狂気 (アルバム)
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狂気 | ||
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ピンク・フロイド の アルバム | ||
リリース | 1973年3月24日 | |
ジャンル | プログレッシブ・ロック | |
時間 | 42:52 | |
レーベル | キャピトル・レコード | |
プロデュース | ピンク・フロイド | |
専門評論家によるレビュー | ||
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チャート最高順位 | ||
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ピンク・フロイド 年表 | ||
雲の影 (1972) |
狂気 (1973) |
炎〜あなたがここにいてほしい (1975) |
狂気(きょうき、The Dark Side Of The Moon)は、1973年に発表されたピンク・フロイドのアルバム。
目次 |
[編集] 概要
本作はアメリカのビルボードチャート200位(The Billboard 200)以内に15年(741週間)に渡って、またビルボードのカタログチャート[1]では28年以上(1530週以上)に渡ってランクインするというロングセラーのギネス記録を打ち立てた歴史的なアルバムである[2]。キャッシュボックスでは233週、UKオフィシャルチャートでも354週に渡ってランクインしている。
全英ではオフィシャルチャートで2位(1973年3月31日付)、NMEでは1位(1973年4月7日付)。全米では1位を獲得し、RIAAでは1500万枚の出荷が認定されている。全世界での売上枚数は4000万枚とされている[3]。
プログレッシブ・ロックというジャンルを超え、ロック史に残る名盤として現在も君臨している。ピンク・フロイドの作品の中でも、『ザ・ウォール』(1979年)、『炎〜あなたがここにいてほしい』(1975年)と並ぶ代表作である。また、本作をきっかけにアメリカでの人気が決定的となった。コンセプト・アルバムの代表作としても名高い。
このアルバム以降、ロジャー・ウォーターズが全作詞を手掛けるようになり、バンド内でのバランスに大きな変化が生まれたという点でも、重大な意味を持つ作品となった。人間の内面に潜む「狂気」を描き出すというコンセプトを考えたのもロジャーである。
[編集] 内容
哲学的な歌詞に加え、それを際立たせる立体的な音作りで、極めて完成度の高い作品に仕上がっている。特に、アラン・パーソンズが編集したSE(効果音)の巧みな使い方によって、うまくストーリーを演出している。笑い声、会話、爆発音、時計の針、レジスター、心臓の鼓動(実際はニック・メイスンのドラム)等が使われている。サンプラーは無かったため、録音した音をひとつひとつテープに貼り付けるという原始的な手法で組み立てられた。アラン・パーソンズによれば、マネーの冒頭で聴かれるレジスターの音は編集に30日要したと言う[4]。
基本的にアルバムの最初から最後まで曲と曲がつながっており、複数の曲があたかもひとつの作品のようになっているのが最大の特色である。その中で主人公の誕生から苦悩、葛藤などを描き出している。作品中では主人公はYouと記されているだけだが、狂気の人となってしまったシド・バレットの姿も重ねられていると言われている。エンディングでは、Gerry O'Driscollによる「There is no dark side of the moon really. Matter of fact it's all dark(本当は月の暗い側なんて存在しないんだよ。何故なら、すべてが闇そのものだからね)」という台詞[5]が入っており、核心的な一言でアルバムは終わりを告げる[6]。
[編集] 客演
メンバー4人以外にもゲスト・ミュージシャンが起用された。
- 「マネー」と「アス・アンド・ゼム」でサックスを演奏したのはDick Parry。
- 「虚空のスキャット」他でスキャットを担当したのはClare Torry。
- 「タイム」他で女性コーラスを担当したのはDoris Troy、Lesley Duncan、Liza Strike、Barry St Johnの4人。
- 随所で聴かれる声の主は、関係者やメンバーの友人。例えばローディーのRoger ManifoldやドアマンのGerry O'Driscoll等。
[編集] スタッフ
- エンジニアはアラン・パーソンズが務めていたが、最終段階に入ってクリス・トーマスも招かれた。
- アルバム・ジャケットはヒプノシス。デザイナーのストーム・ソーガソンが幾つかのアイディアをメンバーに提示し、満場一致で光のプリズムを表現したデザインに決定した。ロック史に残る名作とされている。
