博多ラーメン
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博多ラーメン(はかたラーメン)とは、主に福岡県福岡市で作られる、豚骨スープとストレートの細麺をベースにした日本のラーメン。主に福岡地方のラーメン専門店や中華料理店各店で提供される。また福岡市の博多・天神・長浜地区などの屋台でも提供される。
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[編集] 概要
乳白色の豚骨白湯スープが特徴である。豚骨を強火で沸騰させるため、骨のゼラチンなどが溶け出し白濁したスープになる。豚骨系のラーメンは、ラーメン店の個性が文字通り最も滲み出るものであり、同じような味・食感のラーメンは2つとは無い事も特色である[要出典]。麺の硬さを注文する点や、後述の替え玉も博多ラーメンの特徴になっている。
福岡県久留米市で生まれたラーメンが博多に伝わり「博多ラーメン」になったという説が知られているが、豚骨スープのルーツは長崎のちゃんぽんであり、ラーメン自体のルーツは横浜のラーメンだったとする説もある[要出典]。北九州市小倉南区には「とんこつラーメンの元祖」と呼ばれる店舗が存在している(当初は久留米市で経営していた)。加えて、福岡のラーメンの特徴である細麺や替玉は当地である福岡の中で生まれたものであるため、どこまで遡ってルーツとするかは個々の判断に委ねられるだろう。
JR九州の小倉駅や博多駅構内のホームでは、立ち食いで提供している。
近年の博多ラーメンおよび屋台のブームにより、福岡市とその近郊を中心に博多ラーメンを出す店舗が急拡大し、現在も人気はさほど衰えず定着している。「一蘭」や「博多一風堂」など東京に出店したり全国展開をする店や、全国のラーメンのフードテーマパークに出店する機会も増えており、博多ラーメンのその知名度は全国的にも上がっている。逆に博多においても、ラーメンスタジアムに出店していた店を中心に全国の有名ラーメン店の出店が相次ぎ、それらと融合する形でしょうゆ豚骨味や味噌豚骨味のラーメンが誕生するなど、博多ラーメンもそのバリエーションを広げつつある。
[編集] 長浜ラーメン
博多長浜ラーメンまたは長浜ラーメンと呼ぶ場合もあるが、観光などでよく連れて行かれる長浜の屋台街は、本来「博多」の範囲ではない(長浜地区は、博多(区)の西端である中洲より西にある)。
「博多ラーメン」と「長浜ラーメン」は本来は別物であるとする主張も見られる。これは、「長浜地区の近傍にある『長浜市場』の肉体労働者がたくさん食べることが前提となる長浜ラーメンは非常に濃い味が特徴で、元は替玉をした二杯目が美味しく食べられる程度、つまり一杯目は濃すぎるほどである。それに対し博多ラーメンは商人の町である博多に合わせ、一杯目が美味しいラーメンで、替玉がない店もあった」との説に拠る。もっとも、博多ラーメン・長浜ラーメンともに、近年のブームにより福岡市とその近郊を中心に急拡大し、2000年代の現在は既にその境目はないに等しい。
「長浜ラーメン」の代名詞とも言える、長浜に店舗を構える「元祖長浜屋」では、ラーメンの他には飲物程度しかメニューがなく、店に入ると自動的にラーメンを注文したことになる。空いている席を探して座った頃には出来上がったラーメンがテーブルに置かれるということもあるため、麺の硬さなどの注文は店に入ったときに言わなければならなかった。注文は「麺の硬さ」と「油の量」の指定が主となる。麺の硬さは「やわ」「ふつう」「かた」「なま」の4種類で順に硬くなる。「なま」とは生ではなく、湯通しした程度の「かた」よりも硬いものを指す。油の量は「なし」「ふつう」「べた」の3種類で順に油が多くなる。麺の硬さも油の量も「ふつう」の場合は特に指定する必要はない。また、両方を指定する場合は油の量を先に言うのが通例となっている(例:「べたやわ」「なしかた」)。マルタイより「元祖長浜屋協力 豚骨ラーメン」が発売されている。
