若桑みどり
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若桑みどり(わかくわ みどり、1935年11月10日- 2007年10月3日)は、美術史学者。千葉大学名誉教授。専門は西洋美術史・表象文化史・ジェンダー史・ジェンダー文化論。
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[編集] 来歴・人物
英文学者山本政喜の娘として東京に生れる。兄にロシア文学者の川端香男里がいる。東京学芸大学教授だった哲学者の若桑毅は元夫。
東京藝術大学美術学部芸術学専攻科修了。イタリア政府給費留学生としてローマ大学に留学。東京藝術大学音楽学部教授を経て、1988年から千葉大学教養学部、後に文学部史学科教授となる。2001年の退官後、千葉大学名誉教授。2001年から2007年まで川村学園女子大学教授。
2007年10月3日、虚血性心不全により東京都世田谷区の自宅で死去。享年71歳。
[編集] 概要
西洋美術家としての専門はイコノロジーの方法を用いた、イタリアを中心とするルネッサンス、マニエリスム、バロック美術である。いち早くカラヴァッジォを取り上げた他、マニエリスム芸術を我が国に紹介した功績は大きい。またミケランジェロによるシスティーナ礼拝堂フレスコ画の総合的解釈で知られる。代表的著作に『マニエリスム芸術論』、『光彩の芸術』、『象徴としての女性像』。
1990年代半ばからは、ジェンダー視点にたった日本近代における視覚文化史研究にフィールドを拡げ、『戦争が作る女性像ー第二次世界大戦下の日本女性動員の視覚的プロパガンダ』、『皇后の肖像ー昭憲皇太后の表象と女性の国民化』などの一連の著作、論文を発表している。
ジェンダー文化研究所を主宰し、文化のなかにおけるジェンダーについて研究を進めた。
政治活動としては2007年の東京都都知事選において、「アサノと勝とう!女性勝手連」の結成を呼びかけ、浅野史郎の支援活動に携わった。
[編集] 受賞歴
- 1980年 『全集 美術のなかの裸婦 寓意と象徴の女性像』を中心とした業績でサントリー学芸賞
- 1985年 『薔薇のイコノロジー』で芸術選奨文部大臣賞受賞
- 1996年 イタリア共和国カヴァリエレ賞
- 2003年 紫綬褒章
- 2004年 天正遣欧少年使節を描いた『クアトロ・ラガッツィ』で大佛次郎賞受賞
[編集] 著書
[編集] 単著
- 『マニエリスム芸術論』(岩崎美術社, 1980年/筑摩書房[ちくま学芸文庫], 1994年)
- 『薔薇のイコノロジー』(青土社, 1984年)
- 『女性画家列伝』(岩波書店[岩波新書], 1985年)
- 『レット・イット・ビー』(主婦の友社, 1988年)
- 『風のイコノロジー』(主婦の友社, 1990年)
- 『都市のイコノロジー』(青土社, 1990年)
- 『ケーテ・コルヴィッツ』(彩樹社, 1993年)
- 『絵画を読む――イコノロジー入門』(日本放送出版協会[NHKブックス], 1993年)
- 『イメージを読む――美術史入門』(筑摩書房[ちくまプリマーブックス], 1993年/ちくま学芸文庫, 2005年)
- 『光彩の絵画――ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂天井画の図像解釈学的研究』(哲学書房, 1993年)
- 『世界の都市の物語(13)フィレンツェ』(文藝春秋, 1994年/文春文庫, 1999年)
- 『戦争がつくる女性像――第二次世界大戦下の日本女性動員の視覚的プロパガンダ』(筑摩書房, 1995年/ちくま学芸文庫, 2000年)
- 『岩波近代日本の美術(2)隠された視線――浮世絵・洋画の女性裸体像』(岩波書店、1997年)
- 『象徴としての女性像――ジェンダー史から見た家父長制社会における女性表象』(筑摩書房, 2000年)
- 『イメージの歴史』(放送大学教育振興会, 2000年)
- 『皇后の肖像――昭憲皇太后の表象と女性の国民化』(筑摩書房, 2001年)
- 『お姫様とジェンダー――アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門』(筑摩書房[ちくま新書], 2003年)
- 『クアトロ・ラガッツィ――天正少年使節と世界帝国』(集英社, 2003年)
- 『戦争とジェンダー――戦争を起こす男性同盟と平和を創るジェンダー理論』(大月書店, 2005年)
[編集] 共著
- (萩原弘子)『もうひとつの絵画論――フェミニズムと芸術』(ウイメンズブックストア松香堂書店, 1991年)
- (佐藤忠良・中村雄二郎・小山清男)『遠近法の精神史――人間の眼は空間をどうとらえてきたか』(平凡社, 1992年)
- (宮台真司・姜尚中・水木しげる・中西新太郎・石坂啓・沢田竜夫・梅野正信)『戦争論妄想論』(教育史料出版会, 1999年)
[編集] 共編著
[編集] 監修
- 『甦るミケランジェロ――システィーナ礼拝堂』(日本テレビ放送網, 1987年)
[編集] 翻訳
- アーノルド・ハウザー『マニエリスム――ルネサンスの危機と近代芸術の始源(上・中・下)』(岩崎美術社, 1970年)
- レナータ・ネグリ『現代の絵画(8)ボナールとナビ派』(平凡社, 1974年)
- D・レディグ『ミケランジェロ最終審判』(筑摩書房, 1976年)
- ピエール・デュ・コロンビエ『ミケランジェロ』(小学館, 1983年)
- マリオ・プラーツ『官能の庭――マニエリスム・エンブレム・バロック』(ありな書房、1992年)
- ジョルジョ・デ・マルキス『アヴァンギャルド芸術論――アヴァンギャルドおよびネオ・アヴァンギャルド芸術入門』(現代企画室, 1992年)
- グラディス・S・ブリザード『親子で見る絵』(クレオ, 1992年)
- エルウィン・パノフスキー『墓の彫刻――死に立ち向かった精神の様態』(哲学書房, 1996年)
- ミランダ・ブルース=ミットフォード『サイン・シンボル事典』(三省堂, 1997年)
- ブルース・ロートン『オノレ・ドーミエ――偉大なる漫画家』(大月書店, 1997年)