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第17族元素 - Wikipedia

第17族元素

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

17
周期
2 9
F
3 17
Cl
4 35
Br
5 53
I
6 85
At

第17族元素(だいじゅうななぞくげんそ)は周期表において第17族に属する元素の総称。フッ素塩素臭素ヨウ素アスタチンがこれに分類される。ハロゲンと呼ばれることも多い。

フッ素、塩素、臭素、ヨウ素は性質がよく似ており、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と典型的なを形成するので、これら元素からなる元素族をギリシャ語の 塩 alos と、作る gennao を合わせ「塩を作るもの」という意味のハロゲン (halogen) と、18世紀フランスで命名された。これらの任意の元素を表すために化学式中ではしばしば X と表記される。任意のハロゲン単体を X2 と表す。

目次

[編集] 性質

ハロゲン元素単体 X2 のサンプル
ハロゲン元素単体 X2 のサンプル

周期表の一番右側にある希ガスの左隣の列に位置する。価電子最外殻のs軌道およびp軌道にある電子である(s軌道は2電子が占有し、p軌道は5個の電子が占有しており一価の陰イオンになる)。

  フッ素
9F
塩素
17Cl
臭素
35Br
ヨウ素
53I
アスタチン
85At
電子配置 [He]2s22p5 [Ne]3s23p5 [Ar]3d104s24p5 [Kr]4d105s25p5 [Xe]4f145d106s26p5
第1イオン化エネルギー
(kJ·mol−1)
1681 1251 1140 1008 930
電子付加エンタルピー
(kJ·mol−1)
−328 −349 −325 −295 −270
電子親和力
(kJ·mol−1)
340 365 342 303 −298
電気陰性度
(Allred-Rochow)
4.1 2.83 2.74 2.21 -
イオン半径
(X, pm)
133 181 195 216 (~230)
共有結合半径
(r(X2)/2, pm)
72 99 114 133 (~140)
van der Waals
半径 (pm)
147 175 185 198 -
融点 (X2, K) 40 172.16 265.90 386.75 (575)
沸点 (X2, K) 85 239.10 332 458 (610)
解離エネルギー
(X2, kJ·mol−1)
155 243 193 151 (~116)
水和エネルギー
(X, kJ·mol−1)
485 350 320 280 (~277)
還元電位 E0 (V) 2.89 1.40 1.10 0.62 (~0.3)
  • ( ) 内は推定値
  • X2 (aq) + 2 e → 2 X (aq)

第17族元素は、原子番号が若いものは非常に反応性に富む。特にフッ素は第一イオン化エネルギーが大きい上、F−F 間の結合距離が短く、それぞれの原子の非共有電子対同士が反発することによって結合エネルギーが小さくなっているために著しく反応性が高い。

塩素は水圏に大量に存在する(クラーク数)が、地殻中の存在比ではフッ素>塩素>臭素>ヨウ素であり、放射性物質であるアスタチンは、既知の最も長い半減期を持つ質量数210の同位体で8.3時間しかないため、自然環境中にはほとんど存在しない。常温、常圧でフッ素は薄黄色の気体、塩素は淡黄緑色の気体、臭素は赤褐色の液体、ヨウ素は黒紫色の固体、アスタチンは固体で、ヨウ素、アスタチンの固体は金属光沢を持つ。

[編集] 水素化物

第17族元素の水素化物はハロゲン化水素と呼ばれる。水素とは1対1で結合する化合物しか知られておらず、ハロゲン化水素一般を表す略号として HX と書き表されることが多い。

  フッ化水素
HF
塩化水素
HCl
臭化水素
HBr
ヨウ化水素
HI
融点 (℃) −83.5 −114.2 −88.6 −51.0
沸点 (℃) 19.5 −85.1 −67.1 −35.1
誘電率(液相) 83.6
(0 ℃)
9.3
(−95 ℃)
7.0
(−85 ℃)
3.4
(-50 ℃)
H−X 結合解離エネルギー
(kJ·mol−1)
567 431 366 298
H−X 結合距離
(pm)
92 127 141 161
水溶液 フッ化水素酸
弱い酸
(pKa = 3.14)
塩酸
強酸
臭化水素酸
強酸
ヨウ化水素酸
強酸

フッ化水素酸以外のハロゲン化水素は水中では完全電離するものの、そのもの自体はそれほど強い極性物質ではない。そして塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素の水溶液は完全電離して強酸性を示し、酸の強度は HCl < HBr < HI の順である。

それに対して液化フッ化水素は水に相当する誘電率と相対的に高い沸点を持ち、水素結合を形成する極性物質である点で特徴的である。また、希薄溶液であってもフッ化水素は水中で完全電離しない。

