静電気
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静電気(せいでんき、static electricity)とは、静止した電荷によって引き起こされる物理現象のこと。物体(主に誘電体)に電荷が蓄えられている(帯電する)状態や、蓄えられている電荷そのもののことを指す場合もある。電荷は常に電界による効果と磁界による効果を持つが、静電気と呼ばれるのは電界による効果が際立っている場合である。発見は古く、紀元前600年頃にはタレスによる摩擦帯電についての記述が存在している。電池や電磁誘導の原理が見出されるまで、電気といえば静電気のことであった。あまり使われない用語だが、対義語として動電気がある。日本においても静電気学会によって応用方法や事故防止の方法が研究されている。
しばしば、摩擦帯電によって生じる電荷のことを指して静電気と呼ぶが、本来は摩擦帯電も静電気現象の一つでしかない。例えば圧電効果なども静電気の範疇である。雷もまた、雲に蓄えられていた静電気によって引き起こされる放電現象である。
日常生活で、静電気による放電に出会ったときに「静電気が起きた」という事があるが、これは「静電気によって火花放電が起きた」というほうがより正確である。静電気は放電が起きる前に摩擦などで生じ、物体に蓄えられていたのである。
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[編集] 発生
もっとも身近な静電気は、2種類の誘電体(絶縁体)の摩擦によって生じる。誘電体をこすり合わせたときに生じる静電気の符号は、物体の組み合わせによってきまる。組み合わせたときに正の電荷を生じるものを右に、負の電荷を生じるものを左になるように並べると、誘電体を一直線上に並べることができ、この配列のことを帯電列と呼ぶ。
この他、帯電した物体への接近(静電誘導および誘電分極)や、物理的な応力(圧電効果)、温度変化(焦電効果)によっても生じる。実験用途や工業用途で静電気を利用する場合には、ヴァンデグラフ起電機のような静電発電機や、コッククロフト・ウォルトン回路のような昇圧回路を用いる。物体に蓄えられている電荷は自分自身に反発するため、静電気はもっとも広がった状態、すなわち物体の表面に分布する状態がもっとも安定であり、ファラデーケージはこれを原理とする。
[編集] 利用
静電気の利用には、放電現象を利用する場合と、電荷による吸引や反発力を利用する場合がある。電荷による力は距離の2乗に反比例するため、これを利用する場合には対象が細かいほど適している。このため、加速器やイオンエンジンは究極の用途とも言える。産業分野でも、静電塗装や集塵装置のように霧状や煙状の物質(分散系や粉粒体)を扱う用途にしばしば利用されているほか、小型のアクチュエータやモーターへの応用もある。静電気を応用した電子部品としては、一連の圧電素子や水晶振動子、焦電素子としての利用がある。これらは該当項目を参照のこと。
放電現象の応用では、放電のエネルギーを利用した点火装置が代表的である。身近なガス点火装置も圧電素子による静電気を利用している。また、空気中での放電はオゾンの生成に利用される。
[編集] 被害
とくに可燃性気体や火薬などを扱う場所で火花放電が起こると、爆発や火災などの大事故になり得る。通常、こうした可燃性の危険物を取り扱うような作業をする際は、静電気の起こりにくい木綿などの服を着用し、静電気のたまりにくい導電性の高い材質で作られた靴を履くことが求められ、業務としてそれを行う際には規則として定められている。扱う部屋や建物に入室する際にも、アースされた金属板に手をつけるなどして電位を中和してからドアをあける。
なお、セルフ式のガソリンスタンドでは、揮発したガスが突然に発火する現象がしばしばみられる。客の着衣等における静電気による火花が原因とされ、注意がうながされている。スタンド従業員は静電気防止のユニフォームを着ているためにこうした事故はおこらない、一般客の場合は給油前に給油機に貼られている放電プレートに触れる事が指示されており事故防止の対策として普及されている。
また、帯電した物体は埃や塵を吸い寄せるため、美観を損ねるなどの影響もある。
[編集] 生活の中での静電気
日常生活のなかで、静電気の発生が問題となることがある。絨毯の上を歩くことによって、床と人体との間で静電気が生じたり、特に化学繊維を用いた衣服がこすれることによって帯電したりすることがある。静電気の電圧が高くなると、火花放電となって観測される。空気が湿っていると静電気が逃げやすくなるので、これらの現象は湿度の低い季節におこりやすい。日本においては、冬場の室内で暖房器具(特に電気暖房)を用いている際にそのような条件が整うことが多い。人体表皮からの火花放電はおおむね痛みを伴い、やけどの跡が確認できるものもある。
通常は流れる電流も小さく生命機能に影響を与えることはないが、時として危険なこともある。
帯電の極性は帯電列によって決まり、異なる物質間の帯電では帯電列が離れているほど高くなる。
[編集] 製造現場における静電気対策
ICなどの半導体部品や液晶は静電気による高電圧が素子を破壊する恐れがあり、静電気によるほこりの付着も嫌う。電子機器や部品、液晶などの生産現場には静電気を中和するイオナイザーをはじめ、様々な静電気対策が施される。 また、作業員自身の静電気対策として静電気が起こりにくいような服装をしたり、体の一部をアースに接続しておくなどの対策も行われている。一般家庭において、PCの内部を触るときなども、電子部品に触れる前に筐体の金属部分に触れるなどして静電気を逃がすのが安全である。ホビーとして各種の電子回路などを扱う際にも静電気には気をつけたほうがよく、アースのためのクリップ付きコードを接続するリストバンドなどが市販されている。
[編集] 精密空調による静電気対策
静電気は乾燥した冬場や低湿度条件で発生しやすいため、細かい温湿度管理ができる精密空調も製造現場の静電気対策の一つで、クリーンルーム全体を管理する空調のほか、クリーンブースやクリーンベンチ、製造装置に取付ける空調ユニットなど局所空調も有効な静電気対策として広く使われている。
精密空調機器の主なメーカー