韓国車
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韓国車(かんこくしゃ)とは、韓国を拠点とする自動車メーカーが生産・販売している自動車である。また、韓国外資本の傘下であっても韓国で製造される自動車、若しくは韓国を拠点とするブランドが冠されている自動車であれば通常は「韓国車」として扱われる。
1997年のアジア通貨危機以前、韓国には5グループ・9社の自動車メーカーがあったが、その後2000年に三星自動車がフランスのルノーに、2002年には大宇自動車がアメリカのゼネラルモーターズ(GM)にそれぞれ買収されるなどし、韓国資本の自動車メーカーは現在、現代自動車と同社傘下の起亜自動車の1グループ・2社のみである。
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[編集] 概要
韓国では1988年に自動車の輸入が自由化され、1988年の時点で30%であった乗用車の関税率は漸減され、1995年以降は8%となっている。一方で、「輸入先多辺化(輸入先多角化)制度」と呼ばれる事実上の対日輸入禁止品目において自動車が指定されていたために、日本車の輸入・販売は1998年7月に至るまで禁止されていた[1]。
韓国車はヨーロッパや北アメリカを始めとした、世界各国で販売されている。中国、インドなどの巨大新興市場での現代自動車の販売台数はトヨタを上回っている[2]。今までは価格の安さで売れていた。最大手の現代自動車でも、最大の国外市場であるアメリカ合衆国ではこれまで、自身の商品を「日本車の安価な代用品」と位置付けてビジネスを行っていた[1]。しかし、ウォン高の進行によって価格が高騰し、セールスポイントである「安さ」が失われ、逆に日本車が円安や低価格車戦略などによって韓国車より価格が下回るケースが出ている。発展途上国でもさらに価格の安い中国車にシェアを奪われつつある。そのような状況でも売上が好調な理由としては、品質面での信頼性向上もさることながら、メーカーがブランド戦略を行ったことによる、韓国車に対するユーザーのイメージの改善が好影響を及ぼしたとも考えられる。[3] 品質面ではJDパワー社の調査によると、2006年に初期品質調査で、現代自動車の「ヒュンダイ」ブランドがポルシェ、レクサスに並んで3位になったが、2007年の同調査では12位であった。[4])。同社による耐久性調査では業界平均を下回る評価に留まる[5]
これら、いずれもアメリカでの品質・信頼性への評価が全体的に向上しているにも関わらず、同国における現代自動車の販売は販売店への多額のインセンティブ(販売報償金)やレンタカー会社への大量販売に頼らざるを得ないのが現状[1]である。同社のアラバマ工場では2007年の第4四半期に、生産調整のため2週間の操業停止を行った。これは在庫過剰にともなう措置であったが、開業間もないに工場では極めて稀な事態[1]という。
[編集] 受賞など
現代自動車のi30がオーストラリアのカー・オブ・ザ・イヤーを受賞[6]、起亜自動車のシードがスウェーデンのカー・オブ・ザ・イヤーに選ばれ、ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーにおいては4位となった。[7][8] 日本においても現代自動車のトゥサン(日本モデル名:ヒュンダイJM)、ソナタがグッドデザイン賞を受賞している[9]。但し、ソナタについては後述する類似性の問題もあり、批判的な意見も少なくない(グッドデザイン賞公式サイト)。
[編集] 主なメーカー・ブランド
- 現代-起亜自動車グループ
- GM大宇(デウ)(ゼネラルモーターズ傘下、旧大宇自動車の乗用車部門をGMが買収)
- ルノーサムスン自動車(ルノー傘下、サムスングループの自動車部門をルノーが買収)
- 雙龍自動車(サンヨン)(上海汽車傘下)
- プロト自動車
- タタ大宇商用車(タタ・モーターズ傘下、旧大宇自動車のトラック部門をタタが買収)
- 大宇バス(旧大宇自動車のバス部門だった)
[編集] 類似性の問題
韓国車は他社の車との類似性を指摘されることが多く、それらは「パクリ」として批判されることが多い。韓国メディアである朝鮮日報でもその点を指摘されている[2]。
- 例:
- ヒュンダイ・ソナタ(NF型)…リアデザインがホンダ・アコード(北米・アジア仕様。日本名インスパイア)に酷似。
- ヒュンダイ・サンタフェ(CM型)…フロントデザインがインフィニティFXに酷似。
- 起亜・ソレント…全体的なデザインがトヨタ・ハリアー(レクサスRX)(初代)に酷似。
- 2007年に公開されたヒュンダイ・ジェネシス試作車のデザイン(スケッチ)には、フロント部分のトヨタ・カムリとの類似を始め、全体的に他社製品の模倣であるとの印象を持った者が少なくなかったことが報じられた。[3] 同様に、あるアメリカの新聞はこのデザインを、「前からは”トヨタ・カムリ”、横からは”日産・マキシマ”、後ろからは”ビュイック”に見える」と評した[4]。
