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ひゅうが型護衛艦 - Wikipedia

ひゅうが型護衛艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ひゅうが型護衛艦
進水当日のひゅうが
艦級概観
艦種 ヘリコプター搭載護衛艦
艦名 旧国名[1]
前級 しらね型護衛艦
次級 最新
性能諸元
排水量 基準排水量 13,500t
満載排水量(推定値) 18,000t
全長 197m
全幅 33m
吃水 7m
機関 COGAG 2軸推進
LM2500ガスタービン4基 100,000hp
速力 30kt以上
航続距離
乗員 350~490名前後[2]
兵装 ファランクスCIWS 2基
HOS-303 3連装短魚雷発射管 2基6門
12.7mm機銃 数挺
Mk41 VLS 16セル
ESSM
新アスロック
搭載機 SH-60K哨戒ヘリ 3機
MCH-101掃海・輸送ヘリ 1機
レーダー FCS-3改 対空捜索レーダー
OPS-20改 対水上レーダー
ソナー QQS-XX
FCS FCS-3

ひゅうが型護衛艦(ひゅうががたごえいかん、JMSDF DDH HYUGA class)は海上自衛隊護衛艦。全通甲板を持ち、完成後は自衛隊最大の護衛艦となる予定。1番艦である「ひゅうが」は平成16年(2004年)度予算で建造が行われるヘリコプター搭載護衛艦 (DDH) であるため16DDH(ひとろくディーディーエイチ)、2番艦は平成18年(2006年)度予算で建造されるため18DDH(ひとはちディーディーエイチ)とも呼ばれる。建造は両艦ともアイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド横浜工場。

目次

[編集] 概要

満載排水量は推定で18,500tであり、イタリアジュゼッペ・ガリバルディスペインプリンシペ・デ・アストゥリアスタイチャクリ・ナルエベトなどの軽空母と同等かそれよりも大きい。ただしスキージャンプ勾配や甲板の耐熱構造を有しておらず、ハリアーIIF-35BのようなSTOVL機を運用する軽空母として運用はできない。

本艦の主たる任務は対潜作戦であるが、大規模災害時の海上基地としての機能も盛り込まれており、救援物資をMCH-101掃海・輸送ヘリに搭載し、要救助地点へ輸送することも可能である。

[編集] 計画の経緯

現在海上自衛隊が運用しているDDHはるな型護衛艦は、1番艦「はるな」の就役が1973年であり、近代化改装を施してはいるが老朽化が進行しており、後継となるDDHが必要とされていた。そのための代艦建造計画が2000年の中期防閣議にて閣議決定された。閣議決定時には、DDH代艦として次の3つの案が提示されていた。

  1. 従来までのDDHと同様に前部に構造物を持ち、後部を発着甲板とする案
  2. 艦橋構造物で前後の甲板を分断し、艦橋の前後にヘリコプター甲板を持たせる案
  3. 艦の全長に渡って障害物のない発着甲板を有する、いわゆる全通甲板型とする案

以上の3つの案のうち、当初は第2案が、予想図では無く「イメージ図」という用語を伴って発表された。この図の段階でマストや煙突は右舷側に寄せられており、左舷側には前後の発着甲板をつなぐ大型のシャッターや大きな艦橋が置かれているだけだった。このため、実際の船型は全通甲板の第3案に内定しており、航空母艦に近い形状で世論の反発を買うことがないように作った図であるとも言われている。2003年には、ヘリコプターの同時運用能力を高める為という理由で、第3案の船型へと改められた予想図が発表された。

1番艦に続き、平成17年(2005年)度予算で2番艦が要求される予定であったが、ミサイル防衛関連に防衛予算全体が圧迫された為この要求は先送りとなり、平成18年(2006年)度予算で要求が行われ、その建造が認められた。

[編集] 船体

上から見た船体
上から見た船体

ヘリコプター運用能力、護衛隊群旗艦能力をはるな型より発展させる事が要求された他、基準排水量は各種の能力向上もあり、歴代護衛艦で最大の13,500tとなった。ましゅう型補給艦と並び最大の自衛艦である。排水量、船型、装備のいずれも従来の駆逐艦、あるいは護衛艦の概念を大きく逸脱するものと言われているが、海上自衛隊では、ヘリコプター(H)による対潜水艦の駆逐(DD)を任務とするため、本型の艦類をDDHと分類している。主砲等による砲戦能力は持たず、設計時点では固定翼V/STOL機等の運用も考慮していない。

