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川崎縦貫高速鉄道 - Wikipedia

川崎縦貫高速鉄道

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

川崎縦貫高速鉄道(かわさきじゅうかんこうそくてつどう)は、神奈川県川崎市新百合ヶ丘駅川崎駅間に建設を計画している鉄道路線川崎市交通局を事業主体とすることが考えられていることから川崎市営地下鉄とも呼ばれる。

目次

[編集] 経緯

川崎市内に地下鉄を整備する構想は1960年代に持ち上がり、運輸省の諮問機関である都市交通審議会は1966年7月、横浜周辺域における都市高速鉄道の整備に関する基本計画を策定した(9号答申)。この答申では川崎市を縦断する地下鉄として大師河原~末吉橋~元住吉~長沢~百合ヶ丘間の整備を盛り込んでおり、これが川崎縦貫高速鉄道の原型となっている。

しかし、都市交通審議会9号答申などの改定版として1985年7月に策定された運輸政策審議会答申第7号では、鉄道貨物輸送の衰退で貨物線の輸送力に余力が発生していた当時の状況を踏まえ、貨物線の旅客線化によって建設費の低減を図ることを主要な柱の一つとして位置づけた。これにより、川崎地区においても貨物線の武蔵野南線(鶴見~府中本町間)を活用して府中本町~新川崎~川崎間に旅客線を整備し、あわせて新百合ヶ丘駅から武蔵野南線への接続線を整備するものとした。このため都市交通審議会9号答申で盛り込まれていた大師河原~百合ヶ丘間の地下鉄は削除されている。

一方、1987年4月の国鉄分割民営化で発足した東日本旅客鉄道(JR東日本)は、山手貨物線の旅客線化に伴う受け皿として武蔵野南線を重要視していたこと、南武線のすぐ近くを通っていて新規需要の誘発が難しいことなどから武蔵野南線の旅客線化には消極的な態度を取った。このため1980年代末期には川崎縦貫高速鉄道として地下鉄建設構想が再び浮上することになるが、整備区間は新百合ヶ丘~川崎間に短縮され、川崎以東は連続立体交差事業により地下化される京急大師線に乗り入れることが考えられた。事業主体は当初第三セクターとされていたが、後に川崎市自身が建設、経営する市営地下鉄として整備する方針に変更された。

運輸政策審議会7号答申の改定版となる18号答申が2000年1月に策定され、新百合ヶ丘~宮前平~元住吉~川崎間が「目標年次(2015年度)までに開業することが適当である路線」に指定されると着工に向けての動きが本格化する。川崎市は元住吉を境に新百合ヶ丘側を初期整備区間、川崎側を2期整備区間として段階的に整備することとし、2001年5月に新百合ヶ丘~元住吉間の第1種鉄道事業許可を受けた。

同年10月の川崎市長選挙で「地下鉄計画は原則推進」と表明して、建設見直しを主張する対立候補を破って当選した阿部孝夫は、学識者と市民で構成された「川崎縦貫高速鉄道線研究会」を設置して事業費の削減を検討し、研究会は小田急多摩線との相互直通化や車両基地の建設中止などを提言した。2003年5月には、全市域の市民1万人を対象にアンケートを実施したが、単純に賛否を問うものではなく「大規模公共事業を3年間凍結しなければならないほど財政状況が厳しい」ことを前提とした複数の質問項目からなる質問票であったため、その結果の解釈に議論の余地を残した。その後、川崎市は着工を5年程度延期することを表明した。

2005年になると、川崎縦貫高速鉄道の採算性を高めるルート変更が考えられるようになり、同年3月に初期整備区間の終点を元住吉駅から武蔵小杉駅に変更し、川崎フロンターレの本拠地である等々力陸上競技場をはじめ川崎市の大型公共施設が集中する等々力緑地を経由地に加える方針が決定され、新百合ヶ丘駅~武蔵小杉駅ルート(1期線)の新たな計画概要が発表された。鉄道建設後の開発による需要喚起を特に見込まず、少なめに予測した輸送需要の試算であるが、この計画によると22年で利用料金により建設費用を完済できるとされている。現在はこの計画をベースとして事業許可の再取得に向けて準備が進められている。

川崎市交通局PASMOに加盟しているため、開業した際にはPASMOが導入されるものと見られる。

また、この路線の愛称も公募される予定である。

[編集] 年表

  • 1966年7月15日 都市交通審議会答申第9号にて大師河原~百合ヶ丘間の地下鉄整備が盛り込まれる
  • 1985年7月11日 運輸政策審議会答申第7号にて武蔵野南線の旅客線化が盛り込まれる(大師河原~百合ヶ丘間の地下鉄整備は削除)
  • 1996年10月1日 川崎市議会議長名で総理大臣等へ意見書提出
  • 2000年1月27日 運輸政策審議会答申第18号にて「目標年次(2015年)までに開業することが適当である路線」(A1)に位置づけられる
  • 2000年12月 平成13年度政府予算案に新規採択路線として記載(後に補助対象として採択)
  • 2001年4月20日 初期整備区間(新百合ヶ丘~宮前平~元住吉)の第1種鉄道事業許可を申請
  • 2001年5月11日 初期整備区間の第1種鉄道事業許可を取得
  • 2003年5月1日 川崎市が事業計画の見直し案を公表(小田急多摩線乗り入れ、唐木田車両基地の利用による水沢車両基地の廃止など)
  • 2003年6月16日 川崎市議会にて「着工時期を計画より5年間程度延期する」との市長報告
  • 2005年1月 川崎市平成16年度再評価実施事業検討委員会報告にて計画の見直しを指摘
  • 2005年2月2日 市民から早期着工を求めた要望書と、署名4万6509名分が市長あてに提出される
  • 2005年2月17日 阿部孝夫市長が事業再評価対応方針案を市議会に提出
  • 2005年3月14日 対応方針案採択(武蔵小杉駅に接続する計画への方針変更)
  • 2005年8月29日 国土交通省鉄道局「平成18年度予算に向けた鉄道関係公共事業の事業評価結果及び概要について」にて、「中止」との評価結果を記載
  • 2005年9月9日 新百合ヶ丘~元住吉間の第1種鉄道事業の廃止を届出(当初の廃止予定日は2006年9月30日)
  • 2005年11月4日 廃止予定日の繰り上げを届出
  • 2006年4月1日 新百合ヶ丘~元住吉間の第1種鉄道事業廃止

