人工芝
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人工芝(じんこうしば)は芝に似た形状を化合物で造った物。スポーツ用のスタジアムなどで使用する他、個人宅用に小型にされたものが製造・販売されている。
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[編集] 人工芝の誕生
1965年、アメリカ合衆国に世界初の屋根付き野球場「アストロドーム」が誕生した。高温多湿という気候や夏場の蚊の大量発生により誕生したこの施設は当初、天然芝のフィールドを採用し、芝の育成のために透光性の屋根を採用したが、太陽光が選手のプレーに支障をきたすため後にシートをかぶせるようになった。ところが、芝が枯れてしまったため、人工芝の開発に踏み切った。
繊維を使用して作られた人工芝は「アストロターフ」と名づけられ、これにより緑のフィールドで一年中、プレーが出来ることになった。
日本では1976年、後楽園球場(東京都)に採用されると、全国のプロ野球使用球場を中心に続々と敷設されるようになった。1982年には明治神宮野球場で透水性(雨水などを人工芝の下に貯めておく方式)や砂入りの人工芝も開発されるようになるが、いずれもその下地はコンクリート、アスファルト、砕石であることが多く、選手の足腰に健康負担が見受けられるようになった。そのため近年、アメリカでは天然芝への回帰が見られるようになり、アストロドームのように老朽化と天然芝屋外型球場の新設による用途廃止も起こった。
[編集] ハイテク人工芝の登場
20世紀末、天然芝に近い性質を持つ「ハイテク人工芝」の開発がアメリカで進められた。従来の人工芝がコンクリートに直接貼り付けるものであったのに対し、新しく開発された芝はゴムチップなどの多層構造を施すとともに芝生を長めのサイズ(ロングパイル人工芝)にするなどの工夫が盛り込まれている。
「フィールドターフ」と名づけられたこのシステムは、2000年にアメリカのトロピカーナ・フィールド(フロリダ州セントピーターズバーグ)で採用され、日本でも同年6月にJリーグ・川崎フロンターレの練習場・麻生グラウンドで初めて導入された。そして2002年にはその実績をもとに、試合会場(プロ野球の球場)としては第1号として東京ドームに敷され、翌年には横浜スタジアムと千葉マリンスタジアムにも導入され、その後続々と採用されるようになった。球場によっては、天然芝球場のように内野フィールド部分を土色に変えて雰囲気をかもし出しているものもあるが、ナゴヤドームではそのスタイルをやめて元に戻している。
サッカー場では天然芝の使用が原則とされているが、練習場などでの導入は各地で進みつつある。そのため近年では試合会場でも採用の動きがあり、特に冬季は積雪で天然芝の育ちが不充分とされる北欧などの一部ではこのロングパイル人工芝を使ったスタジアムが設置された事例がある。2003年に開かれたU-17(17歳以下)世界ユース選手権大会フィンランド大会、2006年のAFCアジアユース(U-17)選手権大会のシンガポール・ジャランベサル・スタジアムでは実際にそれを使用した会場で試合が開かれた。特にクリヤマ㈱のモンドターフは、FIFA認証の人工芝となっており、サッカー界では、世界的に認められた人工芝となっているようだ。
またアメリカ合衆国でもメジャーリーグサッカーやその実質下部団体であるユナイテッドサッカーリーグの一部試合会場でそれを使うスタジアムもある他、将来は水の確保が難しいため芝の育成が困難とされるアフリカ各地での普及も提唱されている。
[編集] ハイテク人工芝グラウンドを採用している主な競技場
カッコ内は導入年
[編集] アメリカ合衆国
[編集] カナダ
[編集] 日本
- プロ野球試合会場の例
- 東京ドーム(2002年):読売ジャイアンツの本拠地
- 横浜スタジアム(2003年):横浜ベイスターズの本拠地
- 千葉マリンスタジアム(2003年):千葉ロッテマリーンズの本拠地
- 京セラドーム大阪:オリックス・バファローズの本拠地
- フルキャストスタジアム宮城(2005年):東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地
- ナゴヤドーム(2006年):中日ドラゴンズの本拠地
- 明治神宮野球場(2008年度シーズンより):東京ヤクルトスワローズの本拠地
- 長崎ビッグNスタジアム
[編集] 朝鮮民主主義人民共和国
[編集] 日本のサッカー場
- 日本サッカー協会ではこれまでサッカーの公式大会を開催するに当たっては天然芝や土のグラウンドのみしか使用許可が出なかった。しかし新型人工芝が各クラブ練習場で採用されるようになると、天然芝グラウンドを補完する意味で地域レベルやユース年代の大会なら人工芝を使用できるようになった。しかし全国規模カテゴリーであるJリーグやJFLでは現状許可されていない。
[編集] 外部リンク
- 積水樹脂 人工芝(積水樹脂株式会社)
- 家庭用ロールタイプ人工芝、ジョイント式人工芝(ワタナベ工業株式会社)