海上自衛隊の航空母艦建造構想
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海上自衛隊の航空母艦建造構想(かいじょうじえいたいのこうくうぼかんけんぞうこうそう)では、海上自衛隊の航空母艦ならびに軽空母等の類似艦艇建造構想について述べる。
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[編集] 第1次防衛力整備計画以前
※ 厚生省復員局~Y委員会~海上警備隊~保安庁警備隊~海上自衛隊:昭和26年~33年(1951年~1958年)度
- 1951年1月22日厚生省復員局残務整理部内で作成された海軍再建案を野村吉三郎元海軍大将が極東海軍司令官ターナー・ジョイ中将に持ち込み、この第二案で護衛空母4隻の保有が明示される。第二案は保品善四郎元中将と極東海軍参謀副長アーレイ・バーク少将との間で検討され、フォレスト・シャーマン米海軍作戦部長の承認を得たのち、1951年3月31日に「日本政府が同意するなら野村・バーク案で海軍再建を進める」旨の回答があった。しかし財務当局の同意を得られず提案を拒絶する。Y委員会はこの後に、貸与艦艇の受け入れのために旧海軍関係者8名、海上保安庁2名の計10名をもって設立される。
- Y委員会に於いて護衛空母のボーグ級もしくはコメンスメント・ベイ級の導入を新日本海軍再建計画に盛り込む。
- 復員船として使用されていた大型商船興安丸を改装し、空母とする案もあった。
- アメリカ海軍から第二次世界大戦で建造した護衛空母の供与なら可能との意向が示されたが、海上自衛隊は軽空母を要求したため、実現せずに終わる。(ただし、供与が可能とされた護衛空母の現地調査は横浜で実施される。)
[編集] 第1次防衛力整備計画
- 原子力潜水艦の登場と大型ヘリHSS-2開発の報を受けて、基準排水量6000トン、対潜ヘリ6機搭載の対潜掃討部隊の中核艦が計画される。これは後に基準排水量11,000トン、対潜ヘリコプター18機搭載まで拡大され、昭和35年秋の防衛庁原案に盛り込まれるが、1次防での建造は防衛庁内部で見送られ、2次防での建造が意図される。
- アメリカ海軍より正規空母のエセックス級供与を受けることを検討するものの、予算上困難と判断され見送られる[1][2]。
[編集] 昭和36年度予算
※ 1次防と2次防の間をつなぐ単年度計画
- 政治的混乱から2次防の計画決定が遅れ、2次防そのものは昭和37年からとされた。先の11,000トンCVHは1隻の建造要求が出された。当時の構想ではCVH(ヘリ空母)1隻にDDG(ミサイル搭載護衛艦)1~2隻、DDK(対潜護衛艦)4隻で対潜掃討部隊を編制するというもので、CVHの建造費は200億円。うち70億円をアメリカからの援助に頼り、残りを日本側が負担する計画であった。36、37年度で設計を行い、38年起工、39年進水、40年完成を目指したが、2次防がまとまらなかったことから大蔵省に認められずに終わった。
[編集] 第2次防衛力整備計画
- 対潜中枢艦として基準排水量20,000tの対潜空母の導入を計画(対潜ヘリ20機及びS2F-1対潜哨戒機を6機搭載)するも、防衛庁(当時)内局の反発を受けて、基準排水量11,000tのヘリ空母(対潜ヘリ18機搭載)に規模を縮小した。しかし、それでも防衛庁(当時)内局の反発を抑える事が出来ず、見送られた[1][2][3][4]。
[編集] 第3次防衛力整備計画
- 4,700t型DDH2隻(43年度計画艦、45年度計画艦)の建造(はるな型ヘリコプター搭載護衛艦)。
- アメリカ海軍の対潜空母「プリンストン」にて海自のP2V-7対潜哨戒機操縦資格者と整備士が乗艦し、洋上にて発着艦体験と航空機整備の研修が実施される。
[編集] 第4次防衛力整備計画(新防衛力整備計画)
