ラウダ航空004便墜落事故
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概要 | |
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日付 | 1991年5月26日 |
原因 | エンジン故障で逆噴射 |
場所 | タイ・ウエィン・バンノンの熱帯雨林 |
死者 | 223 |
負傷者 | 0 |
航空機 | |
機体 | ボーイング767-3Z9 |
航空会社 | ラウダ航空 |
機体記号 | OE-LAV |
乗客数 | 213 |
乗員数 | 10 |
生存者 | 0 |
ラウダ航空004便墜落事故とは、オーストリアの元F1レーサーであるニキ・ラウダが設立したラウダ航空のボーイング767-3Z9が墜落した航空事故である。
目次 |
[編集] 事故概要
[編集] 004便概要
1991年5月26日、ラウダ航空004便(以下004便)はイギリス領香港の啓徳空港発タイ・バンコクのドンムアン国際空港経由オーストリア・ウィーンのウィーン国際空港行きであった。004便には乗客213名、乗員10名の計223名が搭乗していた。機体はボーイング767-300ER型の「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」(機体記号OE-LAV)であった。004便は現地時間の23時10分頃にドンムアン国際空港を離陸した。
[編集] 墜落と被害
ところが離陸25分後に004便は突如急激に失速し、操縦不能になりバンコクの北西約170Km地点にあるウエィン・バンノンの熱帯雨林に高度10000ft以下で空中分解しながら墜落した。乗客乗員223人は全員死亡した。この事故はラウダ航空唯一の重大事故であり、ボーイング767が初就航以来10年目で初めてとなった重大事故でもあった。また、タイ王国でも現在(2008年2月)、史上最悪の航空事故である。
[編集] 事故原因
[編集] エンジンの逆噴射
この事故を聞きつけたニキ・ラウダは即座にタイへ駆けつけ、事故現場を訪問して原因を調べたところ、第一エンジンが逆噴射したという恐ろしい原因が明らかになった。逆噴射したエンジンはプラット・アンド・ホイットニー製で、ボーイング767の他、ボーイング737・ボーイング757に共通するものであった。以下、空中分解までの記録である。
- 23時22分頃、エンジンシステムが故障して突如逆噴射装置が作動する可能性があるという警告が発せられた。
- それを聞いた機長・副操縦士は計器誤作動を疑い767のチェックリストを調べたところ、この場合の対処は不要と記されていたため乗員は計器誤作動を信じて措置をとらずに飛行した。
- 23時31分頃、警告通り第一エンジンが逆噴射し操縦不能になった。機体は急激な失速により空中分解して墜落した。
[編集] なぜ逆噴射したのか
逆噴射した理由は逆推力装置の隔離弁が故障していたためであった。但し、公式の事故調査報告書ではいくつかの原因を想定したものの原因不明とされている。その報告書では「予期せぬ事態であり、不可抗力であった」とされている。
[編集] 事故後の対策
この事故後ボーイング社はボーイング737・757・767の逆噴射装置を改修し、油圧装置も改良した。そのため、今空を飛んでいるボーイング737・757・767ではこのような事故は起こらないようになっている。
[編集] その他
- 逆噴射によって墜落したものには、いわゆる日航羽田沖墜落事故があるが、こちらは機長が統合失調症により副操縦士や航空機関士の制止にも関わらず、故意に逆噴射装置を作動させたことが原因で、この事故のように不可抗力ではない事故である。
- ラウダ航空はその後経営難になり、経営権を2000年11月にオーストリアのフラッグ・キャリアであるオーストリア航空に譲渡している。しかし、ニキ・ラウダは2003年に国際線格安航空会社であるニキ航空を設立している。エアバスA319・エアバスA320・エアバスA321を保有している。