逆噴射装置
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逆噴射装置(ぎゃくふんしゃそうち)とは、ジェットエンジンが発生する推力の向きを逆にすることによって飛行機を減速させるための装置である。スラストリバーサとも呼ぶ。
着陸後の滑走時に車輪ブレーキやスポイラーと同時に使われ、滑走距離を短縮するために用いられる。逆噴射で機体を減速させるに十分な推進力を得るためには、エンジンを吹かさなければならないのでとても大きな騒音が発生する。例外的な使い方だが、駐機場での後退にも用いられることがある。
プロペラ機にもジェット機と同じ目的の装置があるが、仕組みが異なる。 プロペラ機では、船の可変ピッチスクリューと同じようにプロペラの角度を変えて、それまで後方に押しやっていた空気を前方に押し出すことで制動を行っている。
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[編集] 構造
一般的なジェット機では、搭載しているジェットエンジンの構造により2種類の方法がある。
[編集] ターボジェットエンジン・低バイパス比のターボファンエンジン
ターボジェットエンジンや低バイパス比のターボファンエンジンでは、エンジン後方のノズルに蓋をするような装置があり、これで機体後方に噴射していた排気ガス全体を機体斜め前方に反射して制動する。
[編集] 高バイパス比のターボファンエンジン
一方、近年の大型旅客機などに採用されている高バイパス比のターボファンエンジンでは、コアエンジンを覆っているバイパス空気流のみの向きを変え、コアエンジンを通過してきた燃焼ガスについてはそのまま機体後方に噴射し続ける。つまり「逆噴射」とはいうものの、一部についてはそのまま前方への推進力として残っている。例としてバイパス比4(バイパス空気流80%:燃焼ガス20%)のエンジンでは、80%が機体前方へと噴射され20%が前方への推力として残り、差し引かれた60%の推進力で制動を行っているということになる。
[編集] 関連項目
- 日本航空350便墜落事故 - 着陸直前に逆噴射装置を故意に作動させた事が原因で発生した墜落事故
- ラウダ航空004便墜落事故 - 飛行中に逆噴射装置が誤作動した事が原因で発生した墜落事故
- プッシュバック - 駐機場での後退の一般的な方法
[編集] 参考文献
- 谷川一巳 『旅客機・空港の謎と不思議』 東京堂出版 2005年 ISBN 4-490-20538-4