- 5,200トン型DDH2隻(50年度計画艦、51年度計画艦)の建造(しらね型ヘリコプター搭載護衛艦)
- 基準排水量8,700トン、対潜ヘリ6機搭載スタンダードSAM装備、蒸気タービン12万馬力のDLHを二隻建造する事を計画するも、オイルショックの影響を受け基準排水量8300トン、対潜ヘリ6機搭載、対空ミサイル装備なし(後付けする予定だった[5])、蒸気タービン10万馬力の縮小型に変更し、隻数も一隻に減らした。しかし防衛庁(当時)内局の反発と、オイルショックの影響で見送られる。
[編集] ポスト4次防~53中業
※ ポスト4次防:昭和52年~54年(1977年~1979年)度、53中業:昭和55年~57年(1980年~1982年)度
- 「シーレーン1000海里防衛」は1981年に鈴木善幸首相がワシントンD.C.訪問時に記者会見で明示したことで、以後、西側同盟国としての防衛分担としてアメリカ側より空海戦力の大幅な増強が求められることになる。この時期から空母保有の理由が対潜から防空に移行する。
- 1980年代前半、基準排水量20,000tの洋上防空用空母CVV(シーハリアー改20機搭載)を計画し、56中業(1983年~1985年)に盛り込む寸前まで計画は進展。
- しかしながら、アメリカ海軍の反対(米空母護衛用のイージス艦を優先せよ[6])に遭い、計画は頓挫したという。
海上自衛隊はシーレーン防衛に於ける洋上防空の手段として軽空母搭載のシーハリアー改とイージス艦、各護衛艦のファランクスCIWSの三段構えの防空態勢構築を目指しており、CVVの設計に於いては艦尾デッキ拡張方式、前方方式、中央方式、全通飛行甲板方式が検討され、最終的にはインヴィンシブル級軽空母を模範とした全通飛行甲板方式が採用されたという。
イージス艦については吉田學海将が当時のアメリカ海軍作戦部長ジェームス・ワトキンス大将を説得し、当初供与が予定されていたミニ・イージスではなく、最新のイージスシステムが提供された。供与の際にはリチャード・アーミテージ国防次官補代理も口添えしている。以来、日本の導入したイージスシステムは常に契約段階での最新型である。
他にも洋上防空の手段としてP-3C哨戒機の早期警戒機型や、同じくP-3CにF-14艦上防空戦闘機の搭載するフェニックス空対空ミサイルや火器管制システム(AWG-9)を搭載して洋上防空を行う空中巡洋艦構想も検討されていた。
[編集] 61中期防~03中期防
※ 61中期防:昭和61年~平成2年(1986年~1990年)度、03中期防:平成3年~7年(1991年~1995年)度
- 複座型ハリアーを訓練支援機として導入する案が検討される。
- 03中期防でV-22を救難機として導入する案が計画されるが、開発遅延が理由で頓挫。
- 海自の内部資料「海自次期防計画 海幕素案」で、03中期防に於いてAV-8Bハリアー II 4機、及びAV-8B+ハリアー IIプラス 13機、合計で17機調達するとされていた。
- 1988年4月6日の参議院予算委員会で瓦力防衛庁長官(当時)が日本が保有できない兵器として攻撃空母を上げるが、軽空母については含みを持たせた発言を行う。
- おおすみ型輸送艦(平成5年度計画艦、10年度計画艦、11年度計画艦)があつみ型輸送艦の代替として56中業に3500トン型として計画された。これは輸送対象である戦車の大型化(90式戦車)や運用構想の変化(機動運用)によって逐次大型化し、さらにはPKO支援やLCAC揚陸艇運用能力が付加された結果、1989年の時点で5500トン型に拡大、さらに03中期防になってようやく8900トン、22ノットの大型高速艦として建造された。 大型ヘリコプターに対応したヘリパッドを持つが格納庫はない。
[編集] 1990年代後半
