日本ボクシングコミッション
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財団法人日本ボクシングコミッション(にほんボクシングコミッション、英:Japan Boxing Commission、JBC)は、日本においてプロボクシング競技を統轄する機関。1952年4月21日に設立された。
世界ボクシング協会(WBA)・世界ボクシング評議会(WBC)・東洋太平洋ボクシング連盟(OPBF)に加盟している。
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[編集] 沿革
1952年、「1国1コミッション」という世界のプロボクシング興行における原則に従い、日本におけるプロボクシング統括機構として設立。1978年に財団法人化して現在に至る(文部科学省所管)。2007年現在のコミッショナーは林有厚(※東京ドームの社長が兼務するのが慣例になっている)。
[編集] 業務
上述の原則に則り、日本プロボクシング界唯一の統括機関として主に以下の業務を遂行している。
[編集] 試合認定
日本各地のジムが主催し、後楽園ホールなどで日々開催されているプロボクシングの試合を正式なものと認定し、勝敗の結果やそれに伴う選手のランキング移動などを認定する。JBCの権限は日本国内で開催される全てのプロボクシング試合に及び、WBAやWBCが認定する世界タイトルマッチも同様である(WBAやWBCが認定しているのにJBCが認定しないということは有り得ないが)。
すなわちJBCの認定なくしては日本で「プロボクシング」のあらゆる試合は成立しない、とJBCは主張している(そのためか、特に外国人選手のライセンスとビザの管理には厳しく、JBC招聘禁止選手[1]・JBCルール第8章39条に当てはまる選手[2]や観光ビザでの来日選手の試合出場を厳禁としており、事案が発覚した際には、そのプロモーターなどに対しライセンス停止などの厳罰を以って臨んでいる。過去に実例あり)。
[編集] 日本ランキングの認定
日本における唯一公式のランキングをミニマム級からミドル級までの13階級において認定している(スーパーミドル級以上は、日本では選手が少ないことを主な理由に認定していない)。日々開催される試合結果を元に月に1度更新される。タイトルの移動はもちろん、ランキング入りか否かや勝敗の結果に伴うランキングの上下の認定もJBCが行う。
なおボクシングマガジンなどが独自に認定している日本ランキング(同誌ランキングの場合「B級ランキング」と呼ばれる)は全て公式のものではない。
[編集] ジムの管理
JBCは日本プロボクシング界全体の統括機構であるため、プロボクシングジムの管轄も行う。つまり「JBCに加盟したジムでないとプロボクシングの試合は行えず、また所属する選手もプロボクサーとして認定されない」ということになる。もちろん選手の認定には、選手本人のライセンス取得などが必要であるが、このライセンス自体がJBCの認定ジムにしか発行されていない。なお、アマチュア専門のジムやボクササイズなどスポーツ向けジムの中にはJBCに加盟していないジムも多数存在する。
[編集] 選手の管理
JBCはジムと同様に選手の統括も行っており、上述のランキング認定に加えて「プロボクサー」の認定も行っている。プロボクサーになるためには上述の条件を満たしたジムに所属し、JBCが開催するプロテストに合格する必要がある(ただし合格すれば即日本ランキングに入れるわけではない)。また合格してプロボクサーとして活動している選手に対しても、JBCが定めた条件によって試合出場禁止、引退勧告、ライセンス剥奪などを行うことがある。
主な条件は、
- 出場禁止……KO・TKOによる敗戦から90日以内の選手(ただしTKOの場合は医師の診断によって短縮される)。
- 引退勧告……プロボクサーとしての試合が困難な特定の疾病に罹患したり、一定の年齢に達した場合(ただし、網膜剥離に罹患した辰吉丈一郎や制限年齢に達した西澤ヨシノリのように特例で認定される場合がある)
- ライセンス剥奪……長期間プロボクサーとしての活動(試合)を行わない場合、社会的に許されざる重い罪を犯した場合
など。
[編集] 課題
JBCおよび日本のプロボクシングが抱える課題としては主に下記のものがあり、JBCを含めた関係者によってしばしば協議されている。
[編集] 重量級の認定
上述の通り、JBCではスーパーミドル級以上のランキング認定を行っていないが(過去にはヘビー級も認定していたが、片岡昇が王座になったのみで現在はJBCの預かりとなっている)、実際に同級以上の選手が全く存在しないわけではない。
しかし彼らは現状、日本でプロボクサーとして活動することができないため、西島洋介のように海外で活動してWBA・WBC・OPBFのいずれかにランクインするか(西澤ヨシノリやクレイジー・キムのようにOPBFに戴冠した例はあるが、WBCとWBAのスーパーミドル級以上を制した日本人はいない)、プロ以外の手段でボクサーとして活動するかしかない。
