鉱山
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鉱山(こうざん)とは、資源として有用な鉱物を採掘・選鉱・製錬し、主として工業用の原料として供給する事業所の事を指す。基本的には日本の鉱業法に基づく鉱物を採掘する事業所に、採石場、石切場などを加えたものが広い意味での鉱山といえる。
現在、日本において鉱業法によって採掘する事ができる鉱物は以下の通り。
金鉱、銀鉱、銅鉱、鉛鉱、そう鉛(ビスマス)鉱、すず(錫)鉱、アンチモニー(アンチモン)鉱、水銀鉱、亜鉛鉱、鉄鉱、硫化鉄鉱、クローム(クロム)鉱、マンガン鉱、タングステン鉱、モリブデン鉱、ひ(ヒ素)鉱、ニッケル鉱、コバルト鉱、ウラン鉱、トリウム鉱、りん(リン)鉱、黒鉛、石炭、亜炭、石油、アスファルト、可燃性天然ガス、硫黄、石こう(石膏)、重晶石、明ばん石、ほたる石、石綿、石灰石、ドロマイト、けい石、長石、ろう石、滑石、耐火粘土、砂鉱。
また、これらを処理する際に副生成された廃石(ズリ)やスライム、カラミも再度処理して鉱物を生産することが認められている(佐渡金山における廃石からの金の回収、野沢鉱山における廃石からの石綿回収など)
この定義のおける鉱物は法律的なものであり、鉱物学的なものとは異なっている(例えば水は鉱物学的には鉱物の一種ではあるが、鉱業法における対象鉱物には含まれていない。逆に可燃性天然ガスは普通は鉱物学の鉱物の範疇には入らない)。狭義にはこれらを単独もしくは並存で採掘・加工している事業所が鉱山である。このうち、石炭、石油、可燃性天然ガスなどはそれぞれ炭鉱、油田、ガス田と称している。
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[編集] 鉱山の事業
鉱山は資源の規模・経済的事情・地理的要件・環境条件によって規模や事業は大幅に異なっている。しかし、基本的にはこの3つの事業とこれらを補佐する事業から成っている。
[編集] 採鉱
鉱床から鉱石を採掘する事を指す。鉱床の規模や地理的、地学的な条件から採掘法は選別されるが、一般的に鉱床が大規模で比較的地表の近くに存在する場合は露天掘りが採用され、逆に深度にあり、鉱床が小規模である場合は坑道掘りが採用される。
[編集] 選鉱
採鉱して得た鉱石を主として物理的に選別し、有用な鉱石とそうでない鉱石(尾鉱、ズリとも呼ばれる)を選別する事を指す。方法としては、人員の目を利用して選別する手選鉱という原始的なものから、鉱石の比重差を利用する比重選鉱、鉱石の磁性を利用する磁力選鉱、鉱石の親水性を利用する浮遊選鉱などがある。ここで選別された有用な鉱石は精鉱と呼ばれ、次の製錬に回される。尾鉱は鉱山周辺に廃棄される事が多い。ズリ山(ぼた山)と呼ばれるものはこうして築かれる。
[編集] 製錬
精鉱を主に化学的に処理し、有用な元素を取り出す事を指す。非鉄金属が主に対象となっており、非金属元素は省略される事が多い。なお、鉄の(乾式)製錬の事を特に製鉄と呼ぶ。
製錬方法としては、火力を用いて溶融・揮発させて元素を抽出させる乾式製錬(鉄、銅、鉛、水銀、アンチモンなど)と、薬品の水溶液を用い、精鉱から元素を抽出して分解させる湿式製錬(金、銀など)がある。こうして抽出された元素は溶融された後、成形・冷却されて地金となる。ただし、こうした工程を経ても地金は未だに不純物を多く含む事から、電気分解して純度を99%以上にする事が多い。これを電解製錬と呼ぶ。
こうした3つの事業を全て行っている鉱山は大規模なケースが多く、中規模の鉱山は採鉱・選鉱を、小規模な鉱山は採鉱のみを行っているケースが多い。ただし、経営者の判断により、大規模な鉱山でも製錬は行われず、その事業のみ都市部に設置された製錬所に集約されたりする事もある。
こうした鉱山における3つの事業はいずれも単独で行われる事は難しい。このため、鉱山においてはこれらに付随する形で機械工場、車両整備工場、化学工場、発電所、変電所、ポンプ場、廃水処理場、貨物鉄道などが設置される。こうした付随事業が整備されている事により、鉱山の主要事業は円滑に進める事ができる。
大規模な鉱山においては、これら周辺事業が大規模化し、やがて鉱山とは独立化する事もある。例えば、茨城県日立市の日立鉱山の機械整備部門は、後に日立製作所として独立する事となった。
鉱山機械は大量の電気を必要とするため、一般の電力会社からの給電では間に合わない事もある。このため、水力発電所や火力発電所など独自に小規模な発電所を建設して自家用に供給する事もある。余剰となった電力の一部は電力会社に売電されたり、周辺地区に供給される事もあった。
[編集] 輸送手段
鉱石の運搬においては古くは牛馬が使われていたが、近代に入ってからは鉄道・軌道・トラックなどが用いられる事となった。中小の鉱山では森林軌道などを用いて運搬していたが、大規模な鉱山においては専用線や独自の私鉄を設置して鉱石・地金・化学薬品(硫酸など)を運搬する事もあった。特に私鉄の場合においては、周辺住民や鉱山労働者を対象に限定的な旅客輸送を行う事もあり、鉱山の閉山後も存続している事もある。 鉱山鉄道の項も参照のこと。
[編集] 鉱害
近年においては鉱害などの環境問題に対応するために、上記の事業以外に廃水処理場、煤煙脱硫施設等を設ける事が法律で義務付けられている。特に前者はほとんどの鉱山で必須であり、採掘・選鉱・製錬などの工程で発生した排水には重金属などが含まれている事から、そのまま河川に放流する事はできない。このため、沈殿池などを設置し、石灰などの薬品で浄化し、重金属や有害物質を除去して河川に排水する。このうち、坑道から湧出する廃水は自然由来のため、鉱山が閉山した後も事業者が処理を続ける事が義務付けられている。