艦橋構造物は右舷に寄せられ、艦首から艦尾まで甲板が繋がった197mの全通甲板を持つ。この事で、従来のDDH(艦体の後方3分の1程度が平らなヘリコプター甲板)、あるいは初期の予想図のような艦形の艦船では不可能であったヘリコプター複数機の同時発着艦運用を可能にした。また、艦橋によって視界が遮られたり気流が乱されたりする事も少なくなる為、ヘリの着艦作業も容易になった。

艦体や上部構造物の側面には傾斜がつけられ、かつ表面は平滑に整形されており、ステルス性を強く意識した設計がなされている。

[編集] 従来のDDHとの比較

はるな型・しらね型・ひゅうが型の比較表
はるな型 しらね型 ひゅうが型
基準排水量
4,950t
5,200t
13,500t
満載排水量
6,850t
6,800t
18,000t(推定)
主な兵装
54口径5インチ単装速射砲 2門
シースパローランチャー 1基
アスロックランチャー 1基
ファランクスCIWS 2基
3連装短魚雷発射管 2基
54口径5インチ単装速射砲 2門
シースパローランチャー 1基
アスロックランチャー 1基
ファランクスCIWS 2基
3連装短魚雷発射管 2基
Mk41VLS 16セル(ESSM、アスロック)
ファランクスCIWS 2基
3連装短魚雷発射管 2基
格納庫容量
3機
3機
7機程度
搭載ヘリコプター
哨戒ヘリ3機
哨戒ヘリ3機
哨戒ヘリ3機
(加えて必要に応じ、掃海・輸送ヘリ1機)
ヘリ同時発着艦
不可能
不可能
可能
(同時に4機)

従来のDDHは広いヘリコプター甲板と大きな格納庫を持ち、他の護衛艦に比べればヘリ運用能力が高かったが、それでもヘリコプターは、20分おきに1機しか発着艦できなかった。そのため、万が一飛行中のヘリに問題が起こった場合、すぐに着艦が出来ない場合があるなど運用に不安があった。また、格納庫内ではメインローターを広げての整備が行えなかった為、そのような重整備を行う場合には甲板上に出して行う必要があり、その間発着艦を行う事は出来ず、当然悪天候の場合にその様な整備を行う事も出来なかった。

これに対してひゅうが型護衛艦は、同時に4機までヘリの発着艦が可能で、格納庫はSH-60クラスなら10機程度を収納可能なスペースがあり、広い格納庫内でメインローターを広げ、天候や他のヘリの発着艦に影響されずに整備も出来る様になる予定である[3]

[編集] 装備

海上自衛隊の護衛艦としては初めての砲を装備しない艦であり、ヘリコプター運用などの航空支援能力と対潜能力、それに指揮通信能力に特化した装備を持っている。

射撃指揮装置には試験艦あすかで搭載したFCS-3の改良型、FCS-3改を装備する。FCS-1やFCS-2と異なり、FCS-3改は射撃指揮装置としての機能のほか、3次元対空捜索レーダーとしての能力も備える多機能フェーズドアレイレーダーを4面持ち、アイランド前部に0度と270度を向いたもの、後部90度と180度を向いたものを装備し、全周を走査する。ただしESSMとFCS-3改は相性が良くないのでXバンドフェーズドアレイのイルミネーターを装備している(左側の大型のものがFCS-3改で、右側の一回り小型のものがイルミネーター)。またコストダウンのため、1番艦「ひゅうが」のレーダーは「あすか」に装備されていたものを流用しており、2番艦から新規製作品が搭載される予定である。

艦首には、新型のソナーOQS-XXが装備される。これも試験艦「あすか」に搭載されていたものの改良型で、音の減衰が比較的少なく、遠距離まで到達する低周波帯の音を捉える事が可能である。その為、従来のソナーより遠距離での探知が出来る。