- おおすみ型輸送艦建造計画時にSTOVL機搭載が検討されるも、リチャード・アーミテージの「日本の空母建造に反対だ」との言明により、当初の計画(航空機運用能力を重視した時の計画)より大幅に船体規模や機能を縮小して建造された[7][8]。
- アーミテージは反対の理由として「空母などの攻撃的な軍備を日本が持てば、北東アジアには劇的な変化をもたらし、日本が一度でもその攻撃能力を増やせば、日本への脅威はそれだけ増す。」としていた[7]。ただし、現在のアーミテージは日本の攻撃能力保有に賛成している。
- 13,500t型DDH建造を公表。
[編集] 2000年代
- 2000年12月、平成13年~平成17年度中期防衛力整備計画において、13,500トン型DDH2隻の建造が盛り込まれる。
- 2004年に13,500トン型護衛艦として16DDHの予算が通過。ただし2番艦は海自のC4Iシステム整備を優先するために建造を1年繰り延べ。
- 2004年7月27日 「防衛力の在り方検討会議」に於いて「敵基地攻撃能力保有を検討」という文脈から、巡航ミサイルの保有とともに「対地攻撃機搭載の軽空母」に言及。
- 2006年5月11日 16DDHが海自初の全通甲板型となる護衛艦DD145(2319号艦)として起工。
- 2007年8月23日 DDH181進水 ひゅうがと命名。
[編集] 海上自衛隊の全通甲板装備艦艇について
[編集] おおすみ型輸送艦
1998年に1番艦が竣工したおおすみ型輸送艦は、全通甲板をそなえた大型輸送艦(海外の分類では揚陸艦)である。建造当初は、空母と形が似ていることからマスコミや一部世論で空母だと誤解され話題となった。
おおすみ型はヘリコプターの発着艦は可能であるが、ヘリ空母でもなければ軽空母でもない[9][10]。
- ヘリコプター搭載用の格納庫を持たず、母艦とはいえない。
- ヘリコプターの整備能力を持たない。
- エレベーターのサイズが小さいため、甲板のヘリコプターを艦内に移動できない。
- 甲板強度の不足や甲板がエンジン排熱に対応できないため、ハリアー II等、VTOL機の運用ができない。
[編集] ひゅうが型護衛艦
2004年度に建造が認められた13,500トン型護衛艦。16DDHの俗称で知られるが、正式にはDD145(2319号艦)として計画されている。2007年8月23日に進水、ひゅうがと命名された。全長197メートル、全通甲板を装備し、最大11機のヘリコプターが収納可能と言われる格納庫容積を持ち、事実上のヘリ空母と評されることもあるが「海上自衛隊の使用する船舶の区分等及び名称等を付与する標準を定める訓令」における「海上自衛隊の使用する船舶の区分等」では、大分類・警備艦、中分類・機動艦艇、種別・DDであり、あくまで護衛艦(駆逐艦)である。[1]
スキージャンプ甲板や甲板の耐熱構造がないためSTOVL機等の運用が可能な軽空母ではない。構想発表当初は全通甲板ではなく、これまでのヘリコプター搭載護衛艦の発展版として完成予想図が公開された。予算承認時には全通甲板を備えた完成予想図が公開された。任務によって搭載機を適時変更させるとしているが、現在のところ哨戒ヘリ3機、輸送/掃海ヘリ1機の4機を定数としている。
- 軍事評論家の田岡俊次は[11]エレベーターのサイズはF-35Bの運用が可能な大きさであり、スキージャンプ甲板や甲板の耐熱構造の追加は簡単であると述べているが、ひゅうがのエレベータは前部が20×10メートル、後部が20×13メートルであり、主翼の折りたたみ機構を持たないF-35Bの翼幅10.97メートルをクリアできるのは後部エレベータのみとなる。