- アメリカで商業上の大成功に寄与したのはキャピトル・レコードのBhaskar Menon。「マネー」のシングル・カットを決断するなど、様々な営業戦略を駆使して『狂気』を売り込んだ[7]。
[編集] 収録曲
All lyrics by Roger Waters
- スピーク・トゥ・ミー Speak To Me (Mason)
- 生命の息吹 Breathe (Gilmour, Waters, Wright)
- 走り回って On The Run (Gilmour, Waters)
- タイム~ブリーズ(リプライズ) Time~Breathe (Reprise) (Gilmour, Waters, Wright, Mason)
- 虚空のスキャット The Great Gig In The Sky (Wright)
- マネー Money (Waters)
- アス・アンド・ゼム Us And Them (Wright, Waters)
- 望みの色を Any Colour You Like (Gilmour, Wright, Mason)
- 狂人は心に Brain Damage (Waters)
- 狂気日食 Eclipse (Waters)
バンドは1971年11月20日にアメリカツアーを終了後、早くも翌1972年1月20日にイギリスツアーを開始している。この1月20日のコンサートでは早速『狂気』組曲が披露されており、約2ヶ月の間に『狂気』を纏め上げたことになる。これ以後のコンサートでも引き続き演奏し続けた。72年3月の2度目の来日となる8公演の全てでも『狂気』が披露された。
この発売前のライブ演奏とスタジオテイクでは一部の曲で大幅にアレンジが異なる。まず「走り回って」は「インストゥルメンタル・ジャム」という即効演奏が披露されている。「虚空のスキャット」では、聖書の一節を朗読したSEを流し、スタジオ盤と異なるライトのキーボード・メロディを奏でていた。また、当初のライブ演奏では「狂気日食」が当初は無く「狂人は心に」で終わっていたが、ウォーターズがアルバムのクライマックスを再考し「狂気日食」を新たに書き下ろした。
[編集] 5.1ch版
発売30年後の2003年に、ジェームス・ガスリーによってリマスターが施されて5.1chのサラウンド・オーディオ・システムに対応したマルチ・チャンネル版がSACDとDVD-Audioでリリースされた。
[編集] メイキング
発売30年後の2003年に、当時の映像と現在のメンバーのインタビューを編集したメイキングDVD「ピンク・フロイド|狂気」がリリースされた。デヴィッド・ギルモア自身がギター・ワークを再現したり、「走り回って」に於けるシンセサイザーの操作を実演したり、リチャード・ライトがみずからピアノ・コードの分析を行ったりするなど、メンバー自身が作成に大きく寄与している。ちなみに2006年のMOJO誌に掲載されたギルモアのインタビューによると、ギルモアとウォーターズはこのメイキングDVD作成時にも両者の意見が対立し、電話で口論となったと語っている。
[編集] 使用楽器
『走り回って』は、資料によってはEMSのVCS 3シンセサイザーが使われたと記述されているが、デヴィッド及びロジャーは本ビデオ・ソフトで、"Synth EA"[8]を使ったと解説しており、デヴィッドによる再現演奏でも同機が使用されている。なお、同ソフトに収録された製作当時の写真では、ロジャーがVCS 3を操作し、その横でデヴィッドがSynth EAを操作している。
[編集] 脚注
- ^ 発売2年を経過したアルバムのみのチャート
- ^ 2007年現在も記録更新中。
- ^ Floyd's 'Dark Side' Celebrates Chart Milestone、ビルボード、2005年5月5日。(英語)ただし、まだ売上枚数計測のシステムが整っていない時期に発売されたため、それを上回る可能性がある。
- ^ 2003年に発表されたドキュメントDVDには、編集したテープのエンドレス走行/再生の様子が収録されている。
- ^ つまり、実際は何もかもただ「明るい」のは「ただ太陽の光が当たっているだけ」で「暗い側」も「明るい側」もないということである。なお、この科白はレベルを下げて録音されているため、音量をかなり上げないと聞き取れない。
- ^ さらにボリュームを上げると台詞から音がフェードアウトする間に、バイオリンと思われる楽器による演奏が右スピーカー側からかすかに流れる。
- ^ ただし、このシングル・カットはバンドに無断で決定されていたらしく、メンバーは怒りを露にしていた。
- ^ 「EMS Synthi A」。ただし当該製品には電子キーボードが装備されていないので、デヴィッドが実演した演奏を再現する為には電子キーボードを追加するか、EMS Synthi Aにキーボードが標準装備された「AKS」の使用が必要となる