アグスタウェストランド EH101
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アグスタウェストランド EH101
アグスタウェストランド EH101 (AgustaWestland EH101) は、イギリスのウエストランド社とイタリアのアグスタ社が共同開発した汎用ヘリコプターである。両社は2000年に合併したため、現在はアグスタウェストランド社が販売と製造を請け負っている。イギリス海軍における呼称はコチョウゲンボウを意味するマーリン (Merlin)。
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[編集] 概要
EH101は1980年代初頭のイギリス海軍とイタリア海軍の次期対潜哨戒ヘリコプターとして提案すべく、英ウエストランド・伊アグスタ両社の出資によって設立されたユーロ・ヘリコプター・インダストリー(EHI)によって開発された。仕様策定の過程で汎用ヘリコプターとしての可能性を付与され、1987年に両社で組み立てられた機体が初飛行した。
大量の機材と長大な航続距離を求めた結果、3発のエンジンと巨大な床下燃料タンクを搭載する大型機となったが、オプションのテール及びローター折り畳み機構によって艦載機としての運用を可能としている。巨大なキャビンは左舷にステップ付きドア、右舷にスライド式カーゴドア、後部にランプ・ドアを備え、民間輸送型で30人を乗せる事ができる。5枚のメインローターはウエストランド社がリンクスで取り組んだBERPブレードを採用し、特徴的な外見を備えている。
対潜哨戒機として英海軍でマーリン(Merlin)HM Mk.1、イタリア海軍でEH101 ASWとして導入され、カナダでは空軍の救難機CH-149として採用された。アメリカ合衆国でも海兵隊の次期大統領専用機(マリーン・ワン)としてVH-71(旧名称US101)が採用される。
日本では警視庁が世界で初めて民間型EH101(グリフォン)を「おおぞら1号」として導入した(2005年9月現在、世界で唯一民間型EH101である)
[編集] 要目
- メインローター直径:18.6 m
- テールローター直径:4.0 m
- 胴体長:19.5 m
- 胴体幅:4.6 m (テールフィン除く)
- 全長:22.8 m (テールローター含む、メインローター除く)
- 全高:6.63 m (テールローター含む)
- 最大離陸重量:14,600 kg
- エンジン(民間用):GE CT7-6A (2,000軸馬力(shp)) 3基
- エンジン(軍事用):GE T700-T6A1 (2,145軸馬力(shp)) または R&R/Turbomeca RTM322 (2,263軸馬力(shp))
- 最大速度:311 km/h
- 巡航速度:280 km/h
- 乗員3名+乗客30
[編集] 各仕様と主な装備品
[編集] 派生型
- EH101:原型、民間販売用もこの名称。
- Merlin HM Mk.1:イギリス海軍向け対潜哨戒機。
- EH101 ASW:イタリア海軍向け対潜哨戒機。
- CH-149:カナダ空軍向け救難機。
- MCH-101:海上自衛隊の掃海・輸送ヘリコプター。11機導入予定。
- CH-101:日本の砕氷艦「しらせ」艦載機。3機導入予定。
- VH-71:アメリカ海兵隊の次期大統領輸送機「マリーン・ワン」(旧名称US101)。愛称は「ケストレル」。23機導入予定。
[編集] 海上自衛隊での仕様
海上自衛隊では、EH101をMCH-101と呼称し、掃海・輸送ヘリコプターとして運用する予定である。海上自衛隊は掃海ヘリコプターMH-53Eの後継を必要としたことから、MCH-101初号機(完成品輸入)が2006年(平成18)に納入された。以後、川崎重工業によりノックダウン生産(2号機)とライセンス生産(3号機以降)が行われ、MH-53Eと同数の11機を導入する見込みである。現在2機が岩国基地に配備され、平成21年度までにさらに3機が追加配備される予定である。
米国からのFMS(有償供与)により稼働率の低かったMH-53Eに変わり、自国生産を行うMCH-101では稼働率と即応性が向上する。また、MH-53Eでは掃海輸送任務に限定されていたが、EH101は艦載任務と捜索救難任務も付加されており、災害派遣や国際支援活動での活躍も期待されている。
海上自衛隊岩国航空基地所属の第111航空隊では、掃海具の小型軽量化により、EH101での航空掃海が実用化されている。新式掃海具は、2013年(平成25)度を目途にアメリカから輸入配備の予定である。
従来の掃海ヘリコプターでは、掃海具を曳航することのみが任務であったが、青/緑レーザー機雷捜索装置、曳航式サイドスキャンソーナーの開発によって、よりアクティブに機雷捜索が可能となり、掃海から掃討へ技術革新を果たしている。
建造中のひゅうが型護衛艦に輸送ヘリとして搭載され、災害派遣、海外緊急援助などにも運用される予定である。掃海と輸送が主任務となるが、副次任務として捜索救難任務があり、常時降下救助員有資格者が搭乗する。また捜索救難に必要なGPS、捜索用レーダー、AIS、赤外線暗視装置、各種救難機材等の追加装備も検討されている。
また、砕氷艦「しらせ」艦載機のS-61A-1の後継として次期砕氷艦(南極観測船)「しらせ(2代)」用にCH-101を3機、文部科学省予算で調達し、海自によって運用される。2007年(平成19)時点での調達予定は、計14機である。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- AgustaWestland (英語)
- 海上自衛隊 - MCH-101
- 自衛隊装備品図鑑
- 丸紅エアロスペース - EH101
- 川崎重工業 航空宇宙カンパニー - 回転翼機