車以外でも、CIロゴマークやキャッチコピーでも類似性が指摘されている(ヒュンダイのCIロゴマークがホンダのそれに酷似しているほか、キャッチコピーの"Drive Your Way"もトヨタの"Drive Your Dreams"に酷似している)。 また、韓国と中国でのみ使用されるヒュンダイ・ジェネシスのエンブレムが、イギリスのベントレーやMINIのそれらと類似しているとの指摘[5]がある。
[編集] 日本での展開
2008年06月現在、日本には現代自動車のグレンジャー、ソナタ、エラントラ、クーペ、TB、JMとGM大宇のマティス、雙龍自動車のレクストンが正規輸入されているが、販売は低調である。
日本での韓国製品に対する信頼が薄いこと、流通拠点・ディーラーの少なさなどによるアフターサービス面での不安、国産車の基盤が厚いなかでドイツ車のような差別化の困難、さらには「現代(ヒュンダイ)を知らないのは日本だけかもしれない」といった不遜ともとれる広告が嫌気されたこと、などが背景にある。現代自動車はコマーシャルに韓国人俳優ペ・ヨンジュンを起用し「とりかえっこキャンペーン」や「10年10万km保証」などを展開したものの、販売増加への貢献は少なかった。
他方、沖縄県では2006年まで4年連続で輸入車販売台数のトップである。これには、地場のレンタカー会社が所有車の3分の1を現代自動車にしたことが寄与している[10]。同県のレンタカー会社には2001年、米国GM社による廉価車ブランド「サターン」 が日本市場から撤退した際にも同ブランドの在庫車が一括大量販売されたことがある。
[編集] 今後の展開
中国の自動車会社が、韓国の自動車会社が1980年代から1990年代にかけて行っていたのと全く同じビジネスを開始しつつある現状であり、韓国車は高級分野へ移行せざるを得ない[1]とされる。
現代自動車は、高級セダン「ジェネシス」を発表、米国の自動車雑誌「モータートレンド」がジェネシスのコンセプトカー(デモンストレーション用の試作車を表紙モデルとして紹介するなどしている。 同誌は「ジェネシスは現代自動車を高級車メーカーに発展させる驚くべき車だ」と評価した。また、同誌は「BH(プロジェクト名)のコンセプトカーであるジェネシスが世界を驚かせたのはもちろんGM、トヨタ、BMW、ベンツまでもが注目している」とし、優れたデザインと商品性を称賛した。また同誌は「現代自動車の発展を象徴する高級セダンの登場は日本のライバルメーカーにとって大きな試練となるだろう」とし、現代自動車が日本のレクサスやインフィニティなどのモデルと競争を展開することを予想した。
しかし、ジェネシスのフロントデザインはトヨタ・カムリとの類似性を朝鮮日報によって指摘されていることからも[3] 、現代自動車はアイデンティティの希薄さが未だ克服できていない部分もある。さらに「ストのヒュンダイ」と呼ばれるほど労働組合が強く人件費の高騰が韓国企業の中でも飛びぬけており、毎年ストライキが発生しているという労使問題を抱えている。しかしながら、2007年に現代自動車の労使がストなしで賃金および団体交渉に妥結するという前例のないことが起きた。1987年に結成されて以来、94年を除き20年にわたり毎年ストを繰り返してきた現代自動車労組の今回の変化は、名目上はストに嫌気が差した組合員内部からの反発となっているが[6]、実は合意事項は「新車の生産工場と生産量を労使共同委員会で審議・議決する」「海外工場の新設・増設はもちろん、国内生産車種の海外移転や海外生産製品の第3国輸出までも労組の同意を受ける」という内容となっていた。現代自動車は今後の工場建設や国内車種の海外移転、海外生産品の輸出に至るまで、組合員雇用に影響を及ぼす事案について労組の同意を必要とすることになってしまい、事実上現代自動車は経営権を労組に握られたに等しい状況となった。[7]。この内容であれば労組側がスト無しで交渉妥結に至るのも当然であるといえる。
また、近年はウォン高による相対的な価格の上昇や現代自動車の不祥事など様々な要因により、先進国における韓国車のシェアは低下傾向である。しかし、積極的な新興国へのマーケティングにより、新興国での販売は増加している。
[編集] 参考
- ^ a b c d Hyundai bets new sedan is a luxury it can afford 『ウォールストリート・ジャーナル』 2008年1月8日
- ^ 「外車そっくりの国産モデル」 求められる韓国式デザイン 『朝鮮日報JNS』 2004年12月12日
- ^ a b 現代自「ジェネシス」はトヨタ「カムリ」とそっくり!? 『朝鮮日報JNS』 2007年3月16日
- ^ Genesis: Hyundai`s blue light special? 『ニューヨーク・タイムス』 2007年4月5日
- ^ http://www.worldcarfans.com/9071204.001/new-hyundai-genesis-emblem-revealed-and-v8-confirmed
- ^ 現代自労組「ストはもういやだ」 『朝鮮日報JNS』 2007年9月5日
- ^ 【社説】経営権を放棄した現代車の労使合意 『中央日報』 2007年9月6日