特にニューイングランドピューリタンは、クエーカーの移住に否定的で、帰国を要求し、カリブ海地域への立ち入りが禁止される者もいた。

[編集] ペンシルバニア建設

「政府の枠組み」の最初の草稿、ペンによるペンシルバニア憲法(1681年)
「政府の枠組み」の最初の草稿、ペンによるペンシルバニア憲法(1681年)

1677年、ペンたちに著名なクエーカーとして西ニュージャージー地区(現在のニュージャージー州西部)を受領する機会に恵まれた。同じ年、ハートフォードシャー州のチョーリーウッドとリックマンスワースとバッキンガムシャー州から200人の開拓者が到着し、バーリントンを建設した。ペンはこの計画に関わったもののイングランドに残り、開拓のための自由憲章の草稿を書き上げた。自由で公平な裁判、信教の自由、不当に収監されない自由、自由選挙を保証した。

チャールズ2世はペンの父親に借金があり、1681年3月4日にニュージャージーの広大な西部地区と南部地区を保証することで弁済に当てた。ペンはこの領地をシルバニア(Sylvania、ラテン語で「森」)名付けたが、チャールズはペン父親に敬意を表してこれを「ペンシルバニア」と改めた。恐らく国王は宗教や政治上のよそ者が(クエーカーやホイッグのように人民の参画を望む集団)、イングランドから遠く離れた土地に自分達の土地を持って喜んだのであろう。ペンシルバニア最初の郡のひとつは、ペンの家族の出身地のイングランドのバッキンガムシャー州に因んでバックス郡と名付けられ、そこから初期の開拓者がやってきた。

地域におけるペンの権力は、公式には国王に従ってはいたが、「政府の枠組み」を通して信教の自由、公正な裁判、主権を持つ人民により選ばれた代表、三権分立(後にアメリカ合衆国憲法の基本になる考えであることを再度指摘する)と共に民主的な制度を実行した。ペンシルバニアの信教の自由(神を信じる者全てに対する完全な信教の自由)は、この地に来るイングランド・ウェールズドイツオランダのクエーカーだけでなく、カトリックのドイツルター派同様ユグノーにも与えられた。

ペンはペンシルバニアが自分と家族が儲けられる土地になることを望んでいた。ペンはヨーロッパ中に様々な言語でペンシルバニアを売り込んだ結果、移民が大挙して押し寄せた。ペンシルバニアが急激に成長し変化した割にはペンや家族が潤うことはなかった。実際、後にペンはイングランドで借金のために収監され、死んだ1718年には無一文であった。

1682年に「大協定」でウィリアム・ペンに与えられた貝殻玉のベルト
1682年に「大協定」でウィリアム・ペンに与えられた貝殻玉のベルト

1682年から1684年までペンはペンシルバニアにいた。フィラデルフィア建設計画が完成し政策案が実行に移されると、各地を巡視に出かけた。先住民と(最初はレニレナペ族、別名デラウェア族)友好関係を結び、土地への支払いは公正に行うことを確約した。ペンは通訳を用いずに交渉する中で先住民に数種類の方言があることを知った。ペンはヨーロッパ人が先住民に不法行為をすると双方から同数の人が出て公平な審理を行う法を紹介した。この方法は成功し、後の植民者がペンたち最初の植民者のように公平に先住民を扱わなくても、植民者と先住民は他のイングランド植民地より長くペンシルバニアで共存した。

先住民とのペンの協定、連邦議事堂小壁
先住民とのペンの協定、連邦議事堂小壁

ペンはシャカマクソンの(フィラデルフィアのケンジントン近く)先住民とも楡の木の下で協定を結んだ。ペンは征服より事業を通じて植民地を得ることを選択した。条約に基づき適正と思う金額1200ポンドを先住民に支払った。ヴォルテールはこの「大協定」を「この人達(先住民とヨーロッパ人)の間で唯一口約束でもなく破られもしなかった協定」と賞賛した。多くの人はペンに関する作り話だと思っている。しかし、物語はでっち上げではない。この事実は肖像画になり、連邦議事堂少壁に掲げられている。

ペンは1699年にアメリカをもう一度訪れた。この間、アメリカの全イングランド植民地を連邦化する計画を推し進めた。奴隷制との闘いを訴えたが、自分が奴隷を所有し取引していたので、成功しなかったようだ。しかし、奴隷の処遇を向上させ、他にペンシルバニアのクエーカーが初期の奴隷制反対運動に加わった。

ペンは自分もフィラデルフィアに移住したかったが、金銭問題で1701年に帰国を余儀なくされた。資産アドバイザーのフィリップ・フォードは大きな借金をペンに作り、フォードの陰謀でペンはペンシルバニアを失いかけていた。次の10年は主としてフォードの法廷闘争に明け暮れた。ペンはイングランドにペンシルバニアを売却しようとしたが、交渉が行われているうちに、1712年に人事不省になる発作を起こした。

ペンは1718年に死に、イングランドバッキンガムシャー州チョーフォントのジョーダンズ村クエーカー集会所の墓地で最初の妻の隣に葬られた。家族はアメリカ独立戦争までペンシルバニアの所有権を持ち続けた。

[編集] 追叙

市庁舎屋上のウィリアム・ペンの銅像
市庁舎屋上のウィリアム・ペンの銅像

1987年11月28日ロナルド・レーガンは大統領布告第5284号により、ウィリアム・ペンと二番目の妻ハナ・カロウィル・ペンをそれぞれアメリカ合衆国名誉市民にすると発表した。

巷間に伝えられている話に、ある時ジョージ・フォックスとウィリアム・ペンが会ったという話がある。ここでウィリアム・ペンが剣を身に付けることに(ペンの身分では当たり前だった)懸念を示し、どうしたらクエーカーの信仰と両立できるかを尋ねた。ジョージ・フォックスは応えて、「できる限り着ければ良い」と言った。後日談があり、ペンはフォックスと再会したが、この時は剣を身に着けていなかった。その時ペンは言った。「仰せに従ってできる限り着用しましたよ。」

フィラデルフィア市庁舎の屋上にアレクサンダー・ミルン・コールダーが建てたウィリアム・ペンの銅像がある。一時ウィリアム・ペンの銅像より高くに建造物を造ってはいけないという紳士協定があった。初めて高く作られたのは、1980年代後半になってからである。この銅像は「ビリー・ペンの呪い」と言われている(「ビリー」は「ウィリアム」の短縮型)。

クエーカー・オーツの箱にある笑みを浮かべたクエーカーはウィリアム・ペンだと広く誤解されている。クエーカー・オーツ社は違うと言っている。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

[編集] ペンの業績


英語版 William Penn 2006-03-27 21:43 UTCより翻訳。著者:Brholden ほか。


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