[編集] 酸化物・オキソ酸

フッ素以外のハロゲン元素については酸化数として I, III, (IV,) V, VII のいずれかをとり、種々の酸化物とオキソ酸を形成する。しかし、フッ素は酸化数として -I しか取りえず他のハロゲン元素とは化学的性質が異なる面を持つ。フッ素と酸素の化合物はフッ素酸化物と呼ぶよりは酸素のフッ化物と呼ぶのが適当な性質を有し、いわゆるオキソ酸の性質をもつ物質は HOF (次亜フッ素酸)以外形成しない。

ハロゲン元素の酸化物を次に示す。

ハロゲン元素の酸化数 フッ素 塩素 臭素 ヨウ素
-I 二フッ化酸素
OF2
二フッ化二酸素
O2F2
二フッ化三酸素
O3F2
     
+I   一酸化二塩素
(亜酸化塩素)
Cl2O
一酸化二臭素
(亜酸化臭素)
Br2O
一酸化二ヨウ素
I2O
(単離できない)
+III   三酸化二塩素
Cl2O3
三酸化二臭素
Br2O3
三酸化二ヨウ素
I2O3
(単離できない)
+IV   二酸化塩素
ClO2
二酸化臭素
BrO2
 
+Iと +VII   四酸化二塩素
Cl−O−ClO3
  四酸化二ヨウ素
I−O−IO3
+V       五酸化二ヨウ素
O2I−O−IO2
+Vと+VII   六酸化二塩素
Cl2O6
   
+VII   七酸化二塩素
Cl2O7
   
その他     八酸化三臭素
Br3O8
九酸化四ヨウ素
I4O9

また、ハロゲン元素のオキソ酸を次に示す。

オキソ酸(酸化数) フッ素 塩素 臭素 ヨウ素
(-I) 次亜フッ素酸
HOF
     
次亜ハロゲン酸
HOX (+I)
  次亜塩素酸
HOCl
次亜臭素酸
HOBr
次亜ヨウ素酸
HOI
(単離できず)
亜ハロゲン酸
HO−X=O (+III)
  亜塩素酸
HO−Cl=O
(単離できず)
亜臭素酸
HO-Br=O
亜ヨウ素酸
HO−I=O
(単離できず)
ハロゲン酸
HO−X(=O)2 (+V)
  塩素酸
HO−Cl(=O)2
(単離できず)
臭素酸HO−Br(=O)2
(単離できず)
ヨウ素酸
HOI(=O)2
過ハロゲン酸
HO−X(=O)3 (+VII)
  過塩素酸
HO−Cl(=O)3
過臭素酸
HO-Br(=O)3
(メタ)過ヨウ素酸
HO−I(=O)3

パラ過ヨウ素酸
O=I(OH)5

ハロゲンの酸化数を増すに従いハロゲン元素のオキソ酸は次の傾向を示す。

  1. 熱不安定性が減少する
  2. 酸化力が減少する
  3. 酸の強さが増大する

名称が似るが、過ハロゲン酸は過酸ではなくオキソ酸である。

[編集] ハロゲン間化合物

また、異なるハロゲン元素が結合した化合物を形成し、それらはハロゲン間化合物と呼ばれる。

代表的なものに、以下のものが知られている。

また、複数のハロゲン元素が結合してイオンとなったものをポリハロゲン化物イオン(陰イオンの場合)、ポリハロゲニウムイオン(陽イオンの場合)と呼ぶ。ハロゲンアニオンはハロゲン単体と結合して ICl2, BrF4, I3, I5, I7 などを生成することが知られている。またハロゲン間化合物の溶融物は電気伝導性を示すものがあり、それらは自己イオン化によりポリハロゲニウムイオンが生成している。

3\mbox{IX} \rightleftarrows (\mbox{I-X-I})^ + \mbox{+IX}_2^-  (\mbox{X = Cl, Br})

[編集] 有機ハロゲン化物

有機ハロゲン化物とは、狭義ではハロゲン化アルキルハロゲン化アリールなど、炭化水素の水素がハロゲン原子で置き換わった化合物を指す。広義ではハロゲンを含む有機化合物を意味し、ハロゲン化アシルやハロゲン酸を含む。

有機ハロゲン化物に含まれる炭素-ハロゲン結合はハロゲンの高い電気陰性度のために分極している。そのため、炭素原子を陰イオンなど求核剤が攻撃しやすい。しかしながら、ハロゲン化アリールなど sp2炭素にハロゲンが結びついた基質においては、立体的な要因によりこのような反応が起こりにくい。詳細は 求核置換反応芳香族求核置換反応 を参照。

[編集] ハロゲン化鉱物

鉱物学において、金属元素とハロゲン元素とが結合している鉱物ハロゲン化鉱物(はろげんかこうぶつ、halide mineral)という。岩塩 (NaCl)、蛍石 (CaF2) などが挙げられる。

[編集] 関連記事

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