現在の日本人の体格では、ヘビー級でランキングを作れるほどボクサーが集まるとは思えないが(そうした人物は他の格闘技で活躍する傾向にある)、スーパーミドル級やライトヘビー級に関してはしばしばランキングの認定を要望する声が上がっている。これについては、稀にMG・ピーターのように海外から重量級の有望選手を獲得できても、ジムに海外でのコネクションが無いためランカー戦や世界戦の交渉をまとめられず、ようやく実現しても既に選手としてのピークを過ぎてしまっている、という弊害もある。ただしこうした弊害は弱小ジムでは中軽量級においても見られる現象で、帝拳プロモーションの助力を仰ぐ形でようやく実現する、といったマッチメイクも少なくない。帝拳ボクシングジム#影響を参照。
[編集] IBF・WBOなどへの加盟
JBCでは世界王座認定団体のうち、WBA・WBCに加盟しているが(OPBFはWBCの下部組織)、世界にはそれら以外にもプロボクシングの世界王座を認定する団体が存在する。
そのうち最も著名なものは国際ボクシング連盟(IBF)と世界ボクシング機構(WBO)であり、昨今の世界的な趨勢では、両団体は有力な王者を輩出していることもあってWBA、WBCにも劣らぬ権威を有しているといわれている(WBA・WBCが自身の問題で権威を下げていることも一因である)。
そのため、世界王座を獲得するチャンスを増やすためにも、JBCは両団体に加盟するべきとの声がしばしば上がっている。現在のJBCは「世界王座の乱立は好ましくない」としてそうした意見を退けているが、WBCも発足当初は加盟を拒否していた団体であり、今後の移行によってはさらに強く声が上がる可能性もある。さらにWBA傘下でありながら未加盟のパンアジアボクシング協会(PABA)についても同様の声が上がっている。
[編集] 女子の解禁
2007年まではJBCでは女子の試合を認めておらず、国内ではキックボクシングジムを母体に1999年に設立された日本女子ボクシング協会が統括している。昨今の女子格闘技ブームの流れに影響され、女子ボクシングも活発化しているもののJBC認定でないため正規の「プロボクシング」とは見なされておらず、女子ボクサーはキックボクシングやアマチュアなどのジムに所属するか、あるいは小関桃のように海外で活動するか、菊川未紀のようにJBC公認ジムに所属していても試合では架空のジム名を名乗っている。
ところが近年はWBCおよびWBAが女子の部門を設立し(日本人も菊地奈々子がタイトルを獲得している)、世界各国のコミッションも認める方向に傾いている(韓国などでは既に認定している)。そのため国内でも女子を認めるべきとの声が多くなった。2005年12月、東日本ボクシング協会がJBCに女子の解禁を要請。
2007年11月20日のJBCと日本プロボクシング協会(JPBA)の合同検討委員会おいて女子にライセンスを発効することを認め、2008年2月に第1回プロテストを実施することを発表した。受験年齢は32歳までとしているが、経過措置として1年間は32歳を超えていても実力を認められた選手の受験を認めることになった。また、胸部や骨盤を守る防具の着用、妊娠検査受診や生理問診票提出など、女子選手の安全を考慮する形になった。
また、女子のみのルールとして1ラウンドを2分間とし、女子のみの階級としてアトム級(46.2kg以下)とミニフライ級(47.6kg以下)を設置する。日本タイトルマッチは8回戦で実施することも決められた。
ただし、女子選手でもJPBAに加盟しているジムに所属せねばならず、IFBA世界スーパーライト級チャンピオンのライカなどの女子選手はJPBA非加盟のジムに所属しているケースがあり、JPBA加盟ジムに移籍するか所属ジムがJPBAに新規加盟しない限り受験することができない。ライカの所属する山木ジムは、女子選手育成の実績が高いことから加盟料免除でJPBAに加盟することとなった(ただし、1000万円という加盟料の免除は、女子ボクシングの協会分裂を避け、女子ボクシング限定ということで例外として認められた側面がある)。
[編集] 他競技流出防止策
K-1・PRIDEを始めとする新興格闘技の人気上昇に伴い、近年はボクシング引退後に他の格闘技へ転向する選手も多くなっている(中には天田ヒロミのようにアマチュアのボクサーがプロボクシングを経由せずK-1などに参戦するケースも見られる)。しかし、これらの選手の多くはボクサー時代に心身ともにダメージを受けており、その上で格闘技の激しい試合をすることは健康上からも非常に危険と判断されている。
さらに現状では転向先での成績が振るわないため、このままでは伝統のあるボクシング界の権威が損なわれると言う懸念の声も多くなった。これを受けて西日本ボクシング協会は2005年12月1日より、同協会に所属した元ボクサーが他のプロ格闘技に出場した場合、ジム運営やトレーナー、マネジャーなどでのボクシング界復帰を認めない(永久追放)とする流出防止策を施行。日本協会傘下の他協会にも同調するように働き掛けているが関係者の間で賛否両論があり、他協会やJBCは慎重な姿勢をいまだ崩していない。
