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社会保険労務士 - Wikipedia

社会保険労務士

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

社会保険労務士(しゃかいほけんろうむし)とは、

  1. 労働及び社会保険に関する諸法令に基づき行政機関(主に労働基準監督署公共職業安定所社会保険事務所)に提出する申請書、届出書、報告書、審査請求書、異議申立書、その他の書類を作成し、その提出に関する手続きを代わってすること、
  2. また、労働社会保険諸法令に基づく申請、届出、報告、審査請求、異議申立て、再審査請求その他の事項(厚生労働省令で定めるものに限る。)について、又は当該申請等に係る行政機関等の調査若しくは処分に関し当該行政機関等に対してする主張若しくは陳述(厚生労働省令で定めるものを除く。)について、代理すること、
  3. 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第6条第1項の紛争調整委員会における同法第5条第1項のあつせんの手続及び雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律第18条第1項及び短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律第22条第1項の調停の手続について、紛争の当事者を代理すること、
  4. 地方自治法第180条の2の規定に基づく都道府県知事の委任を受けて都道府県労働委員会が行う個別労働関係紛争(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第1条に規定する個別労働関係紛争(労働関係調整法第6条に規定する労働争議に当たる紛争及び特定独立行政法人等の労働関係に関する法律第26条第1項に規定する紛争並びに労働者の募集及び採用に関する事項についての紛争を除く。)をいう。)に関するあつせんの手続について、紛争の当事者を代理すること、
  5. 個別労働関係紛争(紛争の目的の価額が民事訴訟法第368条第1項に定める額を超える場合には、弁護士が同一の依頼者から受任しているものに限る。)に関する民間紛争解決手続(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律第2条第1号に規定する民間紛争解決手続をいう。)であつて、個別労働関係紛争の民間紛争解決手続の業務を公正かつ適確に行うことができると認められる団体として厚生労働大臣が指定するものが行うものについて、紛争の当事者を代理すること、
  6. 労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類(その作成に代えて電磁的記録を作成する場合における当該電磁的記録を含み、申請書等を除く。)を作成すること、
  7. 事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じ、又は指導すること、

職業として行うための資格、また、その職業に携わる人である。

略称として「社労士」、あるいは、単に「労務士」とも呼ばれる。ラテン文字で社労士事務所等の略称を作るときにはしばしば「sr」と置き換えられる。 英語表記Certified Social Insurance and Labour Consultant

目次

[編集] 社会保険労務士の業務

事業所より依頼を受け従業員の入退社に伴う上記事務処理、在職中の労働災害、通勤災害、私傷病、出産、死亡等に関する申請や給付に関する事務手続き、労働保険料を算定納付する年度更新、従業員それぞれの毎月の社会保険料を確定させる算定基礎届、労働者名簿及び賃金台帳など法定帳簿の調製、就業規則作成改訂、給与計算、賃金や退職金制度構築、各種助成金の申請、労務及び安全衛生に関する相談、指導などのコンサルタント業務、また、個人向けの年金、労働相談等が主な業務である。

社労士の業務形態でごく一般的なものは、企業との顧問契約である。企業の人事・労務諸問題に関する相談、社会保険・労働保険諸手続きの事務代理・提出代行、給与計算などが主である。 近年は、ファイナンシャル・プランナー資格を併せ持って年金・資産運用に関するコンサルタント業を主とする社労士も増えてきている。また、近年、労働者の権利意識の高まりを背景に労使紛争や訴訟が増加しており、「個別労働紛争の解決の促進に関する法律」に基づき当事者を代理して、具体的な解決策を提案するなど、労使双方の諍いを処理する、といった業務を手がける社会保険労務士も次第に増えている。

現在、社会保険労務士の報酬は、規制緩和の一環として他士業者とともに自由化されており、社会保険労務士の事務所ごとに違っている。

法律事務を職分とする、現役の弁護士は当然に全ての社会保険労務士業務を行い得る。これについては、いわゆる隣接法律専門職種と言われる司法書士弁理士税理士海事代理士行政書士の各業務についても同様である。

