淀藩
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淀藩（よどはん）は、山城国（現在の京都府京都市伏見区淀本町）に存在した藩。
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[編集] 藩史
元和9年（1623年）、松平定綱が遠州掛川藩より3万5000石で入ったことにより、淀藩が立藩した。これは、先年に廃藩となった伏見藩に代わって、新たに京都を防備するために立藩されたのである。定綱は淀城の築城に尽力した。ちなみにこの淀城は、かつて豊臣秀頼の生母であった淀殿の居城で知られる淀城とは場所が異なると言われている。
定綱は寛永10年（1633年）3月に美濃国大垣藩に移され、代わって下総国古河藩より永井尚政が10万石で入った。尚政は家臣団の編成や城下町の開発、洪水対策に備えての木津川工事などに尽力し、藩政の基盤を固めた。尚政は明暦4年（1658年）2月28日に隠居して家督を子の永井尚征に譲る。このとき、尚征は所領を弟たちに分与したため、7万3600石の所領を継ぐこととなった。例えば六男尚甲（なおのぶ）には3千石分知し、船橋陣屋を築いている。そして尚征は寛文9年（1669年）2月25日に丹後国宮津藩に移され、代わって伊勢亀山藩より石川憲之が6万石で入った。憲之は宝永3年（1706年）2月25日に隠居し、その後を継いだ石川義孝は宝永7年（1710年）9月2日に死去。その後を継いだ石川総慶は宝永8年（1711年）2月15日に備中松山藩に移され、代わって美濃国加納藩より松平光煕が6万石で入った。光煕は享保2年（1717年）9月4日に死去し、その後を継いだ戸田光慈は享保2年11月1日、志摩国鳥羽藩へ移され、代わって伊勢亀山藩より松平乗邑が6万石で入る。しかし享保8年（1723年）5月1日には下総国佐倉藩へ移され、入れ替わりで稲葉正知が10万2000石で入ることで、ようやく藩主家が定着した。
以後、稲葉氏の支配によって明治時代を迎えることとなる。稲葉氏は明治17年（1884年）、華族令により子爵に列せられた。
[編集] 藩政
淀藩の基盤は、永井氏によって確立された。尚政は城下町の拡大や水上交通の整備、地子免除などを行なっている。石川憲之は検地政策や元禄国絵図作成などで功を挙げ、幕政にも参与している。松平乗邑の場合は大坂城代代行の立場から、徳川吉宗に見出されて老中にまで異例の栄進を遂げて入ってきた大名である。
稲葉氏は、10万2000石という大領ではあったが、その所領は山城のほかに摂津・河内・近江・下総・越後などに分散しているという不安定さで、山城にあった所領は2万石にも満たなかったと言われている。このため、藩政においても財政基盤の脆弱さから人夫の徴発さえままならず、財政は苦しかった。第7代藩主・稲葉正諶は天明4年（1784年）に越後の所領を和泉や近江に移したが、これにより所領10万2000石は8カ国に分散することとなり、全くの逆効果を招いた。
また、稲葉氏の歴代藩主は短命な者が多く、享保年間には4人の藩主が相次いで死去している。
ちなみに、稲葉氏の歴代藩主の中でもっとも有名な藩主は第12代（最後）の藩主・稲葉正邦である。正邦は幕末期の動乱の中で老中を二度務め、板倉勝静や小笠原長行らと共に活躍した人物である。しかし、長行や勝静らが函館まで転戦し、最後まで幕府に忠義を尽くしたのとは違い、この正邦は慶応4年（1868年）の戊辰戦争において藤堂高猷の裏切りにより敗走する幕府軍兵が淀城に入城しようと保護を求めてきたとき、淀藩ではそれを一方的に拒否して城門を開こうとすらしなかった（藩主・正邦はこの時江戸城にいた）。このため、戊辰戦争における幕府軍の京都戦線での敗北は決定的となったと言われている。後に正邦は高猷と並んで「裏切り者の犬」として幕府側からも新政府側からも侮蔑された。
正邦は新政府の命令で同年3月に謹慎処分となったが、閏4月には許されて京都警備を任されている。翌年の版籍奉還により藩知事となり、明治4年（1871年）の廃藩置県で免官。淀藩は廃藩となり、その所領は格近辺の府県に組み込まれることとなったのである。
[編集] 歴代藩主
[編集] 松平（久松）（まつだいら（ひさまつ））家
親藩。3万5000石。
- 松平定綱（さだつな）＜従五位下。越中守＞【元和9年閏8月20日藩主就任－寛永10年3月23日移封】
[編集] 永井（ながい）家
譜代。10万石→7万3600石。
- 永井尚政（なおまさ）＜従四位下。信濃守＞【寛永10年3月25日藩主就任－明暦4年2月28日隠居】〔老中〕
- 永井尚征（なおゆき）＜従五位下。右近大夫＞【明暦4年2月28日藩主就任－寛文9年2月25日移封】
[編集] 石川（いしかわ）家
譜代。6万石。
- 石川憲之（のりゆき）＜従五位下。主殿頭＞【寛文9年2月25日藩主就任－宝永3年2月25日隠居】
- 石川義孝（よしたか）＜従五位下。主殿頭＞【宝永3年2月25日藩主就任－宝永7年9月2日死去】
- 石川総慶（ふさよし）＜従五位下。主殿頭＞【宝永7年10月23日藩主就任－宝永8年2月15日移封】
[編集] 松平（戸田）（まつだいら（とだ））家
譜代。6万石。
[編集] 松平（大給）（まつだいら（おぎゅう））家
譜代。6万石。
- 松平乗邑（のりさと）＜従四位下。和泉守。侍従＞【享保2年11月1日藩主就任－享保8年5月1日移封】〔大坂城代。老中〕
[編集] 稲葉（いなば）家
譜代。10万2000石。
- 稲葉正知（まさとも）＜従四位下。丹後守＞【享保8年5月1日藩主就任－享保14年5月29日死去】
- 稲葉正任（まさとう）＜従五位下。美濃守＞【享保14年7月16日藩主就任－享保15年1月12日死去】
- 稲葉正恒（まさつね）＜不詳＞【享保15年1月14日藩主就任－享保15年3月24日死去】
- 稲葉正親（まさちか）＜従四位下。佐渡守＞【享保15年3月27日藩主就任－享保19年9月14日死去】〔大坂城代。奏者番〕
- 稲葉正益（まさよし）＜従四位下。丹後守＞【享保19年11月5日藩主就任－明和8年9月28日死去】〔奏者番。寺社奉行〕
- 稲葉正弘（まさひろ）＜従五位下。美濃守＞【明和8年11月20日藩主就任－安永2年9月12日死去】
- 稲葉正諶（まさのぶ）＜従四位下。丹後守＞【安永2年11月6日藩主就任－文化3年8月24日死去】〔奏者番。寺社奉行。大坂城代。京都所司代〕
- 稲葉正備（まさなり）＜従四位下。丹後守＞【文化3年10月12日藩主就任－文化12年3月8日死去】
- 稲葉正発（まさはる）＜従五位下。対馬守＞【文化12年4月25日藩主就任－文政6年6月21日死去】
- 稲葉正守（まさまり）＜従四位下。丹後守＞【文政6年6月25日藩主就任－天保13年7月20日】〔奏者番。寺社奉行〕
- 稲葉正誼（まさよし）＜従五位下。丹後守＞【天保13年7月20日藩主就任－嘉永元年10月9日死去】
- 稲葉正邦（まさくに）＜従四位下。民部大輔。侍従＞【嘉永元年11月24日藩主就任－明治4年7月20日藩知事免官】〔京都所司代。老中〕