一方JBCはプロ格闘技選手の掛け持ちでのライセンスを認めていないが、東日本ボクシング協会の新会長に就任した大橋秀行は、これらの選手に対して競技活動を継続しながらのプロテスト受験を認めるプランを発表した。なお、海外では掛け持ちを認めているコミッションもあり、K-1ファイターとして有名なマイティ・モーも2006年からボクサーとしても活動している。
[編集] 経済支援
現在、日本のプロボクサーを取り巻く経済状況は必ずしも恵まれたものではない。例えば日本チャンピオンのファイトマネーは、もちろん選手個人の人気にもよるが一試合辺り100万円程度である。そのうち約3~4割を所属ジムにマネジメント料として収めるため、選手本人の取り分は一試合につき60~70万円である。
周知のようにボクシングは心身を非常に消耗する競技であり、特に選手のレベルが上がるチャンピオンクラスでは試合数を年間2~3試合程度に抑えるのが一般的である。つまり、日本チャンピオンといえどもファイトマネーのみで生計を成り立たせるのは極めて難しく、ほとんどのチャンピオンや選手は他に副業を持っている。これは現在の日本でボクシングが多くの客を呼べない=金にならないからであるが、それゆえ星野敬太郎以降セレス小林や長谷川穂積など、現役の世界チャンピオンであっても副業を持っている例もある(彼らは必ずしも生活維持のためだけではないが)。
しかし当然ながら副業による心身の消耗も考えられ、愛好家や関係者らからボクシング人気の復活とともに選手の経済的な負担を軽減する要望が上っている。この事情は選手が所属するジムも同様で、2007年6月には井岡弘樹や山口圭司、高山勝成らを輩出した大阪の名門・グリーンツダジムが経営危機に陥っていることが明らかになった。
[編集] 再就職支援
選手のこうした経済事情は引退後も同じで、ジム経営やトレーナーなどプロボクシングに関わる業務は人員が限られるため、他の実業を営むケースが多くなる。しかし一般にプロボクサーは10代でデビューする者が多く、大学卒業資格や技術資格を取得している者も少ないため、一般企業への再就職は困難な場合が少なくない。
そうした事情を鑑み、JBCでは2007年に安河内剛事務局長が中心になり警視庁の警察官採用説明会を実施した。これはプロボクサーとして培った充実した体格を生かせる場として考えられたもので、警視庁サイドの反応も良好なものと言われている。JBCでは今後、一般企業にも方針を拡大して引退後の再就職をバックアップするとしている。
[編集] 暴力団排除
プロボクシング界と暴力団とのコネクションは以前から根強くささやかれている。渡辺二郎のように引退後に裏稼業に身を投じる者も少なからずいるほか、主に世界戦などでリングサイドにそれとおぼしき人物が陣取っている光景は、もはや風物詩ともいえるほど見慣れたものでもある。そこからテレビ中継などで一般視聴者に与えるイメージは好ましくないものであるとして、2007年4月にJBCと日本プロボクシング協会は警視庁と合同で、試合会場から暴力団を排除する声明を発表した。同年5月3日に有明コロシアムで開催されたトリプル世界戦では一定の効果があったとして、今後も対応を継続する方針である。
[編集] 亀田家問題
2006年9月27日に行われた、亀田大毅の試合終了後において、父親でありトレーナーである亀田史郎が会場の後楽園ホールにおいて息子に対しての観客のヤジに怒り暴力騒動を起こし後楽園ホールの所轄である警視庁富坂警察署が関係者に事情聴取を行うという異例の事態にまで発展した。これに対し史郎トレーナーらにJBCは厳重注意処分を行った。
次に、2007年3月24日に行われた、亀田興毅対エベラルド・モラレス戦においてレフェリーを務めた浦谷信彰に対し史郎トレーナーが暴言を吐き、浦谷がライセンス停止を含む厳正な処分を求める要望書を提出、これについて史郎トレーナーが謝罪したためJBCは厳重注意処分となった。
今度は、2007年10月11日に行われた、亀田大毅対内藤大助の試合に対し、大毅が内藤を試合中に繰り返し悪質なサミング・投げ飛ばす(レスリング行為)などといった反則行為を行い、それに加えセコンドの興毅が「目を狙え」といった発言をテレビカメラに撮られたり、史郎トレーナーが再度恫喝騒動を起こしたりなど、問題となった。
このように、亀田三兄弟に対する問題に対して、幾度も問題を起こしていながらもJBCの対応として軽い処分になっていることに対しての批判がある。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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