昭和55年8月末日の時点で現に行政書士であった者は、社会保険労務士の独占業務に関わる書類の作成を為すことが許されるが、提出代行(クライアントに代わり行政機関への提出を代行すること)及び事務代理(事実行為の代理であるが、書面の内容を自らの判断で修正すること)はできず、使者(行政契約の場合は民法の代理もあり)として提出できるのみである。当然あっせん代理もできない。

税理士の行う付随業務(租税債務の確定に必要な社会保険労務士事務)についても、提出代行並びに事務代理はできない。

なお、アウトソーシング等を行う法人組織、経営コンサルティング会社等の無資格者や、労務管理士などと称していても社会保険労務士でないものが社会保険労務士業務を行えば、社会保険労務士法違反となる。また、有資格者社員の社会保険労務士開業登録をもって上記職務を行うアウトソーシング会社も見受けられるが、実態として指揮命令関係等が存在する場合は、「非社労士との提携」として、当該社労士は社会保険労務士法違反となる。

国家資格者である社会保険労務士は、社会保険労務士証票、都道府県社会保険労務士会会員証及び徽章など身分を証明するものを所持している。

[編集] 社会保険労務士試験

社会保険労務士となるには、社会保険労務士試験に合格した者、又は試験科目すべてが免除される者、若しくは弁護士となる資格(司法試験に合格して司法修習を終えるなど)を有する者が、全国社会保険労務士会連合会へ登録(実際には都道府県社会保険労務士会への入会手続きによって行われる)する必要がある。社会保険労務士試験は以前は国が管轄していたが、現在は全国社会保険労務士会連合会が管轄して社会保険労務士試験センターが試験事務を行っている。 

受験資格

  • 大学卒業者、又は大学において62単位以上を修得済みの者
  • 短期大学高等専門学校を卒業した者。
  • 修業年限が2年以上、かつ総授業時間数が1,700時間以上の専修学校の専門課程を修了した者。
  • 行政書士試験合格など行政書士となる資格を有する者
等の細かな規定がある。

試験科目

試験方法

  • 完全マークシート方式であり、毎年8月第4日曜日に行われる。
  • 午前中:選択式、5問が8つ=総計40ヵ所の空所穴埋め、制限時間80分。原則として各設問のうち3問正解かつ総得点が28点以上でなければならない。
  • 午後:択一式(5択)試験、10問が7つ=70問,制限時間210分。原則として各設問につき4点以上正解し、かつ総得点44点以上でなければならない。
    • 受験者の得点率次第では、若干条件を緩和する救済措置が採られることがある。

なお、これらの要件を全て満たして初めて合格となるため、大方の合格者が資格予備校を活用しているのが現状である。

試験合格者は登録にあたり、原則2年以上の実務経験が求められるが、連合会の行う数ヶ月間の通信教育と試験後1年前後を経て、東京愛知大阪福岡のいずれかで実施する4日間の面接講習(講義形式の座学)を受けることにより、実務経験に代えることができる。 なお、資格は終身有効である。

  • 規制改革推進のための3か年計画(改定)(平成20年3月25日閣議決定)において、社会保険労務士試験の受験資格の見直し【平成20 年以降検討・結論】が行われることとなった。社会保険労務士試験については、必要に応じ試験問題や試験制度全体の改革を念頭におきつつ、受験資格の見直しについて速やかに検討を行い、結論を得ることとなっている。


社会保険労務士試験合格率(過去10年)[1]
年度 申込者数 受験者数 合格者数 合格率
平成10年度 39,415人 30,816人 2,327人 7.6%
平成11年度 45,455人 35,894人 2,827人 7.9%
平成12年度 50,689人 40,703人 3,483人 8.6%
平成13年度 54,203人 43,301人 3,774人 8.7%
平成14年度 58,322人 46,713人 4,337人 9.3%
平成15年度 64,122人 51,689人 4,770人 9.2%
平成16年度 65,215人 51,493人 4,850人 9.4%
平成17年度 61,251人 48,120人 4,286人 8.9%
平成18年度 59,839人 46,016人 3,925人 8.5%
平成19年度 58,542人 45,221人 4,801人 10.6%