- エレベータの配置も飛行甲板中心線上の船体中央よりに置かれており、アメリカの強襲揚陸艦のようなサイドエレベータや、スペインの「プリンシペ・デ・アストゥリアス」が持つような飛行甲板最後端のエレベータも無く、イギリスやイタリアのSTOVL空母のように、発艦エリアを避けるエレベータ配置でもないため、STOVL機の発艦作業を行いながらのエレベータ使用がまったくできない。このため仮にSTOVL運用を行うのであれば、その効率はひどく低いものとならざるを得ない(しかしヘリ運用を主眼とするのであれば、エレベータの前後と甲板全域に設けられた発着スポットとのアクセスが良くなるため、欠点とはならない)。甲板開口部の拡張やエレベータの移設・交換は米空母や英空母の改装においても行われているが、年で測る時間と多くの費用がかかっている。
- さらには格納庫そのものの全長は120メートルとされるものの、これは前後エレベータ20メートルを2個分40メートルを含んでの話であって、諸外国の同種の艦艇のほとんどがエレベータの先まで格納庫を持ち、航空機搭載量を最大限に得ようとする構造と比べると、格納庫容積の確保そのものへの要求が低い設計となっている。
- このためSTOVL機を追加搭載する場合、本来の対潜任務に従事するヘリコプターとの混載を考慮すれば(1機でも作戦上の意味を持つ対潜ヘリと異なる戦闘機の場合)戦闘単位としての数が満たせない可能性が高い(空中戦においては2機編隊のエレメントを最小単位とし、2個のエレメントで4機編隊のフライトを構成する)。もちろん、格納庫の拡張工事は船体上部の構造を一変させる必要のある大工事となる。氏が容易とした説の根拠は不明である。むしろ、海上自衛隊は、甲板に耐熱構造がなく、V/STOL機を載せる計画がないことをアナウンスしている。
ひゅうが型護衛艦が軽空母とはなりえないとする理由
- 甲板がF-35BやハリアーII等のVTOL機が離着陸を出来るような耐熱性能を持たず損傷する。一般的な鋼材の融点は1500℃程度とされるが、これは鋼材の自重で変形する温度であり、船体の構造材として応力がかかっている状態であれば、熱応力変形により融点より遥かに低い温度で変形が始まる。[2]また、鋼材は熱に対する強度低下の度合いが強く、500℃の加熱が5分続くと強度は半分、10分で1/10にまで低下する。これは耐熱鋼を使用しても強度が2/3でしかない。ジェットエンジンの排気温度は800℃から1200℃くらい、ケロシンの燃焼温度でも980℃であるため、ジェットブラストをまともに受ける甲板の熱対策は一般に考えられるよりも手間と費用がかかる。CTOL機を運用する空母にはジェットエンジンの噴射をまともに受けるブラストリフレクターという設備があるが、これは熱対策として冷却用の配管が施されている。ハリアーを運用する米海兵隊においても、ノズルの向きやスロットル開度、秒単位で指定される時間など「甲板を損傷させないための」厳密な規定がある。
- 固定翼機を運用するには全通甲板が短すぎ、スキージャンプ甲板すら持たない。例えばハリアーが完全な平甲板から実用装備で発艦するには、ひゅうが型護衛艦では全通甲板距離が足りない(ひゅうが型の全通甲板は、最大197mであって、実際に使用できる距離はこれを下回る。完全な平甲板で同機を運用している最小の艦はアメリカ海軍の強襲揚陸艦(タラワ級・ワスプ級)であるが、全通甲板は250mを下回ることはない)。
- しかしハリアーは100メートル以内の滑走で離陸可能であり実際にそのような映像もある、という反論もあるが、滑走距離はペイロードを含む離陸重量に大きく左右されるし、今後30年は就役するであろう艦でハリアーのみの搭載の可否を論じても意味が無い。ハリアーの最大離陸重量は14トン程度であるが、F-35は22トンに達する。さらには甲板長250メートル、排水量4万トンの米強襲揚陸艦であっても、ハリアーの発艦時には30ノットの合成風力を得るために風上に向かって航行する。