また、高度な指揮通信システムを備えており、護衛隊群の旗艦としての装備のみならず災害時などに司令部として使用出来る様、多目的スペースや通信設備なども設けられる。

[編集] 航空支援設備

  • SH-60K哨戒ヘリ3機搭載する。
  • 必要時にはMCH-101掃海・輸送ヘリ1機を搭載可能となっている。格納庫については、少なくとも1個護衛隊群の定数であるSH-60を8機、またはMCH-101を4機収容できる広さを持っており、防火シャッターにより前後2区画に仕切ることもできる。また、格納庫の後方にはヘリコプター整備区画が設けられ、艦内でメインローターを展張したまま整備を行うことができる。飛行甲板から格納庫へヘリを移動させるエレベーターは、前後2基装備され、ヘリに搭載するミサイル魚雷などを輸送する弾薬用のエレベーターも2基装備する。飛行甲板には3~4機分のヘリスポットが装備される。
  • 大規模災害発生時には、第72、73航空隊のUH-60J救難ヘリを搭載し、ひゅうが型護衛艦を洋上救援基地として利用する。

[編集] ミサイル

個艦防空用に艦対空ミサイル発展型シースパロー(ESSM)、対潜水艦用に対潜ミサイルアスロックを16セルのMk41VLSに装備する。

従来のDDHである、はるな型がシースパロー16発(うち発射機に即応弾8発)、アスロック16発(うち発射機に即応弾8発)を搭載しているのに対し、ひゅうが型はMk41を16セルしか持たない為、搭載するアスロックは減少する事になるが、ESSMはMk41VLS 1セルに4発搭載可能であり、即応弾の数は増え、VLS装備とした事で即応性も向上する。また、艦内に1斉射分(16発)のESSMが予備として搭載される予定との情報もある。

なお、海上自衛隊の護衛艦でESSMを新造時から搭載するのはひゅうが型が初めてである。アスロックも射程が従来の倍程度になった新アスロックを搭載する予定であったが、開発の遅延と価格の問題により、当面は従来の垂直発射型アスロックが搭載される模様である。また、これまでのDDHと同様の両用砲は装備しないが、搭載するSH-60KにはAGM-114M ヘルファイアII 空対艦ミサイルが搭載出来る為、一応の対艦攻撃能力は備える事になる[4]

[編集] 同型艦

はるな型の代艦である為、現在のところ合わせて2隻の建造が予定されている。18DDHの艦名は未定。一方、艦番号はDDH-181 ひゅうがに対して182が付与された。はるな型護衛艦しらね型護衛艦は141から144であったので、従来型DDHと艦番号は連続していない。はるな型退役の数年後には、もう1クラスのDDHである、しらね型2隻も退役が見込まれており、現在22DDHと24DDHが計画されている。

[編集] DDH-181 ひゅうが

  • 建造:アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド横浜工場
  • 起工:2006年(平成18年)5月11日
  • 進水:2007年(平成19年)8月23日
  • 竣工:2009年(平成21年)3月(予定)
  • 所属:
  • 艦名の由来:日向国宮崎県[5]
  • 同一名称艦:伊勢型戦艦2番艦日向。ただし、当時の仮名表記では旧仮名遣いでひうがであった。この艦は太平洋戦争末期に「航空戦艦」へと改装されている。


[編集] 脚注

  1. ^ 海上自衛隊の命名基準における地方名の範疇として旧国名が採用された。既存の自衛隊艦船にも輸送艦さつま」「おおすみ」、補給艦さがみ」、「おうみ」など旧国名を冠したものがあるが、これらの艦名はいずれも半島といった地名・名所旧跡名に由来している。「おうみ」は近江国そのものではなく琵琶湖の古名から取られたものであるため、直接的に旧国名が用いられたケースはひゅうが型が最初となる。
  2. ^ IHIがDDH-181進水記念に配布した絵葉書には乗員約490名と記載されている一方、朝雲新聞の2007年8月30日付記事には、乗員約340名と記載されている。双方とも、航空要員や司令部要員を含めた物であるかは明記されていない。
  3. ^ 「世界の艦船」2005年11月号
  4. ^ アメリカ海軍ではシースパローによる艦艇の攻撃実験に成功しているが、日本のFCS-2ではモノパルス誘導のRIM-7M対応可の際に対艦攻撃能力は持たなくなっている。FCS-3については不明。
  5. ^ 進水前からミリタリー雑誌などで船名が4文字という情報は流れていたが、あたご型のときの経緯もあってか旧国名という予想は少なかった。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク


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