[編集] 計画の変遷

ここでは初期整備区間について、2001年の第1種鉄道事業許可時点での計画を「2001年計画」、2003年に研究会が提出した見直し案を「2003年見直し案」、2005年の川崎市事業再評価対応方針で採択された案を「2005年見直し案」として解説する。

[編集] 2001年計画

将来の2期整備区間の建設とそれに伴う京急大師線との相互直通運転を考慮して、基本的な規格は京急大師線にあわせたものとした。各駅停車列車のほか主要駅のみ停車する急行列車も運転するため、野川駅に待避施設を設けることとしていた。また、車両基地は水沢地区に設置し、途中の蔵敷駅と車両基地を結ぶ車庫線を設ける計画である。

[編集] 路線データ

  • 区間:新百合ヶ丘~元住吉
  • 路線距離:15.4km
  • 駅数:10駅(起終点駅含む)
  • 軌間:1435mm
  • 複線区間:全線複線
  • 電化区間:全線(直流1500V)
  • 集電方式:架空線方式

[編集] 駅一覧

[編集] 2003年見直し案

2001年計画のルートを踏襲しつつ、軌間を1067mmに変更して小田急多摩線との相互直通運転を行うこととした。これにより新百合ヶ丘駅は小田急の既設駅を使用することとして建設費の低減を狙っている。待避施設の設置は野川駅から宮前平駅に変更することとした。

なお、水沢地区に設置する計画だった車両基地の建設は中止し、2期整備区間の開業までは乗り入れ先となる小田急多摩線の車両基地(喜多見検車区唐木田出張所)を活用することとした。

将来的に京浜急行大師線との相互直通運転を前提としている。

[編集] 路線データ

  • 区間:新百合ヶ丘~元住吉
  • 路線距離:15.4km
  • 駅数:10駅(起終点駅含む)
  • 軌間:1067mm
  • 複線区間:全線複線
  • 電化区間:全線(直流1500V)
  • 集電方式:架空線方式

[編集] 駅一覧

  • 新百合ヶ丘駅 - 長沢駅 - 医大前駅 - 蔵敷駅 - 犬蔵駅 - 宮前平駅 - 野川駅 - 久末駅 - 井田駅 - 元住吉駅

[編集] 2005年見直し案

規格は2003年見直し案を踏襲するが、より採算性の高い路線とするため久末以東のルートを変更して整備区間を新百合ヶ丘~武蔵小杉間とした。川崎フロンターレの本拠地である等々力陸上競技場、市民ミュージアムとどろきアリーナなど川崎市の大型公共施設が集中する等々力緑地駅を新たに経由地に加え、移転・新設される市内で最大級となる図書館や日本最階層マンション、大型商業施設など大規模再開発が進む武蔵小杉駅(再開発の詳細は武蔵小杉参照)へと繋ぎ、南武線、東急東横線東急田園都市線東急目黒線に接続するほか、横須賀線湘南新宿ライン含む)の新駅(2009年度開業予定)とも接続する。この案を基本に、2008年度補助採択、2010年度工事着工というスケジュールで国との協議が進められていたが、国の2008年度予算概算要求で新規の事業採択要求路線に取り上げられず、2009年度の事業許可は難しい情勢となった。 今後は、都市鉄道等利便増進法を活用し整備主体と営業主体を分離する上下分離方式とすることを検討することも含めて、早期事業化に向け引き続き国との協議に積極的に取り組む、とされている。

[編集] 路線データ

  • 区間:新百合ヶ丘~武蔵小杉
  • 路線距離:16.7km
  • 駅数:11駅(起終点駅含む)
  • 軌間:1067mm
  • 複線区間:全線複線
  • 電化区間:全線(直流1500V)
  • 集電方式:架空線方式

[編集] 駅一覧

[編集] 2期整備区間

当初は元住吉~川崎間を整備区間としていたが、2005年見直し案において初期整備区間の終点駅が変更(元住吉→武蔵小杉)されたことから、2期整備区間も必然的に武蔵小杉~川崎間に変更されている。なお2006年7月29日の朝日新聞川崎版によれば、交通に不便な南加瀬地区を通る「加瀬・小倉ルート」、再開発中の新川崎地区を通る「新川崎ルート」、南加瀬付近と幸区役所付近を通る「古市場・小向ルート」の3つが検討されている。現在の図面は最後のものに近い。

なお、2003年見直し案以降は軌間を1067mmとしているため、1435mm軌間を採用している京急大師線との相互直通運転については軌間可変電車の導入や改軌が検討課題として浮上している。

2期整備区間には1期整備線とは異なって並行路線もあり、ルート選定等に関する議論の推移が注目されている。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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