- 日本はF-35の開発に参加していないのみならず、F-35自体の開発も遅延しているため搭載する計画すら立てられない。
- 搭載する機体が現在唯一の艦上V/STOL機であるハリアーは既に生産ラインが閉じられており、入手する場合は中古機をかき集めるしかない。そもそも旧式化したハリアーの搭載は就役時点での性能を考えると論外である。
- しかしハリアーはII+など改良されており、現在でも運用されている、という反論もあるが、ハリアーの生産は1995年に終了しており、採用各国において耐用年数までの使用が決まっている機体しかなく、日本がハリアーを入手できないという根本的事実に変わりは無い。ハリアーII+における改良とはF/A-18CならびにD型のアップデートによって余剰になったAN/APG-65を搭載するというものであり、レーダーの性能としては初期型のホーネットと同程度でしかなく、航空機としての能力もVTOLとしてのハンデをが解消されたわけではなく、現用のCTOL戦闘機に対抗できるものではない。また主要なカスタマーがアメリカ海兵隊ということもあって、JDAM搭載や夜間地上攻撃能力の付与などCAS(近接航空支援)のための改良がメインであり、強襲揚陸する海兵隊地上部隊を要請から数分で援護するために続けられている努力が、他の国で必要な性能となるかにも疑問がある。事実、艦隊防空を行うための本格的な改修はイタリア海軍のみが行っており、AMRAAM中距離空対空ミサイルの運用ができるのはイタリア海軍の機体だけであり、米海兵隊はそのような運用を要求していない。
- 後から空母に改装するにはコストや性能を考えると、新規に建造するほうが合理的であり、安全性や運用効率も高い。英国空母の改装が必要とした時間・費用に鑑みると、相当な費用と時間がかかり改装は極めて非効率である。
- しかしイギリスの空母は近代化改装とともに実施したので時間がかかっただけであり、ひゅうがを改装困難な設計にしたという根拠はない、という反論もあるが、空母の改装においても豊富な経験を持つイギリスが、既に64年に近代化改装を行い、71年にはさらにコマンドー母艦(ヘリコプター強襲揚陸艦)に改装したあとの「ハーミーズ」に、スキージャンプ台の設置を含むVTOL運用能力を付加するといういわば限定的な工事であっても、1年5ヶ月の期間を必要とした。空母の艦載機の運用能力とはデータリンクその他航空管制能力や指揮能力に拠る所も大きいため、F-35を搭載するというのであればF-35の任務を支援できるだけの電子設備や整備能力も必要となる。これらは現在のひゅうがには無い機能であるが、しらねのCIC火災における莫大な修理見積もりからも判るように、艦艇の電子装備の更新とは一筋縄ではいかない大工事となる。さらに上に記されたSTOLを考慮していないエレベータの配置という根本的な問題がある。
- しかしイタリアの「ジュゼッペ・ガリバルディ」は当初ヘリ空母として配備されたが配備後すぐに軽空母として運用されている、という反論もあるが、すぐ、という期間を具体的に示すと1985年就役の後に89年の空軍法の改正を経て91年にハリアーを発注、94年に最初のハリアーを受領、実戦配置についたのは95年となっており、艦が完成してから配備まで10年の時間がかかっている。イタリアには1937年に制定された空軍法(固定翼機の運用は空軍に限る)という法律があり、当初はVTOL空母と名乗れない事情の下で「甲板への波の打ち込みを防ぐため」という理由で6度30分のスキージャンプ勾配を設置して建造したイタリア海軍の判断が先にある(エレベータはアイランドを挟むようにして2基設置され、STOを阻害しない配置となっている)。また、イタリア海軍は以前からVTOL機の取得に意欲的で、ハリアー実用化の直後の1967年11月には、当時のヘリ巡洋艦「アンドレア・ドリア級」へのハリアー着艦のデモンストレーションを行っており、一時はイタリア海軍向けハリアーGR.50計50機の購入(完成品6機、イタリア国内での組み立て44機)が合意されたが、空軍法の問題を解決できずにキャンセルされたこともあった。そういった意味では半世紀もの努力を重ね、VTOL空母をヘリ空母だと押し通して建造できるイタリア海軍と海上自衛隊では、組織としての方向性が異なるし、ヘリ空母が容易にSTOVL空母として使用できることを示すものでもない。