[編集] 特徴
麺は細めのストレート麺。麺が細いため伸びやすいので少なめであり、地元では特に硬めの茹でが好まれる。麺が細い理由は、麺とスープがよく絡むようにするためと、せっかちな「博多っ子」のために短時間で麺を茹でられるようにするためである(博多は元々商人の町であったため、博多っ子は商売人が多い)。
注文時、麺の固さを指定するのも特徴で、呼び方として「バリカタ」、「カタ」、「ヤワ」、「バリヤワ」などがある。特殊な呼び方として「ハリガネ」、「粉落とし」、「生」等もあるが、通用しない店も多い(通用するのは大抵「ハリガネ」までで、それ以上の注文が出来る店は少ない)ので注意されたい。なお「バリ○○」は福岡市内の博多・天神地区周辺では使われているが、それ以外ではほとんど使われておらず、「超○○」という表現を使う場合がある(バリ=超は博多特有の誇張表現[要出典]で、福岡市以外ではあまり使われていないため)。また「バリカタ」は、うまさの追求以外に「男を見せる」的な意味合いもあるため、博多っ子は好んで注文する傾向がある。なお細麺以外の店では硬さを注文できない店が多い。また、加水率が非常に低く、いわゆる「コシ」はないので、勘違いしないように注意が必要。
具は非常にシンプルで、ネギだけ、あるいはネギとチャーシューだけと言った店も珍しくない。ネギとチャーシューの他によく見られる具材は、キクラゲ、もやし、紅生姜、メンマなどである。ネギは、細い博多万能ねぎを使用する。
店のテーブルには紅生姜・白ごま・辛子高菜などがおいてあり、客に自由に盛らせる事が多い。これらのトッピングは豚骨スープのクセを取り除く作用があるが、同時に豚骨の味を損なうとも言われており、「味で勝負する」と主張する店の中にはこのサービスを行わない所も多い。辛子高菜は替え玉をしたときなど、味の調整で入れる人が多い。辛子高菜は最近は多く見受けられるが、一昔前はほとんど見ることはなかった。
博多ラーメンは白濁した豚骨スープであることから、脂っこい濃い味と思われがちだが、豚骨スープのとろみはゼラチン質でありそれほど脂っこくはない。店ではあっさり系の場合が多い。
なお、豚骨の調理方法の違いなどから、店舗によっては豚骨特有の強烈な匂い(臭み)が店内に漂っている場合がある。この匂いについては、この匂いこそが豚骨ラーメンの醍醐味であると言う者もいれば、逆に匂いに耐えきれずに注文以前の段階で店から出てしまう者もいる(極端な場合、匂いで嘔吐してしまう者さえいる)など、人によって好き嫌いの差がかなり激しい。また、この匂いを最初に経験したが為に、豚骨ラーメン全体に対して抵抗感を持ってしまう者も、特に女性を中心に少なくない。
大盛りの注文は受け付けていない店もあるが(最初から大量の麺を入れないのは、麺が細いために麺がすぐに伸びてしまうため)、替え玉というシステムが多くの店で行われており、安い値段で麺のみをおかわりすることができる。替え玉の玉は、麺のことを指し、この地では「うどん玉」に「ちゃんぽん玉」のように麺を「玉」と表現をすることが多い。替え玉を追加する際、麺の湯切りを使って「替え玉のキャッチボール」をするパフォーマンスをする店もある。替え玉と同じように、チャーシューのおかわりができる替え肉というメニューを扱う店もある。最後に麺ではなくご飯を入れて雑炊風にして食べる「替え飯」を行う店もある(一度「替え飯」をすると、以後の「替え玉」は出来なくなる)。なお、九州や福岡にあるラーメン店、九州外でも九州ラーメンや博多ラーメンを銘打っている店舗だからといって、全ての店に必ず替え玉のシステムがある訳ではないので、メニュー表での確認は必要である。
繁華街の有名店や長浜地区のラーメン店では深夜営業・24時間営業をしている店が多く、宴会の二次会・三次会でラーメン店が選ばれる事がよくある。