[編集] 歴史及び沿革

戦後、いわゆる労働三法1946年労働関係調整法1947年労働基準法1949年労働組合法)が制定され、労働者の権利が法的な裏付けをもって確認された。さらに経済成長と相まって、急速に労使間の対立やストライキの頻発といった問題が生まれた。

また、特に1960年代における日本経済の急激な成長は、税収や企業からの社会保険料の増加をもたらした。補償額の高度化・制度の複雑化を伴いながら、厚生年金健康保険労災保険雇用保険も長足の発展を遂げるに至った。 しかるに、煩雑な社会保険の仕組みと申請・給付に係る事務手続きは、殊に中小企業において対応が困難という状況を作り出した。

これらの状況に対応できる専門家の必要性から、企業における人事・総務部門の業務を請け負う職業が発生した。

当初、これらの請負業務を合法的に行いうる有資格者は行政書士であったが、より専門的な知識を持った人材が必要とされた。そこで1968年社会保険労務士法議員立法により制定された。制度発足時の経過措置として、行政書士が社会保険労務士試験を課されずに特認として社会保険労務士資格を取得でき、およそ9,000名が社会保険労務士となった。

2007年4月、司法制度改革において、新たなADR(Alternative Dispute Resolution裁判外紛争解決)制度の代理権獲得がされた。

試験については、日常の社会人生活と密接な関係をもった科目も多い。ここ10年ほど年々受験者数が増加していたが、平成17年平成18年平成19年と3年連続で減少に転じている。

  • 1968年 - 社会保険労務士法(昭和四三年法律第八九号)制定
  • 1986年 - 書類作成基礎事項表示権・他人作成書類審査権付与
  • 1998年 - 審査請求代理権付与(注:審査請求の代理人は旧来より社労士でなくても資格は不要で、誰でも出来る。)
  • 2000年 - 社会保険労務士試験事務を連合会へ委嘱
  • 2003年 - 社会保険労務士法人発足、ADRあっせん代理権付与

社会保険労務士は、日本固有の資格制度であるが、韓国で社会保険労務士を手本とし、より労働法務に特化した「公認労務士」(1984年 - )が存在する。

[編集] 社会保険労務士の諸形態

個人で事務所を開く「開業社会保険労務士」の他、企業団体に属し総務人事などの部署にあって当該企業内に限定された社会保険労務士としての仕事を行う「勤務社会保険労務士」、会社員公務員役員、または、自営などで営業、経理、専門職等の社会保険労務士業務と直接関わらない職種に従事している、若しくは社会保険労務士法人に雇われる者など「その他」、の登録区分がある。主務官庁は厚生労働省。(もともと旧厚生省と旧労働省の共管とされていた)

業務を組織的に行うため、社会保険労務士が共同し、社会保険労務士法人を設立できる。 社会保険労務士法人は、その多くの規定を商法合名会社を見本とし、社員(出資者である無限責任社員のこと)たる社会保険労務士それぞれが、無限責任を負う形態であり、個人で別に社会保険労務士の事務所を登録できない。 社員が1人になった場合、6ヶ月以内に2人以上とならない時は、法人を解散する。

社会保険労務士法により、社会保険労務士、または、社会保険労務士法人でないものは、この名称及び類似する名称を用いることを禁じられている。 社会保険労務士法人は、その名称中に社会保険労務士法人、という文字を入れなければならない。 しかし、個人事務所には、名称に関する規定がないため、社会保険労務士事務所、社労士事務所、労務管理事務所、経営相談所、オフィス、事務所、コンサルティングなど多彩である。 また、同時に行政書士登録者が多いのも特徴と言える。

[編集] 外部リンク


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