- 艦の規模に比べてヘリの搭載数が少ないのは哨戒ヘリの定数のためである。海上自衛隊の組織そのものが「VTOLの導入」を前提とした改組がなされない限り、艦型や規模だけで搭載の可否を論じる意味は無い。現実に艦上戦闘機部隊を新設するとなれば、自衛隊の組織や編成を定めた自衛隊法を国会で審議し、改正しなければならない。
- 自衛隊の整備運用能力はもともと高いと言われるが、それでも未経験のV/STOL機の運用・整備・修理能力を付与する必要がある。
- 防衛省は軽空母を保有することを計画していない。またこの護衛艦を軽空母に改修する計画は全く存在しない。
[編集] 脚注
- ^ a b 鈴木総兵衛『聞書・海上自衛隊史話 (60) まぼろしの空母』
- ^ a b 藤井勝利『艦載HS-DDHの構想』
- ^ 鈴木総兵衛『聞書・海上自衛隊史話 (62) 自衛艦隊の改編 (2)』
- ^ 鈴木総兵衛『聞書・海上自衛隊史話 (62) 自衛艦隊の改編 (3)』
- ^ 伊藤圭一『4次防策定の経緯等』
- ^ 田岡俊次「21世紀日本の空母建造計画か!?」 『軍事研究』2001年3月号
- ^ a b 春原剛『ジャパン・ハンド』 文春新書
- ^ 北村謙一 『現情勢下海上防衛の向かうべき方向 (1)』
- ^ 井上孝司「海自 DDH の後継はヘリ空母? (1)」、Koji.net、1999年11月10日
- ^ 林譲治「輸送艦しもきた一般公開」、林の頁、2002年10月17日
- ^ 田岡俊次. 2007.『北朝鮮・中国はどれだけ恐いか』朝日新聞社
[編集] 参考文献
- 「特集・海上自衛隊35年の歩み」『世界の艦船』402号、海人社。
- NHK報道局「自衛隊」取材班 編『海上自衛隊はこうして生まれた 「Y文書」が明かす創設の秘密』、NHK出版、2003年。ISBN 4-14-080792-X 第九章 海上自衛隊の原点、そして今 265-283頁
- 春原剛『ジャパン・ハンド』、文春新書、2006年。ISBN 4-16-660543-7
- 鈴木総兵衛『聞書・海上自衛隊史話 (60) まぼろしの空母』、水交会。
- 鈴木総兵衛『聞書・海上自衛隊史話 (62) 自衛艦隊の改編 (2)』、水交会。
- 鈴木総兵衛『聞書・海上自衛隊史話 (63) 自衛艦隊の改編 (3)』、水交会。
- 藤井勝利『艦載HS-DDHの構想』、水交会。
- 冨田成昭『DDH「はるな」誕生の想い出』、水交会。
- 北村謙一『現情勢下海上防衛の向かうべき方向 (1)』、水交会。
- 北村謙一『現情勢下海上防衛の向かうべき方向 (2)』、水交会。
- 柿谷哲也『世界の空母 海の王者、航空母艦のすべて』、イカロス出版ミリタリー選書11、2005年。ISBN 4-87149-770-4
- 「特集・海上奇襲戦 高速魚雷艇」『丸』2007年11月号、潮書房、2007年。
- 伊藤圭一『4次防策定の経緯等』
- 田岡俊次「21世紀日本の空母建造計画か!?」 『軍事研究』2001年3月号
[編集] 関連項目
- 防衛省 / 自衛隊 / 防衛施設庁
- 海軍 / 大日本帝国海軍
- 海上自衛隊
- 海上自衛隊艦艇一覧 / 自衛艦隊 / 自衛艦 / 護衛艦
- 航空母艦 / 軽空母 / ヘリ空母 / 護衛空母 / 対潜空母
- 輸送艦
- おおすみ型輸送艦
- ひゅうが型護衛艦